ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
「止めろぉぉぉぉぉ!!」
千冬は楯無が学園長に自分が勇人や止は元より、一夏と話が出来なくなってしまう事に恐怖したのか、楯無を止めたいが為に楯無に殴り掛かろうと、右腕を振り上げている。
「っ!?」
楯無は千冬に気付き、躱す意味で屈む。刹那、扉が勢い良く開き、廊下の外には、とある人物がいた。
刹那、千冬の右拳は、とある人物の右頬を捉える形で殴り、とある人物は殴られた影響でそのまま吹っ飛ばされ、壁に頭から激突し、前のめりになると、そのまま俯せに倒れた。
「い、一夏!?」
「一夏君!?」
その人物を近くで見た者達が驚きを隠せない。そして、その人物を見たのは止と虚、最初から生徒指導室の外にいた学園長の三人と。
「っ!? い、一夏!?」
「えっ……い、一夏君!?」
室内にいた千冬と楯無も驚きの声を上げる。そして、千冬に殴られた人物は一夏だった。
一夏は頭から壁に激突したのか頭から血を流しながら気を失っている。それだけではない、頭には包帯を巻いていたが箒の竹刀で受けた際に出来た傷が壁と激突した際に開き、包帯の大半が真っ赤に染まっている。
「一夏君!!」
「一夏!!」
楯無と止は一夏を見て慌てて駆け寄り、一夏の近くに屈み、一夏の身体を揺する。一夏は何の反応もせず気を失っている。
千冬も一夏の元へと駆け寄りたかったが自分は弟を殴ったと言う事に驚きを隠せず、顔を青褪めながら膝を突く。
「お、織斑先生、貴女は何て事をしたのですか!?」
学園長は憤りを隠せず千冬に詰め寄り激しく問い質す。にも関わらず、千冬は未だ自分が楯無を殴ろうとしたにも関わらず一夏を殴ってしまった事に後悔している。
しかし、何故、一夏が生徒指導室へと来たのかは、それには理由があった。実は一夏は数分前、止と共に保健室で待機していたが楯無と虚を心配し、止と共に生徒指導室へと向かおうとしたのである。
生徒指導室は、この出来事が起きる数日前に、学校内に設けられている保健室や音楽室等が何処にあるのかを調べた為に問題は無い。
道中、勇人や真耶、虚と遭遇したが真耶から楯無が千冬と一対一の話をすると聞かれ、一夏は胸騒ぎを感じたのか駆け足で生徒指導室へと向かったのである。
止と虚は追い掛けるも勇人は真耶に止められ、保健室へと行った為に、此処には居ない。話を戻そう。学園長が千冬に問い質している中、楯無と止は一夏の身体を揺すりながら呼び掛ける。
「一夏、一夏!! っ、てめえ!!」
止は千冬に怒りを覚え、立ち上がり、千冬に詰め寄ろとした。
「き、霧崎君!」
「いけません!!」
そんな止を学園長は千冬を庇うように前に出て、虚は止を羽交い締めする。
「てめえどんだけ一夏を傷め付ければ済むんだよ!? 何で一夏を追い詰めるんだよ!?」
止は千冬に怒るが目には薄っらと涙を浮かべていた。勿論、止は知らないだろうが此れは事故である。
嫌、止から見れば千冬は一夏を殴ったと思うだろう。それでも止は泣きながら、千冬に叫んだ。
「てめえ何か一夏の姉じゃねえ!! てめえは一夏の事を見てねえじゃねえか!? てめえのやってる事は只の放棄や虐待だ!!」
「っ!?」
止の言葉に千冬は瞠目し、そのまま自分を抱き締めながら身体を震わせる。
止の言葉は、千冬の胸に大きく突き刺さる。それは千冬が一夏を見なかったツケが回ったと言い換えれば良いだろう。千冬にとって、止の言ってる事は千冬の心に傷を負わせる事をも意味している。
止は千冬に怒る中、学園長や虚が止を押さえている中、千冬が止の言葉で傷付いている中、楯無は未だ一夏を呼び掛け続けていた。
「一夏君! 一夏君! しっかりして!」
楯無は一夏に呼び掛ける中、目に薄っらと涙を浮かべている。ーー死なないでーー。楯無はそう願っていた。
自分は未だ一夏にあまり何もしていない。それに自分の我が儘だが楯無は未だ、一夏を必要としていた。一夏は自分の為に色々としてくれた。
それなのに、それなのに自分はそんな一夏を……。楯無はその気持ちを押さえつつも、楯無は未だ一夏を呼び掛ける。
「一夏君起きて!! お願い一夏君!! 一夏君ーーッ!!」
楯無は一夏を呼び掛ける。が、一夏は完全に目を覚ます気配はなかった。そして、その叫び声のせいかお陰かは判らないが他の教員方も来るまでの間、少しだけ続いていた。
