ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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第110話

「う、うん……」

 

 あれから二時間後、一夏は目を覚ます。

 

「う、うぅん……」

 

 一夏は目を擦りながら起き上がる。因みに此所は楯無の部屋であり、一夏は楯無の部屋のベッドで横になって眠っていた。

 

「此所は……あっ、刀奈?」

 

 一夏は此所が楯無の部屋に気付くと、ふと、近くから寝息が聴こえ、寝息がした方をみると、そこには、楯無が自分の方を見る形で横向けに眠っていた。

 楯無は気持ちよさそうに眠っていたが寝息は可愛らしく、とても可愛らしい寝顔をしていた。

 一夏は彼女を見て微笑むと、不意に楯無の髪を撫でる。――ん……――。楯無は気持ち良さそうなのか微笑んでいる。

 一夏はフッと笑うと、楯無の髪を撫で続ける。楯無の髪は空のように綺麗で良い匂いもした。

 使ってるシャンプーが良い物なのだろう――が、一夏は楯無を愛しそうに見詰めると、不意に自分の方へと引き寄せる。

 楯無は寝ているが何故か一夏の方へと擦り寄る。楯無は寝ぼけている訳ではないが何故かそんな行動をしてしまう。

 刀奈……。一夏はそう囁くも楯無は起きなかった。余程疲れていたのか或いは車の中での疲れがまだ取れなかったのかは判らない。

 しかし、一夏は楯無には感謝していた。楯無は自分の為に色んな事をしてくれたのだ。

 それに、楯無の部屋のベッドに寝ていたのは彼女が自分を気遣いベッドに寝かせてくれたのだ。

 ベッドからは楯無の匂いが染み着いているが一夏は別にそんな趣味はない。一夏は単に、楯無のベッドに寝るのが恥ずかしかったのだ。

 最初は断ったが楯無がどうしてもと言い、そして自分は負けた訳ではないが楯無に甘えてしまったのだ。

 

「……刀奈」

 

 一夏は楯無の本当の名前を言いながら、楯無の頭を撫で続ける。このまま時が止まって欲しい――このまま、彼女との安らぎの時間が欲しい――彼は、一夏はそう願っていた。

 否、それは儚い夢に等しい――自分はプレデターに育てられた者。

 どう見ても、一夏は楯無と一緒に居られる時間は限られていた……が、一夏はある事に気付く。

 

「そう言えば、エルダーは何故、俺や勇人、止を助けくれたんだ?」

 

 一夏はある疑問を浮かべる。それはエルダー達の行動だった。あの時は他のプレデター達が自分達の事を気に入らないのと、それが理由で自分達を地球へ帰してくれた。

 しかし、一夏には腑に落ちない事があった。

 プレデターは何故、自分達を地球へと帰したのか? それに何故、防具や武器を与えてくれたのか? それに何故、エンフォーサーも学園に居て、何故プラズマキャノン砲を与えてくれたのか?

 一夏はプレデター達の行動に戸惑う。そして一番判らないのがケルティック達だった。彼等は何故、ドイツに居たのか? 

 あれは偶然なのか――自分を助けたのは偶然で、何故余所者でもある自分達を星に招き入れてくれたのか? それも三年と言う長い時間も費やしてくれたのだろうか?

 一夏はプレデター達の行動に戸惑う。考えば考える程、判んなくなっていく。まるで自分は本来の目的を見失っていくようにも思えた。

 自分は千冬に復讐したい為だったのか? それとも楯無と一緒に居たい為だったのか? 一夏は考えば考える程、判らなくなっていた。

 一夏は気付けば顔を真っ青にしていた。どんどん判らなくなっていく。ケルティックと一緒に居た時には彼等がドイツに来た理由を訊こうとしたが恩人である身の上、訊く事は出来なかった。

 一夏は冷や汗を流す。判らない――判らない、とそう思ってしまう。

 刹那、楯無の瞼が微かに動き、一夏は楯無を見る。楯無は可愛らしい唸り声を上げた後、ゆっくりと目を開けた。

 

「う……一夏君?」

 

 楯無はまだ眠たそうになりながらも、一夏を見る。一夏は慌ててぎこちない笑みを浮かべる。

 

「か、刀奈、良く寝れた?」

「う……ん……あれ、どうしたの一夏君!?」

 

 楯無は一夏の様子に気付き、眠気が飛んだように起き上がると一夏を心配そうに見つめる。

 一夏は楯無の言葉に戸惑いながらも笑う。

 

「えっ、な、何が?」

 

 一夏は惚けた振りをするが楯無は再び訊いた。

 

「どどうしたの一夏君!? 顔色が悪そうよ!?」

「た、大丈夫だよ? 俺は何時も通りだぜ!?」

「嘘!? どう見ても顔が真っ青で汗を掻いてるじゃない!?」

 

