ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
千冬の言葉にクラスの女子達はざわつく。何故なら、クラス代表と言うのは、このクラスで誰か一人を選ぶ事である。勿論、他のクラスも代表者を選んでいるか、選ぶ前か終わっている頃だろ。
それに、その一人はクラス対抗戦や色んな行事とかに強制参加しなければならない。その一人はクラスの代表であると共にクラスの運命を担っていると言い換えれば良いだろう。
「静かにしろ!!」
周りがざわつく中、千冬は一喝して黙らせる。それが効いたのかクラスの女子達が黙る。その中で二人だけ違う者がいた。一夏と勇人だ。一夏は無視しており、勇人は瞑目していた。
彼等は、そのような事には関わりたくはなかった。その為、周りが何が言おうと参加しないだろう。しかし……。
「クラス代表は、自身を推薦するか、このクラスから誰かを推薦したいのならすれば良いーー勿論、推薦された者は如何なる理由があろうと辞退は出来ない」
「はい、私は織斑君を推薦します!」
「私は勇人君よ!!」
「私は霧崎君が良いわ!!」
千冬の言葉の後だと言うにも関わらず、女子達の半分は一夏達を推薦し始める。恐らく一夏達の実力を知りたいのか、一夏を諦めるしかないのかと思い、他の二人を推薦する者が現れる。
誰一人、自身を推薦する者は居なかった。自分達の時間をクラス代表とかに潰されたくないからだろう。一方、三人は女子達が自分達を推薦しているのを見てそれぞれ何かを思っていた。
一夏は女子達の中から自分を推薦する事に愕然とし、止は目をパチクリとし、勇人に至っては瞑目し続けている。大半の女子達が一夏達を推薦するな中、千冬は腕を組んで頷く。
「他に推薦する者は居ないのか? ーーなら話は早い……このさ」
「お待ちください!!」
千冬が何かを言おうとした直後、一人の女子生徒が叫び、周りは一斉に、その女子生徒を見やる。セシリアだった。
「私は、このクラスの代表として立候補しますわ! それに、クラス代表は実力ある者だけがならなければなりませんわ!! ましてや男がクラス代表をやるのは苦痛しかありません!」
セシリアは異議を唱えてきた。勿論、セシリアは正論に近い。クラス代表は、このクラスを纏めるだけでなく、実力もあり、その覚悟をも持った人物がならなければならない。
大抵は代表候補生がなるべきだ。しかし、女子達が選んだのは代表候補生でなく、珍しさ半分で指名した一夏、勇人、止の三人。
彼等は実力は愚か、体力や知識はあるのかは未知数であるのだ。最も、三人は束からISの知識を叩き込まれ、プレデターから戦い方を叩き込まれた為に、この学園ではトップクラスに入る程の実力者達である事を、学園中にいる者達は知らない。
更には、セシリアは言ってはならない事を口にしてしまう。
「そもそも、私は学園に来たのは勉強しに来た事ーーこんなアジアの小さな島国を観光しに来た訳でもなく、遊びに来た訳でもありませんわ!!」
セシリアはそう叫んだ。セシリアは自信があるのだろう、自分が代表候補生だけでなく実力もある事をアピールしている。
が、一夏はセシリアは見て何も言わずに前を向き、勇人はセシリアを鋭い眼差しで見据えた後、瞑目し前を向く。一夏と勇人はセシリアの事等無視していたーーある一人を除いては。
「ねぇ、セシリア? セシリアって学園に勉強しに来ただけなの?」
止がセシリアの言葉に疑問を抱き、訊ねる。
「当たり前ですわ。私はイギリスから絶大な期待を担ってる身。それに私がクラス代表になれば……」
セシリアは言葉を述べながら自分の胸に手を当てる。そんな止はセシリアを見て呟いた。ーー可哀想な人ーーと。止はそう言った後、前を向く。
「それに私は……って、聞いてますの!?」
セシリアは三人が聞いてない事に怒る。勿論、三人は三人でセシリアの自慢話を聞く訳でもなかった。聞くのが嫌でもなく、反論するのも余計な状況へと変わる事も目に見えている。
「ちょっと聞いてますの!? これだから男は……ちょっと!」
だが、セシリアは一夏達が自分の話を聞かない事を何度も問うも、一夏達は聞く耳を持たない。それが原因なのか、セシリアは我慢出来ず、一夏達を指差す。
「キィ~~ッ、決闘ですわ!! 貴方達に引導を渡してやりますわよ!?」
