ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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第104話

 あれから数分後、IS学園にはモノレールがあった。このモノレールは孤島であるIS学園の一つの内の交通機関であり、本州へと向かう事も出来る。

 勿論、このモノレールを使うにはIS学園から外出許可や宿泊許可を貰わなきゃならない為、余り利用する者は居ない。

 いるとなれば、学園を下見に来る者や学園の御内である来賓者達くらいだろう。因みに他にも行ける事が出来るのは船とヘリである。

 海は船、陸はモノレール、空はヘリ、IS学園は陸海空の交通機関を持ってると言っても過言ではないだろう。

 

 そんなモノレールの中には一夏と楯無の二人が居たが二人は隣同士に座っており、膝には手提げ鞄を置いている。

 モノレールの中は比較的空いてるものの人は少なからずいる。しかし、二人は互いの相手の顔を見ようとはしなかった。

 それは数秒や一、ニ分は経っていながらも二人は言葉を交わさない。二人は走っている事で揺れているモノレールの中で、目的地に着くまで何もしていなかった。 一夏は窓の外の景色を眺めていて、楯無は軽く俯いていた。一夏は景色を見て何も言わないが青い空に紺碧色の海を眺め続けていた。

 この景色は、IS学園からでも見れるが彼はこんな景色を見て、何かを思っていた。

 一方、楯無は軽く俯いているが頬は紅い。楯無は勇人の言った言葉に少し恥ずかしい思いをしていた。

 勇人は一夏が自分に惚れている事を自分達に指摘した。楯無から見れば恥ずかしかったが、楯無はある事を気にしていた。

 

「(もしかして、私が告白した事も知ってるのかしら?)」

 

 それは楯無が、この前、一夏に告白したのである。あの時の一夏は気を失っていたのか、眠っていたのかは判らなかった。

 それでも、自分は確かに一夏に告白した。一世一代と言うよりも、

あれは自分の気持ちを全て吐き出した物だった。

 楯無は自分のした事に恥ずかしさを覚えながらも、一夏にある事を訊く。

 

「ねぇ一夏く」

「海が綺麗だな……」

 

 一夏は楯無の言いたい事を遮るように不意に呟き、それを聞いた楯無は「えっ?」と不意を突かれたように惚ける。

 一方、一夏は海を眺め続けていた。その表情は何処か切ない。一夏は海と言う物を知りながらも遊びに行った事は一度や二度とくらいしか無かった。

 姉は忙しい身であった。が、束が自分を気遣い海に連れて行ってくれた事はあった。あの時はとても楽しかったが本当は姉と行きたかった。

 否――自分は姉を心配させまいと本当の気持ちを押し殺した。今思えば、あの時の思い出は良い物であり悪い物でもあった。

 一夏は切なそうに海を眺めている間、楯無は一夏の言葉に疑問を浮かべ、訊ねる。

 

「一夏君? どうし」

 

 刹那、アナウンスが流れる。

それも着いた事を意味しているのだろう。

 

「一夏君、着いたみたいよ」

「……ああ、そうだな」

 

 二人はアナウンスを聴いて軽い言葉を交わす。僅かだったが二人はモノレールが駅に着くまでその場を動かなかった。

 

 

 

 

「久しぶりの、陸に上がった気分だ」

 

 一夏と楯無はモノレールを降り、駅の出入口前にいた。出入口前は交差点となっており、沢山の人が行き交い、バス停が何個も立っており、タクシーが何台かは停まっている。

 彼等はバスやタクシーを使う訳ではない。彼等は誰かと待ち合わせをしている。

 

「それにしても、未だかしら?」

 

 楯無は辺りを見渡す。何処も人が行き交うが楯無は誰かを待っていた。昨日連絡し、七時ぐらいには来ると言ったが未だ来る気配はない。

 楯無は不安になる。このままタクシーを使って本家に行くべきか、と。そんな楯無を他所に一夏は辺りを見渡し続けていた。

 

「おい、あれリムジンじゃねえか!?」

 

 近くから男性の声がした。楯無は声がした方を見ると、その先には黒の細長い車が此方へと来る。

 

「あれよ一夏君」

 

 楯無は一夏の裾を掴みながら、一夏に自分が見ている方を見てくれと急かす。

 一夏は楯無の行動に呆れるも、楯無が見てる方を向く。一夏は瞠目した。黒い車、リムジンが二人の近くまで来ると、二人の前で横向けで停まり、リムジンからはエンジン音も止まり、運転席から一人の運転手が降りてきた。

 その運転手は四十代前半の男性であり、白のシャツに黒のベスト、黒いズボンを穿いてるのが特徴的な男性だった。

 

「遅いですよ三浦さん」

 

