ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
「一夏は私の物……私の物だぁぁっ……!」
箒は涙を浮かべながら木刀を手にしながら自分の本音を、楯無にぶつける。一方、楯無は扇子を手にしながら、箒に疑問を抱く。
彼女は何故、一夏に拘るのだろうか。楯無はそこが解らないでいた。反面、彼女を一夏へと近付けさせる訳にはいかない。
彼女が一夏に近付いたら、一夏は彼女に何をするかは判らない。最悪、血を見るような最悪な結末を迎えるだろう。
楯無はそんな結末を見たくはなかった。嫌、一夏をこれ以上、苦しませる訳にはいかない。
楯無は箒を止めるべく、扇子を持ちながら身構える。
「そんな物で私の木刀を受け止められるのか? 笑止だな」
「確かにそうね、でも、私は貴女を止める」
「っ……黙れえぇぇっ!」
箒は木刀を振り翳しながら、楯無に迫る。一方、楯無は無言で身構え続けていたが箒は楯無の脳天を叩き割ろうとして木刀を振り下ろす。
刹那、楯無は横に躱し、直ぐに箒の後ろへと移動し、扇子で箒の首の裏を軽く叩く。
刹那、箒は木刀を手放す。木刀の落ちる音が辺りに響くも、同時に箒は声を上げずに膝を突き、そのまま前に、俯せに倒れた。
「……同じパターンは通用しないわよ……」
刹那、楯無は鋭い眼差しを気を失っている箒へと向きながら不意に呟くと、扇子を広げる。扇子には黒い筆文字で「心外」と書かれていた。
「止めろ、てめえ!!」
「教えてくれ! 一夏に何が遭ったんだ!?」
近くから勇人と千冬の揉め合うかのような叫び声が聞こえ、楯無は声がした方を見る。
勇人と千冬は未だと言うよりも、千冬は両手を勇人の肩に置きながら未だ勇人に問い掛けていた。
千冬は困惑しながらも何かを求めているかのような表情を浮かべ、勇人は眉間に皺を寄せながら下唇を噛み締めている。
これには楯無は驚きを隠せず、勇人を助ける為に扇子を閉じ、二人の元へと駆け寄ろうとした。
しかし、勇人は千冬の両手首を両手で掴み、自分の肩から引き剥がす。勇人の行動に千冬は驚くが勇人は両手に力を入れる。
「ああっ!!」
千冬は両手首に激痛を感じ顔を激痛で歪め声を上げる。それを聞いた楯無は立ち止まり瞠目するも、勇人は千冬を開放する意味で手首を放す。
千冬は両手首に走る激痛に耐えきれないのか、膝を突く。一方、そんな千冬を勇人は無言で見下ろしていた。
勇人の千冬を見る目は怒りと軽蔑が籠っている。それだけでないーー勇人は、千冬が何故、そこまで一夏に執着するのかが判らないでいた。
「…………」
が、勇人は何故か自分の両手の平を見る。手の平には何もない、あると言えば生命線くらいだろう。
「……クソが」
勇人はそう呟いた後、悔しそうに下唇を噛みながら、千冬から目を逸らす。
「織斑先生」
一方、そんな千冬を楯無は千冬に歩み寄り、千冬の前に立ち止まり、千冬に訊ねる。千冬は楯無の言葉を聞いて、顔を上げるーー千冬は未だ虚ろな目をしていた。
そんな千冬を見た楯無は表情を哀しくする中、そんな楯無を見た千冬は下唇を噛むも訊ねた。
「何だ……更識?」
「何だじゃありません。私は貴女に訊きたい事があります」
「訊きたい事、だと?」
千冬の言葉に楯無は頷き、それを話始めた。
「はい、織斑先生、貴女は篠ノ之さんと共に学園長達から一夏君達に接触禁止を命じられた筈ですが? それを何故、お破りになられたのですか?」
「煩い……私は一夏と寄りを戻したいのだ……」
「それは理由にはなっていません、貴女とーー近くで、私が扇子で叩いて気を失っている篠ノ之さんもそうですが、貴女は単に一夏君を束縛したいだけじゃないですか?」
「お前に何が解る? ……お前に私の苦しみを解ってたまるか……」
「はい、確かに解りませんが貴女は一夏君と寄りを戻したいと言っても、一夏君はそんな事を望んではいません」
「何だ、と?」
楯無の言葉に千冬は目を見開く。しかし、楯無は言葉を続ける。
「織斑先生、貴女は一夏君の気持ちを理解していましたか? それに一夏君は貴女を嫌っている事に気付いていますか?」
「一夏が、私を、嫌っている?」
楯無の問いに千冬は俯く。何故なら、千冬は一夏が自分を嫌っているのかには気付いていた。
自分は一夏を見ていなかった。それどころか、千冬は一夏と再び一緒に暮らしたいと言ったのも、一夏の心に出来た大きな傷を癒したいからであった。
にも関わらず、千冬は一夏にしている事は一夏を苦しめているだけであり、千冬はそこまで気付いていなかったのだ。
「わ、私は一夏と寄りを戻したかった……私は、一夏の為に自分が出来る事をしたかった……なのに、なのに、私は一夏を殴ってしまった……あ、あぁっ」
