ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
世界は今、世界中にいる人々に衝撃が走っていた。それは日本で、女性にしか扱う事が出来ないISを、男でありながらも動かしたと言う驚愕の事実が日本を通じて、全世界に伝えられたのだ。
勿論、この世の中では、今の時代ではそれは男性達にとっては希望であり、女性達にとっては危惧である。
何故なら、今の時代はISと言う世界最強の兵器が全世界にあり、そのISは女性にしか扱う事しか出来ない事から、女性達の間では自分達女性が偉いと言う、権力を振り翳すような女性達がいて、それが後を絶たない。 男性達は男性達で女性達に逆らえず、挙げ句の果てにはなにもしていないのに冤罪で辞職に追い込まれる事も珍しくはない。
その為、今はISがあるせいで女尊男卑と言う風潮に染まっている。そして、それを打開出来るのがISを動かしたと言う二人の青年が鍵であるのだ。しかし、その二人は今いないーー彼等はISを起動した後に逃げ、姿を消した。
夜の六時半。ここ、渋谷は今、大混乱に陥っていた。街の至る所では警官達が辺りをパトロールし、普通の道路や高速道路では検問所が幾つも設けられ、上空にはヘリコプターが何機も飛んでいる。
その光景は異様その物だが違う。渋谷に凶悪な逃亡犯が潜伏している訳ではない。警官達は上層部からの命令でISを動かしたと言う青年達を捜している。
上層部と言っても政府も関係し、ISが出来た事で設立されたIS委員会も関係している。
言わば、この渋谷での警察による大捜査は国家を揺るがす物として有名になるだろう。
そんな渋谷の街中を、とある七階建てビルの七階から見ている三人の青年達がいた。身体にプレデターの防具を纏い、顔に各々デザインが違うマスクを着けている一夏、勇人、止の三人であり、彼等は上空を飛んでいるヘリコプターに見付からないように隠れている。
因みに、そのビルは会社だが、休みなのか誰もいない。周りにはパソコンが置かれているデスクが幾つも置かれており、来客用のソファーも設けられている。
「わおっ! 何処もかしこも警官だらけじゃん!」
止は窓から街の異様な光景を眺めていたが興奮と驚愕を隠しきれないでいた。そんな止を、近くにいた一夏と勇人は何もせず、各々違う事をしていた。
勇人は立ったまま腕を組みながら何かを考えているが顔にスカーのマスクを着けている為、どんな表情をしているかは判らない。一夏は一夏で壁に凭れ掛かりながら槍を大事そうに抱きつつ座っている。
しかし、勇人は兎も角、一夏はケルティックのマスクを着けているが表情は怒りに満ちていながらも何処か寂しそうだった。
そうだろう。一夏達は今、危機的状況に立たされている。それは警察が捜しているのは自分達であり、上層部からの命令でありながらも血眼になって捜している。
それは一夏達が指名手配犯かつ容疑者である事をも意味している。動けば捕まる上、隠れていても何れは見つかってしまう。
言わば、一夏達は今、渋谷と言う街で動物のように檻の中にいる生き物の立場に等しい。
例え、あの警察の包囲から脱出しても、日本は愚か、世界中から逃げる道は何処にもない。それに今頃、一夏達は知っているか知らないかは判らないが、テレビでは男がISを動かしたと言うニュースがバラエティーを他所に緊急速報として流れ、センセーショナルに語られているのだ。
そして、一夏達が逃げられる場所は、帰る場所は何処にもない。
「くそっ……どうすれば良いんだ?」
一夏はそう呟きながら槍を持っている手に力を入れる。
「それは解らねぇな~~でも俺も何も浮かばないみたい」
一夏の言葉に、止は答えるようにそう言いながら窓に背を向け、そのまま座る。
「それよりも止、お前は何故、ISを動かす事が出来た? それにお前のせいで俺達は警察に追われる身になったんだろうが?」
そんな止に、一夏は顔を上げ止を見るも、止は首を傾げる。
「そんなの俺には知らねぇよーーそれに昼間も言ったじゃん? 俺は興味本意でISを触っただけだって」
止は首を傾げながら言った。勿論、この話は一夏が昼間に止に同じような事を言ったが答えは同じである。彼は、止は単純にISを触りたかっただけであり、ISを動かしたまでは想定していなかった。
