ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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 今回、鈴が登場。


第70話

 朝六時半。此処は一夏と楯無が同棲している部屋。二人は今、各々使っているベッドで寝ており、ベッドから寝息が聞こえるも、一夏の瞼が微かに動き、一夏は目を覚ます。

 一夏の視界に最初に入ったのは天井で一夏は手で目を擦り、上半身だけを起こす。因みに一夏は寝間着であり、右腕にはコンピューターガントレットを着けていない。

 コンピューターガントレットはデスクの上に置いてある。

 

「もう、朝か……」

 

 一夏は最初に言ったのはそれであり、その後に欠伸をする。一夏は三時間半しか寝ていないーーその為、一夏は不機嫌なのか表情は険しく、瞼も重そうである。

 

「ったく昨日はーー嫌、今日の更識は……」

 

 と言うよりも、一夏は不機嫌そうに、隣で可愛らしい寝息を立てている楯無を見る。楯無は未だ寝ているが楯無は一夏の方を見ているかのように横向けに寝ている。

 なのに、楯無の表情は少し悲しそうである。一夏は楯無を見て何も言わず、ベッドから降りると楯無を起こさないように着替え始める。

 

 数分も掛からない内に、一夏は寝間着から制服へと着替え、洗面所へと向かい、顔を洗った。

 

「……散歩しょう」

 

 一夏は洗面所に設けられている鏡で自分の顔を見て溜め息を吐くと、洗面所を出て、デスクの上に置いてあるコンピューターガントレットを手に取り、右腕に装着すると、楯無を起こさないように部屋を出る。

 部屋には楯無しか居なかったが楯無は未だ眠り続けており、彼女が目を覚ましたのは数分後であった。

 

 

 

 

 

 一夏は今、学校近くのベンチに腰掛けていた。本来なら勇人や止も一緒だが一夏は一人で行動したいと言う一夏自身の我が儘でもあった。

 一夏はベンチに座っているが、いつも見ている光景に飽きたのと、同じ繰り返しをしているようにも思える光景に何も言わないでいるのか眉間に皺を寄せている。

 これは三年間も続くーー嫌、三年間と言うよりも留年すれば一からやり直し。また、退学すれば同じ光景を見ないで済むのもまた事実である。

 反面、IS学園は他国からの干渉は受け付けない為に身の安全は保証出来る。外に出た場合、命を狙われるのも事実。

 一夏はそれを知りながらも前者を選んでいた。千冬や箒は顔を合わしたくは無い程嫌っているが楯無や束の事もある為、それは出来ないでいる。

 一夏は内心そう思いながらも、朝日を眺めている。その表情はまだ眉間に皺を寄せているが何処か寂しい。

 一夏が人を殺した事に後悔している訳でもなく、楯無の事を気にしている訳でもない。一夏は只、自分は何をしているのか解らないでいる。

 自分は何の為にIS学園に来たのかーー勉強する為なのか、千冬や箒と再会する為なのか、それとも楯無と再会して彼女を立ち直らせる為なのか、と。

 何れも一夏には関係ない事ではない。何れも一夏自身がケジメをつけなければならない事。一夏はそれを知りながらも解らないでいる。

 勇人や止にも言えば良いが彼等にも事情があり、あまり頼りたくはない。頼れば彼等の時間を潰す事になる事は目に見えている。

 一夏は溜め息を吐くと、顔を両手で覆い隠す。考えれば考える程、解らなくなっていく。千冬や箒を益々毛嫌いし、楯無に自信を持つよう言っても彼女はロシアの件でますます自信を無くしている。

 もうどうすれば良いかが解らない。どちらも女性関係の事であり、自分は女性の気持ち等知る事は出来ない。勇人や止に相談出来る筈もない。

 束やクロエに相談出来るかもしれないが束は忙しい身でクロエは手伝っている身。どちらも時間の関係がある為、無理に等しい。

 

「どうすれば良いんだよ……!」

 一夏は歯を食い縛る。最早、一夏は女性の事で自信を無くしつつあり、誰にも相談出来ないでいる。此処は女子校だが自分を良く知る人物ではない。

 自分を知ってるのは束クロエ……それに楯無や、未だ逢ってない親友の妹、蘭……そして。

 

「どうすれば良いんだよ……鈴」

 

 一夏は不意に親友の一人の名を呟く。その少女は中国で再会し、その後、別れの言葉を言わずに彼女の前からいなくなった。

 あの時、鈴はどう思ったのだろうーー自分に怒っているのだろうか? 嫌、怒っているに違いない。彼女からのさよならの言葉を聞く前に気を失わせる形で、彼女の前から姿を消したのだ。

 流石の彼女も三年行方不明になり、ひょっこりと帰ってきて、また消えたとなれば怒る筈。一夏は鈴に謝りたかったが今はIS学園にいる為、彼女が逢えるかどうかも判らない。

 

「早く起きちゃったわね……まあ、昨日の夜で此方に来たのと、単なる時差ボケかしらね? ……あらあれは」

 

 すると、一人の女子が寮から出てくると眠たそうなのか目を擦りながら愚痴を零す。刹那、女子はベンチに座っている者に気付き駆け寄る。

 一夏も誰かが駆け寄ってくる足音に気付き、両手を下ろし、足音がする方を見るーー刹那、一夏は瞠目し、その少女も瞠目し立ち止まる。

 

「い、一夏?」

「り、鈴?」

 

 少女は一夏の事をよく知っていたのか驚きながら一夏の名を呟く。一方、一夏もその女子を知っていたのか立ち上がる。

 その女子は茶色い髪をツインテールにして纏め、翡翠色の瞳が特徴かつ幼さが残る顔立ちをしている。着ている服は私服ではないーー此処の学園の生徒である事を印象付ける制服だが軽装的な制服である。