セシリアは三人に宣言した。そしてその少し後に千冬が四人に対しクラス代表決定戦をやる事を言い渡し、一週間後にアリーナでやる事も言い渡したのは言うまではもない。
あれから三時間後、四時間目の授業が終了し、千冬や真耶は教室を出ていき、クラス中の女子達は筆記用具や教科書等を片付け初める。
午前中の授業が全て終わった後だと言うのか、クラスの生徒達は少し疲れの色を見せている。そして、大抵はお腹が空いたのか、教室を出ていく。その理由は食堂へと向かい昼食を摂って、午後の授業へと備える為だった。
無論、一夏達も食堂へと向かう為に筆記用具や教科書を片付ける。
「やっと終わった~~飯だ飯~~」
「ふっ、止はそれしかねぇのか?」
止は嬉しそうに言い、そんな止に一夏は苦笑いし、勇人は瞑目しながらも微笑んでいる。三人は三人で昼食を楽しみにしていた。
三人は軽い談話をしながら立ち上がるや否や教室を出ようとしたーーまた、妨害者が現れた。
ーーちょっと待て一夏! ーー箒だった。
三人や、他の同級生達は箒を見やるも、箒は腕を組みながら険しい表情を浮かべていた。そんな箒に一夏も険しい表情を浮かべる。
「何だ篠ノ之? また何か用か?」
「何か用ではない! 何故私を誘わない!?」
箒の言葉に一夏は「はっ?」と惚ける。何故なら、箒は一夏が自分を誘ってくれるのではないのかと考えていた。勿論、一夏は箒への感情は千冬同様憎悪でかしないのと、箒を誘う理由等ない。
箒と昼食を摂る理由もなければ、話す理由もない。一夏は箒に呆れながらも、勇人や止を交互に見る。
「行こうぜ……篠ノ之に関わるとろくでもないからな」
一夏はそう言うと踵を返し、教室を出ようとした。刹那、箒が一夏は教室を出ていくのを見たのと同時に怒りを覚え、一夏を追い掛けようとした。
しかし、それも無駄に終わったーー勇人が一夏と今にも駆け寄ろうとした箒の間へと入る。ーーっ!? ーー。箒は勇人を見るや否や目を見開き、立ち止まった直後に歯を食い縛る。
箒は勇人を警戒していた。それは勇人が一夏へと近付く自分を二度も邪魔したのだ。それは箒にとって何よりの屈辱かつ、勇人を一夏との時間を邪魔する障壁と認識していた。
一方、勇人はそんなつもりはない。勇人は勇人で一夏に絡んでくる箒を一夏から守ろうとしているだけだった。
箒は勇人を睨み、勇人も腕を組みながら鋭い眼差しを、箒へと向けていた。両者の間には不穏な空気が流れ始める。沈黙や憎悪が混じっているような空気でもあった。
周りも二人から醸し出される空気に固唾を呑む。その中にはセシリアもいたが、セシリアは二人の間に流れる空気に冷や汗を掻いていた。
刹那、止が勇人の前へと現れ、勇人を落ち着かせる。
「よしなよ勇人、あの女子に関わるよりも昼食を摂りに食堂に行こうぜ?」
止は勇人にそう言いながら笑い、勇人の肩に両手を置く。
「それによ? 周りが怖がっているじゃねぇか?」
止はそう言いながら周りを見渡し、勇人も周りを見渡す。確かに、周りの女子達は少し怯えていた。勇人の威圧的な視線にではない、勇人と箒は三度目の一触即発を起こすのではないのかと思っていた。
「俺達がこの学園に来たのはーーいや」
止は首を左右に振り、その後に言葉を続ける。
「ここにいる女子達を怖がらせる為じゃねぇ……俺達はこの学園で青春を謳歌する為に来たんだぜ?」
止は勇人にそう言った。止は止で一夏や勇人と共に、この学園で楽しい生活を送るつもりだった。それには一夏や勇人も必要だった。彼等と時に笑い合い、ケンカし合い、時には何時かは判らないが恋愛話で盛り上がろうとしていた。
それだけではない、一夏は勇人は止にとって大切な仲間であり親友である。
そんな止に、一夏と勇人は瞠目するも勇人は直ぐにほくそ笑む。
「そうだな……お前の言い分は言う通りかもしれないな」
勇人はそう言った後に身体を翻す。
そして、止は一夏も見る。一夏は未だ瞠目していたが、止はニカッと笑う。
「それよりも、食堂へと行こうぜ!」
「あっ……ふっ、そうだな」
一夏は微笑むと、三人は教室を出た。一方、箒はポカーンとしていたが直ぐに一夏を追い掛けようとして教室を出る。
「あの止って人……なんかカッコ良かった~~」
しかし、教室にいたクラスの内の、とある女子生徒がだるそうかつトロンとした目をしながら、止の行動に少し感銘していた。
その証拠に、制服にも関わらず、手を隠す程の長い裾をヒラヒラと動かしながら……。
次回、あの女子が一夏の前に現れ、ある場所へと連れていく。