ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
「……つ、
渡は自分を守ってくれる形で背を向けている者を月影と呼んだ。一方、月影と言う人物は楯無と勇人を無言で見据えたまま何も言わない。
「な、何者なの貴方は!?」
楯無は右手に持ってるランスの先端を月影に向けながら問う。一方、勇人は月影と渡の二人を鋭い目付きで見据えたまま何も言わない。
が、勇人は内心、ある事を呟いていた。ーーまさか、あの二人……。勇人は何かに気付く。勇人は彼等が、自分逹を育て鍛えてくれたプレデター一族とは別の、とあるプレデター一族の放った刺客ではないか、と。
しかし、今はそんな事を考えている場合ではない。突如、月影が右腕を横に伸ばす。それを見た楯無はランスを持ち構え、勇人は右腕に着けている腕当てに装備されているリストブレイドを展開し身構える。
一方、月影は何も言わずに右腕を横に伸ばしていたが後ろにある太刀を模したウィングスラスターが月影の右手の方へとゆっくりと動いた。
楯無は驚き、勇人は眉間に皺を寄せるが月影は太刀を手に取った直後、楯無と勇人へと迫りながら太刀を振る。
「退けっ!」
勇人は楯無を突き飛ばす。刹那、月影の太刀は勇人を斬り捨てる……事は出来なかった。何故なら、勇人はリストブレイドで月影の太刀を受け止めていた。
が、リストブレイドと太刀に共通する鉄と鉄の軋む音が二人の間に微かに響く。
「(グッ……重い!)」
勇人はリストブレイドをで太刀を受け止めたものの、内心そう呟きながらも下唇を噛んでいた。
重い、とても太刀の攻撃が重かったのだ。それだけではない、月影は太刀を片手で持っていたのである。
「勇人君!?」
一方、月影は勇人を無言で見据えていた。しかし、そんな二人を、勇人に突き飛ばされながらも軽く持ち堪えた楯無は驚きを隠せず、下唇を噛むと勇人を援護しょうとした。
が、そんな楯無に銃弾の雨を浴びせる者がいた。楯無は突然の事に驚くも、楯無に銃弾の雨を浴びせているのは渡であり、銃弾の雨の正体は、渡が両手に持ってるサブマシンガンを楯無へと向けながら引き金を引いていたのである。
「貴女の相手は、この俺だ!!」
渡はそう言いながらサブマシンガンの引き金を引き続ける。そんな渡を見た楯無は歯を食い縛る。
刹那、楯無の周りから水のような物が現れ、水は楯無を守る形で楯無を包み始める。
「何だあれは!?」
それを見た渡は驚くも、周りを水で取り囲まれている形で護られている楯無は不敵に笑う。
「今はそんな事を言ってる場合じゃないでしょ?」
楯無は水の正体を渡に教えるつもりはなく、渡目掛けて突き進む。それを見た渡は驚くも、楯無はランスで渡を凪ぎ払う。
渡はランスで凪ぎ払われ吹っ飛ばされそうになるも何とか堪え、楯無に対し、サブマシンガンの銃弾の雨を浴びせようとした。
が、楯無はその前に渡へと急接近しランスで渡が両手に持ってるサブマシンガンを叩き落とす。
渡はサブマシンガンを叩き落とされた事に驚く間もなく、楯無にランスでニ、三回攻撃を喰らう。渡はランスの攻撃を喰らい怯むも、渡の背中に浮いていた緑色の球体と白い球体が渡を助けるべく、楯無に襲い掛かる。
緑色の球体は犬に良く似た禍々しい生き物のロボットへと変形し、白い球体は鷲に良く似た生き物のロボットへと変形し、二匹は楯無に襲い掛かる。
「貴方逹が襲ってくる事も承知よ!」
が、楯無はランスで二匹の生き物型ロボットを返り討ちにした。
