ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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第66話

 ーー何してんだよ? ーー。楯無の行動に、一夏は細い目で楯無を睨む。一方、楯無はランスを持ち構えたまま歯を食い縛っていた。

 

「聞こえなかったの? ……私は貴方をこれ以上人を殺めさせない為に止めようとしているのよ?」

 

 楯無は一夏に訳を話す。今の楯無は一夏を止める以外、何もしなかった。一夏への罪悪感もあるが楯無にとって、唯一の罪滅ぼしでもあるのだった。

 そんな楯無に一夏は溜め息を吐き、ふと、勇人と止を見る。勇人は瞑目していたが、止に至っては未だ驚いている。だが、一夏は二人に言った。

 ーーここは任せろ、二人は先に寮に戻ってくれーー。一夏は二人にそう言った。それを聞いた止は再び驚きを隠せず、勇人は目を開け頷いた。

 止は兎も角、勇人は気付いたのだろう。一夏は楯無を相手にしようとしている。勿論、一夏は相手にしたくはなかったのだが、楯無の事だから無理をしてでも止めようとするからだ。

 だからこそ、一夏は楯無と闘い、楯無に勝つ事で、楯無に自分との実力の違いを教えようとしていた。勇人は止に声を掛けた。ーーここは、一夏に任せようーー。

 勇人は止にそう言った。これには止も三度驚く。刹那、一夏は楯無と距離を保つように前に出ると、右腕を掲げる。刹那、一夏の右腕からISが部分展開され、同時に少し上にスピアーも展開され、一夏はスピアーを手に取ると、軽く振り回すと、楯無に対し、武器を構える。

 一夏は楯無と戦おうとしていた。しかし、どちらに軍配が上がるのかは誰にも判らない。それを見届けるのは勇人と止ーーーーではなかった。見届ける者は、誰もいない。

 何故なら、勇人が突然右腕に着けているコンピューターガントレットを操作し始める。刹那、勇人は姿を消した。ーーは、勇人!? ーー。止は勇人の行動に驚くも、止も姿を消した。

 ーーっ!? ーー。それを見た楯無は目を見開く。刹那、一夏は地面を蹴って楯無に迫る。楯無は一夏の行動に戸惑う前に一夏のスピアーをランスで防ぎ、そのまま鍔競り合いになる。

 が、長くは続かなかった。何故ならば、一夏が力を込めてスピアーを上に振るったからだ。

 同時に楯無のランスも無理矢理上へと振り上げられる。ーーあっ! ーー。楯無はランスが上へと振り上げられてしまった事に驚きはしなかったが怯んでしまい、後ろへと引っ張られるようによろけてしまうも、何とか持ち堪え再びランスを身構える。

 一方、一夏はスピアーを肩に掛けながら、楯無を見据える。その表情は険しいーーまるで、楯無のせいで時間を食われているからだろう。

 そんな一夏に楯無は悲しそうな目で見つめる。彼をこれ以上、人を殺めさせない為にも、何としてでも此所で彼を止めるつもりだった。

 が、それは一夏に任せた方が良いだろう。二人から見ればの話である。二人は身体を透明にしたまま屋上を出ていく形で学園内に戻っていた。

 そして、屋上には一夏と楯無しか居なかった。

 

 

 

「ったく、更識の奴、何を考えてやがるんだ?」

 

 廊下に勇人の声が響く。勇人は今、隣にいる止に愚痴を溢していた。勿論、そんな勇人に止は苦笑いをしている。そうだろう、自分達のリーダーは一夏であるが、一夏が居ない間は勇人が仕切っていると言い換えれば良いだろう。

 それに二人は今、鞄を取りに教室へと戻る為に廊下を歩いていたのだ。二人が教室へと戻ると、教室には僅かながら女子が残っていた。

 一部が二人に気付くも、二人は気にもせずに自分達の席にある鞄を取りに行こうとした。ーーあ、トッマにはやはやだ~~ーー。

 近くから自分達を呼ぶ声が聞こえ、二人は声がした方を見ると、そこには長い裾をヒラヒラと動かしている女子生徒が喜びの表情を浮かべていた。

 ーーほ、本音? そのトッマってーー。止がその女子に訊ねる。その女子は本音だった。が、本音はニュフフと笑っていたが、勇人は本音を見て舌打ちする。

 

「どうしたの本音? 何かよう? それにさっきのトッマって……」

 

 止は本音に訊ねると、本音は首を傾げる。

 

「何って、トッマは私が止の呼びたい時の方だよ~~?」

「そうなの? それにトッマって言うのは……悪くない」

 

 止は少し恥ずかしそうに笑う。それを見た本音は少し笑うと、ある事を訊ねた。

 

「それよりもイッチーは何処なの?」

 

 ーーイッチー? ーー。本音の言葉に止は疑問を抱く。が、本音はその事を教えた。

 

「イッチーは一夏の事だよ?」

「一夏の事? 一夏だからイッチーなの?」

 

