7月29日 午前11時00分グランドシティ郊外 安らぎ墓地
ここは愛する人たちと別れ死者が眠る場所。死とは誰もが逃れることのできないものだ。寿命で死ぬ人もいれば病気で死ぬ人もいる。それは納得できる。しかし、唯一納得出来ないものが他人に殺され死ぬということだ。しかし、これが人間の本性だという人もいる。人間の歴史は血にまみれている。ま、こんな話はやめておこう。今日は朱璃おばさんの命日だから。
「すいません、いつものお願いします」
僕は墓地の近くの花屋の定員にお供え用の花を注文する。この花屋には月に一回できている。定員から花を受け取り大切な人が眠る墓標へと向かった。その墓標には姫島朱璃と刻まれている。ご察しの通り、数年前謎の物体に殺された朱璃おばさんの墓だ。僕はもう枯れてしまった花と今日買ってきた花を取り替えた。
「蓮?」
声のする方を見ると朱璃おばさんの娘である朱乃が花を持ち驚いた顔をしてこちらを見ていた。そう言えばここで会うのは初めてかな。
「朱乃……」
「蓮だったのね。毎年母様のお墓に花を供えてくれていたのは」
「これくらい当然さ。母親がいなかった僕にとっておばさんは母親も同然だった」
僕は朱乃と共におばさんのお墓の掃除をした。そして線香をあげ両手を合わせた。貴女を殺した犯人はこの僕がかならずつかまえてみせる。
「じゃあ行こうか」
「えぇ」
僕は柄杓をバケツの中にいれ元あった場所に置きに行った。しかし、そこで思わぬ人に出くわした。その人は堕天使の幹部であり朱乃の父親でもあるバラキエルさんが立っていた。朱乃とバラキエルさんの関係が良好でないのは前にも話したよね?だから、この状況は非常にまずいんだ。
「久しぶりだ「何しに来たの?」……朱乃」
「どうもバラキエルさん」
「久しぶりだね蓮君」
「前に言ったはずよ、貴方との縁はもう切ったはずと。二度と私の前に現れないで」
実の父親にそう言い放ち朱乃はその場を後にした。朱のも分かっているはずだ。本当はバラキエルさんが悪くないことくらい。僕はバラキエルさん二お辞儀し朱乃の後を追った。
「ちょっと待ってよ朱乃!…………バラキエルさん失礼します」
「あぁ…………またな」
バラキエルさんは寂しそうに呟いた。
「ごめんなさいね蓮…………せっかく来てくれたのに」
「いやいいんだ。それよりもいい加減バラキエルさんを許してあげなよ。君も分かってるはずだろ?朱璃おばさんが死んだのはバラキエルさんのせいじゃないって」
「いいえあの男のせいよ。あの男がもっと早く帰って来れば母様は生きてたし私も………この話はもやめましょう。それよりも私お腹すいちゃった」
「ああ。それじゃあ何処かに食べに行こう、僕が奢るよ!実は最近新聞社にグランドシティにいる犯罪者や自警団の写真を撮って売ってるんだ。遠慮しないで何でもいいよ」
「それじゃあお言葉に甘えようかしら」
午後12時58分 晴山コーポレーション 研究室
晴山コーポレーションとはアメリカのスタークインダストリーズと並ぶほどの大企業だ。晴山コーポレーションは携帯や私生活で使う日用品まで幅広い分野で動いている。そして軍事産業にも力を入れているのだ。最近、晴山コーポレーションでは裏で超人兵士製造に着手していた。そんな中、社長である晴山才蔵は製造部顧問の八条博士が話し合っていた。
「八条博士…………依然として逃亡した3名の被験者は見つからないのか?」
「ええ。捜索隊が今必死に探していますがまだ見つかっておりません」
「何としてでも見つけ出せ。あの3名が唯一の成功例だ」
「分かっております」
「それと例のグライダーとスーツはどうなっている?」
「あれらはもう暫く時間がかかるかと」
「仕方がない………出来次第すぐに知らせろ、いいな?」
「承知致しました社長。ところでお出かけですか?」
「あぁ、これから息子と食事だ」
そう言い残し晴山才蔵は研究室から出て行った。そして一人残った八条博士は晴山が出て行ったのを見計らい本棚を横へとずらした。その本棚をずらすとそこには空観が広がっていた。博士はゆっくりと階段を降りて行った。そこは八条博士専用のラボだ。博士はコンピュータを起動し逃亡した被験者3名の行方を調べることにした。
