ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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第55話

「ハァァァッ……!」

「ツアァァッ……!」

 

 一夏と勇人は今、互いの必殺技を繰り出そうと構えていた。一夏は身構えながらも右拳は蒼く光っており、勇人は左手にはレイザーディスクを持ってるものの、左手とレイザーディスクは紫色の光を発している。

 それは一撃必殺技とも言える単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)。二人はその能力で止めを刺そうとしていた。それはたった一度しか出来ない。何故なら、二人は先の戦いで満身創痍とまではいかないが多少のダメージを受けている。

 その為、二人は、この必殺技に全てを賭けようとしていた。当たれば勝ち、外せば負けるーー二人はそれに気付きながらも互いの相手に狙いを定める。

 一瞬の油断は許されない。油断すれば敗北を招く。二人はそう気付きながらも一夏は全身蒼く光り、勇人は全身から紫色の光りを発する。

 単一仕様能力が発動する事を意味していた。それを見た観客席にいる女子達や教師達、実況席にいる薫子、ピットにいる楯無や止は息を呑む。が、箒は何故か苛々しており、千冬は何故かソワソワしていた。

 

大地の怒り(アース・アンガー)!」

絶望へのタイムリミット(アペルピスィア・タイムリミット)!」

 

 そして、一夏と勇人はそう叫びながら互いの相手に対して突き進む。そして、一夏は突き進みながら右拳を前に突き出し、勇人は左手に持ってるレイザーディスクを一夏目掛けて振る。

 刹那、二人が互いに衝突すると同時に爆発音に近い音がアリーナ中に轟き、アリーナに激しい震動が発生しアリーナ中を揺らし、衝撃波が観客席を守るシールドにひび割れを起こす。

 それを見た女子達や教師達はたじろぎ、アリーナが揺れる事に気付き驚愕し、シールドがひび割れした事に恐怖した。が、ある一機のISが背中からシールドへと叩き付けられる。

 その近くにいた女子達は突然の事で驚くも、そのISを纏っているのは……勇人だった。そして、軍配が上がったのは一夏だった。

 一夏の繰り出した技が勇人よりも少し速かったのだ。一夏の右拳は勇人の胸に命中したのだった。

 

「…………」

 

 一方、勇人はISを纏いながらもIS火花が飛んでいるだけでなくボロボロだったーーが、勇人はそのまま地面に落下し、そのまま地面に叩き付けられる。

左手にはレイザーディスクはない。一夏の必殺技を喰らった直後に手放してしまったのだ。

 勇人からは起きる気配はない。死んだわけではない、気を失っているだけだった。一夏は一夏で肩で息をしていたが、ゆっくりと地面に着地し、ISを解除した。

 が、顔にはケルティックのマスクが、右腕にはコンピューターガントレットが、首にはIS、ケルティックの待機状態の物の首飾りが残っていた。にも関わらず、一夏はケルティックのマスクを着けているが何処か疲れてはいないがそのまま俯せに倒れ、そのまま目を閉じた…………。

 

 

 

 

 

 

「う、ううん」

 

 数分後、一夏は目を覚ます。それを見て喜びを隠せない者がいたーー楯無である。

 

「一夏君!」

 

 楯無は一夏が目を覚ました事に喜びを隠せない。一方、一夏は瞠目し上半身だけを起こし、辺りを見渡すが此処はピットだった。近くには止、箒や千冬は居ないが、楯無はいる。

 

「此処はピット……はっ、勇人は!? 試合はどうなったんだ!?」

 

 一夏は勇人や試合の事を楯無に訊ねるも、楯無は肩を竦める。

 

「ちょっ、落ち着いて……勇人君は大丈夫よ、止君や山田先生が付き添ってるし、私は一夏君の付き添いよ」

 

 楯無が理由を説明するも、試合の事も説明した。実はあの後、薫子は驚きながらも一夏の勝利を宣言した。それにあの時、女子達や教師達の一部は何故か身体を震わせていたのは余談である。

 が、気を失っている一夏や勇人をピットまで運んだのは止であるが、真耶も手伝っていたのは言うまでもない。因みに千冬は此処には居ない。

 ある理由で教師達と話をし、箒は止にピットから追い出されたのだ。それにケルティックのマスクは止が外し、今は楯無の近くに置かれている。

 一夏は楯無から聞いた後、胸を撫で下ろす。が、何処かホッとしていた。

 

「良かった……」

 

 一夏はそう呟くも、再び寝転がる。

 

「…………」

 

