異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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エミリアが参戦するとこうなる

 

 あの時、私は死んだ。

 

 ジョシュアの許嫁であるエミリアを連れ去った少年と、彼に連れ去られたエミリアに敗北し、木端微塵になった筈だった。

 

 見たこともない武器で攻撃された私は、あの少年が放った攻撃で吹っ飛ばされる寸前に何とか脱出する事が出来たけど、両腕と両足を折られた上に肋骨や背骨を粉砕され、動くことは出来なかった。

 

 殺してやりたいのに、動けない。

 

 このまま、森の中で復讐できずに朽ち果てるのか………。

 

 そんなのは嫌だ。私から楽しみを奪ったあの男に、復讐がしたい。それにもっと殺したい。まだ私は、楽しんでいない。

 

 だから、復讐するチャンスが欲しい。もう一度身体を動かせるようにしてほしい。

 

 そう思いながら、私は死にかけた状態まま森の中であの少年を呪い続けた。

 

 すると、ある日私の目の前に1人の少女がやってきた。マントの付いた真っ白な服を身に纏っていて、頭には雪のように白いリボンを付けている。ここを通りかかった貴族のお嬢様が、死にかけているハーフエルフを眺めて楽しんでいるのだろうか。私が死にかけているのが面白いか? 

 

 その少女も憎たらしいと思った私は、身体中の骨を折られ、食事を摂っていないせいで痩せ細っていた身体で少女を睨みつけた。

 

 呪い殺してやる。腕が動くなら剣で真っ二つにしてやるところだが、腕は骨が砕けているせいで動けない。だから呪ってやるのだ。

 

『―――――素晴らしい復讐心だわ』

 

 少女は私の目を見つめると、嬉しそうに微笑んだ。

 

 まるで誕生日に両親からプレゼントをもらい、大はしゃぎする子供のような笑み。だが、もう私はその少女を憎たらしいとは思っていなかった。なぜならば、この見ず知らずの少女は私の復讐心を理解してくれたのだから。

 

 あの男を殺したいという、私の復讐心を。

 

 白い服を身に纏った金髪の少女は、口の中に生えていた鋭い牙で自分の白い指に傷をつけた。人間よりも明らかに長い犬歯で切り裂かれた美しい指から鮮血が流れ始めたのを見た少女は、微笑みながらその指を私の目の前へと差し出す。

 

 指を傷つけて何をするつもりなのかと思ったけど、まるでその美しい手は、私を救おうとしているように思えた。

 

『さあ、私の血を飲みなさい。―――――私が、あなたの復讐心を叶えてあげる』

 

 この少女は、私を助けてくれるというのか。

 

 私に復讐させてくれるというのか。

 

 この血を飲めば――――――私は復讐できるのか。

 

 ならば、その血をくれ。

 

 私はあの男に復讐する。

 

 差し出された少女の指に喰らい付いた私は、必死に少女の血を啜り続けた。血を啜り、指を舐め回す私を見下ろしていた少女は私の頭を撫でてきたけど、別に腹は立たなかった。この少女は私に復讐させてくれる。この少女は、むしろ恩人なのだ。

 

『いい子ね。これであなたも―――――――私たちの同胞よ』

 

 月明かりの中で、白い服に身を包んだ少女がにやりと笑う。

 

 その小さな口の中に生える牙は――――――まるで、吸血鬼のように鋭かった。

 

 

 

 

 

 

 

 凄まじい轟音が響き渡り、フランシスカの左半身を抉り取った。アサルトライフルの集中砲火やマークスマンライフルの狙撃ではない。この一撃は12.7mm弾の狙撃だろうと直感した俺は、最愛の姉に誤射される前に横へとジャンプしつつ、早くも左半身の再生を始めたフランシスカへとリボルバーの銃口を向けた。

 

 恐ろしい再生能力だ。たった今アンチマテリアルライフルによって半身を抉られたばかりだというのに、もう肉片となった左腕の再生が始まっている。

 

「おいおい、何だよこの再生能力は!?」

 

「くっ、こいつ………!」

 