 止の言葉に本音は「そうだよ?」と答えた。が、一夏が何故イッチーと呼ばれているのかは解らないが、止はある事に気付き訊ねる。

 ーーそれよりも何の用だ? ーー。そんな二人のやり取りに勇人は呆れながらも、勇人は本音に訊ねる。もし用があるならば声が掛けないと思ったからである。

 勿論、勇人の言葉に本音は「そうだった~~」と長い裾をヒラヒラと動かす。

 

「それよりも二人共、今日の夜空いてる?」

「今日の夜? 何かあるの?」

 

 止の言葉に本音は頷く。

 

「うん、今日ね~~トッマのクラス代表記念パーティーをやろうとおもってるんだ~~」

 

 ーークラス代表記念パーティー? ーー。止の言葉に本音は頷く。それは女子達が止がクラス代表になった事を記念としてパーティーを考えたのである。

 しかし、それは女子達がデザート無料パスを手に入れる為でもあり、止にクラス対抗戦で優勝して欲しいからでもあった。勿論、一夏は居ないが二人が女子達ともコミュニケーションを取れる事が出来るかもしれない。

 三人は大抵、女子達とはあまり話をしていない。パーティーでコミュニケーションを取れば、三人は変わるチャンスもあるかも知れないからだ。

 しかし、止は首を左右に振った。

 

「ごめん、これから用があるんだ……」

 止の言葉に本音は「えっ?」と目を見開く。が、本音は直ぐに止に訳を問おうと問い質す。

 

「ど、どうしてなの~~? パーティーに参加しないの~~?」

「いや……その。ごめん」

 

 止は訳を話せなかった。そうだろう、自分達は、これからロシア政府の奴等に報復しなければならないのだ。その為パーティーに参加出来ないのだ。それを言ってしまえば、一夏や束に迷惑を掛け、周りにも迷惑を掛けるのも目に見えていた。

 止は未だ戸惑うも、本音は泣きそうになる。

 

「トッマ~~」

「ああっ、ちょっと!!?」

 

 本音が泣きそうになっている事に気付いた止は慌てる。勿論、止も参加したかったのだが何時帰ってくるかは判らない為、どうしようもなかった。それだけではない、周りの女子達も何故か止に詰め寄る。

 

「霧崎君参加しなよ!」

「そうだよ! 主役の居ないパーティーなんて、只のパーティーだからさ!?」

 

 周りの女子達も止に参加するよう促す。これには止も更に戸惑うも、ロシア政府への怒りよりも女子達の凄さにたじたじだった。

 

「……チッ」

 

 そんな止や女子達のやり取りに勇人は舌打ちする。だが、勇人も動けなかった。それは、勇人もまた、女子達に参加するよう強要されていた。と言うよりも、勇人は女子達に怒りを覚えたのもまた別の話である。

 そして、教室は女子達の勇人や止にパーティーに参加するよう強要する言葉が木霊しているのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぐっ……っ」

 

 その頃、屋上では楯無がランスを杖代わりにしながら跪きつつ、目の前にいる一夏を見た。一方、一夏はスピアーを軽く振り回していた。

 勿論、二人はさっきまで槍を使って一戦交えていた。それもどちらも互角だったがお互い退かなかった。どちらも槍捌きは凄まじく、紙一重で躱すのもやっとだった。

 嫌、楯無が跪いているのは楯無が僅かにスタミナ切れを起こしたからである。勿論、一夏はスタミナ切れを起こしてはいない。

 楯無は訓練はしているが、一夏の場合は修行していたと言い換えれば良いだろう。

 

「うぐっ……」

 

 楯無はよろけながらもランスを身構える。ーー何故無駄な事をする? ーー。一夏は楯無の行動が解らないでいた。しかし、楯無はその事を話した。

 

「私は貴方を止めたい……これ以上、貴方に人を殺させたくない……だからこうして足止めしてるのよ……」

 

「…………」

 

 一夏は険しい表情を浮かべながらも、楯無は言葉を続ける。

 

「私は貴方にしてはいけない事をさせてしまった……謝っても許される事じゃない……だけど私も解らないのよ……自分はこうして貴方を足止めしても効果が無い事は解っているわ……でも」

 

 楯無は眼に涙を浮かべる。

 

「私は出来る事をしたい……貴方は私に自信を取り戻せと言ったーー貴方は私に怒りながらも、私を責める事はあまりしなかった……でも、私も貴方の為に何かをしたいーー出来ないと解っていながらも、貴方の為に何かをしてあげた……い」

 

 刹那、楯無は眼を閉じ、そのまま前に倒れそうになる。ーーっ!? ーー。それを見た一夏は瞠目し、スピアーを放り投げ、スピアーは地面に転がり落ちるとそのまま消えたが一夏は楯無の元へと駆け寄る。

 刹那、一夏は楯無を支える形で抱き締めた。同時に、楯無はランスを落とすもランスは消えた。が、楯無の様子が少し可笑しかった。

 

「おい更識? 更識!?」

 

 一夏は楯無が気を失っている事に気付く。が、一夏は下唇を噛むと、楯無を横抱きし、とある場所へと向かう為に学園内へと戻った。そして、夕日も沈み掛かり、夜に差し掛かっていた。




 次回、一夏達はロシア政府に……。
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