ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
「…………」
一夏が楯無と付き合っていると嘘の宣言と、一夏が楯無にキスをしてから数分後。此処は勇人と止が同棲している寮室。そこは一夏や楯無が同棲している寮室とは全く同じであり、置かれている物も全て同じだった。
しかし、違うと言えば止が扉近くのベッドに仰向けに寝ているのと、そんな止を心配そうに見つめている少女、デスク近くの椅子に座りながら腕を組みながら瞑目している勇人がいた。
止は兎も角、勇人と少女には会話はない。あるとすれば、重苦しい空気が流れていると言えば良いだろう。刹那、止の瞼が眉間に皺を寄せるように微かに動く。
「あっ、止が起きるよはやはや~」
少女は表情を明るくし、勇人は瞑目しながらも瞼の片方をピクピクと動かしていた。ーーう、うぅん……。そして、止はゆっくりと両目を開ける。止が最初に目にしたのは、長い裾をヒラヒラと動かした、目がトロンとした少女がいた。
ーーここは……ーー。止はそう呟きながら起き上がると辺りを見渡すも直ぐに気付き眼を見開きながら。
「ここは俺と勇人の寮室!?」
止は此処が自分の気付くが、頭に激痛が走るのに気付き手で頭を抑える、眼を閉じながら苦虫を噛んだような表情を浮かべる。
「あっ……痛た」
「ダメだよ寝てなきゃ~~」
そんな止に少女が寝るように促すも、止は少女に気付き「さっきから、君は誰?」と訊ねる。
その少女は背中にまで伸びている茶色い長い髪に両側には、某アニメのマスコット的な生き物を模したヘアアクセサリーで両側の一部を結び、トロンとしたような黒い瞳。
誰から見てもやる気無さそうにも思えるが、少女は嬉しそうなのか裾をヒラヒラと動かしている。そんな少女に止は眼をパチクリとしているが、少女が何者かを再び訊ねようとした。
「そいつは
勇人が口を開き、少女の呟いた。それを聞いた止は「えっ?」と惚ける。そして、彼女の名は布仏本音。一夏達が所属している一年一組の生徒である。
それに本音が此処にいるのには理由があった。それは、目の前にいる止にあった。が、止自身は本音の事をよく知らない。何故なら、自己紹介の際、止は寝ていたからだった。
止が起きていたら彼女の事を良く知っていたか顔見知りになっていたに違い。嫌、本音自身が止を気にかけている事を止自身は知らないでいた。
止は本音を見るも、本音は止を見ながら「ニュフフ」と笑っていた。そんな本音に止は何も解らず首を傾げ、勇人は何故か頭を抱えていた。
此処は一夏と楯無が同室となっている寮室。その寮室には一夏と楯無の二人しか居なかったが何処か重苦しい空気に包まれていた。
一夏はベッドに腰掛けたまま俯いており、楯無は楯無でデスク近くにある椅子に腰掛けながら俯いていたが頬を紅くしていた。
二人の間には会話はないものの、片や気まずそうに俯いてるのと片や罪悪感があるのか俯いている。しかし、それは数分も続いている。誰か居たらそんな空気に耐えきれず何かを訊ねるに違いない。
「ね、ねぇ、一夏君?」
刹那、楯無が口を開いた。こうなったのは楯無が原因だった。一夏と楯無は数分前にキスをしたのだ。それは周りに自分達が付き合っているのを誤解させているからだった。
一夏と楯無は付き合ってはいないがあんな事をすれば誰から見ても付き合っていると思うだろう。話を戻そう。楯無は一夏に訊ねるも、一夏は顔を上げ楯無を睨む。
その眼差しは鋭く、それを見た楯無はビクッと肩を竦めると再び俯き体を震わせる。一夏は怒っている、それも自分が原因であるのか楯無は下唇を噛み締めながら泣きそうになる。
しかし、一夏はそんな楯無を見て溜め息を吐く。一夏は別に怒っている訳ではない。一夏は不機嫌である為だった。
「おい楯な……うん?」
刹那、自分が着ている制服の右腕部分にから音が聴こえ、右腕部分を捲る。一夏は右腕にコンピューターガントレットを着けていた。音の正体はコンピューターガントレットからの通信が入った為だった。
一夏は楯無を気にしながら立ち上がると、楯無に歩み寄り、楯無の前に立ち止まる。
ーーあっ……ーー。楯無は一夏が目の前にいる事に気付き顔を上げ、一夏を見上げる。一夏は未だ表情を険しくしていた。
