ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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第七章、新たなる楯無、そして恋人同士へ……
第103話


 翌日、此処はIS学園。今の時間帯は朝七時であり、殆どの生徒は部活関係や偶然早起きした者達ばかりであった。

 そんな学園の正門には六人の男女がいた。二人が男子であり、四人が女子である。

 しかし、その内の男子一人と女子三人は白を基準とした制服であり、後の二人は私服であり手提げ鞄を手にしている。

 

「ではお嬢様に一夏さん、後の処理は私と本音が承りますので、お二方は更識家でゆっくりと静養して下さいね」

 

 女子生徒の一人が二人に対し頭を下げながらそう言った。これには私服姿の女子生徒――更識楯無は深く頷き、隣にいる男子、一夏は「フン」と嫌そうに答える。

 そう、私服姿の男女は一夏と楯無であり、制服姿の者達は勇人、簪、虚、本音の四人だった。

 何故、彼等がこんな朝早くから起きたのかは一夏と楯無が軽い静養の為に、楯無と簪の更識姉妹、虚と本音の布仏姉妹の帰る場所、更識家で過ごすのだ。

 それは一週間くらいだが本当はゴールデンウィークの時に帰る筈だったが楯無が一夏を気遣い、昨日の内に楯無が家に連絡して明日帰ると連絡したのである。

 勿論、一夏から了承を得る為に楯無が言い、一夏は止の事がありながら楯無に「行く」と返事をしたのだった。

 これには楯無は喜ぶが一夏は止への罪悪感もあった。

 

「それにしても一夏、お前が更識家でゆっくり過ごすとはな……それも俺に言う前に」

 

 制服を着ている男子生徒、勇人は一夏に対し呆れ、そんな勇人に一夏は申し訳なさそうに謝る。

 

「悪い……でも俺はもう疲れてるんだ……あの女共の件で色々と」

「別に俺はそれを指摘してる訳ではない――俺が言いたいのは、お前が自ら選んだ事に間違いはないのかを訊いてるんだ」

 

 勇人の言葉に一夏は「えっ?」と惚ける。そんな一夏に勇人は目を閉じ、腕を組み、言葉を続ける。

 

「一夏、俺はお前が、お前自身が決めた事に責めるつもりはないと言ってる、お前は止の事を気にしながらも自分に安らぎが欲しい――俺はそう思った。だが違った、お前はその女の為に動いた」

 

 勇人は目を開け、視線を楯無の方へと向ける。楯無は勇人の視線に気が付き首を傾げるが勇人は言葉を続ける。

 

「お前は人に頼りたくないと言う強い気持ちはあった――あの時のお前は親友達に逢うのがどんなに辛いのかを自分で抑えていた、人に頼ると言う事が恥ずかしいとお前自身はそう思っていた――だが今は……」

 

 勇人は不意に微笑む。

 

「その隣にいる更識楯無と言う少女に惚れ、お前自身が身内の事で弱わってるお前を見て自分の家で静養させたい、と強く言い出したからな?」

 

 勇人の言葉に一夏は瞠目し、楯無は勇人の言葉に目を見開き、隣にいる一夏を見る。

 一夏は頬を紅潮させると俯き、そんな一夏に楯無は顔を真っ赤にしながら頬を紅潮させ俯く。

 

「えっ? 一夏様がお嬢様に?」

「イッチ―が~~っ?」

「えっ、一夏がお姉ちゃんに!?」

 

 布仏姉妹と簪は二人の様子に驚きを隠せない。そうだろう、三人は一夏が楯無を意識している事には気付かなかった。

 そして、楯無は一夏が自分に惚れている事に気付かなかったのだ。楯無は一夏に告白したが、一夏が自分に想いを寄せている事までには気づいていなかった。

 嫌、一夏が楯無自身に惚れている事に薄々気付かなかったのかも知れない。最初はクラス代表決定戦の時に千冬に論破した時や、楯無が自分の為に千冬や箒に対して真正面から言った事だろう。

 それは楯無自身が一夏の為の罪滅ぼしであり、それが一夏を惹かす切っ掛けにもなっている事を楯無は気付かなかった。

 二人が互いを意識し、互いの相手を見れないでいる中、簪達は顔を紅くし、勇人は二人を見て呆れていたが表情を険しくする。

 

「それよりも一夏、止は俺達に任せろ」

 

