ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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第20話

「そ、そんな……な、何でなの?」

 

 楯無は今、自分に背中を向け、自分の言った事を聞き入れたにも関わらず、それはふりであり、女性議員に止めを刺した一夏に対し、信じられないと言わんばかりの表情を浮かべ、身体を振るわせていた。

 一方、一夏は楯無に背を向けたまま無言で地面に転がっている槍を拾う為に屈み、槍を拾うと同時に槍を縮ませ、背中に携えた後ゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡す。

 近くには女性議員や三人の男達の死体、未だ網に絡まっている男、身体を縄で縛られぶら下がれながら気を失っている簪ーーそして、後ろにいる楯無以外、誰もいなかった。

 しかし、一夏は女性議員や三人の男達を殺した事に躊躇しないは愚か、彼等を殺した事に後悔はしていなかった。

 それは、女性議員は権力を翳し、更には汚職をしている事に反省していない事ーー男達は男達で楯無を犯そうとした事に腹が立つと共に怒りをも感じていた。

 ーーこんな救い様のない者達には死が相応しいーー。一夏は脳内でそう言う結論に辿り着いていた。確かに彼等は救い様のない人間達だが同時に、一夏は既に越えてはならない所を越えてしまったのを意味している。

 それでも、一夏には意味のない事だろうーー近くにいる更識姉妹や世間から見れば違うのだが……。

 

「ねぇ……一夏、君?」

 

 一夏の後ろにいる楯無が恐る恐る一夏に訊ねるも、一夏は女性議員の胸に突き刺さっている二本のリストブレードの刃を引き抜ことして、女性議員の近くで屈む。

「ねぇ、一夏君? 貴方は何で……人を殺した……の?」

 

 楯無は再び一夏に問う。だが、一夏は女性議員の胸に刺っているリストブレードを引き抜く。直後に、女性議員の身体が一瞬だけ動いたが一夏がリストブレードを抜いた直後だったのである。

 女性議員は既に死んでいる為、女性議員は息をしていなく、眼を開けたままだった。それでも、一夏は無言で、左手でリストブレードを右腕にある発射口へと戻している。

 

「ねぇ、一……」

 

 楯無が三度問おとうとした。刹那、悲鳴が聞こえ、一夏と楯無は悲鳴がした方を見やる。網に絡まる形で捕らえられている男がいた。

 男は網に絡まれているだけで悲鳴を上げていたのだ。しかし、男は全身に激痛を感じていたからだ。

 網はとても鋭く、顔や露出している肌や服から網状の傷が出来ているだけでなく、網自体が男の身体にくい込みつつある。

 網が男の人肉に食い込む音や服が破ける音などが微かに聴こえるーーまるで、男がこの世を去るまでのタイムリミットにも思えた。

 ーーな、何なの!? ーー。楯無は驚きのあまりそう言った。しかし、それとは反対に一夏は驚きもせず、リストブレイドを戻す。

 刹那、男の悲鳴が一瞬だけ大きくなり、徐々に小さくなったーー男は死んだのだった。

 男は身体に絡まり肉体に食い込んでくる網が心臓へと達してしまったのだ。それが男の悲鳴の原因でもあり、タイムリミットが過ぎた事を意味していた。

 これには楯無も驚くも、一夏は何もかも解っているのか気にもせず無言で立ち上がり、楯無と向き合う為に身体を翻す。楯無は一夏の行動に気付くが一夏はマスクを着けながらも口を開く。

 

「敵は粗方片付いた……後はあそこに吊るされているアンタの妹を助けるだけだ」

 

 一夏は楯無にそう伝える。楯無は一夏の言葉にビクッと肩を震わせ、俯く。

 

「どうした?」

 

 一夏は楯無の様子に疑問を抱き訊ねるーー楯無は無言で俯いていた。ーーおい? ーー。一夏が再び訊ねるが楯無は顔を上げたーー目にうっすらと涙を浮かべていた。それは、一夏への罪悪感である事を物語っていた。

 ーー何故泣いている? ーー。しかし、楯無の罪悪感を一夏は感じる事もなく、ただ、訊ねている。例え楯無の思いが届いても、彼は聞く耳を持たないーー今の彼には……。

 

「何故泣いてる? それは嬉し涙か?」

「違うわ……私は、私は……っ」

 

 楯無は再び俯くと、一夏に背を向ける。それを見た一夏は首を傾げる。

 

「それよりもアンタの妹さんを……」

 

 一夏は楯無を他所に、簪の事を思い出すとともに簪の方を見上げる。刹那、一夏は近くから自分の名前を呼ぶ意味で叫び声が耳に響き、声がした方を見る。

 その方角は、この倉庫内を出入り出来る扉だった。その扉の近くには止がいたーー手には、この倉庫から逃げ出した金髪の女性がいたーーその女性の片足を掴みながらここへと連れて来たのである。

 それを見た一夏は「止」と言い、止は顔にチョッパーのマスクを着けながら、一夏と楯無の元へと歩み寄るーー金髪の女性を引き摺りながらである。

 

「一夏ーー勇人には連絡したよ~~っ」

 

 止は一夏の前にまで来ると、そう言う。

 