それを見た楯無は再び俯くも再び体を震わせる。刹那、楯無は頭に何かが置かれているのを感じ、顔を上げる。
一夏が楯無の頭を撫でていた。楯無は一夏が自分の頭を撫でている事に頬を紅くしながら瞠目する。一方、一夏は楯無にこう言った。
「少し出掛けてくるーー夕食は一緒に出来ないけど、篠ノ之が絡んできたら自分で何とかしてくれ」
一夏はそう言うと、楯無から離れ、扉の方へと向かう。刹那、扉が開き、誰かが入ってきた。勇人と止だった。
二人は表情を険しくしてるものの一夏も表情を険しくしている。彼等もまたコンピューターガントレットから通信が入り、一夏と合流しょうと一夏がいる寮室へと向かった。
そして、彼等はエンフォーサーに呼ばれたのだ。エンフォーサーはIS学園にいて、この学園にある森林地帯にいた。
三人はエンフォーサーに逢う為にそこへと行くつもりだった。そして、一夏は寮室を出る前に楯無を見る。
楯無は少し驚いていたが一夏は何も言わず、寮室を出ると、扉を閉めた。そして、寮室には楯無がお留守番と言う意味で一人しかいなかった。
「うぐっ、ひぐっ……」
所変わって、此処は箒と、とある人物が同棲している寮室。そこにはとある人物は居ないが、ベッドで顔を埋めながら嗚咽を上げている者がいたーー箒だった。
箒はさっき(誤解だが)失恋したのである。それは幼なじみでもあり初恋の相手だった一夏に想いを伝える前に、一夏が(それは誤解でもあるが)楯無にキスをしたのだ。
あれは箒にとってショックでもあり、一夏のファーストキスの相手が自分ではなくなったのも意味していた。箒にはショックが大きいが、一夏は箒を幼馴染みとも思ってはいない。
にも関わらず、箒はそれを認めようとはしなかった。
「一夏……何故だ? 何故私を見ようとしないのだ!? 何故、私の事を心配しないのだ!?」
箒は泣きながらそう叫んだ。何故なら、箒には悲しい過去があった。
あれは小学校の時だった。小学校の時、自分は男みたいな女と苛められていた。しかし、そんな自分を助けてくれた人がいた。それが一夏だった。
一夏は箒を苛めていたのを見て見ぬ振りは出来なかったのと、男子がよってたかって一人の女子を苛めているのが許せなかったからである。
そこまでは良いだろう。それ以上が問題だった。それ以来、箒は転校するまで一夏に付き纏い、好きな剣道をさせていた。
それは転校するまで続いた物の、箒は何時の間にか一夏を想いを寄せ始めていた。転校日は一夏とは別れる事になるも、箒はそれ以降の小、中学校生活は辛い物思い出ばかりだった。
箒を忌み嫌うか快く思わない者達がいた。その者達は束が造ったISにより、女尊男卑になり、女性のせいで家族が仕事を止めさせられ、家庭が崩壊した者達である。
彼等は家庭が崩壊したのも箒の姉である束のせいであると同時に、箒に束の変わりとして八つ当たりしたのである。
箒は孤独だっだ。友達が居なかった。居たとしても彼等と同じように苛められると思ったからである。
箒は誰にも助けを求める事が出来なかった。束を使えば何とかなるだろうが箒は姉が憎い為何も言えなかった。
家族も束のせいで離れ離れになり、相談出来る御内も居ないのと、転校を繰り返す日々を過ごしていた。だが、箒には唯一許すのは一夏であり、一夏が自分を助けてくれるのだと。
にも関わらず、一夏は行方不明になった。箒から見れば束を更に憎むだけでなく、一夏が居なくなったのは箒には更に孤独を味わわせるのを意味していた。
箒は今日までの六年間、一夏が居ない日々を孤独に過ごしてきた。そして今日、一夏が生きてたのと再会したのは予想外かつ、箒が孤独だった日々を穴埋めするには充分な程だった。
なのに、なのに……一夏は拒絶し、楯無を選んだのである。箒から見れば何もかも信じられないのだろう。
「私はお前に逢いたかった……何で、何でなんだぁぁ!! ……あぁぁぁっ!!」
箒は泣き叫んだ。その叫び声は箒自身の哀しみが増しているのを意味している。勿論、それは周りから見れば失恋とも思うだけであり、箒自身の哀しみを知る者は居なかった。
そして、箒の泣き叫ぶ声は扉の外にまで響くも、扉の前を通り過ぎる女子達は箒に同情しているかは解らなかった。
次回、エンフォーサーが一夏達にある事を教え、エルダーの命の下、ある武器を授けます。