ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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第116話

 翌朝、此処はIS学園の一年一組の教室。室内は今、重苦しい雰囲気に包まれていた。

 それは、このクラスを受け持ち、教えてくれる女教師が不祥事を起こした事だった。それは衝撃を与え、戦慄させている。それは織斑千冬が止を刺した事だった。

 あの有名な人物の不祥事がそれであり、被害者でもある止が死ぬかもしれない。否、それは過去形であり、今は現在だ。現在は止は一命を取り留めており、療養している。

 しかし、一夏と箒は居ない。一夏は更識家で静養する事となり、箒は退学処分を下された。が、千冬と箒は行方不明となった。それだけでも周りは気になるのかヒソヒソと話をしていた。

 しかし、これから先、どうなるのかと不安を隠せないからだ。

 

「…………」

 

 そんな中、教室のとある席には、一人の青年が瞑目しながら腕を組んでいた。周りの心配とも捉える会話に耳を傾ける気配はなく、静かにその場を動かず、待機しているだけだった。

 しかし、内心何を考えているのかは彼にしか判らない。同時に彼はこの先、一人で戦わなければならないのだ。一夏は更識家にて静養しており、止は病室で待機している。

 何方も前線から離脱する意味で居ない。その為、勇人が一人で学園生活を過ごす意味にも近いからだった。周りは千冬や箒、一夏や止の事で戸惑う中、話題を変える事はしないでいる。

 否、これと言った話題が無いからだ。周りは一夏、止、箒、千冬がいない中で困惑する中、チャイムが鳴った。それは話題を変える意味か、終わらせる意味かまでは判断出来ないが一旦停止する意味でも良かったのかもしれない。

 周りはチャイムが鳴る中、席に着き始める。ゾロゾロとだが勇人は席に着いたままであり、動く事はしなくても良かった。すると、扉が開き、一人の女性が教室に足を踏み入れる。

 真耶だった。彼女は、千冬のあの件で色々遭ったがある人物により、担任となった。副担任はある人物が受け持つ形になっているが今は不在であり、居ない。

 周りは真耶を見やるが視線は困惑が籠められていた。彼女達は真耶を信用していない訳ではない、これから先の事を考えているからだろう。

 

「み、皆さん……」

 

 真耶は周りの視線に気付くが彼女だって困惑しているのだ。まだ間もないにも関わらず、担任となったからだ。重荷でもあるが今は別の意味でも大変だった。

 彼女達、このクラスの生徒達を元気づけるのが先だった。その為には……が、真耶は哀しい笑みを浮かべる。

 

「大丈夫です……皆さんは……」

 

 真耶はそれ以上は言わなかった。否、かける言葉が見つからないのだ。自分達の級友である者達が色んな事で居ないのだ。

 自分は彼等の代わりになる事は出来ない。

 しかし、彼女の不安を拭う切っ掛けはあるのだ。それも、明るい話題だった。

 

「実は皆さんにお知らせがあります……!」

 

 刹那、クラス中に衝撃が走る。何か良からぬ物ではないかと思っていた。が、真耶は口を開く。

 

「実は、今日から、転校生が来ます、それも二人です」

 

 更に刹那、周りはざわめく。否、驚愕と言い替えれば良いだろう。何故なら、不安の中で転校生が来るのだ。喜ぶべきか喜ばないベキかは彼女達には判断出来ない。

 周りはその事で近くにいる者達と話をするがただ一人、それを気にもしない者が居た、勇人だ。彼は瞑目したまま何も言わない。話題に触れる気配もないからだった。

 逆に言えば、彼は一夏と止の二人の安否だろう。内心であるが彼は彼等を気に掛けているのだ。勇人はそう考えている中、真耶は言った。

 

「取り敢えず、お二人方は廊下にいます。入って来て下さい」

 

 真耶は扉の方を視る。周りも一斉に扉の方を見やる。勇人はそのままであるが扉の開く音が聴こえた。すると、二人が教室の中へと足を踏み入れる。

 

「えっ!?」

 

 周りの驚く声がした。愕然とも言えるがそれもその筈だった。二人の内、一人は十代前半の腰まである銀髪に赤い瞳、右目には眼帯を付けているが凛としている。

 それはいいとして、もう一人が問題だった。その人物は腰までブロンドの髪をゴムで一つに纏めている。容姿はいい方であるが勇人は彼を視て眉を顰めていた。

 周りは銀髪の少女、否、金髪の者を視て驚いているが二人は教卓の前に立つと、真耶が言った。

 

「お願いします」

 

