ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
一夏と楯無が互いの相手と一緒に安らぎの時間を過ごしている頃、ここは日本のとある廃墟。
「…………」
廃墟のとある個室には簡易ベッドがあり、ベッドには渡が横向けに寝ていた。その寝顔は穏やかな物だったが近くには、とあるプレデターが居た。
そのプレデターはファルコナー同様、軽装が特徴的かつ、顔に着けてるマスクはさっぱりとしていたが二本の牙が生えているようなのが特徴的なマスクだった。
そのプレデターは渡を見据えていたが別に渡を殺すつもりは無かった。彼は、渡をパートナーとして見ており、互いの背中を預け合うには相応しい存在だと思っていた。
しかし、プレデターは渡を見て何かを思う――彼は半蔵が大事にしている者だと言う事にも気付いていた。
それに半蔵は今……刹那、この部屋を出入り出来る扉が開き、トラッカーが扉の方を見ると一人の人間と仲間のプレデターが一人部屋へと足を踏み入れる。
半蔵とファルコナーだった。二人はやる前に、半蔵が渡の様子が気になり、渡の部屋へと来たのだった。
「トラッカー、渡は……フッ」
半蔵は、寝てる渡を見て微笑むと、ベッドに近寄り、渡の頭を撫でる。
半蔵は渡を大切な弟分として厳しくも見守っていた。彼は自分達の部隊の中では一番若い。
その為、危険な事をやる事が多く、半蔵もヒヤヒヤしていた。だが彼は、復讐の炎に駆られている。
復讐の相手は霧崎止――渡の双子の兄である。渡は三年前、止が助けに来なかった事により逆怨みに近い形で彼を嫌っている。
半蔵から見ればそれは渡の為になるのか? と半蔵は思った。本当なら渡を止の元へと返したい――彼には健全な学生として、青春を謳歌させたかった。
が、渡の言い分や気持ちを尊重しなければならない為、何とも言えなかった。半蔵は渡を見て辛そうに俯く。
「放せ、この化け物が!!」
「うるせぇ黙れクソ女が!!」
部屋の外から数人の叫び声が聞こえ、半蔵は驚きながら扉の外を見る。――……う、ん? ――。
その叫び声に反応したのか渡が起きる。
「渡!?」
「あれ……半蔵さん?」
渡は目を擦りながら起き上がると、部屋の外から数人の叫び声に気付く。
「な、何か遭ったんですか?」
渡は外からの叫び声に驚く。そんな渡に半蔵は言った。
「渡、何が遭っても部屋から出てくるなよ?」
「えっ、半蔵さん?」
渡は半蔵の言葉に驚くが半蔵は深く頷くと、トラッカーを見る。
「トラッカー、渡を頼む」
半蔵はそう言うと、ファルコナーと共に部屋を出た。その場に残された渡は何も判らず戸惑うがトラッカーは無言で首を傾げていた。
一方、半蔵とファルコナーが声がした方へと向かう為、通路の中を走っていた。
「止めろ化け物め!!」
「うっせえよさっきから黙ってろと言ってるのに喚きやがって!!」
揉め合う声が飛び交う。そして、半蔵とファルコナーが曲がり角に曲がった直後、半蔵は驚愕した。
声を上げていたのは月影と、無言の一体のプレデターに、何故か拘束されている女性と少女が月影と揉めていた。
しかし、拘束されているのは千冬と箒だった。半蔵は驚いているが千冬と箒は半蔵に気付く――と言うよりも隣にいるファルコナーを見ていた。
「っ!? 化け物がもう一体!?」
箒はファルコナーを見て怯える。千冬も驚いていたが半蔵も驚いていた。
この二人は……。半蔵は千冬と箒を見て何かに気付く。そん中、月影は半蔵を見て歪んだ笑みを浮かべる。
「半蔵か? コイツだぜ? 俺が拉致した女共は」
月影は笑いながら、半蔵に言う。これには半蔵も驚くが月影に怒る。
「何をしてるんだ月影!? 何故その人達を拉致した!?」
半蔵は月影に怒るが半蔵は月影がブラックと共に、千冬と箒を拉致した事をファルコナーから聞かされた為に知っていた。
それに半蔵は更識刀奈を殺す前にファルコナーとやっていたのは、刀奈をどうやって殺すのかを話し合っていて、ついさっき殺す方法を見つけ、渡の部屋へと向かったのだ。
話を戻そう。半蔵は月影に怒る中、後ろから声を掛けられる。
「半蔵さん? どうしたの?」
半蔵は後ろから声を掛けられ驚くが後ろを振り返る。そこに居たのは、渡だった。
「わ、渡!? 何で此処に居るんだ!? 部屋に居ろって言っただろ!?」
半蔵は渡が自分との決まりを破って部屋から出てきた事に驚く。刹那、千冬は渡を見て豹変する。
「霧崎貴様――――ッ!! 生きていたのか!!」
