ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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 今回、煩い奴が登場します。


第36話

 一夏は今、楯無や薫子を保健室へと残し、学校の廊下を歩いていた。勿論、教室へ戻る為だが一夏の表情は何処か怒りに満ちている。

 それは千冬や箒に対してだった。あの二人がいる教室には戻りたくないのと、楯無に抱き着かれた事で色々質問攻めに遭うのが嫌でたまらない。

 あれは誤解であるも理由にはならないし、悪ければあの二人が自分に色々と問いつめてくるのも目に見えている。一夏はどうすれば良いかと思い悩みながらも、いつの間にか自分がいるクラス・一年一組の教室に着いた。

 一夏は教室に入る前に立ち止まり、軽く溜め息を吐くと、教室に入る。刹那、教室にいた全ての者達が一夏を見やる。しかし、千冬は居なかった。

 それだけなら未だ良いだろう。が、止や勇人は兎も角、女子達の視線は何処か好奇な目かつ嫉妬の目を一夏へと向けている。恐らく楯無の件だろう。

 それに、勇人は一夏が戻ってくる前に教室へと戻って来たのである。

 

「織斑君、戻ってきましたか! 所で更識さんは?」

 

 真耶が一夏が戻ってくるのを確認した後、笑顔を浮かべるも楯無の事を訊いてきた。

 

「いえ……彼女は保健……」

「「彼女!!!?」」

 

 一夏が何かを言い終える前に女子の大半が驚きのあまり叫び、一夏や真耶、止や叫んでいない女子達の少数は肩を震わせる。叫んだ女子達は皆、一夏の言葉に頬を赤くする者、目尻に涙を浮かべている者達に別れていた。

 恐らく、一夏を狙っていたか彼女がいた事に失恋を感じているのだろう。あれは誤解だが何も知らない女子達から見ればそう思えざるを得ない。

 最後に、彼女と言ったら流石に恋人同士である事を誤解付ける事になる。

 

「神様……貴方を恨みます」

「こんな理不尽ガァァーーツ!」

「最早諦めるしかないのかあっ!?」

 

 女子達から悲痛の声が飛び交う。それは女子達にとって何よりの失恋であるのと同時に、彼氏が欲しかった女子達の心の叫びである事をも意味している。

 そんな女子達に真耶は彼女らを宥めるがまるっきり効果無し。止に至っては女子達の様子に何も解らないでいて、勇人は瞑目したまま何も言わない。

 一方、当の本人の一夏は頭を抱えていた。誤解だと言っても女子は信じないし、女子は大の噂好きであると同時に、変な噂を流す危険もある。

 刹那、一夏の胸ぐらを掴んできた者がいたーー箒だ。

 

「一夏!! あの女は誰だ!? 私がいない間に、あの女と相思相愛の仲になったのか!?」

 

 箒は怒りながら、一夏に詰め寄る。何故なら、箒は一夏に好意を寄せていた。勿論、歪んだ愛であり、一夏はそんな箒を嫌っている。箒のせいで自分は色々嫌な思い出がある。

 それだけでなく、一夏は箒に怒りを覚えた。楯無は上級生であるのと、楯無を『あの女』と呼び捨てたのだ。それには流石の一夏も、上級生を敬わない箒に怒るのも無理はない。

 一夏は箒に誤解と言いたいが今はそんな事を言ってる場合ではなかった。刹那、箒の手首を掴み、即座に捻る者がいたーー勇人だ。

 

「あぁっ!! ま、またお前か!?」

 

 箒は腕を捻られて激痛で顔を歪めながら、勇人を睨むも、勇人は箒に対し鋭い眼差しを向けていた。が、箒には怒りを通り越して呆れをも感じていた。

 ーー何故、この女は一夏に関わろうとしているのだろうか? ーー。勿論、それは箒が一夏の知り合いであると同時に嫌われているからだ。その為、一夏に関わるから余計に酷い話である。

 

「は、勇人君、い、いけません!」

 

 そんな勇人に真耶は慌てて止めるーーしかし、一夏は、この光景を見て何も言えなくなる。

 失恋がどうのこうので喚いたり泣いたりしている女子達。少数は女子達に何も言えなくなるどころか困っている。止は止で愕然としている。最早、その光景は混沌としていた。

 それも直ぐに終わったーーあの女が、千冬が教室に入るや否や、教室に居る者達を一喝し黙らせたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

「くそっ……! 周りは何でそんなに俺と更識が付き合っていると思っているんだよ……!?」

 

 一時間目の授業が終了した後、一夏は勇人や止と一緒にいながら、二人に対して愚痴をこぼす。そうだろう、一夏と楯無は付き合っていると言うのは誤解だがそれが出来なくなっていた。

