ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
「と、止!? お、お前!?」
一夏と勇人は困惑しながら、IS・打鉄を纏っている止の方へと駆け寄る。一方、止は何も解らないでいたが徐々に自分の置かれている立場に気付き、冷や汗を流す。
何故なら、止はISを動かすつもり等はなかった。それもその筈、止は単にIS、打鉄を興味本意で眺めていたがそれに飽きたらず、不意に触っていしまい、それが原因で今に至ってしまう。
その間に、一夏と勇人は止の元へと駆け寄る。
「い、一夏、勇人、どうしょう! 俺IS動かしちゃった!」
「そんなのはどうでも良いんだよ!? それよりも早く降りろよ!?」
慌てる止をよそに、一夏は止に命令するが止は自分の身体に纏われているISを見る。
「そんな事言われても俺、どうやって解除すれば良いのか解んないんだよ!?」
止の言葉に一夏は「はあっ!?」と声を上げる。そうだろう、止はISを動かす以前に、ISの知識や稼働時間や使用方法は皆無に等しい。
その為、ISから降りろと言われても、素人同然の止には無理だろう。それだけでなく、辺りにいる人達も騒がしい。
女性達は、本来女性にしか扱えない筈のISを男が動かした事に驚きを隠せず。男性達は男性達で、自分達と同性である男ーーそれも二十にも満たない青年がISを動かした事に驚きを隠せない。
しかし、周りが驚いていながらも、一夏と止は別の意味で慌てている。
「…………」
辺りが騒がしい中、勇人は表情は驚きその物だったが内心何かを感じていた。それは嫌な予感であり、勇人はそう思いながらも下唇を噛むと、もう一機の打鉄を見据える。
その間に、一夏は止を助けようとして、止の身体に纏われているISに触れた。刹那、辺りが再び光に包まれ、辺りにいた人達は光に怯む。
それは一瞬、本の一瞬だったが同時に誰かが転がり落ちた。止だった。止は「アテッ!」と声を上げるが光が消えた後には、一夏はいなかった。何故なら、今度は一夏がISを纏っていたのだ。
「い、一夏……!?」
勇人は別の意味で驚き、止は起きやがるや否やISを纏っている一夏を見て驚きを隠せない。
それだけではない。近くにいた人達は更なる驚愕の事実をしったかのように慌てている。
勿論、男女共に二人目のISを動かした男が現れた事に慌てている為、共通の意味で驚いている。
「うっ……!? ……っ」
しかし、当の本人である一夏は苦虫を噛み締めたかのような表情を浮かべている。何故なら、彼はISは動かすつもりは無かった。
なのに、何故か彼はISを動かしてしまったのだ。何故、自分は動かす事が出来たのだろうか? 嫌、今はそんな悠長な事を考えている場合じゃない。一夏は突然の事に戸惑いつつもISから降りる。
すると、一夏達の少し離れた場所から、一夏達の元へと駆け寄る者がいた。それは五人だが年は三十代で全員男であり、黒のスーツが特徴的な男達だった。
彼等は全員驚いていたが一人が叫んだ。
「君達、我々と一緒に来てくれ!!」
男はそう叫ぶが、一夏は彼等を見るや否や、止と勇人に対し叫ぶ。ーー此処を離れるぞ!! ーー。一夏はそう言うと、突然走り出す。
止は一夏の突然の行動に驚きつつも一夏の後を追い、勇人は冷静を装いながらも上着を持ったまま、一夏の後を追い掛ける。
「待ってくれ!! 我々と来てくれ!!」
五人の内の一人が叫ぶが一夏達は止まる事はない。
「あっ! そうだ!?」
すると、一夏は何か思い出したのか近くのレジの前に止まる。レジの前に店員はいたが女性だった。
だが、一夏が止まった事により止や勇人も止まるが止は「どうしたの一夏!?」と言うも、一夏はポケットからニ万を取り出し、レジの上に置く。
「精算する暇はありませんがこれで勇人の持ってる上着を下さい!!」
一夏はそう言うと、再び走り、止や勇人も走る。一方、女性店員は突然の事で戸惑うがレジの前を五人の男達が走って通り過ぎた。
一夏達は今、男達に追い掛けられていた。途中、他の人達とぶつかりながらも何とか男達の視界から消えようと走り続ける。因みに一夏達は、このデパートから出る為に階段を駆け降りている。
