ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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 すんません、今回は敵陣地の視点も入れる事にしました。金銀は次の話に持ち越させていただきます


第115話

「半蔵さん……」

「言うな……それ以上は」

 

 あれから少し経った後、ここは東京の郊外にある廃墟。そこには半蔵と渡の二人がいた。彼等は筆舌しがたいものであるが視線の先には二人の女性と少女がベッドで横になっていた。

 織斑千冬と篠ノ之箒の二人だった。何方も寝息を立てているが表情は険しくも哀しい。理由は簡単、織斑一夏に拒絶されたからだ。同時に色々遭って拘束されたのだが月影により救出され、この場所へと連れて来られた。

 そして今は仲間として迎え入れられたのだが一夏を理由かつ、更識楯無をどうにかする事が条件だった。

 

「とは言え……どうも納得いかん」

 

 しかし、半蔵は頭を抱える。幾ら一夏が欲しいとは言え、自分達の仲間になるのはどうかしている。自分達の傍には危険な捕食者がいるのだ。それも、彼等が一緒にいる奴等よりはタチが悪いのだ。

 彼女達が彼を取り戻したいのは勝手だが殺される未来しかない。今は寝ているがそれは半蔵が疲れたから寝とけと言ったのだ。彼女タ達は不審な目で彼等を視ていたが半蔵はある武器で、彼女を寝かした事は黙っておこう。

 しかし、今は半蔵は彼女達の事を考え危惧しているが、不意に渡の方を視る。

 

「だが……渡」

「……いえ、これ以上は言わないで下さい」

 

 半蔵は何かを悟ったように渡に訊ねると、彼は何も言わずに目を閉じると、下唇を噛みながら俯く。彼は知っているのだ。兄、止が刺された事を、千冬自身の口から。

 それは愕然だった。同時に倒すべき憎悪が倒せない事……否、半蔵から視れば、兄が死ぬ事に躊躇しているとしか思えなかった。彼の兄は生死の境を彷徨っている。

 最悪、死ぬかもしれないが渡から視ればどうだろうか? 千冬は仇かつ、憎しみしか抱かない。そんな彼を、半蔵は心配していた。自分達の中では新参かつ、彼女等の先輩である。

 教える立場……未だ早いだろうが今は渡の事が気がかりでもある。半蔵は彼を心配そうに見ていたが溜息を漏らす。

 

「ふぅ……渡、暫くの間、お前は活動を自粛しろ」

 

 彼の言葉に渡は瞠目し、彼の方を視る。彼は気まずそうに俯いているが視線を彼の方へと向ける。

 

「今のお前は止が刺された事で私情に駆られる危険がある」

「そんな!?」

「そんな状況でお前を前線に出せばどうなる? 俺達の立場は、命は危うくなる」

「それは有り得ません! 僕は……!」

「では何故、俺のいない隙を狙って学園を襲撃した?」

 

 彼の言葉に渡は言葉を詰まらせる。そうなのだ、実は渡は学園を襲撃した際、学園を襲撃したのだ。同時に、あの赤い機体は束が一夏、勇人、止の三人のISの性能を上げる意味で襲撃させたのだがそれは渡により軽く一捻りされてしまったのだった。

 しかし、渡が学園を襲撃した事に変わりはなく、月影の手を患わせ、半蔵を困らせた事にも変わりはない。半蔵は彼にその事を指摘するが渡は何も言わなかった、言い訳もなかった。

 

「渡、お前は霧崎止、お前の兄を倒したい事に変わりはない事は判っている……だがな」

 

 半蔵は渡の肩に手を置く。

 

「お前は若い、その命を散らすな。大抵の事は俺と……奴が何とかする。それに、ブラック達もいるが今は周りを看てくれている」

「…………」

「お前はいざと言うとき以外、前線に出るな……勿論、お前の背中を預ける奴はお前に手解きは怠らない上、強くさせてくれる」

「……半蔵さん……っ」

 

 渡は下唇を噛みながら肩を震わせた。悔しいと思えるが彼の言い分は正解とも言えるのだ。が、半蔵は渡を心配しているからでもあった。彼はその事にも理解しているが不意に声が聴こえた。

 それは唸り声でもあるがベッドの方からだった。彼等は声がした方を視ると、千冬が起きたのだ。

 

「う……うん……っ!?」

 

 千冬は目を覚ますが我に返る。

 

「此処は……あっ!?」

 

 千冬は半蔵と渡に気付くが歯を食い縛る。

 

「っ……お前達!」

 

 千冬は二人に警戒する。何故なら、彼等に連れて来られた事に根を持っているが更識楯無を抹殺する事や、一夏を取り戻す事の為に共闘しているのだ。

 が、今は警戒しているのだろう。千冬は二人を睨む中、半蔵は溜め息を吐く。

 

「ハァ……もう大丈夫か?」

 