 勇人の言葉に一夏は眉間に皺を寄せる。止は今も尚、集中治療室にいるが一向に目を覚まさない。

 別に死んだ訳ではないが彼は殴った千冬と共に女子に見付かったが、それが幸いな事にその女子は一夏達のクラスメイト、鷹月(たかつき)静寐(しずね)

 箒のルームメートであったが今は一人であり、あの日は不幸な事に忘れ物を取りに来ていたのだった。

 一夏と勇人は静寐に感謝しながらも、止の安否を気にしていた。

 

「取り敢えずに止は未だ目を覚まさないが、今は安静にしているーー無論、常に俺が付き添えないが、あの人に連絡しておいた」

 

 勇人の言葉に一夏達は首を傾げるが勇人は不敵に笑い頷いた。

 

「ま、まさか……束さん?」

 

 一夏はその人物に心当たりがあり、勇人に訊ねると、勇人は再び頷いた。

 

「ああ、昨晩あの人に連絡を入れといた……あの人は錯乱していたがクロエやビショップが何とか宥めていたがな」

「そうだったのか……それよりも勇人、お前凄いな?」

 

 一夏は勇人の行動に、勇人は凄い人物だと改めて実感した。勇人は自分や止とは違い頭も良く、何時も一歩先を言ってる。

 それに彼が束に連絡したのは、これで三回目だった。二回目は自分が殴られた事での連絡、三回目は止が刺された事での連絡である。

 そして一回目の連絡は、自分と止がISを起動し、東京全体、嫌、関東全体が警察による大規模の捜査の時の事だった。

 あの時の勇人はテレビを見ていた際、ある車を見て、下唇を噛んでいた。

 それは救急車だった。ランプは点滅しており、中に急病人が乗ってる事をも意味していた。

 勇人はあれを見て慌てて束に言ったのである。束が彼等を預かってると言えば彼等も納得し、封鎖も解除されるだろう、と。

 勿論、止から聞かされたが後日、救急車に乗ってた者は何とか助かった。

 

「それよりもお前等、早く行け、もうそろそろ時間だぞ?」

 

 勇人は呆れながら言うと、楯無は腕時計を見て慌てる。

 

「そうだったわ! 行きましょう一夏君!」

 

 楯無は踵を返すと走って行った。一夏も後を追い掛けるが、そんな一夏達を見て勇人は呆れ、虚達は彼等を見て、彼等が見えなくなるまで手を振った。

 

「さて……俺は教室に向かうか」

 

 勇人は手を振らなかったが彼は踵を返し、学園の方へと歩き始めた。

 

「ハヤハヤ?」

 

 そんな勇人を見た虚達の内、本音が不意に口を開く。勇人は歩き続けていた。しかし、本音は不意に学園の方を見ていた。

 

「(トッマ……)」

 本音は学園の集中治療室で安静にしている止の事を呟いた。

 本音は止に想いを寄せていた。それは入学式の日、勇人が箒と一触即発的な状況の際に止が割って入り勇人を説得し、何とかその場を収めてくれた。

 あの時の本音は止を気に掛けていた物の、恋愛感情は無かった。しかし、あの時の止は弱々しかった。

 双子の弟、渡との再会。あれは止にとって苦痛であり、止には最悪な事だった。あの時、止は一人屋上にいた。

 と言うよりも、本音も居たが止は辛そうに自分に言った。

 

『俺は渡に迷惑を掛けた……出来る事なら謝りたい』

 

 止は辛そうに言葉を述べた。止自身の本音だった。止は渡と和解したい。止自身の強い表れだった。

 本音は止を見て何時もの止では無い事に気付く。それが本音が止を心配する切っ掛けにもなっていた。

 だが彼女は気付かなかった。自分は後に止の大切な人となる事を、本音や止の二人はその事を、未だ知らない。

 

 

「ったく……」

 

 一方、勇人は歩きながらも舌打ちしていた。が、勇人もまた、大切な人が直ぐそこまで来る事を未だ知らない。

 

 そして一夏と楯無も又、ロシアの件や誘拐の件を更識家で決着付ける事も未だ知らない。

 そして翌日、フランスとドイツから二人の転校生が現れ、更なる出来事が起きるのを、彼等は未だ知らなかった……。




 次回、更識家に着くまでの間、一夏と楯無の二人のやり取り。
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