ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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 今回、一夏はとある場所へと着ます。勿論、あの場所です。


第28話

 一時間後、ここはとある場所の商店街的場所。そこは沢山の人々が行き交っていた。街で買い物をする人、外で外食を済まそうとする為に街を歩いている人、単に街を歩いているだけの人もいる。

 街には各々の目的で街を歩いている人がいる中、一人の青年が街を歩いていた。青年は街の中をさ迷っている訳ではない。食事を摂ろうと、買い物をしに来た訳でもない。

 青年は只、この日本……嫌、異国の地である中国で観光をしに来た訳ではない。彼は、一夏はとある人物と再会する為に、この異国に足を踏み入れたのだ。

 しかし、一夏の近くには勇人や止、束やクロエは居ない。一夏は街を歩きながら辺りを見渡す。中国独特の文字が書かれている看板に、中にスープが入っていて、湯気が立ち込める鍋を店前に置いている露店が幾つも並んでいる。

 それは祭りその物だろうが一夏は空を見上げる。今の時間帯は夜だったが一夏には関係なかった。

 

「三年ぶりの地球で日本の次に訪れたのが……中国か」

 

 一夏はそう言うと、再び街の中を歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更に一時間後、ここは中国の軍事基地の一室にあるシャワールーム。そこには一人の少女がシャワーを浴びていた。

 十代後半に差し掛かる少女であり、美しい茶色い髪に翡翠色の瞳、体はスリムな方だが少し小柄だった。

 しかし、少女はシャワーを浴びていながらも何処か寂しそうだった。シャワーヘッドを頭から浴びても、辺りに湯気が立ち込め、シャワールーム全体が湿気て充満し覆われていても、少女には関係なかった。

 

「もう、三年か……」

 

 少女は不意に呟いた。それは少女にとって長い年月であり、寂しい年月でもあった。少女は、ある少年に思いを寄せていた。

 しかし、その少年は三年前、行方不明となり、死んだ。勿論、それは噂に過ぎなかったが世間から見ればそう思うだろう。

 そして少女は泣いた。その少年は少女の初恋相手でもあり、想いを伝えてはいない。それでも、少女は少年の分まで生きようとしていた。

 だが、想いを伝えられなかった事は、少女にとって大きな心の傷であった。

 

「クヨクヨしても何も変わらないわね……さっ、もう上がろうかしらね?」

 

 少女はそう言った後、蛇口を捻る。刹那、シャワーヘッドからお湯の雨は出なくなった。それでも、辺りに充満している湿気は消える事はない。

 少女はシャワールームを出て、近くにあるタオルを手に取り、髪や身体を拭く。髪は未だ濡れているが少女は身体を一通り拭いた後、下着を着け、寝間着を着ける。ピンクのパジャマだったが、少女はドライヤーで髪を乾かし、それを終えた後にシャワールームを出た。

 少女には解りきった事だが部屋は広く、電気は点いていた。ここは軍事基地でありながもテレビやベッド等、必要限りの物は揃えられ、扉や窓も設けられている。

 少女にとって、この部屋に居るのは唯一の安らぎの場所である。その為、少女は髪を軽く触ると、ゆっくりとベッドへと歩み寄り、腰掛ける。ベッドはフカフカだったが少女はテレビを見ようと思い、リモコンに手を伸ばす。

 

 刹那、この部屋を出入り出来る扉が自動で開き、少女は扉の方を見る。扉の外には誰も居なかった。

 

「誰よ?」

 

 少女は立ち上がり、扉の方へと歩き、扉の外を見る。外に誰も居なく、人もいない。少女は辺りを一通り確認した後、不信感を抱きながらも扉から離れる。

 扉は自動で閉まるも、少女は身を翻す。

 刹那、少女は目の前に何者かが姿を現す。その者はプレデターの防具を纏い、顔にケルティックのマスクを着けている一夏だった。

 

「だ、誰よ!?」

 

 だが、少女はその者を一夏だと言う事を知らず、驚きながら身構える。一方、一夏はそんな少女を見て頬を緩める。

 一夏は彼女を知っていた、良く他の親友達と遊んでいた。が、三年前のあの誘拐事件の少し前、彼女は親の都合で中国へ帰る、と。勿論、転校と言うのは仕方なかったが一夏は彼女とは、ある約束をしていた。

 それは今は良いだろう、今の一夏は三年と言う年月を経て成長した少女を見つめていた。あの幼かった少女は美しい少女へと成長していた。

 それは時間の関係でありながらも少女には面影が残っている。話を戻そう、相手が一夏である事を知らぬ少女は再び問う。

 

「誰よアンタ……誰よ!?」

 

 少女は怒る。すると、一夏は口を開いた。

 

「俺だよ……(りん)

 一夏の言葉に少女は、鈴は瞠目した。

 

「まだ判らないのか? それもそうだよな……鈴……それにあの時約束したよな、酢豚を作ってくれるって」

「な、何で私の名前を? それにその約束は……まさか!?」

 