 しかし、その女子は一夏が今、逢いたい者と相談したかった相手でもある。そんな一夏は驚く中、その女子はーー鈴は涙を浮かべながら、一夏の名を言う。

 

「一夏……っ、一夏ーーッ!!」

 

 鈴は泣きながら、一夏の元へと駆け寄り、一夏に抱き着く。突然の事に一夏は戸惑う中、鈴は両手を一夏の背中に回し、顔を一夏の胸に埋める。

 

「一夏……一夏ッ……! 逢いたかったわよぉっ!」

 

 鈴は一夏の胸に顔を埋めながら泣きながら言葉を述べる。それは怒りや悲しみが混じっていたーー嫌、今は鈴自身が再び一夏に逢えた事に喜びを隠せないでいる。

 

 あの時、鈴は一夏が居なくなった事に戸惑いを隠せないでいたーーが、束が全世界に男性操縦者達を保護した事を宣言した際、彼女は何故か微かにある事を感じる。

 あの中の、男性操縦者達の中には一夏がいるのではないのだろうか、と。憶測には過ぎなかったが鈴は微かに淡い期待を寄せる。

 一夏がいるのならば、自分もIS学園に通おうと。勿論、色々遭った為に遅れたが何とか転入する形で入る事が出来た。

 そして今、鈴の予想は的中した。目の前にいる青年は一夏であり、鈴が一番逢いたかった者でもある。鈴は泣きながら顔を上げる。

 顔は涙でクシャクシャだったがそんなのは関係ない。鈴から見れば二度目の一夏と再会した事に喜んでいる。今は、鈴自身の我が儘だろうが鈴はニコッと笑う。

 

「一夏……逢いたかったよぉっ」

 

 鈴は泣きながら再び一夏の胸に顔を埋める。ーーフッーー。そんな鈴に一夏は微笑むと、鈴の頭を撫でる。

 一夏から見れば今一番逢いたかった者、鈴の我が儘を受け止めている。一夏から見れば心に暗い影を落としかねなかった自分に一筋の光が射し込んだようにも思えるからだった。

 一夏は鈴の頭を撫で続けるも、突然、鈴は一夏から離れる。これには一夏は驚くも、鈴は泣きながら憤怒の形相を浮かべると。

 

「バカーーッ!!」

 

 鈴はそう言うと、一夏の頬を叩く。そして、大きな渇いた音が二人の周りに響き渡った。

 

 

 

「で、一夏は何でISを動かす事は出来たのよ?」

 

 数分後、一夏と鈴は今、ベンチで隣同士で座っている。鈴は顔に涙の痕が残っていながらも一夏に訊ねる。一夏は一夏で鈴に叩かれた頬を手で押さえていたが何故か俯いている。

 

「どうしたのよ一夏……一夏!」

「あっ!? ああ」

 

 鈴が問い掛けると、一夏は驚きながらも我に返り、驚きつつも鈴を見る。鈴は心配そうな表情で一夏を見つめている。

 

「あっ、嫌、ちょっとな……」

 

 一夏は首を左右に振った後、鈴に微笑む。だが、それは鈴に不信感を抱かせてしまう。

 

「一夏……何か遭ったの?」

 

 鈴の言葉に一夏は「えっ?」と戸惑う。

 

「何か遭ったのね? 訳があるのなら話なさいよ?」

「嫌、何でもない……何でもないよ」

 

 一夏の言葉に鈴は溜め息を吐く。

「一夏、それじゃありまくりなように思えるじゃない?」

「えっ……嫌、鈴には関係ない事だぜ?」

「嘘ねーーあんた自分の顔を鏡で見てないの?」

 

 鈴の言葉に一夏は瞠目する。鈴の言ってる事は正しかったーー何故なら、今の一夏は何処か青褪めている。

 一夏が鏡を見なくても、誰から見ても一夏が悩んでいるように思えるだろう。それを鈴は一夏に指摘しながらも再び訊ねる。

 

「悩みがあるのなら言いなさいよ一夏?」

「嫌、鈴には関係ない事だから言わないよ」

「一夏……悩んでても何も変わらないわよ? それに我慢は身体に悪いわよ? それに……」

 

 鈴は悲しそうに俯く。

 

「私はあなたの事を助けてやれなかったーーそれどころか、貴方は一人で辛い思いをしているじゃない……」

「鈴? お前何を?」

 

 一夏は何かを言うも鈴は顔を上げる。

 

「一夏……もうこれ以上、自分を責めないで、自分の言いたい事を周りに言いなさいよ……周りに助けを求めなさいよ」

「り、鈴……」

 

 鈴の言葉に一夏は目を見開く。鈴は一夏を助けられなかった事に後悔していた。それだけでなく、自分は一夏に助けて貰ってばかりなのに自分は何もしていない。

 鈴から見れば、鈴は一夏を助けたい。今までの事を償う意味で恩を返す意味で一夏の力になりたい、と。

 

「お願い一夏……これ以上、自分を責めないで、これ以上、貴方自身を苦しめるような事をしないで」

 鈴は寂しそうに言葉を述べる。それを聞いた一夏は瞳を揺らがす。一夏は鈴の言葉に反論出来ないでいる。

 鈴の言葉には意味がある。それも、自分が弱気になっている事を意味している。鈴の言ってる事は正しかった。

 これには一夏は戸惑うも一夏は諦めたように話した。最早、彼女の言う事を聞くしかない。楯無の事もあるが彼女から楯無を立ち直らせるにはどうしたら良い事のかや、自分はどうすれば良いのかをも。

 

「判ったよ鈴……実は……」

 

 そして、一夏は鈴に全ての事を話した。が、ある事だけは鈴には言わなかったが全てを話した。

 




 次回、ネタバレになる為教えられません。
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