ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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第11話

「わあぁ~~」

 

 ここは横浜の街の中、そこには沢山の人が行き交って、その中には一夏、楯無、止がいた。

 一夏と楯無は隣同士で歩き、その後ろには止がいて、止は横浜の街を見ていた。

 横浜の街はあまり変わってはいなかった。勿論、止から見ればの話である。

 止は三年振りとも言える地球に帰還したにも関わらず、外国人観光客のように喜んでいた。

 彼の喜びは地球に帰還した事よりも、色んな場所を行きたい気持ちの方が強い。

 彼の喜びは何処から湧いてくるのかは判らないーーそれでも、彼は一夏や勇人の親友である事に変わりはない。

 そんな止とは違い、一夏と楯無は止のように喜んでいない。一夏は表情を険しくし、楯無は哀しそうに俯いていた。

 勿論、二人は止のように楽しんでいる訳ではない。止を含めた三人は楯無の妹、簪を助ける為に横浜へと来たのだ。

 一夏は楯無の妹が横浜の何処の港にいるのかを考え、楯無は妹が無事である事を祈っていた。

 三人の間には重苦しい空気と言うよりも、あまり良く、悪い訳でもない空気が流れている。

 しかし、彼等は簪と言う少女を助けると言う共通点がある為、何とも言えない。

「それにしても、変わらないよな~~」

 

 止が呟き、一夏は軽く頷く。

 

「ああ、それにしても……大丈夫か?」

 

 一夏は隣にいる楯無に訊ね、楯無は顔を上げ、軽く笑う。

 

「いえ、大丈夫よ……」

 

 楯無は軽く笑いながら答える。それを見た一夏は何も言わず楯無を睨むも、軽く溜め息を吐き、前を見る。

 一夏は楯無が無理して笑っている事に気付いていた。彼女は妹を心配している、彼女は妹の安否を気にしている。

 一夏から見れば、楯無は自分が姉としての罪悪感に苛まれているのではないのかを感じた。

 しかし、一夏はあえて口にしなかった。自分は楯無の妹を助ける為であって、姉妹の仲を戻す訳ではない。

 姉妹の問題は姉妹が解決する物であり、自分が関わる訳ではない。一夏は自分にそう言い聞かせる。

 

「一夏、俺、横浜中華街に行きたい」

 

 刹那、止が唐突に何かを言った。それを聞いた一夏と楯無は立ち止まり振り返ると、止は両手を頭の後ろに当てながら不貞腐れていた。

 

「止、何を言ってんだ?」

 

 一夏が訊ねると、止は両手を腹の方へと移動させる。

 

「お腹空いた」

「えっ?」

 

 止の言葉に一夏は惚ける。そんな一夏に止は言葉を続ける。

 

「だから、お腹空いたーー、一夏だってお腹空いてるだろ?」

「嫌、それは解るけど、我慢してくれよ」

 

 一夏の言葉に止は首を左右に振る。

 

「我慢出来ない、それに一日、何も食ってないからさ!」

「えっ!?」

 

 止の言葉に楯無は驚きの声を上げ、一夏に訊ねる。

 

「い、一日何も食べてないって、ほ、本当!?」

 

 楯無の問いに一夏は戸惑い、直ぐに止を睨む。止は首を傾げ、一夏に疑を問抱いていた。

 

「ねぇ、一日何も食べてないって本当なの?」

「それは……」

「そうだよ!」

 

 楯無は再び問うと、一夏は何かを言う前に止が答える。楯無は耳を疑うも、止は言葉を続ける。

 

「だって俺達ーー嫌、ちょっと訳があって何も食べてないよ? ……まぁ、三日も何も食べてなかった事もあったけどね?」

「え、えぇっ!?」

 

 楯無は再び驚く。それを聞いた一夏は呆れ、頭を抱える。ーー止、また余計な事をーーと心の中でそう思った。

 しかし、止の言ってる事を事実であり、何も言えない。げんに、自分も腹を空かせている。

 一夏は何も言わず瞑目する。楯無は再び訊こうとしたが一夏は何も言わなかったーー嫌、口を閉ざす方を選んだと言い替えれば良いだろう。

 

「うん、お腹空いてるのは事実だし、何より金も持ってないのが証拠だもん」

 

 無理だった。止がまた余計な事を言ったのである。それを聞いた一夏は瞑目しながらも苦笑いする。

 

「……ねぇ、私には貴方達が何者なのかは判らないけど、何か奢ってあげるわ」

 

 止の言葉に、楯無は言った。楯無の言葉に一夏は瞠目し、止に至っては「マジで!?」と喜ぶ。

 

「い、良いのかよ? 俺達は部外者であるのと、お前の……嫌、ごめん」

 

 一夏は何かを言おうとしたが、ある事に気付き表情を曇らせ、楯無に謝り、楯無は悲しい笑みを浮かべがら首を左右に振る。

 

「良いのよ……でも、貴方は私達を助けてくれようとしているから、でも、ちゃんと助けてよね?」

 

