ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

40 / 117
今回は寮への話にするつもりでしたが、下校中での話になってしまいました。


第40話

 虚から楯無の事を頼まれ、寮室の鍵である鍵を渡されてから数分後、一夏は腕を組みながら教室へ戻る為に廊下を歩いていた。

 廊下には女子生徒は一人もいない。それはさっきチャイムが鳴ったのと、同時に授業が始まったのを意味していた。その為、一夏は虚のお陰で授業に遅れたと言えばいいだろう。

 すると、一夏は自分が所属している教室へと来ている事に気付き、眉間に皺を寄せる。それも直ぐだったが一夏は溜め息を吐き、教室へと入った。

 刹那、教室にいた勇人や止、クラスの女子達、千冬や真耶が一夏を見やる。一夏を見る女子達の視線は突然の事で少し驚き、中には好奇な目で見ている。その中で箒は一夏が戻ってきた事で安心したと言うよりも何故か怒っているも、止は首を傾げ、勇人は黒板に書かれている内容をノートに写しているのかペンを動かしていた。

 

「遅刻だぞ織斑? 何処をほっつき歩いていた?」

 

 生憎、教鞭を執っていたのは千冬だったが千冬は一夏に怒っている……と言うよりも少し困惑していた。そんな千冬に一夏は目も合わせず舌打ちすると、自分の席へと戻る。

 

「織斑君、織斑先生が訊いているのに無視はいけませんよ?」

 

 一夏は行動に真耶は注意するも一夏は真耶も無視していた。真耶は一夏を見て少し戸惑うも、千冬は一夏は机の中から教科書やノートを取り出す。

 ……一夏……。千冬は心の中で一夏の名を呟く。一夏との再会は千冬にとって一番望んでいた事だった。しかし、今の一夏にはどう声を掛けてやれば良いのかが千冬は解らないでいた。

 今の一夏は自分を憎んでいる。それは紛れもない事実であり、自分に原因がある事も千冬は気付いていた。

 彼から空白の三年間を訊こうとしても、一夏は教えるつもりはないだろう。それならば、彼の事を知ってるであろう勇人や止から訊くしかない。勇人は無理だったが止から訊くしか方法ない。

 千冬はそう思っていたが、真耶が千冬の様子に気付き声を掛けてきた為に我に返り、再び教鞭を執り始めた。

 

「……チッ」

 

 千冬を見た一夏は微かに呟くように舌打ちすると、ペンを取り始めた。因みに、この学園はIS関連の授業だけでなく、社会や国語等、一般の高校でもある教科がある為、問題はない。

 それに、IS関連の教科書は電話帳並みの厚さがあったが一夏達は束からISの知識を叩き込まれた為、問題はなかった。

 

 

 

「ったく……初日からゴタゴタに巻き込まれる何てな……」

 

 二時間後、一夏と勇人は鞄を片手に玄関の下駄箱で靴を履き替えていが一夏が不意に呟く。因みに周りには女子生徒達もいるが半分は寮へ帰るか、入りたい部活を見る為にいない。因みに止は居なかった。

 止は六時間目終了後、千冬に放課後残るように言われたのだ。これには止は愚痴を溢すも、千冬は止に訊きたい事があるのと、千冬が真耶に頼んで勇人に止と同室である事を意味させるかのように寮室の鍵を二つ渡したのだ。

 その為、止は渋々教室に残ったのである。一夏は靴を履き替え終えるも、勇人は何故か履き替え終えたにも関わらず、その表情は何処か腑に落ちないような表情を浮かべていた。

 

「勇人、どうした?」

 

 一夏は勇人の様子に疑問を訊ねるも、勇人は、とある方角を見ていた。ーー嫌な予感がするーー。勇人は心の中でそう呟いた。それは止の事であり、千冬が止を放課後残るよう言ったのも何かあると勇人は感じた。

 ーーまさかーー。勇人は何かに気が付いた。恐らく、あの事であるに違いない。勇人はそう直感すると自然と顔を引きつらせ、鞄を持ってる手に力を入れる。

 

「勇人、どうしたんだよ?」

 

 そんな勇人に一夏が訊ねると、勇人は一夏を見るや否や口を開いた。

 

「すまない、俺は少し用事が出来た……悪いがお前は一人で寮に戻ってくれーー後から止と一緒にお前の寮室へと向かう」

 

 勇人がそう言うと、一夏は「えっ?」と言うも、勇人は靴を履き替え、止がいるであろう教室へと走った。 一夏が呼び止めるも、勇人はその場から立ち去っていった。

 

「どうしたんだ?」

 

 一夏は首を傾げるも、ポケットからある物を取り出し、それをぶら下げるように持ちながら眺める。それは鍵だった。その鍵は虚から貰った鍵である。

 一夏はその鍵を眺めていたが、不意に後ろから声を掛けられた。刹那、一夏は表情を険しくし、鍵をポケットに戻し振り返ると、そこには鞄を両手でぶら下げるように持ちながら立っている箒がいた。

