ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
ーー誰だ!? ーー。一夏の叫び声が保健室内に木霊する。そんなに一夏に楯無は肩を竦い、一夏を見上げると、一夏は鋭い目付きで保健室を出入り出来る扉を見据えていた。
一方、一夏は保健室の扉を見据え続ける。誰かいるーー彼、一夏は人の気配に気付いたのだ。
それは今さっきだったが扉の外にいる誰かがいるのは事実だ。二人は気付いていないが扉の外にいる誰かが二人が一部始終を、二人が抱き合っている所までを目撃しているのも事実だった。
刹那、保健室の扉が開き、そこから一人の女子生徒が保健室へと踏み入れる。その女子生徒は楯無とは同級生なのかリボンの色は同じで、
長い茶色い髪のサイドテールに蒼い瞳に眼鏡を掛けている。身体はスリムな方だが、何処かぎこちない笑いを浮かべている。
「誰だあんたは?」
一夏はその女子生徒を睨みながら訊ねると、その女子生徒は未だぎこちない笑いを浮かべていた。すると、楯無はその女子生徒を見るや否や瞠目した。
ーーか、かっちゃん!? ーー。楯無は驚きながら、その女子生徒の名を叫び、一夏は楯無を見る。
「かっちゃん?」
一夏は彼女の事を楯無に訊くと、楯無は少し顔を紅くしながら答えた。
「か、彼女はま、
楯無は頬を赤らめながら人差し指と人差し指をチョンチョンと当てながら気まずそうに俯く。その仕草はとても可愛い。
だが、一夏はそんな楯無の仕草にも頬を赤らめもせず、何も感じない。一夏は薫子と言う女子生徒が何者かを知りたがっていた。
「じ、実は彼女は……新聞部の副部長なの」
「新聞部の副部長?」
楯無の言葉に一夏は眉間に皺を寄せ、薫子を見ると、薫子はニッコリと笑っていた。その笑顔は何処か悪意を感じるも、一夏は再び楯無を見る。
楯無は楯無で何処か恥ずかしそうに俯いていた。そして、一夏は楯無と薫子を何度も交互に見る。そして、一夏は自分の状況に気付いた。
自分は楯無を抱き締めているーーそれはつまり、薫子から、新聞部の副部長から見れば格好のネタでもあり、色々と誤解を招く危険もあった。
そうなれば、自分は……。一夏は表情を険しくしながら、薫子に。
「違う!!!!」
一夏は薫子に叫んだ。勿論、それは言い訳にもならないだろう。薫子は新聞部の副部長であると共に記者であるから……。
「それにしても、二人はそう言う関係だと思ったけどな~~」
数分後、一夏と楯無、薫子の三人は保健室の中で軽い談話をしていた。その前に薫子は少し残念そうな表情を浮かべながら俯いていた。
そうだろう、一夏と楯無が抱き合っていたら誰だって付き合ってると思う上に、ここは保健室と言う格好のネタだ。
新聞部から見れば今週の特集にもなれるし、何より恋愛関連ともなれば女子は喜ぶからだ。
しかし、それが違うとなれば大打撃であると同時に特集にも穴が空くのを物語っていた。
そんな薫子に一夏は腕を組みながら「フン!」と瞑目し、楯無は薫子に「ごめんね」と謝る。
「それよりも、かっちゃんは何で保健室に来たの?」
楯無は薫子にその事を訊ねると、薫子は我に返る。
「ああ、そうそう! 先生がたっちゃんが教室に戻って来てないのを心配していたから、私にたっちゃんを捜して来て欲しいって言われたの」
「そうなんだ……ごめん」
「別に良いわよーー本来なら
「悪かったわね……」
楯無はジト目で薫子を睨む。一方、一夏は二人の会話に溜め息を吐き、腕を組むのをやめ、立ち上がる。
「一夏君?」
楯無と薫子は一夏を見やるも、一夏は二人を交互に見る。
「俺の役目は終わった……それに、アンタらのガールズトークに巻き込まれるつもりもない」
一夏は踵を返し、保健室を出ようとした。刹那、楯無は一夏の手首を掴み、一夏は楯無を見る。
楯無は瞳を揺らがしながら頬を赤くしている。行かないで、もう少しだけ一緒に居て、と、一夏にそう教えていた。
しかし、一夏は楯無の瞳に何も感じない。そんな楯無に一夏は何もいわない。
「え……えぇっ~~」
薫子は二人の様子に内心声を上げる。一夏は一夏で何も言わない一方で、楯無は一夏を見つめている。その光景は、何処かの国の姫君が、名を名乗らない漆黒の騎士に恋をしているような光景にも思えた。