「晴山の下で働くのはうんざりだが…………もう暫くいるとしよう。これが完成するまでは」
八条博士はケースの中に入っている4本のアームを見つめ不敵な笑みを浮かべた。
午後3時 16分 グランドシティ ノースタウン
「ふう、美味しかった」
「そうね、たまには外食もいいわね。ねえこれから何処かいかない?」
「もち『♪〜♪〜♪〜♪』
もちろんいいよ、と言いかけた瞬間携帯の着信音が鳴った。僕のケータイには街で起こった事故や事件の情報がいち早く送られるようにしてある。えーと、グランドシティサウスタウンにてサイの男が大暴れしているだって!?何て日だ全く。
「ごめん朱乃、ちょっと急用が出来ちゃってもう行かないと」
「そう…………わかったわ」
「本当にごめん!この埋め合わせはちゃんとするから!…………そうそう、こんな時に言うのも何でけど」
「何?」
「君のお母さんを殺した犯人は必ず僕が見つける!だからお父さんと仲直りしてくれ!」
「………蓮」
朱乃は前に一度この言葉を聞いた事があった。それは数年前の今日…………朱璃が死んだ日の事だった。
数年前7月29日 姫島宅
「嫌あぁぁ!!母様!!」
朱璃の亡骸に泣きつく朱乃。そしてその光景を泣きながら見る蓮。今蓮の心は悲しみと怒りでいっぱいだった。数分後、バラキエルが入ってきた。
「朱璃、朱乃無事、か…………そんな」
「おじさん………」
「蓮君何があったんだ」
「わからない…………白い服を着た男の人が入ってきたと思ったら今度は渦から別の何かが飛び出してきたんだ…………おばさんはそれに」
「…………朱乃」
「どうして来てくれなかったの!?父様が来てくれてたら母様は生きてたかもしれないのに!!」
「朱乃すまない…………蓮君、悪いが君の記憶消させてもらう」
「どうして!?僕はこの事を忘れたくない!!」
「この世界に一歩でも入れば君は狙われるぞ。そうなれば君のお兄さんにも危害が」
「嫌だ!!朱璃おばさんは僕にとっても母親と同じ存在だったんだ!…………朱乃、約束する。君のお母さんを殺した犯人は必ず僕が見つける!」
現在 午後3時56分 グランドシティサウスタウン
僕はコスチュームに着替え例のサイの怪人を探していた。サイっていうんだからきっと図体もでかいはずだ。でかい奴は特に目立つはず。でもせっかく朱乃とデートできるかと思ったのに。でも、仕方がない。大いなる力には大いなる責任が伴うんだから。
「きゃぁぁぁぁ!!」
ほうらすぐに見つかった。叫び声がする方に行くとそこには何かが衝突したと思われる破壊後が無数にあった。車は横転しビルは崩れかけている。そしてその中心にはサイの姿をした大男が立っていた。
「おい!この惨事はお前の仕業か!?」
「だったら何だ!?」
「街を破壊しといてその態度?グランドシティの善良な市民と全世界のサイに変わって言う。大人しくその蹄を上げて投降しろ!」
「嫌だね!何なら力強くでやってみるか!?」
強気だね。見た目通りなら力はとてつもなく強いはずだ。それとあの角だな。あれに刺されたら絶対に跡が残るぞ。そんなことを考えているうちにこちらに向かい走ってきていた。僕はぶつかる瞬間に飛び上がり避けた。大男は勢い余って電柱に激突した。
「サバンナの住人のサイくんよ!とっととお家に帰んなサイ!!」
「くだらねぇこと…………言ってんじゃねぇ!!それと俺はライノだ!!」
怒りを増したライノはもう一度僕に向かってきた。学習能力がないね。僕は先程と同様にライノを交わした。しかし、今度は悪い事に崩れかけのビルにぶつかってしまった。ビルの壁が割れゆっくりと音を立てながら崩れていく。
「まずい!!」
僕は割れた壁の部分にクモ糸を出し補強していった。僕の出すクモ糸は強靭だ。余程のことがない限り崩れることはない。一通り作業が終わる頃にはライノは消えていた。あいつは何がしたかったんだ?この付近には銀行はないし襲われた連絡もない。何が目的でこんな事を。僕はライノを追跡するためその場を離れた。だが僕は気づいていなかった。今の事が誰かに撮られているという事を。
次回、夏休み中盤!しかし問題は山積み…………姫島朱璃殺害の犯人の捜索にライノの捜索、そしてまた新たな問題が社長とともにやってくる!