ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
「簪ちゃん! 簪ちゃん!!」
楯無は、倉庫内の中央で身体を縄で縛られながら下がっている簪を呼び続けるも、簪は気を失っている為、何の反応も見せない上に、楯無の近くにいる女性の狂喜のような笑い声が耳に響く。
それだけじゃない、簪の近くにいる三人の男達は少し笑い、男達の近くにいる女はほくそ笑み、楯無を押さえ付けている男なんかは未だにニヤニヤと笑みを浮かべている。
楯無や簪は兎も角、簪を誘拐したであろう者達は誘拐犯達であり、彼等は誘拐は元より、目的である身代金が難なく手に入れた事が嬉しくて堪らないのと、自分達は勝者だと思っていた。
すると、楯無の何度の呼び掛けに反応したのか、或いは気を失ってから暫く経った後なのかは判らないが簪が「う、う……ん」と微かに呟いた後に眼を開ける。
「簪ちゃん!?」
簪が気が付いたのを見た楯無は喜びよりも驚愕し、簪は楯無を見て「お姉ちゃん!?」と共に驚きの声を上げる。
「簪ちゃん……!」
楯無は簪が無事である事に安堵の表情や胸を撫で下ろしたかったが今は無理だった。今は自分達姉妹は危機的状況かつ捕らわれの身に近い。
その為、今は、この危機的状況を打開するのを見つけるしかなかった――あの二人が自分達を助けてくれるのを待つしかない。
「お、お姉ちゃん……っ」
一方、簪は楯無を見るや否や楯無から眼を逸らす。それはまるで疚しい事があるかつ罪悪感に苛まれているかのように、哀しそうに俯いていた。
楯無は簪の様子に疑問を抱き、「簪ちゃん」と訊ねる――だが、さっきまで笑っていた女性が笑うのを止め口を開く。
「あらあら、あんたの妹さんは罪悪感に苛まれているみたいね?」
女性の言葉に楯無は「えっ?」と惚ける。しかし、女性は更に不敵に笑う。
「やっぱり知らないのね? ……まぁ、良いわ、貴女の妹の代わりに」
女性が何かを言い終わる前に、簪が「駄目っ!!」と叫びながら遮る。
「簪、ちゃん?」
楯無が簪の様子に驚くも、簪は涙を浮かべながら楯無に謝る。
「ごめんなさいお姉ちゃん……これは嘘だったのに、本当の誘拐になっちゃった」
簪の言葉に楯無は「えっ?」と惚ける。だが、簪は、未だに理解出来ないでいる楯無に訳を話した――そして、それを聞いた楯無は驚愕したかのように瞠目する。
何故なら、この誘拐は最初、嘘だった。それは姉妹の両親や家の者達が姉妹の仲を戻そうと思い、嘘の誘拐をしょうと言う考えをした。
この発案は更識の先代であり、姉妹の父親だった。勿論、家の者達は反対したものの、彼等も姉妹の仲が戻るのを願っていた為に賛同した。(姉妹は彼等の作戦を知らない)
この当日、簪は誘拐されたが誘拐したのが更識の人間であった為に誘拐の件を聞いて拒絶したものの、簪も姉とも仲良くしたい為が為に協力した。しかし、そこが間違いだった。
「最初は上手くいってた……でも、途中で本当の誘拐になっちゃった……」
簪は目に涙を浮かべつつ言葉を続ける。途中、この偽装誘拐が何処から漏れたのか、本当の誘拐となってしまったのである。
これには更識の面々も想定外かつ突然の事で戸惑った。勿論、それは姉である楯無の耳に届いてはおらず、近くにいる者達が簪を誘拐した犯人達である。
その証拠に、簪と楯無は捕らわれの身になっている――それが、彼等を誘拐犯達である事を物語っていた。
「う、嘘…………そ、そんな」
簪から理由を聞かれた楯無は愕然とした。自分は妹を助ける為に動いた。にも関わらず、自分は更識の者達に騙され、挙げ句の果てには本当の誘拐にもなってしまった上に、何の関係もない自分と同い年か年下かもしれない青年達を巻き込んでしまった。
それらは全て、自分や更識の面々に責任はあるのだ。それを、あの二人が知ってしまったらどうなるのだろう――否、既に知っているに違いない。あの二人が顔に着けてるマスクで、自分達の会話を聴いているだろう。
「ごめんね、お姉ちゃん……本当にごめんなさい……」
簪は涙を浮かべながら、楯無に謝罪の言葉を述べる。しかし、それを聞いた楯無は愕然としたまま、表情を青褪めていた。
「嘘、でしょ? ……そんな」
楯無は目尻に涙を浮かべ瞑目した。すると、そんな姉妹に女性は鞄のチャックを閉じ、勝ち誇った表情で楯無を見下す。
「まあ、貴女は、これで私達は本当の誘拐犯だと言う事に気付いたでしょ?」
