ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
「織斑先生、貴女は何故、自分の生徒に暴力を振るったのですか?」
その頃、生徒指導室では千冬と真耶、気を失っている勇人、そして第四者がいた。その人物は、四十後半か五十代くらいの女性であり、優しそうな顔立ちをしながらも表情は険しく、肌色の女性用スーツを身に纏っている。
その女性は、この学園の一番偉い人ーー学園長である。
勇人や真耶は兎も角、学園長と千冬は指導実に設けられているテーブル近くにある椅子に腰掛けながら向かい合っていた。
一方、真耶は勇人に膝枕をしてあげながら勇人を心配そうに見つめており、勇人は未だ気を失っている。
また一方で、千冬は学園長の問い掛けに答えるどころか、俯いている。何故、こんな事になってるかは、千冬が勇人に暴力を振るった為である。
その為、学園長が此処にいるのも真耶が学園長が呼んだ為であり、学園長は千冬に問い質す為であるのと、勇人の親友達である一夏と止は元より、楯無を呼ぶ為に生徒会の人間である虚に保健室へ行くよう命令したのである。
虚が保健室にいる楯無を呼びに行ってる間、学園長は千冬に何故、勇人に暴力を振るったのかを問い質していた。
「織斑先生、貴女は何故勇人君に暴力を振るったのですか? それだけ答えて下さい」「…………」
「答えて下さい! 貴女は何故、勇人君に暴力を振るったのですか!? 幾ら人を教える立場の人として、生徒を教える教師としてあるまじき事をしたのですよ!?」
千冬が無言のまま俯いている事に学園長は怒りを隠せない。それでも、千冬は何も言わず俯き続けている。そんな二人のやり取りを真耶は困惑しながら見つめていた。
刹那、生徒指導室を出入り出来る扉から音が聴こえ、学園長と真耶が扉の方を見る。
「失礼します」
外から女性の声が聞こえ、その後に扉が開く。外に、廊下にいたのは楯無と虚だった。二人は表情を険しくしているも扉を開けたのは楯無である。
「更識生徒会長に布仏さん、わざわざお手を煩わせるような事をして申し訳ありません」
学園長は申し訳なさそうに楯無に言うと、楯無は首を左右に振り、その後口を開いた。
「いいえ、後から判ったんですが虚ちゃんが急いで保健室へと来たのも、学園長が私を呼んだからだそうですよね?」
「貴女の仰るとおりです。その為、布仏さんにはお忙しい事をさせてしまいました。改めて御詫びいたします」
学園長は立ち上がり頭を下げると、虚は困惑しながらも言葉を述べる。
「い、いいえ、それよりもお顔をお上げ下さい! 私は学園長がお嬢さ……更識会長を呼んでくれと頼んだから、私は会長を呼んだまでです。どうかお気になさらないで下さい!」
虚の言葉に学園長は顔を上げるが未だ申し訳なさそうな表情を浮かべている。刹那、楯無と虚は室内に足を踏み入れると、虚が扉を閉めた。
「さて、それよりも本題に戻りますが、織斑先生?」
学園長は再び千冬と向き合うと、千冬は困惑した表情で楯無を見据え続けていた。
「織斑先生、どうかなされたのですか?」
学園長は疑問を抱き訊ねるが千冬は楯無を見ながらある事を口にする。
「な、なあ、更識姉よ? い、一夏はどうした? 一夏は無事か!? 何とか言ってくれ!」
千冬は慌てながらも立ち上がり、楯無に詰め寄ろうとした。そんな千冬に学園長は怒る。
「お座り下さい織斑先生! 言い方が悪いかも知れませんが今は織斑君の安否よりも貴女が何故、勇人君に暴力を振るったのかを訊いているのですよ!?」
「なっ!? が、学園長!? な、何を言ってるんですか!? あ、貴女は一夏の事等どうでも良いと言うのか!?」
学園長の言葉に千冬は驚きながらも直ぐに学園長に怒る。千冬から見れば、学園長は一夏よりも勇人の事を気にしているような発言をした事に怒ったのだ。
それに、こうなった経緯も全て千冬と、それ以前に一夏を傷付けた箒に原因がある。何故なら最初は、一夏が保健室に運び込まれた際、千冬は慌てて入ってきたが、保健室には楯無や鈴、勇人や止もいたのである。
それだけなら未だしも、鈴は千冬を毛嫌いしており、勇人に至っては憎悪が籠った眼差しで千冬を睨んでいた。そこまでは良かったが、千冬は勇人と止に話があると言ったが勇人が一人で行くと言い出したので、千冬は勇人を連れて保健室を出ると、ある場所へと向かった。
それが此処、生徒指導室であった。が、千冬はある事を勇人に訊ねるも、勇人は頑なに拒み、それが何回も繰り返される内に千冬はとんでもない事をしてしまう。 それが一夏を思うがあまり、何を言わない勇人に手を出してしまった。勿論、勇人に手を出したと同時に、真耶が突然生徒指導室へと入ってきたがその一部始終を見てしまった為、真耶は慌てて千冬を羽交い締めしたが勇人は気を失っていた。
話を戻そう。学園長の言葉に千冬は怒る中、学園長と口論してしまい、真耶は勇人に膝枕している為、動けないが虚と共に千冬を落ち着かせるが効果は無かった。
そんな千冬を見た楯無はある事を口にする。
「学園長、差し出がましいんですが、私に時間をくれませんか?」
