ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
今回は前後編で別けます。
あれから数時間が過ぎ、放課後になった。今は夕方なのか空はオレンジ色に染まり、IS学園もオレンジ色に染まりつつあった。そんな学園の屋上に一夏、勇人、止の三人がいた。
一夏は憤怒の形相を浮かべながら腕を組み、勇人は無言で夕日を眺めており、止は俯きながら手すりに凭れ掛かりながら座っていた。
彼等は各々、その場を動かなかったが共通している事はあった。それは、彼等が内心、ロシア政府への怒りを隠しきれない事である。
事の発端は、最初に観たのは勇人だがスマートフォンの画面にあった、ロシア政府が腐っている事を意味している数々の証拠と元ロシア代表の人が自殺した真相。
恐ろしい内容だった。その内容は、ロシア政府の役人や政治家達が関わった数々の不祥事。それは良いかも知れないが、元ロシア代表が自殺した真相は極めて恐ろしく且つ、酷い物だった。
政府は元ロシア代表の人から代表の座を奪っただけでなく、専用機を没収し、更には代表に返り咲く事は出来ないように手を回したのである。
それには理由があった。実は元ロシア代表の、更に元ロシア代表の者が政治家の母を持っていた事が災いでもあった。何故なら、更に元ロシア代表の者が元ロシア代表に座を奪われた事に逆怨みし、母に頼んで代表の座から下ろすように頼んだのである。
更に最悪な事に、母は女尊男卑に染まった人間だった事も災いし、母は更に元ロシア代表であり娘でもある者の願いを聞き入れ、権力を振り翳して無理矢理奪ったのである。
が、娘は代表に返り咲く事は出来なかった。彼女よりも楯無の方が実力が上だった為に、代表にはなれなかった。その上、政府はその女性議員や更に元ロシア代表の者を謀殺したのである。
何故殺ったのかは判らないが、ロシア政府には何か訳があるのだろう。勿論、そんな事を言ってる場合ではなかった。
それに、この事を教えたのは勇人が束に頼んで調べて貰うようメールで送信し、束が勇人に教える形で返信したからである。
しかし、今はそんな事を言ってる場合ではない。彼等は既に、ロシア政府の役人達を鏖殺しょうと思っていた。最早、彼等を止める事は出来ず、誰も止める事は出来ないと言えば良いだろう。
「二人共、決まったか?」
一夏が勇人と止に訊ねると、勇人は顔を一夏の方へと向け、止は一夏を見る為に顔を上げる。勇人は表情を険しくし、止は哀しそうだが何処か険しいようにも思える表情をしていた。
勿論、二人の答えは決まったていた。彼等も一夏と同じ気持ちだった。ロシア政府には死の制裁を与える。これには周りは反対するだろうが、三人には関係ない。
ーーああーー。二人は一夏に答える。それを聞いた一夏は深く頷くと身体を翻し、勇人も身体を翻し、止は立ち上がると、屋上を出ていく形で学園内に戻ろうとした。
刹那、屋上を出入り出来る扉が開く。一夏達は扉が開いた事に気付き立ち止まるも、一人の女子生徒が屋上へと来た。その女子生徒は一夏達に気付き微笑む。
ーー更識ーー。一夏はその女子生徒を知っていたのかそう呟いた。その女子生徒は楯無だった。楯無は一夏達の元へと歩み寄る。が、一夏は楯無から目を逸らす。
「此処に居たの?」
楯無が最初に言った言葉はそれだった。勿論、一夏は何も言わない。が、楯無は哀しそうに俯く。
「知ってるわ……エレーナ先生の事でしょ?」
楯無がそう言うも、一夏は軽く頷く。何故なら、エレーナ先生が狂った事は学園全体に知れ渡っていた。それは女子達から見れば気になるのと、恐いと思われるだけだ。
だが、大半の女子生徒達はエレーナ先生に何が遭ったのかは知らない。反面、一部の者達はエレーナ先生が、エレーナ先生の妹が自殺したのと何か関係があるのではないのかと思っているのも事実だ。
しかし、それとは関係あるかもしれないが今は色んな意味で違う。楯無が此処に来たのも一夏達を捜していた。それも、彼女自身が嫌な予感を感じたからである。
楯無が気にしているのは一夏の事だった。エレーナの件もあるが、楯無はある事を一夏に訊ねる。
「一夏君……何かを考えていない?」
ーーはっ? ーー。楯無の言葉に一夏は惚ける。が、楯無は一夏を見据える。その瞳には何か心配事があるかのように哀しい。
