ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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 皆さん、明けましておめでとうございます。そして、今回、彼が復活します。


第108話

「それでね、一夏君」

 

 あれから数分後、一夏と楯無は肩を寄せ合いながら談話をしていた。因みに二人は数分前、恋人同士となったのだ。

 一夏から告白し、楯無をそれを受け入れたのだ。楯無は嬉しかった――愛する人、一夏からの告白を。

 楯無当主ではなく、一人の少女として、嬉しくて堪らなかった。しかし、彼女は知らなかった。

 一夏は良心の塊とも言える青年である。女性に暴力を振るうとか、賭け事とかはやらない。

 逆に大切な人達は大事にするのと、仲間や親友を思う気持ちは誰よりも強く、曲がった事は嫌い、悪を許さない性格の持ち主であり、そしてプレデターに鍛えられた為に強い。

 一夏と楯無改め刀奈、二人の男女は互いの恋人と他愛もない会話を、時間を大切にしており、二人は楯無の部屋で肩を寄せ合いながら談話を続けているのだった。

 楯無は嬉しそうに自分の身に遭った出来事を、一夏に話す。それを聞いた一夏は嬉しそうに微笑ましそうに、耳を傾けていた。

 

「そうなんだ……でも此方も面白い事が遭ったぜ?」

「面白い事?」

 

 楯無が首を傾げると、一夏は微笑みながら頷き、口を開いた。

 

「ああ、実は束さんのラボに居た頃、クロエさんに料理を教えていたんだけど、クロエさん、間違えて包丁で指を切っちゃって、指から血が出たんだ――でも後で勇人がクロエさんの指を咥えたんだ――そしたらクロエさん、口をパクパクしながら顔を真っ赤にしちゃって、俺と止――あっ、っ……」

 

 一夏は目を見開き直ぐに下唇を噛みながら哀しそうに俯く――両手は震えていた。

 ――あっ……――。楯無も一夏の様子に気付くが彼女も直ぐに気付き、哀しそうに俯くと、一夏の片方の手を両手で包むように掴む。

 一夏と楯無は気付いた。霧崎止――彼は今、織斑千冬に刺され瀕死の重傷を負い、今も尚、眼を覚まさない。

 本当は傍に居たいが彼女の気持ちにも答えたいのと、止への罪悪感がある為に、楯無の家に逃げると言う形で逃げてしまった。

 彼は自分を責めるのだろうか? ――嫌、責めるに違いない。彼を刺したのは姉、千冬である。自分と千冬は実の姉弟であるのだ。

 一夏は止が自分を責めるのと、止に何て謝れば良いのかが判らなかった。

 

「ねぇ、一夏……」

 

 刹那、楯無はポケットに違和感を感じた。振動音――それもスマートフォンの振動音だった。

 楯無はスマートフォンを取り出すと、画面を見た。『虚ちゃん』と黄色い文字が映っていた。

 楯無は画面をタップすると、耳に当てた。

「どうしたの虚ちゃん? ――――えっ!?」

 

 楯無は瞠目した。一夏は楯無の様子に気付くが、楯無は徐々に嬉しそうに微笑むと、一夏を見た。

 

「一夏君――止君が目を覚ました」

 

 楯無は嬉しそうに一夏に言った。――っ!? ――。が、それを聞いた一夏は悔しそうに下唇を噛むと何故か俯く。

 

「一夏君、どうしたの? ――あっ……」

 

 楯無は直ぐに気付いた。止が目を覚ました事。それは一夏や止を慕う周りの者達が一番望んでいた事だった。

 しかし、逆に一夏には罪悪感もあったのだ。何故なら、止を刺したのは千冬であり、千冬は元とは言え、一夏の姉。

 止から見れば、一夏は自身を刺した千冬の弟である。そんな一夏は止の親友であるが一夏から見れば、親友を巻き込んだ事に後悔していた。

 止は千冬に刺されてから今日まで目を覚まさなかった。だが今は、目を覚ましたのだ。

 一夏から見れば嬉しいが止から見ればどう思うのだろうか? 嫌、自分を嫌うに違いない。

 一夏が肩を震わす中、楯無はスマートフォンを持ってない方の手を一夏の手の上に重ねると、虚に聴いた。

 

「虚ちゃん、それは誰から聞いたの?」

『篠ノ之博士が私達に連絡してくれたのです』

「篠ノ之博士が?」

『はい、篠ノ之は私や簪お嬢様、本音や勇人さんや鈴さんや学園長に教えてくれました――ですが本音が……』

「本音ちゃんがどうかしたの?」

『いえ――本音ったら止君が眼を覚ましたのを知ると、止君に抱き着きながら泣いちゃいました』

「本音ちゃんが!?」

 

 楯無は驚く。それを他所に虚は言葉を続ける。

 