 ガルちゃんも想定外だったんだろう。再生させながら振り下ろしてきたフランシスカの剣を杖で受け止め、小さな足でフランシスカにローキックをお見舞いしてから杖をレイピアのように突き出して距離を取る。幼女の一撃だが、幼女の正体は最古の竜ガルゴニスだから、そのパワーは普通の人間の比ではない。杖で突き飛ばされただけだというのに、フランシスカは爆風に呑み込まれたかのように吹っ飛ばされ、後方にあった巨木の幹へと叩き付けられた。

 

 その隙に杖を腰に下げ、背負っていたMG34を取り出すガルちゃん。フランシスカが動き出す前にトリガーを引き、7.92mm弾の嵐を容赦なくお見舞いする。

 

 華奢な銃身から次々に飛び出す大口径の弾丸が、幹から逃げ出そうとするフランシスカの肉体を抉り、再び肉片へと変えていく。

 

 敵の攻撃でまだ負傷はしていない。だが、いつまで一方的に攻撃できるだろうか。弾薬が尽きればこちらも接近戦をせざるを得なくなる。そうなれば、接近戦を元々得意とするフランシスカが有利になる。時間が経てば経つほど敵が有利になっていくのだ。

 

 その前に殲滅できるならば問題はない。12時間待てば、こちらは勝手に弾薬が補充されるのだから。だが、弾丸で遠距離から攻撃できるという大きなアドバンテージは、弾薬を撃ち尽くすだけでピンチへと変わってしまう。

 

 弾切れする前に仕留められるという保証がない。せめて敵が再生能力を持っていなければ、消耗戦になる事はなかったのだ。

 

 ウィルヘルムのように弱点はないのかと思いながら射撃を続行していると、ガルちゃんが撃ち続ける7.92mm弾の中を、傷だらけのフランシスカが疾走していくのが見えた。

 

「!?」

 

 弾丸で片目を抉られ、頬を引き裂かれても、あの不気味な女は笑い声を上げながら突進していく。さすがにガルちゃんも気味が悪いと思ったらしく、キャリングハンドルを握りながらLMGに取り付けた銃剣で接近戦の準備をしていた。

 

 マズルブレーキの下部に取り付けたナイフ形銃剣で、フランシスカの一撃を受け止める。鉄板と鉄板がぶつかり合うような金属音が巨木に激突し、反響を繰り返しながら残響を生み出していく。

 

「ぎゃはははははははっ!」

 

「く………ッ!」

 

 LMGを振り払い、銃剣を突き出してフランシスカの太腿を串刺しにしてから、ガルちゃんが小さな足を振り上げた。太腿を突き刺されてフランシスカが体勢を崩しているうちに振り上げた小さな足が顔面に直撃し、フランシスカの鼻の骨を容易くへし折る。

 

 ハンマーで顔面を殴られるのと同じだろう。鼻血を流しながらフランシスカが崩れ落ちたと思った直後、今度は暗闇の中から飛来した漆黒の矢が、すとん、とフランシスカの背中に突き刺さる。

 

 ガルちゃんはその矢がどのような代物なのかをすぐに理解したらしく、追撃を中断して後ろへとジャンプした。

 

 その直後、矢が突き刺さっているフランシスカの背中が膨れ上がったような気がした。先ほどワスプナイフで攻撃した時と同じだ。どんどん膨れ上がり、傷口や裂け始めた皮膚から蒸気のようなものが噴き上がり始める。

 

 それは、圧縮された魔力だった。フィオナちゃんの発明によって圧縮された魔力が、元の密度へと戻ろうとして膨れ上がっているのである。

 

 やがて、膨らんでいたフランシスカの背中が砕け散った。筋肉や背骨の破片が飛び散り、起き上がりかけていたフランシスカが再び動かなくなる。だが、俺はまだ武器を下ろさなかった。先ほどから散々攻撃を喰らい、何度も即死している筈なのに、この化け物は何度も傷口を再生させながら攻撃を続けているのだ。

 

 こいつは不死身なのか?