同時刻、此処は遠方にIS学園がある島が見える浜辺。クリーム色の砂浜に、青い海の波打つ音が浜辺に響き、潮風が吹いている。
浜辺には少しだけ空き缶やペットボトル等の塵が散乱しているが、浜辺には一人の青年がいた。
その青年は十代後半であり、長袖の白いシャツに青いベスト、白いジーパンを穿いているが頭には帽子を被っている。
しかし、その青年は帽子を被っているが顔立ちは止とは瓜二つであった。
「彼処に、霧崎止が……ッ」
その青年は鋭い眼差しで遠方の海に浮かぶ島ーーIS学園を見据えていた。あそこには自分が憎んでいる者がいる。
それは青年が最も憎んでいる者、霧崎止がいるからだった。青年は歯軋りをすると、左手で帽子を深々と被る。刹那、右腕から音が聴こえ、青年は左手でシャツの右腕部分を捲る。そこにはコンピューターガントレットがあった。
それも、一夏達が着けているコンピューターガントレットとは違う。青年はコンピューターガントレットを睨むも、左手でボタンを押し、顔へと近付ける。
「何かな、トラッカー? ……うん、うん、判った、直ぐ戻るよ……」
青年はそう言うと、コンピューターガントレットのボタンを押し、再び学園が建てられている島を見る。
此処から見たら何の変鉄もない。あるとすれば一夏が死にかけているのと、止が千冬に怒りを隠しきれず詰め寄っている。勿論、どちらの出来事も外にいる人達は知らないのも事実だろう。
青年はIS学園がある島を見続けていたが表情は険しくなる一方であり、青年はいつの間にか両手を拳に変えていた。
青年は止に憎悪を抱いていた。それは消える事のない、止との確執。青年はそれを思い出したのか表情を険しくし続けていた。
「……ッ」
青年は下唇を噛むと身体を翻し、何処かへと歩き去って行った。そして六日後、青年はIS学園へと襲撃する……。勿論、それはIS学園に居る者達は知らない。
此処はIS学園にある保健室。そこには一夏が横になっているが頭には新しく包帯が巻かれていた。それだけではない、一夏が横になっているベッドの近くにある椅子には楯無と、その近くには険しい表情を浮かべている勇人と、哀しそうかつ悔しそうに歯を食い縛る止と、一夏を心配しているのか哀しそうに見つめている真耶と虚の五人がいた。
五人は皆、一夏を心配しているが一夏は此れから、病院で集中治療する事になっていた。その為、一夏とは一時的な別れをも意味している。
何故なら、一夏は二度も頭に大怪我を負った。これには流石に頭に異常があるのと、脳内出血している危険もあるからだった。
勿論、そう決めたのは学園長であり、学園長は今、とある人物と共に千冬や箒の処罰の事で話し合っている。
千冬や箒はどうなるかは二人が決める事だろう。嫌、今はそんな事を言ってる場合ではなかった。
「一夏君……」
楯無は一夏の手を両手で包むように握ると、俯く。楯無は後悔していた。
自分はあの時、何故屈んだのだろうか? 身を守る為だったのか? あの時、千冬に殴られれば良かったのだろうかーーそうなったら、一夏は千冬に何をするかは判った物ではない。楯無は自分を責めた。そして、泣きそうになる。
もう何度目なのかも判らない。それも全て、一夏に関わってる事である。それもその筈、楯無は一夏に……好意を抱き、惹かれつつあった。
だからだろう。しかし、それは楯無が一夏に好意を寄せているが想いを寄せているが未だ完全と言う訳ではない。
その為、楯無は一夏に恋愛感情があるかどうかは判らないが半分あり、半分無いと言い換えれば良いだろう。
「起きて一夏君……起きてよ……起きて、私にもっと色んな事を教えてよ……起きてよぉ……!」
楯無は泣くのを堪えながらそう呟く。そんな楯無に周りの者達は何も言わなかった。何故なら、真耶と虚は楯無に同情し、掛けてやる言葉が見付からず戸惑っており、勇人と止に至っては一夏が死ぬかも知れない恐怖と千冬と箒への怒りを隠しきれないでいる。
しかし、楯無や彼等が何かを思っても、一夏は目を覚ます訳ではない。が、彼を助ける事が出来るのは……最早、あの人物しかいない。
あの人物なら、一夏を助ける事が出来る。そして、その人物は駆け足で保健室へと入ってきた。
楯無達はその人物を見て驚くも、止は驚きながら、その人物を指差した。
「あ、あんたは!?」
次回、あの人物が楯無を慰め、励ます。