「一夏君……まさか、人を殺すつもり?」
楯無は一夏に問い、それを聞いた一夏は瞑目したが何も言わなかった。勿論、楯無から見れば当たりだった。
「当たり、なの……?」
楯無は恐る恐る再び訊くと、一夏は微かに頷いた。ーーッ!? ーー。それを見た楯無は瞠目した。
「な、何を言ってるの? 何を言ってるのよ!?」
楯無は驚きながら、一夏に詰め寄る。一方、一夏を瞼を開き、楯無を見据える。
「だから人を殺すんだよ……ロシア政府の奴等をな」
「そ、そんなの駄目に決まってるじゃない!! そんなの許される事じゃないわよ!?」
楯無は一夏に詰め寄りながら問い質す。そうだろう、楯無は一夏が再び人を殺す事を許さなかったからである。何故なら、一夏は自分の家族のせいで許されない事をしてしまった。
それは楯無にとって辛い思い出かつ、一夏への罪悪感はあった。それに一夏はその事に怒らなかったのと、自分のせいで学園中に嘘の告白をさせてしまい、自分がエレーナ先生に殺されそうになった際も突き飛ばす形で守ってくれたり、昨日の夜、自信を取り戻せと言ってくれた。
それなのに、それなのに一夏は再び悲劇や取り返しのつかない事を繰り返そうとしていた。これには楯無も怒る筈だ。
楯無から見れば、一夏をこれ以上、危険な目に遭わせたくはなかった、彼が取り返しのつかない事を繰り返らすのを見て見ぬ振りは出来なかった。
「一夏君駄目よ! 貴方はもうこれ以上……絶対駄目よ! ……馬鹿な事は止めて!!」
楯無は一夏にそう懇願する。それに今朝、楯無が一夏に対しあんな行動をとったのもあんな事を囁いたのも、色んな事で疲れている一夏を元気付ける為の行動でもあった事に、一夏は気付いていない。
無論、そんなしても一夏はただただ困惑するだけである事に楯無自身も気付いていない。
「そんなのは俺の自由だ……誰かがやらなければ、犠牲者は増え続ける」
「それはそうかも知れない……だからと言って」
「そんなのはお前が知らないだけだ!!」
楯無が何かを言う前に一夏が怒りながら遮り、それを聞いた楯無は一瞬の事で肩を竦めた。が、一夏は言葉を続ける。
「お前に何が解る!? ロシア政府の下らない事で周りの人間が不幸になった!! それなのにロシア政府は知らぬ存じぬ!! こんな事許される筈もねえよ! ロシアだけじゃねえ、何処の国も腐っているに違いねぇ!!」
一夏は怒りながら言葉を述べる。何故なら、一夏は政府が嫌いだった。それは一夏が三年前、誘拐された際、日本政府が名誉の為に伝えていない事を束から教えられ、知った。
だが、そのせいで一夏は千冬は元より、政府が名誉を選んでいた事により、政府が腐っている事に怒りを隠しきれなかった。ケルティック達が助けに来なければ自分は殺されていたからである。
それ以来、一夏はISのせいで腐った世界を嫌いになった。同時に自分達はISを使っている。それは一夏達にとって皮肉な話でもあった。それに、勇人や止もまた、政府により人生を狂わせられた者達だった。
しかし、政府により人生を狂わせられた者達は後を絶たないのも事実であり、全員救う事も出来ないのも事実である。一夏達はそれを知らない訳ではないーーだからこそ、一夏はロシア政府のやり方が三年前の、日本政府と同じやり方とも思ってしまったのである。
「俺達はロシア政府の奴等を許さない……奴等には死が相応しい」
一夏はそう呟くと、楯無を突き飛ばす。楯無は尻餅を着くも、一夏達は屋上を出ようとする為に歩き出す。
「一夏君……ッ!!」
楯無は下唇を噛むも直ぐに立ち上がり、一夏達より先に屋上近くの扉の少し手前まで駆け寄ると、一夏達と向き合い、ISを部分展開した。
その場所は右腕であり、大型ランスを手にしていた。楯無の突然の行動に三人は立ち止まる。止は驚きを隠せず、勇人は眉間に皺を寄せ、一夏は瞠目していた。
しかし、楯無は表情を険しくしながら身構える。それは一夏をこれ以上人を殺させない為でもあった。そして、楯無は一夏にこう言った。
「一夏君……貴方をこれ以上辛い思いををさせたくない……だから、私は生徒会長として貴方を止めるわ!!」
楯無は一夏にそう言った。勿論、それは楯無が勝てばの話である。だが、そんな楯無を一夏は直ぐに表情を険しくしながら無言で見ていた。
次回はとある理由で教えられません。