「ねぇ、何で逃げるの!?」
一夏達は逃げる中、止が一夏に言う。
「そんなのは当たり前だろ!? 奴等に捕まれば何をされるのかは解らねぇだろうが!?」
一夏は止に対して叫んだ。そうだろう、一夏や止は男でありながらISを動かした。それは紛れもない事実であり、目立つかつ危険をも意味している。言わば、男達の希望であり、女達から見れば危惧の存在。
それに、捕まれば捕まればで身内に連絡される危険もあり、憎悪の対象がどんなに離れても、すっ飛んで来る危険もある。
同時に、自分達はプレデターの防具や武器を持っている。それはプレデターの技術があり、奴等に捕まれば技術を奪われる危険もあり、世間に知られる危険もあるからだ。
一夏は捕まってそのどちらも選びたくもない。身内であり憎悪の対象に逢うよりも、死を選ぶ。プレデターの技術を盗まれるよりも、プレデター達への恩義の為にプレデター達の習わしにより自爆と言う形で死を選ぶだろう。
話を戻そう。一夏達は階段を降り一階にまで来ると、デパートを出入り出来る玄関の方まで走り、玄関を出た。
辺りは沢山の人がいたが、近くには大きな交差点はないが車が走れる交差点はあり、車が何台も走っている。しかし、そんな悠長な事を思っている暇もなく、一夏達はその場から離れるように走り出す。その数分後にデパートから男達が出てきたが、彼等は一夏達を探そうとするも、一夏達を見失ってしまったのである。
その理由は、一夏達がマラソンランナー並かつそれ以上のスピードで彼等を撒いたからである。
そうなったのも、彼等がケルティック、スカー、チョッパーと共に未知の惑星で三年間修行し、そこは過酷な環境であり危険な生物は沢山いたが三人は人間以上の体力と肺活量、更には瞬発力をも得たのである。
故に、彼等は死地を潜り抜けただけでなく、熊やワニよりも強い獰猛な生物を相手にし喰らってきたのである。
彼等はとても強く、そして絆も固い。その為、肺活量が違う男達からみれば相手にもならないのだ。男達は辺りを捜すも、一夏達は既にその場からいないのだった。
「ふぅ……ここまでこれば何とかなるかもな」
一方、渋谷からニキロ離れた街の人気の無い路地裏。そこには一夏、勇人、止の三人がいた。
彼等は汗を流し、息をしているものの、疲れの色は見せていない。しかし、三人の表情はそれぞれ違う。
勇人は無表情であるものの、一夏と止がISを動かす事が出来たのを内心驚いた(勿論、勇人自身もISを動かせる事を知らないのと、いつの間にか上着を羽織っている)。
止は止で嬉しさと驚きが混じったような表情を浮かべていた。
「くそっ!!」
そして、一夏は憤怒の形相で近くの壁を殴る。そんな一夏の行動に勇人と止は一夏を見やるが一夏は表情を崩してはいない。
「くそが……っ」
一夏は再び呟くも悲しそうに俯く。これから大変な事になった。それは一夏にとって最悪な事を想定させる事をも予感させている。
一つ目は自分と止がISを起動させた事。それは世界にとって、自分達は注目を集める事や命を狙われる事をも意味している。
二つ目は身内に逢う危険がある事だが、それは一夏には思い出したくもない物だろう。
「一夏、これからどうする?」
そんな一夏に勇人は声を掛ける。勇人は一夏や止とは違い冷静だったが内心、一夏を心配していた。
すると、一夏は「っ!?」と言葉を詰まらせるが顔を上げ、勇人と止を交互に見る。止は首を傾げ、勇人は鋭い視線を向けている。
「そうだなぁ……嫌、今はない、少しの間ここにいて、その後でプレデターの能力を使って隠れよう」
一夏はそう言いながらも再び俯いた。しかし、一夏は弱気になっていた。彼自身がこれからどうすれば良いのかが判らないのと、自分と止がISが動かしたのを周りが見ているのと、世間がどう動くのかを気にしていた。
勿論、それは自分達には逃げ場がない事をも意味していた。そして、一夏達はその場に少しだけいたが、彼等がISを動かしたと言う事実を世間が知るのも時間の問題だった。
次回、とある人物が一夏と逢い、そして涙の再会をします。余談ですが、止がISを動かしたのは止が興味本位でISを触ろうとした設定にしました。理由は一夏がISに触れさせようとする為です。