ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
翌日、ここは昼間の渋谷のハチ公広場。そこは駅の前であり、その先には大きな交差点があり、そして沢山の人が行き交っていた。
勿論、それらは全てとは限らなかった。中には待ち合わせをしているのかベンチに座ったり、携帯電話とかで時間を潰したりしている人や、どっかのテレビ局の者達なのかアナウンサーやカメラマン等の数名のスタッフがいた。
それだけではない、中には外国人もいて、彼等も又、渋谷と言う街を観光目的で来たのか仕事に来たのかは判らないが渋谷の街を歩いていた。
そんなハチ公広場には、一人の全身が黒である服やズボンが特徴的な青年がベンチに腰掛けているが、その表情は何処か険しい。
大人びた顔立ちであるものの金色の髪が風で靡き、目の前だけを見据える黒い瞳には何かを思うように宿っている。
ーーもう、そろそろ来る頃か? ーー。青年は不意に呟き辺りを窺う。それは青年が誰かを待ち合わせをしていたからだった。それは誰かは判らないが青年には判る人であり、青年からすれば、唯一無二の親友達である。
刹那、そんな青年の近くから声が聞こえ、青年は振り返ると共に立ち上がったが青年は瞠目していた。
そこにいたのは青年をよく知るであろう二人の青年達が青年の方へと歩み寄り、青年の近くにまで来ると立ち止まる。片方は青年と再会を喜んでいるかのように表情を明るくし、もう片方はほくそ笑んでいた。
「一夏、止、何だよその格好は?」
青年は彼等の名を言うと共に彼等が着ている服を指差しながら言葉を続ける。
そう、彼等は一夏と止であり、彼等の名を言った青年は一夏と止の仲間であり、秋葉原でとある目的の為に一人別行動をしていた勇人だった。
勇人は一夏と止の着ている服が違う事に気付く。何故なら、勇人は一夏と止が着ている服は良く解っていた。
二人は自分と同じ全身が黒い服を着ていたが彼等の着ている服が違う事に少し呆気にとられていた。
止は上が黄色のチェック柄が特徴的な長袖のシャツを着て、その下には青いジーパンを穿き、白のスニーカーに近い靴を履いている。
一夏の方は上が白の長袖のシャツに黒のベスト、下には肌色のジーパンを穿き、下には黒のスニーカーに近い靴を履いていた。
そんな勇人の指摘に、一夏が答えるかのように口を開いた。
「それは後で話すーーそれよりもこれからの事を話そう……勇人、お前に関係する事だ」
「俺にか?」
一夏の言葉に勇人は表情を険しくする。しかし、止は何故か吹き出しそうになるのを堪えていた。
二十分後、ここはとあるデパートの五階。そこは衣服売り場だったが近くには、ある物が置かれており、女性物が大半を占めており、男性服は少ししかなかった。勿論、そこにも人はいるが女性が多く男性は少ない。
そんな衣服売り場には一夏達がいた。彼等は、とある人物の服を買いに来たからである。
「ったく、やる事ってのは俺の着る服を買う為だったのか?」
勇人は呆れ半分に言いながら男性の上着コーナーを一つ一つ確認していた。勿論、近くにいる一夏と止に言ったのだ。
「別に良いだろ? 俺達だけいい思いをするのはお前だって嫌だろ?」
一夏は勇人に言うも勇人は瞑目する。
「まぁ、それもそうだが、俺は別に服が欲しい訳ではない」
「そう言いながら、勇人、服を選んでんじゃん?」
止は勇人の行動を指摘すると、勇人は「ウグッ!?」と図星した。
「へへっ、図星でいやんの。それよりも一夏」
「何だ?」
一夏は止を見ると、止はある場所を指差す。
「あれ見てきて良い?」
止がある場所を指差しながら、一夏に訪ね、一夏は止が指差した場所を見る。そして、一夏は驚愕した。
その場所は、とある物が置かれている。そのとある物はISだった。それも打鉄が二つ、隣同士に置かれている。
「あ……っ」
「一夏?」
一夏は下唇を噛む。そんな一夏を見た止は何も解らず首を傾げるが、一夏は慌てて止を見ると笑った。
「嫌、何もない。見てきて良いぜ?」
「ありがとう」
止はそう言った後、ISが置かれた場所へと走る。そんな止を見た一夏は哀しい目をしていたが一瞬だけ表情を険しくする。
「……一夏、憎いか?」
そんな一夏を、上着を選んでいた勇人が声を掛ける。
「ああ」
一夏はそう言いながら頷く。
「そうか、それよりも一夏、教えてくれ、何故、お前と止が服が違うのかを」
