ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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 一夏×楯無ファンには少し閲覧注意


第41話

 一夏が楯無を連れて寮へと走って向かっている間、勇人は学校にいた。しかし、勇人は表情を険しくながら足早で教室へと向かっていた。

 理由は勇人自身が嫌な予感を感じたのと同時に、止の身に何か遭ったのではないのかを直感していたーーそれは当たった。

 ーー嫌だよそんなの!? ーー。ーー頼む! 一夏に何が遭ったのかを教えてくれ! ーー。勇人が自分が所属している教室へと近づくと、二人の言い争うような声が聞こえた。

 それを聞いた勇人は眉間に皺を寄せ舌打ちをする。その声には聞き覚えがあったが、勇人は教室へと入る。

 そこに居たのは、止と千冬だけだった。二人はさっきまで、とある事で言い争っていたが勇人が教室へと入った直後に勇人を見やる。

 ーー勇人……! ーー。止は勇人を見て驚く一方、千冬は勇人を見て顔を青褪める。一方、当の本人である勇人は憤怒の形相をしながら鋭い眼差しで、千冬をギロリと睨む。

 勇人に睨まれた千冬は「っ!?」とバツの悪そうな表情を浮かべるも、勇人は二人の元へと歩み寄り、止に背を向け、千冬と向き合うように間に入る。

 勇人は表情を崩さなかった。それも、目の前にいる千冬に対しの怒りでもあった。千冬は自分の警告を無視し、止から一夏の事を聞き出そうとしたのである。

 それは本当であり、勇人の嫌な予感は当たった事をも意味していた。勇人が教室へと来る前は、千冬が止から一夏の事を聞き出そうとしたのだ。これには止も天然でありながらも、止は千冬に一夏の事を教えるつもりはなかった。

 それでも、千冬は止から一夏の事を聞き出そうとした。二人のやり取りは勇人が来るまで続いていたが今は違う。

 今は勇人が来た為に千冬は止から聞き出す事は不可能に近い事を意味し、彼等から一夏の事を教えてもらう事をも出来なくなったのを意味していた。

 

「貴様……」

 

 勇人は千冬に怒りを覚え、両手を拳に変え力を入れる。それを見た千冬は俯き膝を突き、止は勇人を宥めるも、勇人の千冬への怒りは消える事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処か……」

「ええ……」

 

 一方その頃、一夏は楯無と共に寮のとある扉の前に立っていた。その扉は一見何の変鉄もない只の扉だった。が、扉の近くには表札のような物があり、そこには『1052号室』と書かれている。

 そこまではまだ良いだろう。しかし、通路には疎らだが女子生徒は数人はいて、全員が全員、一夏と楯無を見ていた。

 全員が全員、二人を見てひそひそ話をしているが何処か嬉しそうだった。さっきの事と今置かれた現状が原因だろう。“一夏が楯無を連れて寮へと走った”、“一夏と楯無は寮室でも同棲する程の仲になっている”と。

 それらは女子達の噂話に過ぎないが、恋話なら尚更だろう。因みに箒はそこには居ないーー箒は此処に来る前に一夏に手刀で軽く叩かれ気を失っている。

 今頃、別の女子生徒に介抱されているかほったらかしにされているだろう。

 話を戻そう、一夏は扉の前に立っていたが、周りの疎ら程度の女子達の視線に耐えきれず、鍵を使って楯無と共に扉の中・寮室へと足を踏み入れる。

 それを見た女子生徒達は黄色い声を上げるも、一夏は扉を閉めた。

 

「ふぅ……疲れた」

 

 一夏は扉を閉めるや否や扉に凭れ掛かりながら不意に呟き、瞑目した。その表情は何処か怒っているよりも疲れの色が見える。

 一方、楯無は俯いていてーーその表情は何処か寂しい。そして、楯無は靴を脱いで、ゆっくりと部屋の中を歩く。

 部屋の中はとても広く、薄型テレビや二つのベッド、クローゼットが置かれ、浴室やトイレ、台所等が設けられ、勉強用のパソコンやデスク等も設けられていた。

 それはまるでホテル並とも言えるが二人には関係無かった。楯無は近くのベッドに腰を下ろし、鞄を奥。一夏は一夏で髪を掻きながら、部屋の中を歩く。

 

「全く……誰のせいでこうなったのやら」

 

 一夏はそう呟くと鞄を起き、楯無は体を震わす。勿論、一夏は楯無の事を気にもせずに窓の方へと歩み寄り、窓に背を向けながら腕を組む。

 一夏は少し怒っていた、この怒りを誰にぶつけたら言いかが判らないでいた。勇人や止は無理として、何の関係もない女子生徒達は尚更である。千冬や箒って線もあるが余り大事にしたくない。

 それに、楯無と同室になったのも虚が原因であるが、虚はとある人物に頼んで、一夏と楯無を同室にしたのである(勿論、あのウサ耳を着けた人物が虚がとある人物に対し、虚と同じような事を頼んだのだ)。