「そうか……で、勇人は何て?」

「勇人は未だ秋葉原にいるけど、翌日の渋谷のハチ公広場で待ってるって」

「そうか……それよりも止、その女は生きてんのか?」

 

 一夏は、止の近くにいて、止に片足を掴まれている女性を指差す。

 

「嫌、生きてるよ? 最も、俺を見て喚いていたから黙らす為に顔パンしたけど?」

「顔パンってお前……」

 

 止の言葉に一夏は苦笑いする。そんな一夏に止は辺りを見渡す。

 

「それよりも一夏、近くにいる奴ら、これ一夏が殺ったの?」

 

 止は、自分達の近くにいる女性議員や男達の死体を見渡しながら、一夏に訊ねる。

 

「ああ、俺が殺ったよ……」

 

 一夏は直ぐに答えた。決して疚しい事や罪悪感を感じている訳ではなかった。

 

「そっか、それよりもコイツはどうする? 一応殺しておく?」

 

 一夏の返事を聞いた止は軽く何度も頷くと、今度は自分が掴んでいる金髪の女性の処理を訊ねる。それを聞いた一夏は「そうだな……」と考え、一方で楯無は止の言葉に肩を震わせ、直後に振り返った。

 ーー駄目っ!! ーー。楯無は叫んだ。それを聞いた一夏と止は無言で楯無を見やる。楯無は涙を流していた。

 

「駄目よ……これ以上、自分達の手を汚すような事はしないで……!」

 

 楯無は泣きながら、一夏と止に言った。

 

「何故だ? こんな奴等は殺した方が良いだろ?」

 

 しかし、それも一夏には届く筈もなかった、楯無の強い思いも一夏から見れば何を言ってるのかも解らないだろう。

 

「良くないわよ……そんな事をしても貴方達の為にもならないわよ……」

「それはアンタの思ってる事だ。コイツは誘拐犯の一味の一人ーーそれに、誘拐は殺人と同じように最も許されない事だ、こんな奴には堀の中にいるよりも、この場で処刑した方が早い」

 

 一夏はそう言いながらリストブレードを展開し、止を見て頷く。止は一夏が頷いたのを見て頷き返すと、止は金髪の女性を一夏の前に差し出す形で地面に叩き付け、一夏はリストブレイドを金髪の女性へと向ける。

 

「駄目っ!!」

 

 一夏の行動に楯無は叫ぶ。刹那、楯無は近くに落ちてる拳銃を拾い、一夏へと向ける。

 

「お、おい!? 何をしてんだよ!?」

 

 楯無の行動に止は叫び、一夏は楯無を見る。楯無は一夏に拳銃を向けていた。単に拳銃を向けていた訳ではないーーこれ以上、一夏の為にも一夏を止める為の行動でもあった。

 

「何をしている?」

 

 一夏は楯無の行動に驚きもせず、楯無に訊ねた。一方、楯無は拳銃を一夏に向けながら身体を震わせていた。

 ーー彼を止める為には、こうするしかないのかーー楯無は心の中ではそう思っていた。

 楯無は金髪の女性を助けたい訳でもない、簪を助ける為の行動でもない。楯無は一夏を止めたいが為の行動でもあった。

 勿論、正しい判断とは言えないだろうが今の楯無にはそれしか出来ない。

 

「私は貴方を撃ちたくはない……だから、その剣のような刃物を下ろして」

 

 楯無は身体を震わすながら、一夏に言った。

 

「…………」

「聞こえないの? 貴方がそれを下ろせば私も拳銃を下ろすわ! だから、だから……」

 

 一夏は無言であるが、楯無は一夏の無言を聞き入れていないと思い言葉を続ける。

 

「撃てよ」

「えっ?」

 

 刹那、一夏は不意に呟き、それを聞いた楯無は惚けるが、一夏は言葉を続けた。

 

「撃てよ、俺を止めたいのなら、俺を撃ってみろ」

「な、何を言ってるのよ!? 本気なの!?」

 

 楯無は一夏の行動に戸惑いを隠せない。そうだろう、一夏は自分から楯無に撃たれるのを望んでいた。

 これには楯無は驚くも、一夏は両手を横に広げる。

 

「撃てよ……俺を止めたいのなら、俺の身体に風穴を開けてみろよ」

「で、でもそんな事をしたら貴方が死ぬのかもしれないのよ!?」

「そうだよ一夏!? 何もそんな事をしなくても良いだろ!?」

 

 止も一夏の事を心配する。そんな止に一夏は止を見る。

 

「大丈夫だ、俺を信じろ」

 

 一夏はそう言うと、楯無と向き合う。

 

「撃てよ、撃って俺を止めてみろよ?」

「で、でも……私は……」

 

 楯無は未だ戸惑いを隠せない。

 

「撃てよ、撃ってみろよ……撃てぇぇーーっ!!」

 

 一夏の怒りの叫び声を上げた。これを聞いた楯無は「ヒッ!?」と再び肩を竦める。刹那、一夏と楯無の間に一発の銃声が轟いた……。




 次回、IS学園入学編(前編)に突入します。(ケルティックとスカーの戦いは近いうちに投稿します)
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