 

「タクヤ、こいつはいったい………!」

 

「分からん。だが、まだ終わりじゃない!」

 

 ナタリアも、こいつが再生しているところを目にしていたんだろう。今しがたフランシスカを殺した筈のナタリアにそう言った俺は、背中の再生を始めたフランシスカの姿を見て嘔吐しそうになった。

 

 再び伸び始める筋肉と背骨。断面から新たな肉が生え、反対側の肉や骨と結びつき、徐々に傷口を塞いでいく。もし俺が魔物から素材を取ることに慣れていなかったら、既に嘔吐するか発狂していたことだろう。

 

 もう死んでくれ。もう再生しないでくれ。

 

 そう祈りながら再生するフランシスカを見下ろすが、彼女は相変わらず楽しそうに笑いながら起き上がり、剣を向けてくるだけである。

 

 くそったれ、このままじゃ全員弾切れだぞ!?

 

 ステラのガトリング砲を投入するか? いや、あれは切り札だ。凄まじい連射速度で30mm弾を連射するあのガトリング砲の集中砲火に耐えられる魔物は数少ないだろう。だが、あれはすぐに弾切れしてしまうという弱点があるし、敵が再生するならばどれだけ攻撃しても焼け石に水である。せめて敵が再生できる回数に上限があるならばいいんだが、再生回数に限度があるならばわざわざ被弾しながら攻撃してくる真似はしないだろう。

 

 歯を食いしばりながら作戦を考え始めていたその時だった。

 

 巨木の葉に覆われていた筈の夜空が、蒼白く煌めいたような気がした。はっとして頭上を見上げると同時に駆け抜けて行ったのは、落雷のような轟音。その音を聞くだけで身体を引き裂かれ、たちまち感電死してしまうような凄まじい轟音だった。

 

 これはただの落雷ではない。猛烈な雷属性の魔力だ。

 

「敵か………?」

 

 もしこれが新たな敵の来訪ならば、チェック・メイトだ。ただでさえフランシスカに手こずっているというのに、こんな雷属性の魔術を操る敵までやってきたのならば、もう撤退しか選択肢はあるまい。逃げる方向は考えず、メウンサルバ遺跡へと向かうという目的を一時的に除外して、敵からの逃走を最優先にして遁走しなければならない。

 

 すると、がさがさと頭上の葉の群れが揺れた。雨で湿った葉の群れを突き破り、何かが夜空から下りて来たのだ。

 

 その下りてきた何かが、空中で武器のようなものをフランシスカへと向ける。クロスボウなのかと思ったが、その武器は銃のようにマズルフラッシュを3回も発し、3発の弾丸をフランシスカへと叩き付けた。

 

 一瞬だけ、微かな月明かりでその得物が見えた。ハンドガンのようだが、トリガーの前部から斜め下にフォアグリップが伸びている。特徴的なフォアグリップと、ハンドガンでありながら3点バースト射撃が可能だという特徴で、俺はすぐにその銃の正体を見切る。

 

 イタリア製マシンピストルのベレッタM93Rだ。高い命中精度を持つ上に3点バースト射撃が可能な銃で、9mm弾を使用する。今しがたそれをぶっ放した人物は続けざまにフランシスカに弾丸をお見舞いすると、右手を背中へと伸ばし―――――――細身のクレイモアを引き抜き、落下しながらフランシスカの頭へと叩き付けた。

 

「ギエッ――――――――」

 

「………」

 

 漆黒の刀身は、先端部のみ溶鉱炉に放り込まれた金属のように赤くなっている。あれはサラマンダーの角の特徴であり、角を素材に使った剣は必ずあのような色になるという。つまり、あの大剣はサラマンダーの素材を使っているという事だ。

 

 通常のドラゴンに分類されるサラマンダーだが、戦闘力ならばエンシェントドラゴンに分類されてもおかしくないと言われるほどのドラゴンである。その素材はサラマンダーの討伐が困難であるせいでなかなか出回らず、鍛冶屋でもそれを使った武器は稀にしか作られることはない。

 

 あの人物は、サラマンダーを撃破できるほどの実力を持つというわけだ。

 

 この人は誰だ?

