ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
二時間後、ここは一年一組の教室。教室にはこのクラスに所属している女子達がいた。が、女子達は何故かたじろいでおり視線をある方向を見やっている。それは教卓の前にある席に座っている一夏にだった。
一夏は頬杖を突きながら黒板を睨んでいる。誰かに声を掛けられても返事はしないーーと言うよりも誰も声を掛ける事が出来ないと言い換えれば良いだろう。
一夏からは負のオーラが醸し出されているが一夏が怒っているのを意味していた。では、何故一夏は怒っているのかは食堂での出来事だった。あの時、一夏は楯無と共に食堂で食べさせ合っていた。
あれは止める事は不可能となった誤解を誤魔化す為だった。が、あの時の一夏は嫌々ながらも楯無に食べさせ、楯無も満更ではないが一夏に食べさせていた。あれは今でも一夏には嫌な思い出かつ、苛々されるにも充分だった。
因みに、それを見た女子達が何故かブラックコーヒーや辛い物を頼んでいたのは言うまではなく、止も挫いた足を引き摺りながら食堂へと来た時に自分達を見てからかい、遠くから箒が自分と楯無を睨みながら朝食を摂っていたのも言うまでもない。
話を戻そう。一夏は未だ怒っていたが女子達は一夏から醸し出されるオーラにたじろいでいた。一夏は苛々しており、近くには止や勇人はいない。止は湿布を貰いに保健室に言ってるのと勇人はその付き添いで一緒にいる。
二人は一夏のストッパー的な役割をする者達だが生憎二人はいない。その為、一夏は苛々している。女子達も女子達で誰も声を掛ける事は出来ない……訳ではなかった。ーーおい、一夏! ーー。そんな一夏に訊ねる勇気ある者がいたーー箒だった。
一夏は表情を険しくしながらも視線を箒へと向けるも、箒は腕を組みながら表情を険しくしている。恐らく、一夏と楯無の関係を訊ねようとしているのだろう。
が、一夏はあれを誤解とも言えない上、千冬と同様毛嫌いしている為、答えるつもりはない。嫌、今の一夏は既に苛々している為、怒るのも時間の問題だろう。
「一夏……貴様、あの更識と言う女とは付き合っているのか!?」
「…………」
箒は指摘するも、一夏は箒から眼を逸らす。
「答えろ一夏!! あの更識とは付き合っているのか!? それに剣道とかはちゃんとやっているのか!? それにお前には相応しいのは私ではないか!?」
箒は怒りを抑えきれないのか憤怒の形相を浮かべつつあった。が、一夏も一夏で怒りを抑えきれないでいたーーその証拠に、頬杖を突いてない方の手を拳に変え力を入れていた。
箒が何かを言う度に一夏の怒りは何時爆発してもおかしくない。勇人と止がいなければ一夏はもう……。
「答えろ一夏!! 本当にお前と更識は付き合っているのか!? あれは単なる誤解だろ!?」
箒は一夏を問い詰めるも、一夏は歯軋りし始める。最早、怒るのも目に見えていた。しかし、教室の扉が開き、ある人物が教室に足を踏み入れる。
一夏がその人物を見ると瞠目した。その人物は勇人であり、その後ろには止がいた。勇人は一夏の近くにいて問い詰めている箒に気付き、箒を睨む。
ーーぐっ!! ーー。箒は勇人に気付き歯を食い縛るも、勇人は箒を睨んだまま何も言わない。両者の間に重苦しい空気が流れそうになる。が、止が勇人を退かし、止は挫いた足を引き摺るように歩くと、一夏に訊ねた。
「悪いな一夏、ちょっとまだ痛むみたい?」
「え、お前大丈夫か?」
一夏が訊ねると、止は首を左右に振る。
「無理みたい、でも何とか歩ける……ところで勇人に篠ノ之? いい加減睨み合うの止めたら?」
止は呆れながら、勇人と箒を交互に見る。勇人は止の言葉に頷き、箒は止の言葉に舌打ちするも、一夏を見る。一夏は箒から眼を逸らし続けていた。刹那、チャイムがなった。
その音を聴いた一夏、勇人、止の三人、女子達は自分達の席に戻るも、箒は一夏に「また後で来るからな!」と一夏を指差しながら言った後、自分の席へと戻った。
そんな箒に呆れるも、千冬と真耶が教室へと入ってきた。一夏は千冬を見て歯を食い縛るも、怒りは爆発しかけてはいなかった。勇人と止がいた為に何とかなったのだ。
が、更にある出来事が一夏を追い詰める。それは、千冬の一言から始まった。千冬は教卓の前に立つと、一夏、勇人、止の三人を交互に見る。一夏を見た際は一瞬哀しい眼をするも、ある事を話した。
「授業を始める前に織斑、霧崎、勇人の三人に政府がお前達の為に専用機を与えてくれるらしい」
千冬の言葉にクラス中の女子達がざわざわし始める。そうだろう、専用機は国家代表か一部の代表候補生にしか与えられない。それを一般の、ましてや貴重な男性操縦者に与えられるのは例外である。
彼等は代表候補生でもなければ国家代表てもなく、一流の人間でもない。それに政府は一夏達が入学した直後に専用機を造るよう命令したのだ。