勿論、そんな軽い物ではない。二人の場合は、楯無が由緒ある家系の長女として生まれ、一夏はISが出てくる前は一般な家庭の長男として生まれた。
それ故、彼等を引き合わせたのは楯無はISが、一夏は居場所のない自分を助け、鍛えてくれたケルティックが、彼等二人を引き合わせたのだ。
それは運命とも言うのだろうか、それとも二人が結ばれる運命をも意味しているのだろうか。それは誰にも判らない。
嫌、一つだけ判った事がある。それは一夏と楯無の二人が、自分達の身に起きた出来事と言う名の運命に翻弄されたに過ぎない。
話を戻そう。一夏と楯無は互いを見ていたが一夏は楯無の手を振り解く。ーーあっ……ーー。楯無の残念そうな声が微かに響くも、一夏は保健室を出ようとした。
「まさか二人が付き合ってなんてね~~」
刹那、薫子が唐突に変な事を言い、一夏と楯無は薫子を見やると薫子はうっすらと笑っていた。悪意その物を感じるが薫子は楯無を見て軽くウィンクしながら口パクする。
彼の事を聞きたいんだでしょ? 薫子は楯無にそう言っていた。勿論、楯無は薫子が何を言ってるのかは理解出来た。
だが、一夏は身を翻す。
「何のつもりだ?」
「いえ……たっちゃんの気持ちを踏みにじるような事をしたくないで欲しいな~~って思ってね」
「それは俺への脅迫か?」
薫子は首を左右に振る。
「いいえ……私はたっちゃんの思いを無駄にしたくないからよ?」
薫子の言葉に楯無は瞠目し、一夏は眉間に皺を寄せる。それでも薫子は言葉を続ける。
「いいえ。私は新聞部の副部長として貴方の事を知りたいからよ? それに男性操縦者達の存在は今日までーーいえ、あの時、篠ノ之博士が世界に警告してからのまでは教えられなかった。でも……今は格好のネタが浮かんだわ」
「格好のネタ……貴女は先輩として恥ずかしくないのか?」
薫子は再び首を左右に振る。
「いえ、私の記者魂としての火が付いただけ、特集になるのなら何でも良いのよ? 記者は嫌われてなんぼの者よ? ……それに」
薫子は楯無は見る。
「たっちゃんも、あんたと一緒にいたいと思ってるからね?」
薫子はそう言いながら笑う。何故なら、薫子は楯無を思い、楯無を少しだけ一夏と一緒にいさせようと思っていた。
彼女は新聞部の副部長であるのと同時に、楯無の親友である。それに薫子は二人の事を記事にするつもりはなかった。
単に楯無を一夏と一緒に居させようと思っていた。しかし、薫子は一夏と楯無に起きた出来事を知らない。例え知っていたら、薫子は記事にするかしなかいかで悩んでいただろう。
「かっちゃん……」
そんな薫子に楯無は驚きを隠せないが直ぐに哀しそうに笑い、ありがとう、と囁いた。
一方で、一夏は下唇を噛みながら両手を拳に変え、強く握り締めていた。
「大丈夫よ? 貴方とたっちゃんの関係は書かないわーーその代わり、貴方に取材をさせてくれない?」
薫子は懐から手帳とペンを取り出し、一夏に訊く。
「……俺や更識との関係や俺の事を書くつもりはないだろうな?」
間を置いて、一夏が問い返すと薫子は頷く。
「ええ、その代わり、この学園に来てどう思ったのを教えてくれれば良いわ」
薫子の言葉に一夏は舌打ちすると、渋々二人の所に戻り、椅子に腰掛ける。
本来なら取材拒否すれば良いが楯無との誤解が広まるのはごめんだ。勿論、それは無理に等しいだろうが、ある程度の事を薫子に教えれば良いだけだ。
それにケルティックやエルダーの事は言わないようにした。だが、薫子は楯無にある事を言った。
「先生には、私が男性操縦者に取材したかった為に、遅れたと言っとけば良いわ」
薫子はそう言った後、一夏に取材する。勿論、一夏はそんな事をしたくはなかったが、楯無は薫子の気遣いに内心喜んでいた。
そして、薫子の取材は少し長かったのは言うまでもない。それは、薫子なりの親友への気遣いでもあった。
同時刻、勇人は千冬と一対一の話をする為に職員室にいた。それは、箒の件での事だった。そして、千冬は勇人と、ここには居ない止が一夏の親友であり、少しだけとは言え三年間も一緒にいた事を知る由もない。無論、勇人は千冬にその事を言うのも時間の問題だった。
次回は千冬と勇人の話でありますが、此方の都合上、投稿が少し遅れます。