 楯無は一夏に指摘すると、一夏は「っ!?」と言葉を詰まらせる。

 楯無にはお見通しだった。一夏の表情は暗くそして疑問を浮かべているようにも思えた。

 それに対し楯無は暗部の一族であり、相手の表情まで判るように訓練されている為問題はなかった。

 が、今は違う。楯無は心配そうに一夏に訊ねる。

 

「一夏君、どうしたの顔色が悪いわよ?」

 

 楯無は心配そうに訊ねる。しかし、一夏は何も言わず項垂れる。

 

「一夏君……どうしたの?」

 

 楯無は一夏に訊く。勿論、一夏は何も言わなかった。と言うよりも、楯無にどう返答すれば良いのかが判らなかった。

 自分はプレデターに育てられた。そんな事を言える筈もないし、楯無は信じる筈もないからだ。

 一夏は楯無にどう答えれば良いか判らない中、楯無は一夏を心配する。

 

「一夏君……っ」

 

 楯無は下唇を噛むと、一夏の頬を両手で挟むように触れると、無理矢理顔を上げさせる。

 一夏は楯無の行動に驚く刹那、唇に柔らかい物が当たる事に気付く。

 一夏は瞠目するがそれは紛れもなく、目の前にいる楯無の唇だった。そう、楯無は一夏にキスしたのだ。

 それも今までのキスとは違う。一夏からではなく、楯無からであった。一夏は瞠目する中、楯無は目を強く閉じている。

 時間だけ過ぎていく――それは数十秒ぐらいだったが楯無は名残惜しそうに離れる。二人の間には銀色の色があった。

 

「一夏君……どうしたの? 何か遭ったの?」

 

 楯無はそう言った後、寂しそうに一夏の胸に顔を埋めながら一夏に抱き着く。これには一夏は戸惑うが直ぐに微笑むと、優しく抱き返し、楯無の頭を撫でる。

 

「大丈夫だぜ? 俺は少し考え事をしていただけだから」

「本当に? ……さっきの一夏君は顔色が悪かったわよ? 何か遭ったの?」

 

 楯無の問い掛けに一夏は何も言わず辛そうに瞑目するが直ぐに哀しそうに笑う。プレデターの存在を言いたかったがそれを我慢した。

 彼等の存在と楯無の為にも我慢した。それは正しくも間違った事でもあるが一夏は耐える。

 そしてそれを心配している楯無に嘘を付く事になると思いながらも、一夏は嘘を話す。

 

「大丈夫だよ刀奈――俺はさっき嫌な夢を見たんだ」

「嫌な夢?」

 

 楯無は顔を上げ、一夏を見る。その表情は不思議そうに見ているようにも思えたが一夏は楯無を心配させないように微笑んでいた。

 

「ああ……俺が刀奈の前からいなくなる夢だったんだ――その夢のせいで俺は刀奈が喪うんじゃないかって思って、それで顔色を悪くしたんだ」

「そうなの? それが原因なの?」

 

 楯無は未だ疑問を浮かべていたが一夏は優しく微笑みながら頷くと、楯無の頭を撫でる手を止め、楯無の額に自分の額を当てる。

 これには楯無は頬を紅くするが一夏は口を開いた。

 

「それは本当だぜ? 俺は刀奈が居なくなるのは嫌だ……俺は刀奈が好きだから変な夢を見たんだ」

「一夏君……大丈夫よ、私は此処にいるわ、貴方は一人じゃないわよ?」

 

 楯無はニッコリと笑うと、再び一夏の胸に顔を埋める。一夏は楯無の行動を優しく受け止めると、再び楯無の頭を撫でる。

 

「刀奈……」

 

 一夏は楯無を見ながら微笑む。自分には今、大切な人がいる。それも自分の為に動いてくれた人でもある。

 自分は彼女に惹かれたのもそこだが、同時に罪悪感もあった。彼女には何れ話さなければならないだろう。

 しかし今は彼女と一緒に居たい。気になる事もあるが今は彼女との大切な、安らぎの時間を味わいたい。

 例えそれが一瞬だけでも、ほんの一時でも良い――せめて誰も、自分と彼女を邪魔しないで欲しい。

 一夏は儚いとも言える気持ちを口では言わず心の中で呟いた。自分は何れ何かに遭うに違いない。

 だが今は何も遭わないでいる――、一夏はその時間を楯無といる時間を大切にしょうとしていた。

 一夏は今の時間を大切にしている中、楯無は一夏の胸に顔を埋め続ける。

 その光景は誰から見ても微笑ましい光景だったが今は誰も邪魔しないで欲しい、と言う二人の気持ちの表れでもあった。

 そして二人は数分間抱き合っていたが安らぎの時間でもある事を、二人は嬉しく思っていた事は二人だけの秘密だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、一夏は知らなかった。彼等が、プレデター達が一夏達を連れていったのは、ある目的がある事を……それを知ってるのはエルダー達であり、そして一夏達がそれを知る時、一夏達は絶望するに違いないだろう……。

 

 

 




 次回、半蔵、月影、渡、三体のプレデターと、一夏に歪んだ愛を向ける千冬と箒の出逢い。
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