ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
「くっ……いない」
数分後、一夏はプレデター特有の防具を纏い、顔にケルティックのマスクを着けながら身体を透明にしながら、少女・楯無(一夏は名前を知らない)を捜していたが人が沢山いる為に苦労していた。
ただ、その場を動かなかった訳ではない。一夏は街の中を移動しながら探していたーーそれも、建物の屋上を移動しながら。
屋上は立ち入り禁止場所が多い。しかし、一夏には関係ない事だった。透明になれば誰にも見られる事もない上、肉眼ではあまり見える事は出来ないからだった。
それとは関係なく、一夏は屋上から街を見下ろす。街には沢山の人が行き交う。子供から極僅かに老人や、恋人や家族連れ等が見受けられるが一夏には関係ない。
一夏は探しているのは楯無であり、その他の人達は関係ない。たとえあったとしても一夏にはどうでも良いことだった。
(何なんだろ……あの涙は……それに勇人の言う通りだったのか?)
一夏は、ある事を思い出す。最初に止にぶつかったにも関わらず謝ろうとはしなかった楯無に怒った時の、楯無の流した涙。
あれは、勇人が言った、楯無の身内が誘拐されたと言う推理。勿論、一夏は気付いていないが楯無の身内は誘拐されている。
あの涙も妹、簪を誘拐された為に流した涙であった。それに勇人の言う通りでもあった。
「……っ」
刹那、一夏の忌々しい過去が一夏の脳裏を過る。三年前、一夏は誘拐され、そこで心ない暴力を振るわれ、心に傷を負った。
それもこれも全て姉のせいたが今は関係なかった。今は、楯無が何処にいるのかを知りたがっていた。
「どうすれば良いんだ……」
一夏が焦りを隠せない中、右腕に装着しているガントレットから通信が入り、一夏はガントレットを自分の顔へと近付けさせる。
『こちら勇人、一夏聴こえるか?』
通信を入れたのは勇人だった。勇人からの通信に一夏は首を傾げるが訊ねる。
「どうしたんだ勇人?」
『嫌、それよりもお前に良い知らせだ』
「良い知らせ?」
勇人の言葉に一夏は怪訝な表情を浮かべる。
『ああ、お前が捜していた女は見付かったぞ』
「えっ!?」
勇人の知らせに一夏は瞠目し、直後に我に返り訊ねる。
「ど、何処にいるんだ!? それに何故お前がそんな事を!?」
『まあ落ち着けよ、俺達もお前に協力したいからさ』
「えっ?」
勇人の言葉に一夏は惚ける。そんな一夏の声が聴こえたのか勇人は軽く笑う。
『フッ、まあ俺達もお前から一時間の自由時間を貰ってもやることはないからお前の、女を捜す協力をしたいと思ってよ』
「で、でも俺は自由時間は与えると言ったけど女を捜せと言って」
『それがいけないんだよ』
一夏が言い終わる前に勇人が遮り、それを聞いた一夏は再び「えっ?」と惚ける。
すると、一夏から見れば通信している為判らないが勇人は溜め息を吐き、その後言葉を続ける。
『全く、お前は馬鹿なのか、それとも単に人に頼りたくないのか判らないが、お前は一人で、秋葉原からたった一人の女を捜す事が出来るのか?』
「あ……っ」
一夏は勇人に指摘され言葉を詰まらせる。しかし、勇人の言う通りでもあった。
この街は広い、人が沢山行き交うだけでなく、自分が視線を移動した直後に、楯無が移動していると言う意味で見落としているのかもしれない事もある。
一夏はそれに気付くと何も言えなくなり瞑目し下唇を噛む。すると、そんな一夏に勇人は再び溜め息を吐く。
『全く、俺達のリーダーがそんな事も判んないとはな……』
「ご、ごめん」
『だが、俺にも原因があるから何も言えないーーでも、そんなお前だからこそ俺はお前を尊敬している』
勇人の言葉に一夏は眼を見開く。しかし、勇人は言葉を続ける。
『一夏、俺やスカーに、止はチョッパーに助けられただけでなく、お前にも助けられた。お前には返しきれない恩があるんだ』
勇人は笑うも、何処か寂しそうだった。
『あの時……嫌、今は良い、それよりも一夏、今すぐ秋葉原の広場へと向かってくれ……そこに女がいると止から連絡があったからな』
「えっ、止から?」