 

 フランシスカを両断したその人物は、早くも再生を始めたフランシスカに弾丸を撃ち込むと、ため息をついてから俺の傍らへとジャンプして下がってきた。

 

 身に着けているのは軍服のような漆黒の制服だ。漆黒の軍帽をかぶり、背中には大剣の鞘を背負っている。制服の肩にあるエンブレムは―――――――真紅の羽根と、ハンマーのエンブレムである。

 

 軍帽の下から後ろへと伸びるのは、俺と同じポニーテールだった。髪の色は分からないが、おそらく蒼だろう。

 

 この人物の特徴から母親を連想した俺は、暗闇の中ではっとしながらその人物の後姿を凝視した。

 

「まさか………母さん!?」

 

 あの剣は、確か母さんも持っていた。銃を手にしても剣を使い続けたという母さんは、親父が義足を作ってもらった際に余った素材で作られたサラマンダーの大剣を愛用し、今でも使い続けているという。家で素振りしている時も使っていたし、これを愛用するポニーテールの剣士は母さんしかいない。

 

 すると、駆けつけてくれたそのポニーテールの剣士は、剣を構えながらゆっくりとこっちを振り向いた。

 

「――――――久しぶりだな、タクヤ」

 

 凛々しい声。この声は、生まれた時から何度も耳にした声だ。俺を夜更かしさせた親父を咎める時や、俺とラウラを叱った時に聞いた声もこの凛々しい声だった。

 

 凛々しくて、心強い。久しぶりに母の声を聞いた俺は、息を吐きながら久しぶりに母の瞳を見つめる。

 

「母さん、こいつは………?」

 

「フランシスカか。なるほど………懐かしい奴だ」

 

「あぁぁ………あら、エミリアじゃないのぉ………」

 

 再生を終えて立ち上がったフランシスカも、母さんが現れたという事に気付いたらしい。頬に残っていた自分の血を舐め取り、にやりと笑ったフランシスカは、地面に突き刺さっていた自分の剣を引き抜いた。

 

「21年ぶりねぇ………。やっぱり、老けたのかしらぁ?」

 

「………吸血鬼になったか、フランシスカ」

 

「ふふっ………きゃはははははははっ! これでいいわ! これであなたにも復讐できる! エミリアをズタズタにして力也の前に連れて行けば、きっとあいつは絶望するでしょうね! 自分の妻が―――――――」

 

 その時、狂喜していたフランシスカの左腕がいきなり切り離され、後方へと吹っ飛んでいった。まるで何かに切り落されたかのようだったが、母さんは俺の目の前に立ったままだし、剣は全く動かしていない。

 

 まさか、エリスさんも助けに来てくれたのかと思った俺は、母さんの剣の市場ほんの少しだけ変わっていることに気付き、今何が起きたのかを理解した。

 

 ―――――――凄まじい速度で剣を振り払い、衝撃波だけでフランシスカの左腕を切断したのである。

 

 馬鹿な………! おいおい、全然見えなかったぞ!? 

 

 今の剣戟は何だ!? 

 

「なっ………!?」

 

「私をズタズタにする? ………ふん、その前にお前がキャベツみたいに千切りにされるのではないか?」

 

 左手のベレッタM93Rを向け、母さんが笑う。

 

 これが世界最強の傭兵たちの実力なのか………! 

 

 剣戟は全く見えない。笑っただけで増した威圧感に引き裂かれそうになる。この錯覚は、それほど実力に差があるという事を意味しているのだろう。

 

 母さんは味方だというのに、ぞっとした。

 

「殺すのが楽しいのだろう? ほら、楽しい殺し合いをしようじゃないか。私に復讐したいんだろう? 力也にも復讐したいのだろう? なら始めようじゃないか。――――――なあ、フランシスカ」

 

「こ、この………騎士団を裏った売女がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 絶叫し、剣を振り上げながら突っ込んで来る。母さんはベレッタM93Rをホルスターの中へと戻すと、両手でクレイモアの柄を握り、切っ先をフランシスカへと向けた。

 

「エミリア・ハヤカワ――――――――推して参る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 漆黒の大剣が、蒼白い電撃を纏う。炎属性のドラゴンであるサラマンダーの素材を使っているというのに電撃を纏わせるのは、武器と纏わせる属性があっていないと思うかもしれない。普通の魔術師ならばそう決めつけ、彼女の本当の力を見ることはないだろう。

 

 だが、エミリアからすればこの剣こそが自分の雷属性の魔力を最大限に発揮できる最良の得物である。

 