これには企業側も困惑するが膨大な資金を貰えば手のひらを返すように了承した。まあ、男性操縦者の専用機を造ったとなれば有名になるからだろう。それに政府は彼等の戦闘データを調べる為でもある。
女子達はざわつく中、真耶が落ち着かせる。だが、更に面倒臭い人物が横槍を入れる。
「あらまぁ? 専用機を与えられますの? なら、フェアにならずに済みますわね?」
セシリアだった。セシリアはイギリス代表候補生であるが専用機を与えられている為、問題はない。嫌、セシリアは一夏達に専用機が与えられるの事に喜びを隠せない。それは一夏達に醜態を晒すように痛めつけるのではないのかを期待していた。
セシリアは喜ぶ中、一夏は冷静に聞き返した。
「それは断る。生憎俺達にはウェイランド・ユタニ社から独自の専用機を与えられているからな?」
「ウェイランド・ユタニ社!!!?」
一夏の言葉に女子達は更にざわつく。ウェイランド・ユタニ社。それは束が作った架空の企業で一夏達が専属パイロットとして活動している。それだけでなく、ウェイランド・ユタニ社は男性用のISも作っていると噂があり、女尊男卑主義者から見れば嫌な存在企業としか思われていない。
だが、それは女尊男卑主義者が崇拝している束が作った架空企業であると知ったらどうなるのだろう……嫌、それは誰にも知らない。だが、千冬は何故か引かなかった。
「そんなのは返却してしまえ、霧崎や勇人は兎も角、お前だけでも良いがな?」
「はっ?」
一夏は惚けるも、千冬は腕を組み言葉を続ける。
「実はお前の専用機は倉持研究所が造ってくれているが、その名は白式ーーお前に相応しいISだ」
「…………」
千冬の言葉に一夏は千冬に軽蔑な眼差しを向けながら両手を拳な変え力を入れていたーー今でも、一夏は怒りそうになっていた。が、そんな一夏を見た千冬は少し肩を竦めるも言葉を続ける。
「そ、それに白式は私のIS、暮桜の後継機だーーそれに武器は刀一本しかないが、お、お前ならそれくらいでも大丈夫だろ?」
「……ウェイランドユタニ社から専用機を与えられているって言ったろ?」
「だから返却してしまえ……それに私はお前の姉だーーだから……」
「黙れぇーーーーっ!!!」
刹那、一夏は叫んだ。勇人は瞠目し、それ以外の周りは一夏が叫んだ事にたじろぐも、一夏は同時に立ち上がると叫んだ。
「ケルティックーーーーッ!!」
一夏はそう叫びながら右腕を振り翳す。それを見た勇人は「まずい!」と内心慌てるも、一夏の振り翳された腕からISの武器が展開される。
スピアーだった。一夏はスピアーを掴み伸ばすと、千冬目掛けて突き刺そうとした。刹那、一つの大きな音が木霊する。
「あ、ああっ……」
「ぐっ……」
周りの女子達は戦慄した。が、それは教卓の前にいる一夏と千冬を見ていた。一夏はスピアーを千冬の顔の直ぐ横へと千冬の顔を通り過ぎ、黒板を刺していた。
が、勇人は一夏を見て驚くも、真耶は涙目になっていおり、千冬は冷や汗を掻いている。しかし、一夏は怒りの形相を浮かべている。それはさっきまで我慢していた怒りを堪えきれなかったのだろう。そして、一夏はスピアーを下ろすと、こう叫んだ。
「良い加減にしろ織斑千冬……これ以上俺を怒らすな!!」
一夏はそう叫ぶ。それを聞いた千冬は肩を竦める怯えるも、周りの女子達も怯える。勇人は何も言わなかったが止は驚いている。
「俺はあんたの弟である以前に一人の人間だ……俺はあんたの玩具でもない!!」
一夏は千冬に怒るも千冬は怯えながらも反論した。
「そ、それは違う!! 白式はお前の為に造ったのだ!」
「それは違う!! あんたは俺への罪滅ぼしだとしてもあんたの好きにさせたいだけだろうが!! てめえは何をしたいんだ!? 単なる押し付けだろうが!?」
一夏の言葉に千冬は何も言えなくなる。
「止めろ一夏!! 千冬さ……織斑先生はお前の為に思って言ったのだ!」
だが、箒が横槍を入れるも一夏は箒を睨む。
「てめえもてめえだ篠ノ之!! 俺と楯無は付き合ってんだよ! 何度言えば解るんだよ!?」
「なっ!?」
箒を眼を見開くも、一夏は言葉を続ける。
「それに楯無に手を出してみろ……てめえの顔を殴るからな……千冬……てめえも俺に干渉するな」
一夏はそう言った後、スピアーを解除し、やるせない気持ちを抑えつつケッと言いながら座る。
それを見た千冬や箒は顔を青くし何も言えなくなり俯くも、勇人は瞑目し、止は一夏を宥める。
しかし、真耶やセシリア、クラス中の女子達も一夏の激怒とも言える叫びに半分涙目になり、半分震えていた。
そして、一年一組は一夏のお陰で暗い気分になったのは言うまでもなく、他のクラスでも一夏の叫び声を気になる生徒達がいたのも言うまでもなかった。
そして、クラス代表決定戦までの間、楯無や勇人や止、箒以外は誰一人一夏に声を掛ける者は居なかった。因みに箒は未だ一夏と楯無の関係を聞いたのは言うまでもない。
次回、クラス代表決定戦第一試合、止VSセシリア