『ああ、今は止が監視しているから大丈夫だーーそれに俺は用があるから後から追う……じゃあな』
勇人はそう言うと、一夏の言いたい事を通信を切る。
「フゥ……」
一方、勇人は一人、屋上にいた。
そこは一夏がいる場所とはかなり離れた場所であり、周りには誰もいない。それにそこは立ち入り禁止場所であった為、人が立ち入る心配はない。
それに勇人もまた一夏同様、プレデター特有の防具を身に纏い、顔にはスカーのマスクを着けていた。
「すまない、一夏、止……」
勇人はそう呟くと踵を返し、ある場所へと向かう。それは、とある場所へと向かう為だった。
その場所は此所、秋葉原にあり、勇人がどうしても行きたい場所でもあった。そこに、とある人物が居る為に。
そして、勇人は左腕にある二本の細長いリストブレイドを展開して……。
「う~~ん」
一方、ここは秋葉原の広場の近くにある駅の屋根上。その屋根上には身体を透明にしながら広場を見ている止がいた。
止は屋根上で跪きながら一夏や勇人同様、プレデター特有の防具を身に纏い、顔にはチョッパーのマスクを着け、そして、赤外線モードで広場にいる楯無を監視していた。
「動く気配なしか」
止は呆れながら、その場を動かない楯無を見て呟く。何故、止が此所にいるのかは勇人から一夏に協力する為に、お前とぶつかった女を見つける為に街の中を捜すぞと命令された。
これには止も否定したが勇人は聞き入れず、止は渋々、勇人と共に人気のない場所まで移動した。
そこでコンピューターガントレットを操作して、プレデター特有の防具を纏い、それぞれ、違うマスクを着けて、街の中を捜し、そして、広場にいた楯無を見つけたのである。
話を戻そう、止は右腕に装着しているガントレットを操作し、ある人物達に連絡を入れる。
「こちら止ーー誰か応答してよ、一夏、勇人」
『ーーこちら一夏、止、勇人から聞いたけど、様子はどうだ?』
応答したのは一夏だった。それを聴いた止は不貞腐れる。
「一夏かーーねぇ一夏? あの女を監視しろってどういう事なのさ? 俺はもうちょっとヒーローフィギュアを見たかったのにさ!」
止は自由時間を潰された事に怒る。それを聴いた一夏は、止には判らないが苦笑いする。
『ハハハ、ごめん、でも、ちょっと泣いてたのが気になったからさ』
「ふ~~ん、でも一夏が言うなら良いけど、俺はあの女が許さないもんーーあの女、俺に謝りもしなかったんだぜ?」
『まあ、お前の気持ち解らなくもないけど、一応、引き続き監視を続けてくれーー俺も後からそっちへ合流するから』
「解った……それよりも勇人は?」
『勇人は解んない、用があるから後で合流するって』
「ふ~~ん、それよりも一夏、お前何処にいるの?」
『俺は交差点の真上にある線路近くにあるビルの屋上にいるよ、もうすぐそっちに合流するから、それに俺は女に声を掛けるから、それまで引き続き監視を続けて』
「解っ……えっ?」
一夏の言葉に止は不意を突かれたかのように声を上げる。
『だから、俺が女に声を掛けるまで、女から眼を離さないでくれ、頼む』
「えっ……でも、そんな事をしたら一夏、俺達がプレデターの武器を防具を世間に晒す危険もあるんじゃないか?」
『嫌、大丈夫だ、そん時は防具や武器を解除して近付くから安心してくれーーそれと場所は何処だ? 広場と言っても何処にいるかは解らないからな』
「確か、広場の人目の付かない所で座っているよ?」
『そっか、じゃあ後でな』
「うん、じゃあ気を付けてね?」
止の言葉に一夏は『ああ』と答え通信を切る。止も通信を切った後、再び楯無を監視する。楯無はその場を全く動かない。
それを見ていた止は何かを考える。
「一夏……一体どうしたんだろ? ーーまさか、あの女が泣いていたのと、勇人が言ってた誘拐の事を気にしているのかな?」
止は一夏が思っている事を口にする。すると、ある人物が楯無へと近付く。
それは、一夏だった。それも、ケルテックプレデターの防具を解除しないままで。
「えっ、一夏!?」
それを見た止はチョッパーのマスクを外すが、一夏は身体を透明にしたまま楯無へと近付き、そして巻き込むように身体を透明にした。