 楯無は運転手に対して少し怒る。それに対し、三浦は申し訳なさそうに謝る。

 

「すみませんお嬢様、交通関係で少し遅れまして」

「そう……それよりも彼を紹介するわ、一夏君よ」

 

 楯無は隣にいる一夏を紹介し、三浦は彼を、一夏を見る。

 

「貴方様が、一夏様ですか?」

 

 三浦は一夏を見て困惑の表情を浮かべる。三浦は彼が一夏だと判った。彼が楯無と簪姉妹を助ける為に誘拐犯達を殺した青年。

 彼から、更識家の面々から見れば彼は恩人であり、同時に彼に許されない事をしてしまった。

 三浦は彼を見て一応、軽くお辞儀すると、一夏も軽くお辞儀した。

 

「自己紹介は後で良いわ、それよりも三浦さん、御父様は本家に居るの?」

「左様ですお嬢様、旦那様は本家でお待ちです。ささっ、詳しい話は本家にお着きになってからにして下さい」

 

 三浦はそう言うと、リムジンの後頭部座席の扉を開ける。

 

「判ったわ、一夏君乗りましょう」

 

 楯無はそう言うと、後頭部座席の奥へと座る。一夏は三浦に再びお辞儀すると、車の中へと入った。

 車の中にはソファーのような席があり、前にはテーブルがあった。リムジンだけであって高級感もあった。

 一夏はリムジンの中を見て少し戸惑うも、楯無は一夏に「座って」と促す。

 一夏は軽く頷くと、楯無の隣に座り、その間に三浦運転手は扉を閉め、運転席に戻ると、エンジンを掛けると、一夏と楯無を見る。

 

「では行きます。一時間程度で着きますので、お二方は軽く何かとお話をして下さい――又は、軽く一休みして下さい」

 

 三浦はそう言うと、車を動かして始めた。車の中は車が動く度に揺れるが三人には関係無かった。

 

「ねぇ、一夏君?」

「何だ?」

 

 一夏は楯無を見ると、楯無は悲しそうに俯く。

 

「後悔して、ない?」

「はっ? 何がだ?」

「私が……貴方を止君から引き離し、貴方を思って、本家で静養させようと言った私に、怒って、ない?」

 

 楯無は申し訳ないように言葉を述べる。それを聞いた一夏は無言だったが舌打ちしていた。

 一夏の舌打ちを楯無は聴き逃さなかった。が、楯無は言葉を続ける。

 

「そうよね……でも私は貴方の気持ちを察しないで、止君の傍に居させられなくなった貴……っ!?」

 

 刹那、一夏は楯無の頭を撫でる。楯無は一夏の行動に戸惑うが一夏は無言で楯無の頭を撫で続けていた。

 

「い、一夏君? ど、どうしたの?」

「……更識、もうそれ以上言うな……」

 

 一夏の言葉に楯無は「えっ?」と惚ける。が、一夏は楯無に言葉を続ける。

 

「更識、俺はお前が俺の為に動くのは良い、だがお前自身が辛い思いをしても、お前が喜ぶ訳じゃない――俺はお前が楯無か、刀奈として生きたい事やロシアの件で悩んでいるのを俺が気付かないとでも思ってるのか?」

 

「えっ? ……そ、それは」

「図星か? そうだろうな。お前は自分よりも他人を心配し、俺の為に動いていた……もう無理するな? お前はお前自身の心配をしろ――俺が束さんの所にいる間にお前は寝てないんだろ? 」

「あっ、そ、それは……きやっ!」

 

 刹那、一夏は楯無を無理矢理自分の膝へと寝かし付ける。

「い、一夏君何を!? ……あっ」

 

 楯無は一夏に怒ろうとしたが、一夏を見て目を見開く。彼女は彼が、一夏は無言だった。

 楯無は一夏を見て何も言えなくなるが一夏は再び楯無の頭を撫でる。

 

「無理はするな、睡眠不足は身体に悪い――家に着いたら俺が起こす」

「一夏君……貴方は何で……」

「何も言うな――ゆっくり寝てろ、俺が起こすから、な? それに……」

 

 一夏は楯無に微笑んだ。

 

「もう辛い思いをするな……それに俺は、嫌――今はゆっくり寝てろ」

「…………うん」

 

 楯無は一夏を見て何も言えなくなる。しかし、楯無は嬉しそうに頬を紅くして頷くと、そのまま目を閉じた。

 一方、一夏は楯無を見て微笑んでいたが楯無の頭を撫で続ける。

 

「(……ありがとうございます、一夏様)」

 

 そんな二人のやり取りを三浦運転手は車を運転しながらも、一夏に感謝していた。

 そして、リムジンは更識本家に着くまで道路を走り続けていた。




 次回、一夏と前当主、一対一の話し合い
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