 勿論、この事を一夏や楯無は知らないーー何れは知る事になるだろう。楯無は……今は無理に等しい。今の楯無は一夏の前では罪悪感が一杯で弱気になっている。

 

「ふぅ……それよりもこれからの事をどうするべきか……更識?」

 

 一夏は楯無を見て訊ねると、楯無は体を震わせ続けていた。ーー更識? ーー。一夏は楯無の様子に疑問を抱く。しかし、楯無は瞑目し、体を震わせながら自分を抱き締める。

 

「楯無、どうした?」

 

 一夏は腕を組みながら、楯無に歩み寄る。楯無は震え続けていたが、一夏は楯無の肩に手を置き、揺らす。

 

「おい楯無、おい!?」

 

 刹那、楯無は恐る恐る目を開けるも、目の前に一夏がいる事に気付き「きゃっ!」と言いながら、一夏を突飛ばした。楯無に突飛ばされた一夏は「うあっ!!」と声を上げながら体勢を崩したのがそのまま倒れる。

 それを見た楯無は「あっ!?」と驚き、慌てて立ち上がる。刹那、楯無は躓いて、一夏目掛けて倒れた。そして……。

 

「「つ!!?」」

 

 楯無は一夏に抱き着くようにのし掛かるように倒れた。その光景は楯無が一夏を押し倒したようにも思えた。幸いな事に周りには誰もいないーー居たら居たで更に変な噂が流れていただろう。

 すると、楯無は不意に一夏と目を合わせてしまった。一夏は少し怒っていたが、楯無は一夏を見るや否や顔を紅くする。

 

「あっ、ご、ごめんなさい!!」

 

 楯無は起き上がるや否や一夏に謝る。一方、一夏はそんな楯無を見て怒りを通して呆れるも一夏も起き上がり、直後に立ち上がると、楯無を無言で見据えながら腕を組む。

 一方、そんな一夏を見た楯無は言葉を詰まらせ、俯き、体を震わせる。また迷惑を掛けた。簪の誘拐事件での事、彼等に人殺しにさせた事ーーこれらは許されない事。

 しかし、これらは軽いが一夏に抱き着き、お姫様抱っこしてもらった事、薫子に誤解を招き取材をさせてしまった事、虚(大半はウサ耳を着けたあの人物)の手配で寮室が一緒になった事、ここへ来るまで一夏に手を繋いで貰った事。

 これ等は女子達に良からぬ噂を流してしまい、箒と言う女子に変な誤解をも生じさせてしまった。

 これ等は全て自分のせいーー自分があの時、一夏に誘拐事件を話さなければ、今日抱き着かなければ、一夏にこんな目に遭わさなくて済んだのだ。

 それを考えるだけでも辛い。そして、楯無は堪えきれないのか、目に涙を浮かべる。

 

「お、おい!?」

 

 一夏は楯無が泣いた事に少し戸惑う。それでも楯無は涙を止めず、嗚咽を上げる。そんな楯無に一夏は困り果てるが楯無は泣き続ける。これには一夏も困るが、一夏は変な噂を流されるのを嫌だった。

 これ以上、噂が流れると自分と楯無が付き合っていると言う広がり、この状況だと自分が楯無を泣かしたようにも思われてしまう。

 

「どうすれば……っ!」

 

 最早、噂は消えないし自分は女性の扱いは下手である。最早、彼女を宥める方法はあれしかなかった。抱き締めて慰めても嗚咽は消えないし、何より扉の外まで響くだろう。

 もう、あれしかなかった。それは一夏が他の方法を思い付かなかったからだろう。そして、一夏は楯無を抱き締め、楯無を……。

 

「っ!?」

 

 楯無は瞠目した。楯無は嗚咽を上げてはいなかったーーその代わり、楯無は一夏にキスをされたのだ。

 そのキスは一夏は楯無を慰める為、楯無の嗚咽を止める為の唯一の行動でもあった。例え口を塞いだとしても効果はない。だから一夏は嫌々ながらも、楯無に対しキスをしたのだ。

 それは効果はあった。楯無は泣きながらも突然の事で嗚咽を止め、瞠目したまま一夏を見据える。

 一方、一夏は楯無には瞑目していたが何処か焦っている。楯無に何を言われるのかを気にし、彼女が暴れないかを心配していた。

 勿論、楯無は暴れる気配を見せてはいない。そして、一夏が突然とは言え、二人がキスをしてから数秒後、二人は放れる。

 プハッ……。二人の口から僅かだが熱い吐息が見えた。

 

「い、一夏……君?」

 

 楯無は今だあり得ないと言った表情をしながら自分の唇に手を当てながら、一夏に訊ねる。

 一方、一夏は一夏で少し頬を紅くしながら、下唇を噛み楯無に背を向ける。

 二人の間には気まずい空気が流れていた。それも、甘い空気と言えば良いのかが、二人には判らなかった。




 次回、勇人と止が一夏にある事を話します。
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