『はい、本音は止君の胸の中で泣きじゃくっていますが、止君は申し訳ないように本音に謝っているみたいです』

「そう……それよりも虚ちゃん、私も言いたい事があるの」

『言いたい事? 何ですか?』

 

 虚が訊くと、楯無は頷き、ふと一夏を見る。一夏は俯いているが肩を震わせていた。

 本当なら言いたかったが今は不謹慎だと、楯無は思った。しかし、楯無はそれを、一夏を気遣い、止めた。

 

「やっぱ……」

『布仏先輩、更識さんと話をしてるの?』

 

 虚の近くから男性の声が聞こえた。それは紛れもなく、止の声だった。一夏から見れば久しぶりに聞きたかった言葉だろう。

 だが今は、今の一夏は止への罪悪感がある為に会話が出来る状況ではない。

 

「その声は、止君?」

 

 楯無は止の声に気付くが一夏は肩を更に震わす。

 

「あっ……ごめんなさい、ちょっと待ってて」

 

 楯無はスマートフォンでの会話を一旦止めると、一夏を見る。

 

「一夏君、大丈夫?」

 

 楯無が心配そうに訊ねると、一夏は震えながらも頷く。恐怖、一夏は今、止への恐怖を感じていた。

 止に謝りたい。たが止は……。刹那、スマートフォンから虚の声が聴こえ、楯無はスマートフォンを耳に当てる。

 

「どうしたの?」

『お嬢様、止君が一夏さんとお話をしたいそうです』

「止君が一夏君と話をしたい?」

 

 楯無の言葉に一夏は顔を上げ驚きながら、楯無を見る。楯無は一夏に気付くが合えて虚の言葉にも耳を傾ける。

 

『実は止君が一夏さんにどうしても聞きたい事があるみたいです――それに止君は、こう言ってるみたいなんです――『一夏を怨んでない』って』

「止君が一夏君を怨んでない?」

「なっ!?」

 

 一夏は再び驚く。止が自分を怨んでいない? 一夏から見れば耳を疑うような発言だった。

 

「止君がそう言ってるの? 虚ちゃん?」

『はい、止君はそう言ってるみたいです、止君――彼、一夏さんを怨んでないみたいです、彼は織斑先生に刺された事は、自分が一番良く判ってるみたいです――ですが、それは織斑先生が独断でした事であり、一夏さんには何の罪もない、と』

「止君が……そんな事を?」

 

 虚の言葉に楯無は信じられないと言うような表情をした。何故なら、止は千冬に刺されたが一夏を怨んでない。

 普通なら親友の姉に刺された事は、刺された親友から見れば良くない思い出だ。

 それを止は何にも感じないよりも、寧ろ一夏を庇ってるようにも思える発言をしているのだ。

 楯無が驚く中、一夏も驚く。二人は止の発言に驚くながらスマートフォン越しにいる虚が何かを言い掛けていた。

 

『どうしましたかお嬢様? 何か返事をしてください』

「いえ……それよりもまた少し待って」

 

 楯無は再び会話するのを止めると、一夏を心配して訊ねる。

 

「一夏君、大丈夫? それに今の会話――止君が貴方と話をしたいみたいなの……」

「止が……でも俺は――彼奴は俺が」

 

 一夏は再び俯く。

 

「一夏君……逃げないで」

 

 そんな一夏に楯無は厳しい事を言う。一夏は驚き顔を上げると、楯無は哀しい表情を浮かべていた。

 

「一夏君、逃げないで、止君と話をして――止君は貴方と話をしたいのよ? ――それなのに、貴方は逃げるの? 今の貴方は止君への罪悪感があるのは私にも判るわ、だけど逃げないで――貴方は止君から逃げても何も変わらないし、止君も喜ばないし誰も得しない」

 

 楯無は一夏に怒る。それは一夏を思い、止との友情を確かめる物でもあった。

 このまますれ違ったら誰も喜ばず、当人達の友情にもヒビが入る。それを楯無は許さなかった。

 彼等は自分達の恩人であり、今の自分達はずっと哀しい思いをしていたのだろう。

 楯無は二人を心配しているからこそ、そう言えたのだった。

 

「楯無……刀奈……ああ、そうだな」

 

 一夏は辛そうに頷く。それを見た楯無は「大丈夫、私も居るから」と一夏を励ますと、虚に言った。

 

「虚ちゃん、止君に代わって」

 

 楯無が言うと、虚は『判りました』と答え、止に代わろうとして止に渡す。

 

「一夏君……はい」

 

 その間に楯無はスマートフォンを一夏に渡し、一夏はゆっくりと受け取ると、耳に当てた。

 

『……一夏か?』

 

 スマートフォンから青年の声が聞こえた。それは紛れもなく、止だった。

 

「……止」

 

 一夏は辛そうに答えた。そして、二人はどんな会話をするのかは楯無や、止の近くにいる者達は見守る事しか出来なかった。

 




 次回、とあるプレデター達が動く。
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