女性の言葉に、楯無は目を開け、女性を睨む。女性は楯無に睨まれながらも勝ち誇った表情を崩さない。
「確かに貴女達が簪ちゃんを誘拐した犯人達だって判ったわ……でも、貴女達は何者なのよ!?」
楯無の問いに、女性は答えない。――それは私が話すわ――。刹那、近くから別の女性の声が聞こえた。楯無、鞄を持ってる金髪の女性、楯無を地面に押さえ付けている男性が声がした方を見やる。 その女性は、三人のスーツを着た男達の近くにいた女性だった。その女性は三十代後半で茶色い長い髪に青い瞳。黒の女性用のスーツを纏い、赤いハイヒールを履いている。
「私が、更識の中にいる裏切り者を利用したのよ……更識楯無?」
茶髪の女性は何かを言いながら、楯無の元へと歩く。だが、楯無はその女性を見て「貴女は……!?」と驚きを隠せない。
楯無は、その女性には見覚えがあった。その女性は日本政府の一人であり、汚職まみれの女性議員だった。
それに、更識家はとある人物に頼まれて、その女性議員の汚職に関する証拠を集めてくれと頼まれたのである。
「覚えているようね? そうよ、貴女達が私の事を嗅ぎ回るような事をしたからよ?」
女性議員は表情を険しくしながら、楯無にそう言う
「だからと言って、何で簪ちゃんを巻き込むのよ!?」
楯無は女性議員に怒る。それを聞いた女性議員はムッとする。
「貴女達更識家が私の事を調べようとするからでしょ!? 貴女達が私の事を調べたら、私の政治生命は絶たれ、何もかも失っちゃうからよ!?」
「それは貴女の自業自得じゃない!? 貴女が汚職みたいな事をしなければ私達は貴女の事を調べないわよ!?」
「うるさいわ!! 今の時代は女が偉いのよ、そう言う事なんて目を瞑っていれば良いじゃない!?」
「そんなのは許される事じゃないわ!!」
楯無の言葉に女性議員は「黙りなさい!!」と叫んだ。二人の口論は少し長かったが女性議員の言葉が口論を止める役目を作る。
楯無は少したじろぐも、女性議員は少し狂喜的な笑いを浮かべる。
「今の時代は女が偉いのよ!? 男は女の為に奴隷になるのと、ISと言う世界最強の兵器が有る限り、男は女の言う事を聞く以外何もない!! それに私は汚職をしたのも、議員になれたのも全て女と言う権力を利用した! これで私に逆らう者はいないと悟ったわ!」
女性議員は狂喜的な笑いから一変、怒りの形相へと変え、楯無を睨む。
「それを貴女達が邪魔しなければ……私は、私は――――っ!!」
女性議員は憤怒の叫び声が上げた直後、楯無を指差すと、男達を呼び。
「あんた達!! 私の事を調べようとした更識の、この女を犯してしまいなさい!! この女が犯されるのを、それをあいつらに見せつけるように撮影するのよ!!」
女性議員の言葉に、楯無は瞠目し、簪も瞠目した。しかし、簪の近くにいる三人の男達が楯無の元へと駆け寄る。刹那、楯無の叫び声が木霊する。
「い、嫌――っ!!」
楯無の叫び声は悲鳴に近かった。それも、楯無の近くには四人の男達がいて、楯無は押さえ付けられた男に仰向けにされ、四肢を男達に三人の男達に押さえ付けられ、その内の一人が楯無の身体をマジマジと見つめている。
「止めて、お願い止めて――――ッ!!」
簪の泣きながら懇願の声が木霊する。しかし、それは無駄に等しかった。男達の顔は、これから女性を犯せると言うのか不気味な笑みを浮かべている。それを見た楯無は身体を震わる。このままでは犯されるーー好きでもない男との子供を孕んでしまう、と。
そんなのは嫌だった。しかし、その男は楯無の胸に手を当てようとした。
「嫌――ッ!!!」
楯無は泣きながら叫び声を上げる。助けて、誰か助けて、と。刹那、壁が外から何者かに破壊されるように爆発した。
「何っ!?」
女性議員が叫び、簪や男達が破壊された壁の方を見やる。すると、破壊された壁の向こう側には一人の青年がいた――身体にプレデターの防具を纏い、武器を持っている一夏だった。
「誰よあんた!?」
女性議員が、外にいる一夏に訊ねるが、一夏は顔にケルティックのマスクを着けている。
だが、女性議員や男達は知らなかった――彼は、一夏はケルティックのマスクを着けながらも、彼等の一部始終を聞いていた為に、表情は怒りに満ちている事に……。そして、一夏はこう思っていた。
――てめえら、全員ぶっ殺してやる、と。
自分でも躊躇しましたが何故か、楯無には少し怖い思いをさせてしまいました。そして、一夏、殺っちまえ。