千冬は虚ろな目をしながら涙を浮かべ、嗚咽を上げる。
自分は一夏と寄りを戻したかった。なのに、なのに自分は一夏を傷付けている……千冬はあの時の事を後悔していたが、束に連絡したのも、一夏の安否を気にしていたからである。
「私はただ、一夏と寄りを戻したかった……私は、今まで自分が一夏を苦しめている事には、一夏の親友である五反田兄から一夏の現状を知るまでは気付いてやれなかった……私は何故、一夏の事を心配していなかったのか、私は何故、一夏を突き放すような事しか言わなかったのかを自分自身を責めた……私は……姉失格だ……あ、あぁっ」
千冬は泣き崩れる。そんな千冬に楯無は哀れみの目で見つめていたが、楯無は何故か悩んでいた。
彼女達をこのまま学園長達の前に出すべきなのか。そうなれば、千冬と箒は学園を追い出されはしないが一生、一夏に付き纏う危険がある。
逆にまた、自分が彼女達を学園長達に付き出さなければ、一夏を苦しめるのもまた事実だろう。
楯無は悩んだ。自分はこのまま生徒会長として、この一連の騒動を学園長に報告するのか、それとも千冬を自分と同じ意味で姉として見逃すべきなのかを。
刹那、モニターの方が騒がしい事に楯無と勇人は気付き、モニターの方を観る。
モニターにはIS、チョッパーを纏っている止が、相手のIS、甲龍を纏っている鈴を相手に一進一退の攻防を繰り広げていた。
「フン! ハアッ!」
「タッ! ハアッ!」
アリーナにいる止と鈴は今、激しい戦いを繰り広げていた。止はシミターブレイドを、鈴は青龍刀、双天牙月を使って戦いを有利に進めようとしていた。
止がシミターブレイドで斬ろうとしても、鈴は青龍刀で軽く受け止め。鈴が青龍刀で刀を叩き斬ろうとしても、止は躱していた。
「テャァッ!!」
止は両腕に着けている防具に装備しているシミターブレイドで鈴を斬る。
一方、鈴は青龍刀で受け止めるものの、そのまま鐔競り合いに入る。
「やるわねあんた? 流石、一夏の親友と言われてるだけじゃなく、クラス代表決定戦でも相手を難なく倒したのは嘘じゃないわね?」
「えっ? 何故それを知ってる?」
鈴の言葉に止は驚くも、鈴は不敵に笑う。
「それは今はどうでも良いわ、それより今は、戦いの最中よ!!」
鈴はそう言うと、止のシミターブレイドを青龍刀で弾き返す。止は弾き返された事に驚くも、同時に怯む。刹那、鈴はチャンスと言わんばかりに青龍刀で止を凪ぎ払う。
止は驚くも、防御する事は出来ず、凪ぎ払われ、吹っ飛ばされるが即座に体勢を直し、鈴を見る。
鈴はスラスターを噴かしながら、止に迫る。止は驚くも、鈴は青龍刀で止を叩き斬ろうとした。
刹那、警報が鳴った。アリーナにいる観客席に女子達、ピットにいる楯無と勇人、アリーナで戦っていた止は元より、鈴は警報に驚くと同時に緊急停止した。
『緊急警報!! 緊急警報!! 学園上空から謎の飛行物体が学園へと接近中!! 繰り返す、謎の飛行物体が学園へと接近中!!』
警報と共に放送が鳴る。これにはアリーナに居る者達全員が驚く。止や鈴も驚くが突如、アリーナの上空から謎の飛行物体が鶻の如く、もの凄い速さで降りてくる形で出現し、地面に激突し、煙を発生させる。
「なっ!?」
「何よ!?」
止と鈴は突然の事で驚くも、煙は徐々に消え、地面には極僅かにクレーターが出来ていたが中央にはその飛行物体を見て更に驚いた。
その飛行物体は、一機の赤いISだった。しかし、何故か人が乗ってる気配なく、おまけに全身がボロボロで火花を飛ばしている。まるで何かと戦っていたが負けたのを物語っているようにも思えた。
そこが問題ではなかった。その近くには一人の、ISを纏っている青年がいた。
「な、何よあい」
「あいつは!?」
鈴は驚きながら何かを言い終わる前に、止は驚きのあまり叫んでしまう。
止はISを纏っている青年を見て驚いていた。その人物は止とは瓜二つの顔立ちであり生き写しのような青年でもあった。
が、そんなISを纏っている止とは瓜二つの青年は止を睨んでいた。
「お、お前は……わ、渡……!?」
一方、止はその人物を知っていた。その青年は渡……彼は止の双子の弟であり、死んだ筈の霧崎渡だった。
「久しぶりだな……止!!」
「わ、渡なのか!?」
驚きを隠せない止を他所に、渡は止を睨みながらそう言った。止は驚きながらも渡の名を言う。
しかし、彼等の再会は良い事なのか、悪い事なのかは誰にも判らない。そして、二人は、悲しき再会を果たしたのも言うまでもなかった。
次回、霧崎兄弟の哀しき戦い、そして、あの青年が楯無の危機に駆けつける形で復活!