勇人はそう言いながら上着を選ぶ。そして、一夏は表情を険しくしながらも、勇人にその経緯を話した。
「成る程な、それでお前や止は、その楯無と言う女の妹を助ける為、そしてお前は楯無と言う女の家族による誘拐が本物の誘拐になったよりも、楯無や簪と言う女を助けるよりも、誘拐犯達に怒りを感じて殺戮を起こした、と?」
勇人は自分が着る服を選びながら、一夏が自ら語った事に何も動じず、驚きもせずに耳を傾けていた。
実は一夏と止は昨日、簪を助けた後、一夏は自身の判断で楯無を手刀で気を失わせ、その場に寝かせると、気を失っている簪の近くにいる止に、近くに放り捨てられている鞄の中に入っている一千万の内の百万を盗れと命令した。
これには止も疑問を浮かべ首を傾げたが、一夏は『いざと言う時の為だ』と言った後、男の身体を包んでいるように絡まれている網を回収する為に、網に絡まれている男の方へと歩く。
一方、止も一夏の言い分を納得し何度も頷くと、黒い鞄の方へと歩き、一千万の内の百万だけを取り出す。
その間に、一夏は網を回収したと同時に『その二人には此処にいさせるのは悪い、港に運ぼう』と二度目の命令をし、止は簪を、一夏は楯無を運び、倉庫を出ると港に隣同士に寝かせ、一夏は楯無の携帯で楯無と簪の家族に連絡した後、そのまま立ち去ったのである。
勿論、一夏と止は金髪の女性に手を出していない。何故なら、一夏は楯無に抱き着かれている際にある事ーーある人物の通信が入ったのを聴き、後の事を彼に任せる為に、止と共に楯無と簪を連れて倉庫を出たのである。
そして、その人物は三人の男達の生皮を剥ぎ、逆さにした後にその場を去った。勿論、その者がやった事を、一夏は連絡して知ったのだ。
「あの後、彼に、エンフォーサーに後の事を任せ、俺達は警察に見付からないよう野宿し、ここに来る前に服を調達した」
「成る程ね、それでお前達の服が違うのは納得出来た」
「だろ? それよりもお前が解らねぇ事があるんだ」
「エンフォーサー、だろ?」
勇人は服を選びながら、一夏が疑問に思った事を答え、それを聞いた一夏は頷く。
エンフォーサー、彼はエルダーに命令され、一夏、勇人、止の三人を地球に送り返した人物であり、横浜の港の倉庫にいた三人の後始末をしたプレデター。それに、一夏が楯無や止が横浜で見ていたプレデターは彼である
しかし、一夏には解らない事があった。エンフォーサーは何しに来たのかを……勿論、それはエルダーの命令でもあった。
「俺には解らねぇんだ、エンフォーサーが何しに来たのか、エルダーは何の為に彼を地球へと赴かせたのかを……」
一夏は俯く。すると、勇人はある服を取り出し、それを眺める。その服は黒の革製の上着であり、背中には下顎のない髑髏が刻まれている。ーーこれで良いかーー。勇人は不意に呟き、一夏は顔を上げ、笑う。
「それで良いのか?」
「ああ、俺にはこういう服の方が良いんだ……」
「お前は何を着ても似合うかも知れないが、俺から見れば少し派手過ぎねぇか?」
一夏は笑いながら指摘すると、勇人は微笑む。
「別に良いだろ? お前みたいに服なんて着ればそれで良いみたいに適当に選んでいる奴には言われたくないな」
「それを言うなよ? 俺はオシャレは元より、服は着れば何でも良いんだよ」
「フッ……だが、それもいいかも知れねぇな? でも、恋人が出来ればオシャレは必要かも知れねぇぜ?」
勇人はそう言った後、一夏は再び微笑む。
「居ればの話だろ? それに俺達の事を好きになる奴なんて、そう簡単に居るか?」
「居るかも知れねぇぜ、案外?」
勇人は上着を手にすると、今度はズボンコーナーの方へと歩く。勿論、一夏も一緒だが二人の会話は何処か平和的かつ普通の青春を謳歌したい男子の話にも近かった。
だが、それは一夏や勇人にとって一時の復讐を和らげる物に過ぎず、彼等が復讐を果たしたい相手の前では無理に等しい。
勿論、復讐は何も変わらないーーそれでも、彼等にはほんの一瞬でもいい、一瞬でも彼等の心の傷を癒す時間があればそれで言いのかもしれない。
刹那、辺りが一瞬だけ光に包まれた。それはほんの一瞬だっだが、一夏と勇人、辺りにいた人達は一瞬だけの光に驚いた物の、それが消えた後に光がした方を見やり、そして驚愕した。
そこには、ISが、女性にしか扱えない筈のIS、打鉄を纏っている男がいた。その人物は止だった。
「と、止!?」
一夏は驚き、勇人は瞠目していたが、止は「アリャッ?」と未だ現実を見ないでいた。