ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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第三章、IS学園入学(前編)
第21話


「あ、あぁっ……」

「い、一、夏?」

 

 一発の銃声が辺りに響いた後、楯無と止は微かに呟く。それは直ぐに消え、楯無が手に持ってる拳銃の銃口から硝煙が辺りに微かに漂っていて、楯無は未だ震えていた。

 それは、楯無が一夏を撃ったからだった。勿論、楯無は一夏を撃つつもりはなかった。しかし、一夏は死んではいない、一夏は胸を撃たれたがプレデター特有の防具のおかげで無傷かつ、楯無の拳銃から放たれた銃弾は一夏の防具の一つである胸当てに直後に跳ね返され、宙に舞い、地面に転がり落ちた。

 それは一夏に致命傷を与える事もなく、それはプレデターの防具が硬いのと拳銃程度の銃弾の攻撃ならどうって事になる事をも物語っていた。

 一方、一夏は無言で楯無を見据えたままリストブレイドを戻す。一夏は怒ってはいない訳ではないが一夏は楯無の行動に怯えてはいなかった。

 何故なら、一夏自身が“楯無自身が自分に怯え拳銃の引き金を引いた”。一夏から見ればそう思い、一夏自身が撃つのを躊躇している楯無に怒っていたのだ。

 それに、例え楯無が撃っても撃たなくても、一夏は何もしないつもりだった。

 

「満足したか?」

 

 一夏は楯無に訊ねると、楯無は肩を竦める。

 

「まぁ、俺には関係ないけど、お前がこんな物を持つのは良くないぜ」

 

 一夏は楯無に近付き、楯無が持ってる拳銃を取り上げ、拳銃を放り捨てた。拳銃の落ちる音が辺りに響くが一夏は気にしなかった。 一方、楯無は何も言わず俯く。楯無は顔を青くしていたが俯いていた為に一夏と止に自分がどんな表情をしているのかは判らないだろう。

 

「まあ、お前が何を言おうが……ちっ」

 

 一夏は舌打ちすると、止を見る。

 

「止、先にあそこにぶら下がっている女の子を助けるぞ」

 

 一夏は止を見るや否やそう伝え、身体を縄で縛られながら倉庫内で宙にぶら下がっている簪を首を振る形で指した。

 それを見た止は簪を見ると、「判った」と言った後に頷く。

 

「俺が、このレイザーディスクであの娘の身体をぶら下げている縄を切るから、お前はその真下であの娘を受け止めてくれ」

 

 一夏はそう言うと腰に携えている、丸くしている手裏剣、レイザーディスクを取り出し、ニ、三回軽く振った。

 レイザーディスクから五本の鋭利な刃物が飛び出る。一本一本が鋭いだけでなく銀色かつ妖しい輝きを放っている。

 しかし、血が着いていた。それは最近と言うよりも数分前に着いた物と言っても良いだろう。

 

「判ったぜ、じゃ俺はあの女の子の真下に行くから」

 

 止はそう言うと、簪の真下へと走り、簪の真下にまでたどり着く。ーー良いぜーー止が言った。それを聞いた一夏は視線を楯無の方へと向ける。

 楯無は未だ俯いており、一夏が声を掛けても何も返事はしないだろう。一夏は楯無を見て溜め息を吐くと、楯無を通り過ぎ、レイザーディスクを構える。

 狙いは、簪の身体をぶら下げている縄であり、一夏は狙いを定めるとレイザーディスクを投げる。刹那、縄の切れる音が微かに響く。

 同時に、レイザーディスクはブーメランのように一夏の手元へと戻り、一夏は軽く受け止め、簪は地面へと落ちるーーそして、目に掛けていた眼鏡が擦れ、それも一緒に落っこちる。

 

「あらよっと」

 

 そんな簪を止は軽く受け止めた。しかし、止の受け止め方は誰か見ても横抱きーーお姫様抱っこに見えた。それでも止は何も言わず、簪を見る。

 簪は気を失っているが眼鏡を掛けていない。止は眼鏡を受け止めるつもりはなかった為、眼鏡は簪よりも先に地面に落ち、割れた。

 その為、簪の素の顔を眺める事は出来た。

 

「……可愛いな」

 

 そんな簪に、止は思わず不意に呟いてしまう。別に止が簪に気がある訳ではない、止自身が不意に呟いただけである。

 

「取り敢えず、この娘の身体を縛っている縄を切るか」

 

 止は簪を横抱きしながら屈むと、簪をそっと地面に寝かせ、両腕に装備している武器、シミターブレイドを展開せずに、簪の身体を縛っている縄を切った。

 縄が切られた直後、簪は自由になるも未だ気を失っている為、自分が未だ縄で身体を縛られているか縛られていないかは気付いていない。

 

「おい、あんたの妹を助けたぞ?」

 

 その間に、一夏はレイザーディスクを軽く振って丸くし、腰に戻す形で携え、その後に楯無に訊ねた。楯無は未だ俯いていたが一夏が訊ねている事に気が付き、顔を上げ一夏を見る。