 楯無は哀しそうに笑いながら言葉を述べ、それを聞いた一夏は何も言わす頷く。

 しかし、止は何を食べようかと悩んでいる為、二人の事等気にもしていない。

 

 

 

「おばちゃん、中華まん三つ!」

 

 数分後、ここは横浜の名所、中華街にある店、そこは中華まんが美味しく、それを食しにきた人達が店の前で並んでいた。

 勿論、遠くから来た人もいれば海外から来た人達もいる。その中で、一夏、楯無、止もいて、彼等が店の一番前にいた。

 因みに、中華まんを注文したのは止である。

 

「はい、熱々だよ! 火傷しないようにね~~っ?」

 

 その店の店主か店員であろう白衣を着た人柄の良さそうな小太りの中年の女性が、紙で包まれた中華まんを止に差し出す。

 

「あち、あちち」

 

 止は受け取るものの、手のひらが熱く感じるも何とか持つ。

 それを見た女性は笑うも、今度は近くにいた一夏に、紙で包まれた中華まんを二つ差し出す。

 一夏は軽く頷いた後に受け取ると、楯無が代金を支払い、その後、女性が御釣りを楯無に渡した。

 

「わあぁ……」

「ここで喰うなよーー人気の無い場所で喰おうぜ」

 

 その間、止は中華まんを食べようとしたが一夏が言葉で制止する。

 それを聞いた止は不貞腐れるも、リーダーの命令である以上、頷く事しか出来なず、渋々、一夏と楯無と共に、人気の無い所を捜した。

 

 

 

「うんめえ~~っ」

 

 数分後、三人は人気の無い場所を見つけた後、止は中華まんを一口食べた後、感銘の声を上げる。口内に中華まんの白い生地や、中の餡の味が広がってくるのを感じていた。

 それに美味しい、と。勿論、止自身の感想であり、未だ食していない一夏や楯無に判る筈はない。

 

「……ほら」

 

 止を他所に、一夏は両手にある中華マンの内、片方の中華マンを楯無に差し出す。

 

「食えよ」

「……良い、いらない」

 

 一夏が訊ね、楯無は俯きながら首を左右に振った後、軽く答える。恐らく簪の事がある為、喉を通らないのだろう。

 一夏は軽く溜め息を吐くも、一夏は止を見る。

 

「止、俺の分を食っても良いぜ」

「良いのか!?」

 

 止は喜びの声を上げるが一夏は笑みを浮かべ軽く頷いた後、自分の中華まんを。

 

「サンキュー!」

 

 止は一夏が差し出してくれた中華まんを掴み、一夏の中華まんを一口食う。

 それも、かなり口を大きく開けて。

 

「全く……ゆっくり食えよ?」

 

 一夏は止の食い意地にヤレヤレと思いつつ、軽く笑うと楯無を見た直後、手に持ってた、楯無の分である中華マンを半分にするように千切る。

 白い生地の中である、豚肉や筍等の餡が顔を覗かせるように見えるが、一夏は片方を楯無に差し出す。

 

「ほらよ、これなら文句ないだろ?」

 

 一夏は軽く笑う。にも関わらず、楯無は俯いたまま首を左右に振る。

 

「……ハァ」

 

 楯無の同じ素振りに一夏は溜め息を吐くが楯無を哀しそうに見つめる。よっぽど、妹の事が心配なのだろうか。

 楯無は未だ妹が無事である事を祈っているのだろう。一夏から見れば判らないが楯無はそう思っているに違いない。

 一夏は楯無の様子に再び溜め息を吐くと、自分の分の中華まんを口に咥え、そのまま楯無を抱き締める。

 

「えっ、ちょっと……」

 

 一夏の突然に行動に楯無は驚き顔を上げるが、一夏は空いてる方の手を楯無の後頭部に当て、楯無の顔を自分の胸に埋めるように押し付けている為、顔を上げる事は出来ない。

 

「ちょっと止めて……!」

 

 楯無は一夏に言いながら両手や身体を激しく動かして離れようとする。手に持ってた黒い鞄を手放すが楯無には関係ない。

 

「お願い止めて!!」

 

 楯無は一夏から離れ、一夏を睨むも直ぐに瞠目した。何故なら、一夏は泣いてたのである。

 

「……何で泣いてるの?」

 

 楯無は一夏に問うも一夏は楯無に背を向け、空いてる方の手で目尻にある涙を拭う。

 楯無が何を聞いても一夏は答えなかった。そんな一部始終を見ていた止は中華まんを食べる手を止め、哀しそうに眼を逸らす。

 

 

「ナンデナイテルノ、ナンデナイテルノ」

 

 しかし、近くにある建物の屋上から、とあるプレデターが身体を透明にしながら、自分達を見ている事を彼等は知る由もなかった。

 そして、そのプレデターは身体を透明にしたまま、その場から離れた。勿論、その事も、一夏達は気付く筈も無かった。

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