ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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第112話

「な、何を言ってんだよ?」

 

 月影の言葉に半蔵は解らないでいた。否、正確には月影の言葉に従いていけないでいた。月影が彼女達を利用する? 刹那、半蔵は月影に怒る。

 

「ふざけるな!! 人質を取る等、俺には出来るか!?」

 

 半蔵は月影に怒る。何故なら、半蔵は女を人質に取る所か彼女達を利用しょうとまでは考えていなかった。

 捕虜には出来る限り危害を加えず、拷問は死なない程度に軽く痛め付ける程度であった。

 それは半蔵自身が女子供を殺さず、尚且つ非武装や病気を患い、戦う意志のない者達を殺さない、と言う決まり事をしていたからだった。

 彼女達を人質にする事は彼女達を巻き込む意味であるのと、彼女達を死なす事は自分の決めた意志に反する事をも意味していた。

 そしてそれは、ファルコナーの教えでもあり、彼もまたプレデター達の誇りを汚さない為に、心に決めていた事だった。

 そんな半蔵に月影は呆れると、言葉を述べる。

 

「お前は馬鹿か? コイツらは一夏って言うガキを求めているんだぜ? それにコイツらは使えると言ったのは、ある目的の為なんだぜ?」

「ある目て……」

「ふざけるな!! 化け物と一緒にいるお前達に力を貸すか!!」

 

 半蔵が何かを言い掛ける前に箒が月影を拒絶する。

 それを聞いた月影は鼻で笑うと、ある事を言い出す。

 

「何言ってんだ貴様? お前達を助けたのは俺とブラックだ? 言わばお前達の恩人だ――恩を返す為に働け」

「断る! 私と千冬さんは貴様等に助けてくれと頼んだ覚えは無い! それよりも私と千冬さんを解放しろ! 私達にはやる事があるんだ!!」

 箒の言葉に月影は「やる事だ?」と呆れながら訊ね、半蔵は首を傾げる。そんな二人を余所に箒は怒りながら言葉を続けた。

 

「あの女は一夏をダブらかした……否、それだけでなく一夏は何故か私を嫌っているのだ!! それもあの女が一夏に抱き着いたからだ!!」

 

 箒の言葉に半蔵と月影は解らないでいた。あの女とは楯無の事であり、二人はあの女が楯無である事に気付かないでいた。

 

「私はあの女を許さん……あの女だけでなく、一夏と一緒にいるあの二人もだ!! 一夏は彼奴等に唆されている!! だから私は……彼奴等を始末する!! だから私と千冬さんを解放しろぉぉっ!!」

「篠ノ之の言う通りだ!! それに一夏は私の物だ!! 一夏を助ける為に私達を解放しろ!」

 

 箒と千冬は半蔵と月影、ブラック達に自分達を解放しろと叫ぶ。それはまるで、一夏を求めるような言動だった。

 二人が一夏を求める理由――どちらも孤独な日々を過ごし、一夏を求めるあまり歪んだ愛情を向けてしまったのだ。

 彼女達が悪い訳ではないが彼女達の過去は同情出来るかも知れない。しかし、半蔵達は箒の過去を知らない為、半蔵達から見れば彼女達が何を言ってるかは理解できないだろう。

 しかし、月影は何も言わずに呆れていた――否、彼は最初から彼女達の事を知っているようにも思えた。

 刹那、月影はある事を思い出し、それを半蔵に指摘した。

 

「そう言えば半蔵? お前は確か、ある女を殺すつもりだったろ?」

 

 月影の言葉に半蔵は不意を突かれ「っ!?」と言葉を詰まらせる。一方、月影は笑いっていたが千冬と箒は何も解らないでいた。

 

「ど、どういう事だ貴様等!? あの女とは誰の事だ!?」

 

 箒が月影達に訊ねると、月影は呆れながらも喜びの表情を浮かべ答えた。

 

「ああそうか? 確かお前等知らなかったんだな? まぁ無理もねぇよ? お前達を拉致したのは、ある女を殺して貰う為だよ?」

 月影は笑いながら言った後、その殺して欲しい者の名を言った。

 

「確か、更識楯無だっけ、な?」

 

 月影の言葉に千冬は目を見開き、箒は「なっ!?」と叫ぶ。そんな二人を他所に月影は言葉を続ける。

 

「確か更識楯無だっけ? 俺達は今、そいつを抹殺の標的としているんだぜ? まあ、俺達は女を殺せないから困っているんだよ?」

 