 

「何だ篠ノ之? また俺に何か用か?」

「そんな顔をするな! それに何か用ではない。一緒に帰るぞーー良いだろ幼馴染みなのだからな」

 

 箒は少し怒っているが、一夏の近くに勇人や止が居ない事に気付き、頬が緩む。ああ、これで一夏と二人きりだ。箒は内心そう思っていた。そんな箒に一夏は舌打ちすると、箒を他所に歩き出す。

 

「待て一夏!」

「あっ、織斑君!!」

 

 箒は一夏の後を従いていく形で歩くも、とある女子生徒が一夏に声を掛けてきた。清香だった。

 

「何かな、相川さん?」

 

 一夏は不機嫌そうに訊ねると、清香は少し肩を震わす。一夏の目が何処か不機嫌そうであるのと、近くにいる箒が清香を睨んでいたからだった。

 これには清香もたじろかない訳ではなかったが、清香は突然、少しニヤニヤしていた。その表情には何かをからかおうとしていた。

 そんな清香に一夏は首を傾げるも、清香はある場所を指差しながら口を開いた。ーーあっちに織斑君の恋人がいるよ? ーーと。勿論、一夏は清香が何を言ってるのかは解らなかったがそれも直ぐに解った。

 同時に箒も「なっ!?」と声を上げるも、一夏はまさかと思いながら、清香が指差した場所へと足早に向かう。箒は一夏の突然の行動にたじろぐも、一夏を追い掛ける。

 一方、一夏は足早で清香が言ったと言う恋人を捜したが、そしてそれは直ぐに見つかり、同時に瞠目した。

 その恋人とは、鞄を両手でぶら下げるように持っていた楯無の事だった。今の時間帯は夕方だったのか、楯無の水色の髪はオレンジが混ざったように変わり、白い制服もオレンジ色に変わっていた。

 それに、周りには女子生徒が寮へと帰るにも関わらず、殆どが楯無を見ていた。

 

 ーーあっ……ーー。楯無は一夏に気付き少し悲しそうな表情を浮かべる。周りも一夏に気付くが何処か期待していた。そんな楯無に一夏は瞠目し続けるも、直ぐに舌打ちし、楯無に歩み寄る。

 刹那、近くにいた女子生徒達が黄色い声を上げる。彼女達は誤解とは言え、一夏と楯無は付き合っていると勘違いしている。

 それに今、一夏は楯無に何て言うのかを女子生徒達は期待していた。勿論、一夏はそんなつもりはない。言うなれば、楯無に声を掛けるだけたが女子生徒達からは期待しかないだろう。

 

「どうした楯無? 誰かを待ってるのか?」

 

 一夏が訊ねると、楯無は頷き、一夏を指差す。それを見た女子生徒達は黄色い声を上げる。

 

「俺かよ……それよりも何故だ? お前を待つ理由はない」

 

 一夏はそう言うも、楯無は頷き、片手を制服のポケットに入れ、ある物を取り出し、それを一夏に見せた。

 ーーそれは……ーー。一夏は楯無が見せてきた物・鍵を指差すも、楯無は鍵を持っている訳ではない。楯無は鍵に着いている名札を持っている。その名札には『1052』と書かれていた。

 

「まさか……それって」

 

 一夏はその鍵を問うと、楯無は顔を上げる。頬を紅くしていた。

 

「ええ……寮室の鍵……それも虚ちゃんから貰ったのと……その、一夏君と同室になったから……」

 

 楯無は恥ずかしそうに言葉を続けた。その直後だったーー周りにいた、一夏と楯無のやり取りを見ていた女子生徒が再び黄色い声を上げる。さっきのよりも大きかった。

 

「嘘だろ……っ」

 

 一夏は楯無の言葉にやるせなく思ったのか頭を抱える。恐らく、楯無に鍵を渡したのは虚だろう。

 自分と楯無を同室にしたのも、その理由は楯無を励ます為の物なのだろう。しかし、楯無と色んな誤解がある為、更なる誤解を生じる事になる。

 一夏は虚に怒りを覚えながらも、楯無に訊ねようとした。

 

「一夏ぁぁぁ!?」

 

 後ろから怒りのこもった声が聞こえ、一夏や周りの女子生徒達が声がした方を見やると、憤怒の形相をした箒がいた。

 ーーっ!? ーー。一夏は箒を見て下唇を噛むと、楯無の手首を掴み、楯無を連れて寮へと走る。

 ーーあっーー。楯無は一夏の行動に頬を紅くしながら瞠目した。そして、一夏は楯無を連れて寮へと走り、箒は一夏を追い掛け、それを見た女子生徒が再び黄色い声を上げたのは言うまでもなかった。そして、夕日は沈み掛かっていた。

 




 次回、寮室での軽めの騒動
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。