千冬は渡に怒りながら、渡に迫ろうとした。しかし、月影に後ろから蹴りを入れられ、仰向けに倒れるが月影に拘束された。
「何だよこの女? あのクソガキを見て怒ったみたいだぜ? おい渡? てめえ何かやったのか?」
月影は渡に呆れながら訊ねると、渡は首を左右に振る。
「い、いえ、自分は何もしていません……それにその人とは何の面識もないです」
渡は千冬とは逢った事がないと言う。そうだろう、渡は千冬とは逢ってない。それ以上に千冬の事を知らないだけでなく、彼女に怨まれるような事をしていない。
そんな渡に千冬は叫ぶ。
「ふざけるなぁっ! 私は貴様を刺した筈だ!! 生きていたのか――ッ!?」
千冬の言葉に渡は瞠目し、月影はハッ? と呆れ、半蔵は驚く。何故なら彼等は千冬が渡を刺したと勘違いしていた。
否、彼女が刺したのは渡ではない、彼女が刺したのは彼の双子の兄、止である。そう――千冬は渡が止だと思っていた。
渡が面識がなかったのも、彼女に刺された覚えもないのも事実だろう。そんな渡を驚いているのを他所に、トラッカーが渡の肩に手を置く。
渡がトラッカーに気付くがトラッカーは渡の後から来た為に判らなかったのだ。
そんな渡に半蔵は千冬に怒る。
「何を言ってんだアンタは!? 渡は俺達とずっと一緒だったんだぞ!? 刺す事は出来ないんだぞ!?」
「嘘を付くな! 確かに私は霧崎を刺した筈だ!! なのに何故奴はピンピンとしている!?」
「ソイツって、止の事か?」
怒る千冬に月影が呆れながら答えると、千冬は月影の言葉に驚く。
「な、何だと? どういう事だ? 奴は止ではないのか?」
「当たり前だよ馬――鹿。アイツは霧崎渡――お前が刺した止って奴の双子の弟だぜ?」
月影の言葉に千冬は「なっ!?」と驚き、再び渡を見ると、渡は瞠目していた。
何故なら千冬は止に双子の弟がいる事は知らなかったのだ。その為、渡が此所に居る事も知らず、彼がピンピンとしているのも、それが理由だ。
「さ、刺した……奴を!? 止をか!?」
渡は驚きながら千冬に訊ねると、千冬は頷いた。
「ああ刺したよ! 奴等は私の一夏の障害だから殺そうとした!! だから私は奴を刺したんだ!」
千冬は怒りながら、渡に叫ぶ。一方の渡は千冬が止を刺した事に戸惑いを見せていた。
止を倒すのは、殺すのは渡だった。なのにそれを、千冬は代わりにと言う形で刺したのだ。
これには渡も戸惑うが、半蔵は渡を気遣うように声を掛ける。
「渡、お前は部屋に戻れ」
「えっ? 半蔵さん、何を?」
半蔵の言葉に渡は戸惑う。が、半蔵は険しい表情をすると、渡に対し言葉を続ける。
「良いから部屋に戻れ。此処からは俺と月影、ブラックやファルコナー達が話し合う――子供であるお前には重すぎる話だからな」
「でも半蔵さん……」
「渡!」
渡が何を言う前に半蔵は怒り、それを聞いた渡はビクッと肩を震わすが、半蔵は辛そうかつ気遣うような眼差しで渡を見据える。
「渡、今のお前には重い話だ――お前は部屋に戻って、ハウと……」
半蔵は腕を組むのをやめ、指をパチンと鳴らす。刹那、半蔵の近くから、白の鷲に良く似た機械の生き物、ファルが展開される。
ファルは半蔵の近くで浮くように翼を動かしながら飛んでいたが半蔵の肩に降り、止まる。
「ファルと一緒に遊んでいなさい……ファル、渡と」
半蔵はファルにそう命令すると、ファルは渡の肩へと飛んで移動する。
これには渡も困惑するが渡はファルを見た後、半蔵を見る。半蔵は辛そうに頷くと、渡は「あっ……」と何かを言い掛けたが深く頷くと、ファルを見る。
「行こう、ファル……」
渡はファルの頭を撫でる。ファルは機械なのか、渡は鉄の頭を撫でているようにも思えたがファルは気持ち良さそうなのか鳴く。
渡は微笑むと踵を返し、部屋に戻る為に歩く。半蔵は渡を見た後に何も言わず、頭を抱える。
渡は止が刺された事を気にしていないのか? 半蔵は渡の様子に疑問を抱いていた。実の兄を刺されたのなら慌てる筈だ。
渡からはそれを感じられないが渡は心の何処かで止を心配しているに違いない。だが今は、それは渡との一対一の時に話そう。
今は千冬と箒をどうするのかを月影とファルコナー達と話し合うしかない。
「それよりも月影、コイツらはどうするんだ?」
半蔵は気を取り直し、月影に訊く。月影は呆れながら答えた。
「それは決まってんだろ? コイツらは人質だ――それに使えるかもしんねぇぜ?」
次回、千冬と箒の揺るぎない決意