 二人に言った、自己紹介を促しているのだった。彼女の言葉に金髪の者は頷くと、周りを視ながら。

 

「シャルル・デュノアです。えっとわ、僕はフランスから来た男性操縦者です」

「お、男!!!?」

 

 彼、シャルルの自己紹介に周りは騒ぐ。男性操縦者? 驚愕でしかなかったのだ。フランスにも男性操縦者が居た。それは世界がひっくり返る程の衝撃でもあった。

 周りはシャルルを視て驚く中、勇人は何か違和感を感じていた。が、それを咎める気配はなかった。片方の、銀髪の方から敵意の籠った視線を感じるからだ。

 銀髪の少女は自分を見ている事に変わりはないが表情は険しかった。すると、彼女が勇人の方へと近づく。

 

「ラウラさん!?」

 

 真耶が銀髪の少女をラウラと呼ぶが慌てる。周りは彼女の行動に驚かないがラウラは勇人に近づくなり、勇人に対して叩こうと手を挙げる。

 

「あ……!」

 

 真耶が言い掛ける刹那、大きな音は……しなかった。ラウラが手を振り下ろす前に、勇人が彼女の手首を掴んだからだった。同時に彼は力を入れて、手を退かす。

 周りは突然の事で驚くが勇人は目を細めていた。

 

「何をする?」

 

 勇人はラウラに対してい言った。しかし、ラウラは。

 

「貴様が……貴様達が教官を……!」

 

 ラウラは勇人に対して怒りを爆発させている。理由は教官、誰かまでは判断出来ないがその人物を尊敬しているからだろう。しかし、勇人には心当たりはない。

 怨みを抱かれる人物は沢山いるが……が、勇人は目を細める。怨まれるなら仕方ない事だが勇人は訊ねた。

 

「誰だ? 教官って?」

「惚けるな! 織斑千冬の事だ!」

 

 刹那、教室内はどよめく。彼女の言葉が衝撃的でもあったのだ。が、勇人から視れば何とも思わない。あるとすれば、彼女が千冬の知り合いだと言う事だろう。

 

「貴様や織斑一夏達のせいで教官は居なくなった! 私が尊敬し、崇拝している教官をだ!」

「……それで?」

「なっ!?」

 

 勇人は彼女の問いに何とも思っていない。否、関係無いと言わんばかりだった。が、彼は千冬がどうなろうと関係無かった。彼女は一夏を求めている。

 何故かは判らないが狭隘としか感じられなかったからだ。普通に話をすれば良いのに、それを壊したのは彼女自身なのだ。勇人はそれをラウラに言おうとしたが彼女の逆鱗に触れている事に気付いてなかった。

 

「キ、キサマーーーーっ!」

 

 ラウラは怒りのあまり、殴り掛かろうとした。周りは彼女の行動に驚く。

 

「ガァァァァぁ!!!」

 

 刹那、彼女は悲痛の声を上げる。同時に勇人に掴まれている手を激しく動かしていた。何故なら、手首に激痛を感じているからだった。理由は簡単、勇人が彼女の手首を掴む手に力を入れていたからだ。

 半分人間半分アンドロイドの彼はその自分の特殊な力を活かしてラウラの手首を締めていた。これにはラウラも悲鳴を上げるが離れる意味で身体を動かすが、勇人は目を細めていた。

 ラウラへの怒り、だろう。干渉して来る事にだ。勇人はラウラに対して手を緩めない。周りは突然の事かつ、勇人の行動に気付く者や気付かない者達もいるが困惑している。

 誰も止める気配はなかった。が……。

 

「や、止めて下さい!」

 

 真耶がラウラを助ける意味で勇人を止めようとする。

 

「ダメです勇人君! そんな事をしては!」

 

 真耶は勇人を止める。勇人は勇人でラウラの手首を掴み続けていたが力を入れていた。彼女に対し、呆れと怒りが籠った視線を送っていた。

 ラウラは激痛を感じているが勇人は気にもしなかった。周りは勇人の事で戸惑うが彼は。

 

「…………」

 

 勇人は何かを思ったように視線を走らせる。その先には金髪の青年、シャルルが居た。彼は勇人を視て困惑しているが何処かよそよそしく感じた。まるで修羅場を視たようにも感じるが勇人は目を細める。

 何かを隠している、そう気付いたのだった。同時に、ある考えも浮かぶが彼はそれを言わなかった。自ら確認した方が良い、と。勇人はそう考えている中、ラウラの悲痛の声は教室に木霊し続けていた。

 

 

 

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