 楯無は未だ顔を青くしていた。一夏に罪悪感を感じているのと、一夏に何て謝罪すれば良いのかが判らないでいた。

 

「どうした、顔が青いぞ?」

 

 一夏は気にもせずに楯無に訊ねるが楯無は無言で一夏から目を逸らす。

 

「え、ええ……ありがとう……っ」

 

 楯無は下唇を噛み、両手を拳に変え力を入れる。

 

「どうしたんだ? 嬉しくないのか?」

「う、嬉しいわ……嬉しいに決まってるじゃ、ない……っ」

 

 一夏は再び訊ねた後に、楯無は答えたが身体は震わせ、再び泣き始める。やはり、楯無は一夏とは眼を合わせる事は出来ないでいた。

 この誘拐は家族による狂言誘拐が本当の誘拐になった事。その事で絶望した自分に追い撃ちを掛けるように自分が男達に犯されそうになった際に、彼、一夏が自分を助けてくれたが一人を除いて誘拐犯達全員を殺してしまった事。

 それだけでなく、自分は一夏を止めようとして拳銃を向けたが一夏に言葉で促され、挙げ句の果てには一夏に向けて発泡してしまった事に罪悪感を感じていた。

 それらは彼等を、一夏と止に簪を助ける為に協力をさせてしまった自分や身内が原因であり、何の罪もない彼等の人生に大きな影響を与えてしまったのだ。

 楯無から見れば原因にある自分自身をやるせなく思っていたーーそれも、涙を流す程であった。そんな楯無に一夏は楯無の肩に手を置こうとした。

 刹那、楯無は一夏を見るや否や、一夏に抱き着く。

 

「お、おい!?」

 

 これには流石の一夏も楯無の行動に驚きを隠せない。

 そんな一夏を他所に楯無は顔を一夏の胸に埋めながら嗚咽を上げる。それは後悔と罪悪感の涙だった。

 楯無はそれを全て吐き出す形で、それを一夏に謝罪と言う形で一夏に抱き着いたのである。

 例えそれが一夏のした事が消える訳ではないーーそれでも、楯無は一夏に謝りたかったのである。

 

「お、おい離れろよ!?」

 

 一夏は楯無の行動に戸惑いながらも楯無に言う。一方、楯無は一夏の胸に顔を埋めたまま泣き続けていた。

 勿論、一夏は服の胸部分に濡れた感触を感じてはいなかった。防具を着けていた為に、それを感じる事はなかった。

 しかし、一夏は楯無が泣いている事には気付いていたーーそれも一夏には関係なかった。

 ーーどうしたの、その人? ーー。後ろにいた止が不意に声を掛ける。止は一夏とは違い、簪を抱き起こしながら疑問を抱くような表情を浮かべている。

「何でもねぇよ、でも、この女が突然抱き着いてきたから困ってるよ」

 

 一夏は振り返らずにそう言いながら、楯無を引き離そうと身体を動かす。楯無は一向に離れなかった。

 

「おい離れろよ? 動きにくいだろうが……!」

 

 一夏は少し怒っているのかそう言う口調へと変わりつつあった。そんな一夏に楯無は顔を上げたーー未だ眼にうっすらと涙を流していた。

 

「ごめんなさい……」

 

 楯無は微かながらに呟く。それを聞いた一夏は「何っ?」と首を傾げる。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……っ」

 

 楯無はそう言いながら再び俯く。それは楯無がやっと見つけた謝罪の言葉だったが、一夏は何も言わなかった。

 それだけではない、一夏はケルティックのマスクを着けたままであり彼がどんな表情をしているのかは楯無には判らなかった。

 

「ごめんなさい……あなたを……ごめんなさいっ」

 

 楯無は謝罪の言葉を述べる。刹那、一夏は何かに気付き、楯無に言った。

 

 ーー済まないが、ここでお別れだーー。

 一夏はそう言った。それを聞いた楯無は眼を見開き一夏を見ながら「えっ?」と驚く。刹那、楯無は背中に一瞬だけ激痛を感じ、そのまま目の前が真っ暗になり意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後、楯無は眼を覚ました。目の前には夜空が広がり、海の音が聴こえ、近くには自分の両親や従者である本音姉妹がいた。

 

「っ!?」

 

 両親や本音姉妹は楯無が気が付いた事に涙を浮かべ何かを言っていたが、楯無は眼を見開き起き上がる。近くには一夏や止はいない。両親や本音姉妹は居るが隣には簪も居て、彼女は未だ気を失っている。

 そして、此処は港であったが近くには数台のパトカーや自分の家の物であろうリムジンが停まっていた。

 そして、楯無は倉庫を見るも、男性の悲鳴が聴こえた。その理由は、倉庫内には、女性議員や金髪の女性、網に絡まれた男を除いた男達が全身の生皮を剥がされて、逆さまに吊るされていて、それを見た男性が悲鳴を上げたからであった。

 そして、一夏と止は港から姿を消した。それに彼等は、黒い鞄の中に入っていた一千万の内の百万円と一緒に……。

 




 次回は、一夏と止、勇人と再会。そして、二人が何故消えたのかが明かされます。
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