 周りにる女子達は女子達で嘆いている。最早、一夏を諦めるしかないと言っていい程、過言ではない。その証拠に、女子達の大半は既に諦めモードに入っている。

 ある一人だけは違った。箒だ。箒は離れた場所にいるが遠くから一夏を見ている。その視線は想い人へと向ける物ではないのと同時に、一夏に何かを言いたかった。

 無論、それは無理に等しい。勇人の存在だ。勇人は一度ならまだしも、二度も一夏に突っ掛かってくる箒に怒りを覚えており、箒が来たらまた何かをするつもりでいた。

 彼がいる限り、一夏は箒に近づけられないだろう。ーーちょっとよろしくて? ーー。刹那、一人の少女が三人に声を掛けてきて、一夏達はその少女を見やる。

 外国人なのか腰まである長く美しい金髪の縦髪ロールにカチューシャを着けており、外国人特有の蒼い瞳。制服は他と違いドレスに近い。その女子は一夏達を見て怒りと言うよりも、軽蔑な眼差しを向けていた。

 ーー誰? ーー。止はその女子に訊ねると、その女子は瞠目し、直ぐに怒る。

 

「まあ、私ご存知ないんですの!? この……」

「セシリア・オルコット」

 

 その女子、セシリアが自分の名を言う前に、勇人が彼女の名を口し、それを聞いた一夏と止、セシリアは勇人を見やる。勇人はセシリアを呆れた目で見ていたが言葉を続ける。

 

「セシリア・オルコットーーイギリス出身であり、イギリス代表候補生ーー違うか?」

 

 勇人の言葉にセシリアは再び瞠目する。因みに勇人が何故、セシリアの名を知っているのかは最初にあったクラス紹介の時である。それはクラス全員がする事であるのと同時に、一人一人が皆に自己紹介した。

 その中で箒やセシリアもした為、僅かだが勇人はその女子全員の名を覚えたのだ。これにはセシリアも何も言えなかったが、慌てて我に返る。

 

「わ、私の名前をご存知でしたの!? だ、だったら話は早いですわ!」

 

 セシリアは何時もの表情に戻ると、一夏を指差した。

 

「あなた!? さっきの行動は何ですの!?」

 

 セシリアの言葉に一夏は「はっ?」と言いながら首を傾げ、それを見たセシリアは歯を食いしばる。

 

「だからさっき、上級生に抱き着かれたり、その上級生をお姫様だっこしたことですわ!?」

 

 セシリアの言葉に一夏は頭を抱える。ああ、やっぱりか、と。勿論、それは楯無との事であり、それをセシリアはその事を訊ねてきたのだ。

 それだけではない、あれは恋人同士ではないのかと思われている為、何も言えない。ましてやセシリアだ。一夏達は知らないが彼女は女尊男卑主義者であり、自分が恋人がいないのに対し、一夏に恋人がいるのは苦痛しかないのだろう。

 それに、一夏は楯無や薫子、箒の件で色々とストレスが溜まっている為、セシリアか絡んで来ると流石に疲れると同時にストレスが爆発しかねなくなりつつあった。

 

「ちょっと聞いていますの!?」

 

 セシリアの叫び声が教室内に木霊し、クラスの女子達が一夏達を見やる。彼女達は彼等のやり取りを色んな意味で見守っていた。例え、何が遭ったとしても、彼女達は何もしない。

 ーーこの女!! ーー。一夏は最早ストレスが限界に達していた。今直ぐにでも、セシリアに文句を言おうとした。ーー更識に妬いてんの? ーー。

 刹那、止がセシリアにそう言った。それを聞いたセシリアは驚きのあまり言葉を詰まらせ、一夏と勇人は止を見やる。一方。止は頬杖を突きながら恍けていた。

 

「ねぇオルコット? 一夏が好きなの?」

「な、何を言ってるのですか!? 私が織斑さんを好きになる理由はありませんわ!? って言うよりもあり得ませんわ!」

 

 セシリアは頬を赤くしながら、止に怒る。勿論、セシリアは一夏に惚れている訳ではない。セシリアは単に一夏達がどういう者達なのかを知りたく、そして自分を覚えて欲しいと言う傲慢さを見せようとしていた。

 しかし、止はセシリアを単に一夏に近づいたのと、楯無との関係を訊こうとしているのではないのかと勘違いしていた。勿論、それは勘違いだったがセシリアは止に怒りを覚える。

 

「それよりも貴方は何ですの!? 何故私が織斑さんとの……」

 

 刹那、チャイムが鳴り、女子達は自分達の席へと戻り始める。

 

「っ……貴方のせいですわよ!? 覚えてなさい!!」

 

 セシリアは止にそう言うと、自分の席へと戻る。しかし、止や一夏や勇人もセシリアがどうしたのかを気にしていたが彼等も席に着く。同時に千冬や真耶が教室へと入ってきた。

 ーー俺、何かした? ーー。しかし、止はセシリアに怨みを買うような事はしていないのに何故、セシリアはあんなことを言ったのかは解らないでいた。

 そして、千冬がクラスの者達にこう言った。

 

「二時間目の授業を始める前に、このクラスから、このクラスの代表者を決めなければならない」




 次回、セシリアの宣戦布告ーーそして、止のヒロイン登場!
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