 鈴は驚きを隠せない。すると、一夏は頷き、顔に着けているケルティックのマスクを両手でゆっくりと外す。

 そして、一夏は素顔を鈴に晒し、そして鈴は再び驚いた。

 

「あ、アンタは……嘘でしょ?」

 

 鈴は一夏に歩み寄る。一夏の前に立ち止まると、一夏の頬に手を伸ばし、触った。

 

「そ、そんな……ゆ、夢よね?」

 

 鈴は一夏の頬を触りながら眼に涙を浮かべる。鈴にとって信じられない事だった。それは目の前にいる一夏が鈴の初恋の相手であり、とある約束をした者。

 それは鈴にとって、死んだと思っていた一夏が生きていた、と。鈴から見れば信じられないだろう。だが、彼女は信じたかった。

 その約束は一夏以外誰にも言ってない。それに、誰かが一夏に成り済ます為に整形手術をした訳でもないーー彼は本物の織斑一夏だ。

 出来る事なら本当であって欲しい、彼の口から本当の事を言って欲しい、と。

 

「ああ、そうだよ……鈴」

「っ……い、一夏ーーッ~~!!」

 

 鈴は涙を流しながら、一夏に抱き着く。一夏は押し倒されそうになりながらも何とか堪え、ケルティックのマスクを片手で持ったまま鈴を軽く抱き返す。

 

「鈴……三年振りだな?」

 

 一夏は鈴を抱き締めながら囁く。

 

「何が三年振りよ!? アンタ今まで何処に行ってたのよ!? 死んだと思って心配したじゃない!?」

「ごめん……でも、鈴も元気そうじゃないか?」

「何が元気そうよ!? アンタが死んだと思って、私が何れだけ心配したのか判ってんの!?」

「判らない……でも、心配掛けさせてごめん……」

「心配掛けさせてごめん!? そんなのは遅すぎるわよぉ……」

 

 鈴は一夏に怒るも何処か哀しみが混じっていた。そうだろう、鈴から見れば一夏が生きていた事は信じられない程の喜びであり、三年と言う長い年月で溜めに溜めていた寂しさを全て吐き出すにも十分過ぎる程だった。

 例えそれが初恋の相手だとしたら更に喜ぶ。鈴は一夏に怒りながらも笑う。

 

「それよりもお帰りなさい……一夏!」

 

 鈴はニコッと笑い、それを見た一夏は微笑む。ーーただいま、鈴、と。

 それを聞いた鈴は再び泣き、一夏の胸に顔を埋める。彼女なりの恥ずかしさだろうが彼女は少しこのままでいたかったのだ。

 彼の、男性特有の温もりと、ずっと逢えない寂しさ分を埋めるかのように……勿論、一夏は何も言わなかったが一夏は何もしなかった。

 そして、一夏は鈴が落ち着くまで、鈴の背中を擦り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、日本の、束が身を隠す為に造ったラボ。そのラボのリビング的場所には勇人と止、クロエがいた。

 そのリビング的場所にはテーブルやソファーがあり、テレビも設けられている。そして、三人はソファーに座りながら、テレビを見ていた。しかし……。

 

『速報です。IS委員会や政府は、渋谷で発見されたと言うISを動かしたと言う二人の青年達を捜す為に、上野や横浜、宇都宮等、関東地方に捜査を拡大するよう警察に命令し、現在、警察はその命令に従い、捜査を拡大する方針に……』

「おいおい、何か大騒ぎになってんじゃん!?」

「ちっ、政府や警察はどんだけ暇何だよ……!」

 

 テレビに映っているアナウンサーの言葉に止は困惑し、勇人は舌打ちして静かに怒りを露にする。画面は変わるが画面には警官が検問所を設けているせいで交通渋滞を引き起こし、空には沢山のヘリコプターが飛んでいる。

 それだけならまだしも、警官は捜査範囲を広げると言う事を政府から通され伝えられているのだ。そんな二人に、クロエは宥める。

 

「落ち着いて下さい。それに今は束様が何とかしてくれています」

「それは解るけどよ? 束さんが何とか出来んのか?」

 

 二人はクロエを見やると、クロエは微笑みながら頷く。

 

「はい、束さんなら何とかしてくれます」

「そうなの?」

「はい、束さんはもうすぐ、世界各国にある事をしますから」

 

 クロエは微笑む。そんなクロエに止は首を傾げ、勇人は知らんと言う意味でテレビを見る。

 刹那、勇人はテレビに映っている交通渋滞の所である車に気付き、瞠目した。

 

「あれは!?」

 

 勇人が驚くと、クロエと止は勇人の言葉を聞いてテレビを見るも、テレビの画面は変わった。

 

「っ……くそっ!!」

 

 勇人はテレビが切り替わった事に怒りを覚え、立ち上がるや否や、束の所に向かう為に走る。

 後ろから止の呼ぶ声が聞こえたが勇人は振り向かず、束の所へと走り続けた。

 




 次回、鈴と再会した一夏、そして一夏がどうやって中国へと着たのか、何故鈴との再会を選んだのか、そして鈴から衝撃的な事を聞かされます。
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