 刹那、半蔵は呆れたように訊ねる。その言葉に千冬は歯軋りする。

 

「ああ、だが……」

 

 刹那、半蔵は彼女の口を手で押さえる。これには千冬は驚くが彼は哀れみな目で彼女を見詰めていた。

 

「……それ以上は言うな」

 

 半蔵はその先を言わせなかった。千冬は瞠目するが半蔵は先を続ける。

 

「あの時は、気が動転してたんだろうよ……お前は織斑一夏を求めたいが為に周りを視てなかった。ソイツの意見は愚か、お前はしてはいけないことをしてしまった」

「……………」

 

 千冬は彼を憎しみが籠った目で見ているが彼女のした事は赦される物ではない。一夏達を傷付け、止を刺したのだ。否、一夏を求めるが余りの行動だろうが今は違う。

 今は半蔵が彼女に対して、理由を問いているだけであり、指摘でもあるのだ。

 

「兎に角、今のお前は織斑一夏を求めている上、何をするのかは目に見えている……まあ、月影が連れて来たとは言え、俺にも非が有るからな」

 

 半蔵は千冬の口元を押さえていた手を下ろすと、髪を掻く。

 

「……何が……」

「うん?」

 

 千冬の言葉に半蔵は気付くが千冬は涙目で彼を視ていた。

 

「お前に何が解る……私は一夏が心配だからだ!!」

 

 彼女の言葉に半蔵と渡は肩を震わす。が、千冬は泣きながら怒っている。彼女は一夏を求めていた。自分は一夏の事を考えていなかった。彼の事を気に掛けてやれなかった。

 その為、彼女は一夏が生存していた事に喜びながらも、彼の為に何かをしようと思った。同時に一対一で話をしょうにも彼は拒絶していた。

 当たり前とは言え、彼女は引かなかった。どうしても和解したかったのだ。が、それ等は全て最悪な物となってしまったのだ。

 

「私は一夏が欲しい……その為には幾多の障害が遭ったとしても私は一夏を手に入れる……!」

 

 千冬は半蔵に詰め寄る。

 

「その為にはお前達の力を借りる! お前達なら私達の宿願を果たせる! お前達は私達の為に……!」

「巫山戯るな!」

 

 刹那、半蔵は叫んだ。その言葉に渡と千冬は肩を震わせるが半蔵は怒っていた。千冬の言葉には自分達をどうだって良いとしか思えない発言とも感じたからだ。

 自分達は彼女達の駒じゃない、道具でもないからだ。

 

「……お前、俺達を何だと思ってやがる……! 俺達はお前達の駒じゃない! お前達の為に動く義理もない……!」

「それは違う……私は一夏が欲しいからだ! その為に」

「それが可笑しいってんだよ!?」

「なっ……!?」

 

 半蔵の言葉に千冬は驚くが半蔵はその事を指摘する。

 

「俺達は勝手に動くわけにはいかない……! それに俺達は何時死んでも可笑しくはない状況にいる……お前の為に動いて死ぬのはご免だ……!」

 

 半蔵はそう吐き捨てた後、身を翻し、その場を離れるように歩き出す。。

 

「渡……部屋に戻るぞ……」

 

 途中、渡にそう言うが彼は戸惑う

 

「えっ……でも」

「…………」

 

 渡は彼を視るが背中を向けていた。彼女の発言に怒りを感じているようにも思えた。渡はその事を察知するが不意に千冬の方を視る。

 彼女は目を耳開いていたが辛そうに歯を食い縛ると俯く。涙を浮かべているが流しているのだった。渡はその事に気付聴こえを上げようとした。

 しかし、それは出来なかった。止を刺した事もそうだが信用している訳でもないからだった。彼女は一夏を求めているがそれは知った事ではないのだった。

 

「……だが、アンタ達を見捨てる事はしない」

 

 刹那、半蔵の方から声が聴こえた。その発言に渡と千冬は目を見開き、彼の方を見やる。彼は肩越しで千冬を見ているが目を細めたままだった。

 

「は、半蔵さん?」

「……な……」

 

 渡は驚きつつ声を上げ、千冬は何かを言いたかった。が、半蔵は不意に哀しい視線を千冬に送る。

 

「俺は……お前が彼を求めている理由は知らない……だが、俺はお前達を見捨てない……それに、何か遭ったら俺に言え……話だけは聴いてやる……それだけは覚えておけ」

 

 半蔵はそう言った後、前を見るとその場を離れるように歩き去っていた。渡は彼の発言に驚くが慌てて彼の後を追い掛けた。

 

「……あ、ああっ……」

 

 一方で、千冬は何故か嗚咽を上げた。彼の言葉に何処か救われたようにも感じられたのだ。何かまでは判らないが彼は自分達を見捨てないと言ったからだ。

 自分は一夏が欲しいだけなのに……たったそれだけなのに、だった……。

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