仮に動かしたとしても、彼は最初から自分はISを動かせると言う事を知らないし、人間誰しも未来の事を予知出来る訳ではない。
話を戻そう、一夏に訊ねられた止は答えるも、今度は止が一夏を指差しながら口を開く。
「それに一夏だって何でISを動かせたのさ? 俺がそこが解らないよ」
止の言葉に一夏は何も言い返せず俯く。
「何で動かせたんだろうな……」
一夏は不意に呟いた。一夏は別にISを動かした訳ではない。だが、今はそれどころではない。
今は、この状況をどうにかしなければならない。ここを出るとしても街は警官だらけであり、何れは捕まる。出なくても、何れは見つかる。
それに、彼等をプレデターのやり方で殺す事も可能だが相手は警官であり、悪を捕まえ、正義を貫く者達。警官だれしも正義ではないが彼等には怨みはない。
一夏はどうすれば良いのかが解らず、言葉を詰まらせる。そんな一夏に止は両手を頭の後ろに当て、何も言わなくなる。
「……!?」
刹那、三人は近くに気配を感じ、視線をとある方角へと向ける。そこは、この建物内を出入り出来る扉だった。
「誰かが来るみたいだな」
勇人が不意に呟くと、一夏は「ああ」と言いながら頷き立ち上がり、止も立ち上がる。刹那、一夏はスピアーを伸ばし身構え。止は両腕に装備しているシミターブレイドを展開し。勇人は右腕にあるリストブレイドを展開し、腰にあるレイザーディスクを左手で取り、軽く振る。
三人が三人、各々の得意武器で扉に近付く。警官か、それとも自分とは別の侵入者だろうか? 嫌、一夏達には判る訳ではない。
何故なら、扉には誰もいない。侵入者は、後ろにいたのだった。
「っ!?」
一夏達は後ろを振り返ると、そこには窓の近くには一人の女性が立っていた。二十代前半であり、紫掛かったピンク色の長い髪に紅い瞳、スリムな体格だが頭にはウサ耳を着けていて、服は『不思議な国のアリス』に近い青い服装を身に纏っている。
だが、その女性は哀しそうに、そして眼に薄っすらと涙を溜めていた。
「あんたは……!?」
一夏はその女性には見覚えがあった。
「誰っ!?」
「誰だお前は!」
しかし、止と勇人はその女性とは初対面であり、勇人はレイザーディスクを投げようとした。ーー待てっ! ーー。刹那、一夏が叫んだ。
それを聞いた勇人と止は一夏を見るも、一夏はその女性へと歩み寄る。止が一夏を呼び止めているが一夏は女性の前に立ち止まる。
「貴女は……まさか」
一夏は女性に訊ねるも、女性は一夏を見て呟いた。
「いっ君、なの?」
女性は一夏の事を知っていた。すると、一夏はスピアーを縮ませ、背中に携えるように戻すと、顔に着けているマスクを両手でゆっくりと外し、女性に素顔を晒した。
女性は、一夏が素顔を晒さした後、瞑目すると、一夏の顔に手を伸ばし、一夏の頬を触る。一夏は女性よりも背が高かったが女性には関係なかった。
「いっ君だよね?」
女性は一夏の頬を触りながら訊ねた。女性から見れば、彼が一夏本人かどうかは解らなかった。それでも本当であって欲しい、彼が一夏、織斑一夏であって欲しい、と。
勿論、一夏は女性の質問に答えた。ーーそうです、俺が一夏ですーー
「いっ君……いっくーーーーんっ!!!」
その直後だった。女性は、束は彼が一夏だと気付くや否や嬉し涙を涙を流しながら、一夏に抱き着き押し倒す。
一夏は束に抱き着かれ押し倒され仰向けに倒されるた直後にケルティックのマスクを落とすも、一夏は満更でもない表情を浮かべていた。
「いっ君……いっ君が生きてた……いっ君……!」
束は一夏の胸に顔を埋めながら言葉を続けていた。束は嬉しかった、一夏が、大切な弟のような存在が生きていた。
三年、束から見れば長い年月だったに違いない。それでも、束は諦めなかった。一夏が、彼が生きているのを信じていた。そして今、彼が生きていたのを知ると、束を溜めに溜めていた我慢を全て吐き出していた。
「束さん、痛いですよ……」
一夏は束に言っても、束は聞こうとはせず退こうともしない。余程、束が心配だったに違いない事をも意味していた。
そんな中、止とどうすれば良いのかが解らないでいたが勇人は無言でレイザーディスクを腰に携え、リストブレイドを戻す。
勇人は束が敵ではないと気付いたが束が泣き止むまで、一夏、勇人、止は何も出来ないでいた。
次回、束がどうやって来たのかと、一夏はとある人物と再会するのかを悩みます。