 そんな一夏を楯無は無言で見つめていた。その瞳は何処か哀しそうで、何処か安心しているようにも思えた。が、楯無は突如、どんでもない行動を起こす。

 それは楯無が一夏の頭ら辺に移動して正座し、一夏の頭を持ち上げた。刹那、一夏は瞠目し楯無を見るも、楯無は頬を紅くしながら恥ずかしそうに目を逸らす。

 何故なら、一夏は楯無に膝枕をしてもらったのだ。それは楯無の恥ずかしすぎる行動でもある。が、一夏から見れば突然の事で驚きを隠せない。

 一夏は楯無に訳を話して貰うと同時に起き上がろうとした。ーー駄目っ! ーー。しかし、楯無は一夏にそう叫び、それを聞いた一夏は起き上がるよりも少しだけ怯み、楯無を見る。

 楯無は頬を紅くしながら未だ目を逸らしていたが、不意に一夏を見つめるも、一夏の頭を撫でる。一方、一夏は未だ驚いていたが楯無は口を開く。

 

「貴方はさっきまで闘っていた……多分、疲れていると思うから……」

「だからっ……」

「床じゃ固いーー頭が痛くなるかも知れないから……それに」

 

 一夏が何かを言うのを楯無は遮る。そして、楯無は何かを言う前に深く頷くと、一夏に言った。

 

「膝枕は私のたった一つの我が儘……貴方への罪滅ぼしでもあるのよ」

 

 楯無の言葉に一夏は「はっ?」と惚ける。しかし、楯無は一夏への罪滅ぼしと言ったのは、あの時の借りを返す為でもあった。犯されそうになった自分を助けてくれた事や、この前の嘘の恋人宣言をしてくれた事や、自分を箒から守ってくれた事や慰めてくれた事。

 どれも自分に原因がありながらも、彼は、一夏は何も文句はいなかった。なのに自分は一夏に何もしていない。ならば、少しずつでもいいーー彼の為に何かをしょうとも思っていた。

 一夏が拒絶しても、楯無は何が何でもしょうと思っている。そんな楯無に一夏は文句が言いたかったものの、楯無はある事を口にする。

 

「お願い一夏君……私が許されない事をしているのは解っているわ……でも、私の小さな我が儘を聞いて……お願い、お願いっ!」

 

 楯無は一夏に懇願する。それは楯無の小さな小さな我が儘でありお願いでもあった。そんな楯無に一夏は「更識……」と呟くも、渋々と言った感じで楯無に言った。ーー判ったよーーと。

 それを聞いた楯無は微笑むも、一夏の頭を撫で続ける。一方、一夏は恥ずかしいのか楯無から顔を逸らす形で寝返りを打つも、耳まで赤くしていた。

 そんな一夏を見た楯無は何故か笑いを隠せない。可愛い、と言いたかったが楯無は内心止めておこうと思った。言えば言えばで一夏が何か文句を言うのも目に見えていた。だが、楯無は別の意味でこう思っていた。

 

 ーー私に出来る事は、これしかないけど、せめて、少しの間だけこうしていたいーーと。

 

 楯無の本心だったが楯無は口にしなかったーー無駄に終わった。それはピットを出入り出来る扉から一人の女性が入って来た。千冬だった。

 楯無は扉の方を見た直後に千冬に気付くも、不意に「織斑先生?」と呟いてしまい、それを聞いた一夏は瞠目するも直ぐに表情を険しくしながら歯を食い縛り、手を拳に変える。

 

「一夏君?」

 

 楯無は一夏の様子に気付く。一夏は千冬に憎悪を抱いていた。その為、自然と表情を険しくしてしまったのだ。そんな一夏に楯無は、身体を震わせながら手を拳に変えている一夏の拳を手で優しく包むように掴む。

 ーー更、識? ーー。一夏は楯無の行動に少し驚き楯無を見ると、楯無は一夏を見てはおらず、千冬を見ていた。

 

「どうしました織斑先生? 何かようですか?」

 

 楯無は千冬に訊ねると、千冬は少し驚きながらも答えた。

 

「実はクラス代表決定戦が中止になった事を伝えようと思ってな?」

「中止、ですか?」

 

 楯無は千冬に再び訊ねると千冬は頷いた。

 

「ああ、それよりも一夏は起きてるのか?」

「まぁ、一応起きてますが一夏君に何か用ですか?」

 

 楯無が訊くも、一夏は表情をますます険しくする。お前には用はないと言いたかった。しかし、千冬は頷くと、ある事を口にする。

 

「ああーー実は一夏の持ってるISを調べたい……だからこそISを預かりたいが為に来たのだ」

 

 千冬はそう言った。が、それを聞いた一夏は耳を疑い瞠目する。そして、千冬に更なる悲劇が襲う事を千冬は知らなかった。それも、後数分も経たない内に……。




 次回、新章突入。(クラス代表対抗戦までを執筆する予定です)
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