 マグマだらけの火山で生き抜いてきたサラマンダーの素材は、耐熱性や耐火性に非常に優れる。マグマの中に長時間放り込んでいても融解する事はないし、燃え上がる事もない。だからサラマンダーの素材を使った武器に纏わせるべき魔力は炎属性だと言われる。

 

 エミリアは騎士団にいた頃から、剣に雷を纏わせて戦う事があった。雷属性こそが彼女の最も得意とする属性であったため、それを纏わせていたのである。だが、電撃を強力にすればするほど剣は電流が流れる際に生じる熱に耐えきれなくなり、融解するか劣化する羽目になる。そんな真似をすれば、手にしている剣はたちまち使い物にならなくなってしまうのだ。

 

 だからそれは切り札のようなものだったのだが――――――このサラマンダーの大剣ならば、彼女の電撃と熱に耐えてくれる。

 

 つまりこの得物ならば、エミリアはやっと本気で雷を使う事が出来るのだ。

 

 復讐しようとしていたエミリアを目にして、狂喜しながら怒り狂うフランシスカ。21年間も蓄積した恨みを放出しながら迫ってくるフランシスカだが、エミリアはその憎悪を真正面から目にしても、冷静沈着だった。

 

 その程度の憎悪なら、戦場で何度も経験してきた。

 

 フランシスカは21年間も怨念を貯めこんでいたようだが、エミリアは21年間も戦闘の経験を貯めこんでいるのである。この貯め込んだものの違いで、早くも勝敗は決まっていた。

 

 盾に振り下ろされたフランシスカの剣を、エミリアは右から左へと剣を振り払って迎撃する。時々夫と模擬戦をする事があるのだが、様々な得物を使いこなす夫に勝利した回数はまだ数回しかない。だからエミリアにとって、今の一撃は別に本気の剣戟ですらなかったのだが――――――フランシスカからすれば、凄まじい一撃であった。剣を持っていた腕もろともへし折られてしまいそうな衝撃に耐えたフランシスカは剣を引き戻すが、反撃するよりも先にエミリアは更に接近していた。

 

 振り払った剣の切っ先を地面に突き立て、まるで地面もろとも切り刻もうとしているかのように、地面を擦りながら大剣を振り上げるエミリア。森の地面を覆う苔や草むらが蹂躙され、土色の溝が刻まれる。

 

 吸血鬼となったフランシスカだが、再生能力を持つとはいえ痛覚が存在しないわけではない。先ほどタクヤたちと戦っていた時は被弾しながら突撃していたが、今しがたの剣戟で恐怖を感じてしまった彼女は、いつの間にか激痛を忌避するようになっていた。

 

 その忌避感が、フランシスカを後ろへと回避させる。

 

 すると、そのまま振り上げられる筈だったエミリアの大剣が、突然ぴたりと止まった。

 

「!?」

 

「ふん」

 

 なぜ剣を止めたのかと思った瞬間、まるで剣だけを置き去りにするかのようにエミリアが1歩前へと前進した。そして右手を愛用の得物の柄へと伸ばして掴むと、大剣を地面から引っこ抜き、まるで柔道の背負い投げをするかのように構えてから思い切り振り下ろしたのである。

 

 土の中から引き抜かれた漆黒の大剣が、蒼い電撃を纏う。

 

 モリガンのメンバーの中でも接近戦を得意としていたエミリアは、銃という異世界の武器を知っても、剣を手放すことはなかった。彼女にとって最良の得物は、やはり銃よりも剣だったのだろう。

 

 だからこそ剣を使い込み―――――――慣れたのだ。

 

「フェイントだ、阿呆」

 

「こ、この――――――――」

 

 振り下ろされた刀身が、再びフランシスカの頭を蹂躙した。

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 親父たちのせい

 

要塞の騎士1「オルトバルカ人は通してやらないからな」

 

要塞の騎士2「ぎゃははははははっ!!」

 

タクヤ「く、くそ………」

 

フランシスカ「見つけたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ラウラ「ふにゃああああああああ!?」

 

エミリア「………原因は私たちだよな?」

 

リキヤ(ご、ごめんなさいッ!)

 

 完

 

 

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