楯無が学園長に言うと、学園長は楯無に訊き返す。
「何をですか?」
「いえ、私は織斑先生に話したい事があるので、私と織斑先生を二人っきりにさせてくれませんか?」
「お嬢様!?」
楯無の言葉に虚は驚きを隠せない。が、学園長は冷静に再び訊き返す。
「何故ですか? 貴女は織斑先生に話があるのですか?」
「はい、私は織斑先生と話がしたいのです。勿論、これは織斑一夏君に関係する事です」
「一夏の事か!?」
千冬は再び詰め寄ろうとしたが学園長が一喝して千冬を黙らせると、学園長は再び楯無に言う。
「織斑一夏君に関係する事ですか?」
「はい、今の織斑先生は一夏君の事で頭が一杯です。その為、私は一夏君に関係する事で織斑先生と話がしたいのです」
「それは私は構いませんが、いざと言う時、貴女に何か遭ったら困ります。現に……いえ、これ以上は止めておきます。それよりも貴女は大丈夫なのですか? 何なら私達も一緒に居てあげますが……」
学園長の気遣いに楯無は首を左右に振る。
「大丈夫です。何か遭ったら私は自分一人で対処します。それに私は今、非常に怒っています」
楯無は視線を千冬の方へと向ける。
「織斑先生のせいで、一夏君は今、やるせない気持ちを抑えていますから……!」
「さて、織斑先生、私と二人っきりになりましたね?」
「…………ああ、そうだな」
数分後、生徒指導室には楯無と千冬の二人しかいなかった。因みに少し後に学園長は楯無を気遣うも見守る事にし、真耶、虚は兎も角として勇人は気が付くと自分の置かれている現状に気付くも、学園長は虚と真耶に勇人を保健室へと連れて行くように言い、自分は生徒指導室の外で待っている。
その為、この生徒指導室には楯無と千冬の二人しか居なかった。しかし、どちらも険しい表情を浮かべている。どちらも殺伐とした雰囲気を醸し出していた。
「では、本題に入る前に織斑先生、一夏君は無事ですが先程、目を覚ましましたよ」
「っ……そ、そうか」
楯無の言葉に千冬は安堵したのか胸を撫で下ろす。
「貴女から見ればそう思えざるを得ないでしょうーーですが今は、私は貴女に一夏君の今後についての話をしたいのです」
「一夏の事か?」
千冬が訊ねると、楯無は軽く頷く。
「はい、貴女には今後、一夏君や止君、勇人君には関わらないでほしいのです」
ーーなっ!? ーー。楯無の言葉に千冬は目を見開きながら言葉を失う。が、そんな楯無の言葉に千冬は怒る。
「な、何を言ってるんだお前は!? わ、私に一夏と関わるなと言いたいのか!?」
千冬は楯無に怒るも、楯無は冷静に言葉を続ける。
「はい、私は貴女に一夏君に関わるなと言ってるのですーー貴女だけではありません、篠ノ之箒ーー彼女にも彼と関わらないよう警告させます」
「そ、そんなの認められん! 第一、私は一夏の姉であり、たった一人の肉親だ!! お前は私達姉弟の仲を引き裂くつもりか!?」
千冬は怒りながらテーブルを叩く。バンと言う音が室内に木霊するも、楯無は未だ冷静に言葉を続ける。
「引き裂くつもりではありません、私は今の一夏君が貴女や篠ノ之さんを憎んでいる理由が解らないのですーー私は一夏君を思ってそう判断したまでです」
「そんな事はない!! 一夏が何故私を憎んでいるのかは解っている! だからと言って何故、関わるなと言うのだ!? そんなのは認められん!」
「認められないか認められるかは私にも判断出来ません、ですか現に貴女は勇人君や止君から一夏君の過去を訊き出そうとしたみたいですね? 何故そんな事をしたのですか?」
「お前に解るか……私がどれ程、一夏を心配しているのかを……お前に解って堪るか!」
千冬は楯無に再び怒る。千冬から見れば千冬は単に一夏と寄りを戻したいだけなのだ。だが、楯無から見れば千冬の行動は一夏を苦しめているようにも思える。
「織斑先生、貴女は前から変わってませんね? 一夏君が思うが故に一夏君のISを専横みたいな事で取り上げようとしたり、勇人君や止君から一夏君の過去を訊こうとしたり……まるで、貴女は一夏君を束縛したいようにも思えます」
「黙れ! お前が何を言おうが私は一夏と寄りを戻す! ーーそして再び二人で暮らしたいのだ!」
千冬は目尻に涙を浮かべながら楯無に怒る。が、楯無は首を左右に振る。
「無理ですね。私は此れから学園長及び……とある人物にこの事を話します。貴女には一夏君や勇人君や止君に干渉しないよう伝えます。では……」
楯無は千冬に軽く一礼すると立ち上がり、生徒指導室の外にいる学園長にその事を話そうと思い、指導室を出ようとし、身体を翻す。
「止めろ……」
千冬は楯無に手を伸ばす。このままで自分は一夏と話が出来なくなってしまう、と。
「止めろ……止めろぉぉぉぉぉっ!!」
千冬は楯無が指導室を出る前に泣きながらそう叫びながら自分も立ち上がり、楯無の元へと駆け寄る。
「っ!?」
楯無は扉の前にまで来たが千冬に気付く。が、千冬は楯無を殴ろうとしているのか走りながら拳を振り上げていた。
そして少し後に、二つの音が室内に木霊し、とある人物が千冬に殴られた……。
次回、ここもネタバレになる為、教えられません。