 月影は笑いながら、二人に説明する。しかし、月影は楯無を二人に殺させるのと、千冬と箒を仲間にする理由は二人を利用する為でもあった。

 この二人は一夏に歪んだ愛を向けている。それならば彼女達を利用して一夏を奪い、周りの奴等を殺して貰おう。

 向こうは彼女達は人質だと思うがそれに敵意を剥き出しにされたのならば、向こうは戦うしかないだろう。

 箒は兎も角、千冬は強いし何とかなるだろう。もし駄目なら用済みと見なし殺せば良い上、向こうは弱っている間に殺せば問題ない。

 つまり月影は、千冬と箒に奴等を始末をさせ、尻拭いは自分達がやれば良い。そう考えていた。

 月影は彼女達を仲間や人質だけでなく利用価値のある人駒として使おうとしていた。

 

「コイツら使える――それに、ブラック達が自ら手を汚さなくても、コイツらならやってくれるだろうな?」

 

 月影の言葉に半蔵は目を見開き「貴様」と怒りながら月影に歩み寄る。近づいた刹那、半蔵は腹に激痛が走る事に気付く。

 ――ガハアッ!? ――。半蔵は腹を押さえる。それは半蔵が月影に腹を殴られたからであった。

 それも生身の物ではない――月影の腕は、身体は、月影自身が半分人間であり、半分サイボーグであるからだ。

 その為彼のパンチは生身の人間なら激痛でしかない上、最悪の場合死にかねないからだ。

 半蔵は腹に走る激痛に耐えきれず膝を突く。刹那、生き物の咆哮が辺りに木霊し、何者かが月影に迫り、月影を殴り、月影は吹っ飛ばされる。

 月影は壁に叩き付けられるが、横向けに倒れる。

 殴ったのは、ファルコナーだった。ファルコナーは月影が半蔵を殴った事に怒り、月影を殴ったのだ。

 ファルコナーは唸り声を上げながら、月影に迫ろうとした。

 

「止せ、ファルコナー……!」

 

 そんなファルコナーを半蔵は腹に走る激痛を堪えながら言葉で制止させる。

 これにはファルコナーも止まるが、ファルコナーは半蔵を見て、半蔵に歩み寄り、半蔵の肩に手を置く。

 ファルコナーは半蔵を心配していた。だが、半蔵はファルコナーを見て微笑む――それはまるで作り笑顔にも思えたがファルコナーはそれを見て何も言わず、月影の方を見る。

 ファルコナーは月影に殺意を抱いていた。そうなるも無理はない――月影は半蔵を殴ったからだ。だからこそ、ファルコナーは月影を殴ったのも無理はないだろう。

 そんなファルコナーを他所に、月影はゆらゆらと立ち上がるとファルコナーを睨む。

 

「クソが……だが今は、やる事があるがな?」

 

 月影は何事も無かったように立ち上がると、千冬と箒の二人に訊く。二人はさっきの行動に戸惑っていたが月影は不敵に笑う。

 

「更識楯無を殺したくねぇか? ……彼奴を殺せば一夏って奴を取り返す事が出来るぜ?」

 

 ――っ!? ――。月影の言葉に千冬と箒は言葉を詰まらせる。楯無を殺し、一夏を取り返す事が出来る。

 それは二人から見ればまたとないチャンスだった。一夏を自分達の元へと置ける事が出来る。

 しかし、月影の言葉には信用は出来ないが今の二人には一夏を取り返し、自分達の元へと起きたかった。

 二人は一夏に歪んだ愛を向けている。二人は孤独に、辛い日々を過ごして来た。箒は六年、千冬は三年間孤独に過ごして来た。

 その為、今の自分達には一夏が必要だった。彼、一夏なら自分達を救ってくれる。

 なのに彼は、自分達を拒んでいる。そうなったら自分達は……二人は一夏を失う恐怖と、一夏を得たいが為に決意した。

 

「私は一夏が欲しい……その為には修羅にだってなってやる! 私をお前達の仲間にしてくれ!」

「私もだ! 一夏の隣に相応しいのは私だ! その為なら私は全てを失ってまで一夏を手に入れる!」

 二人は月影に答えた。答えは彼等の仲間になる事だった。それは間違い、それは利用される意味にも近かった。

 だが今の二人にはそれは関係なかった。二人は自分達の孤独を忘れようとしていた。

 

「こ、コイツら……本気なのかよ?」

 

 そんな二人に半蔵は驚きを隠せない。間違っている――そんなのは彼や彼女達の為にはならない。

 そうなったら、彼女達は一生、一夏と言う者に嫌われる。そうなったら束縛する危険もあるし、彼女達も殺されるのかも知れない。

 半蔵はそう思うと、二人に恐怖よりも助けたい衝動に駆られた。この最悪な結末だけは避けたい――そして渡だけでなく、彼女達も助けたい、と。

 半蔵はそう思うと下唇を噛み、辛そうに俯いた。そんな半蔵を他所に、月影は不敵に笑っていた。

 

 一人は彼女達を助ける為、一人は彼女達を利用する為、彼女達は想い人の為に悪の道へと走ろうとしていた。

 しかしそれはどういう結末をたどるのかは、彼等の今後の行動のみだろう……。




 次回、勇人、彼に再会し、全てを知る。
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