「ハウ……ファル!?」
渡は二匹の生き物型ロボットが返り討ちに遭ったのを見て、驚きを隠せず二匹の生き物型ロボットの名を呟く。
因みにハウは犬に良く似た禍々しい生き物の事であり、ファルは鷲に良く似た生き物の事である。
そんな渡に楯無は標的を再び渡に定め、ランスで突く。
楯無が渡を押してる頃、月影と勇人は激しい闘いを繰り広げていた。勇人はリストブレイドで月影に斬りかかるも、月影は太刀で受け止めると、二人は鐔競り合いになる。
「おい、向こうはピンチだぞ?」
二人が鐔競り合う中、勇人は月影に言う。月影は鋭い眼差しをしながら、勇人を見据えていたが無言を貫いている。
「おい? 仲間がピンチだぞ? 何故気にもしない?」
勇人は月影が何の反応もしない事に疑問を抱く。刹那、月影は口を開いた。
「……そんなのは関係ない……奴がどうなろうが死のうが、俺には痛くも痒くもない」
「何? 貴様何を?」
月影の言葉に勇人は眉間に皺を寄せ再び訊ねると、月影は頬を吊り上げる。
「だから言ったろ? 俺には関係ねぇってな!!」
月影はそう叫びながら太刀に力を入れて、勇人のリストブレイドを弾き返す。
勇人はリストブレイドを弾き返され一瞬怯むも、月影は太刀を右手で持ち、左手からある武器を展開する。
小型のショットガンだった。月影はショットガンの銃口を勇人へと向け引き金を引く。
ショットガンから一発の銃弾が放たれ、勇人の身体に命中する。それでも、月影は笑みを浮かべながらショットガンの引き金を引き続ける。
勇人は何発もの銃弾を喰らうも何とか堪え、勇人は左手からとある武器を展開する。刹那、勇人の左手が一瞬だけ光る。
それは勇人や月影を巻き込み、月影は光に怯むも、太刀やショットガンを手放し、眼を押さえる。直後、それを見た勇人はチャンスと言わんばかりにレールガンを展開し、月影を撃つ。
月影は勇人の攻撃を喰らう中、勇人はレールガンを放り捨て、月影に体当たりする。
「ぐっ!!?」
月影は身体に激痛を感じながら顔を歪めるも、勇人は月影を体当たりする形で突き進む中、突如、月影を掴みながら空高く上昇し、一定の高さまで到達すると半回転した。
勇人は月影を地面に叩き付けようとしたのだ。しかし、月影は勇人の顔を掴み、勇人に頭突きした。それはとても痛く、普通の人間なら頭蓋骨が割れる程の威力だった。
「あがっ!!」
勇人は頭に激痛を感じるが頭から血を流す。それでも、月影は勇人の頭に二度目の頭突きをした。これには勇人も耐えきれず月影を放してしまう。
これをチャンスと見た月影は歪んだ笑みを浮かべると、今度は自分が勇人を掴み、そのまま勇人と共に地面目掛けて落下する。
刹那、地面に大きな音がアリーナ中に響き渡り、同時に激しい煙が辺りに発生する。
「あっ!?」
「!!?」
楯無と、何故か観客席にいる女子は突然の事で驚く。煙はまだ消えなかったが徐々に消えていき、音の発生源となった場所や、二つの人影が見える。
そして、煙が完全とは言えないが大半は消え、二つの人影の正体が判り始めた。それは、月影が歪んだ笑みを浮かべながら、勇人の首根っこを片手で掴みながら軽く持ち上げていた。
勇人は空を仰ぐように顔を上げながら気を失っていたが頭から血を流していた。
「勇人君!!」
勇人を見た楯無は驚き声を上げるが月影は歪んだ笑みを浮かべながら、勇人を横へと投げ飛ばす。勇人は地面に転がる。
「勇人く……ああっ!!」
楯無は勇人を心配するが背中に激痛が走るのを感じた。が、それはハウが緑色の球体へと変形し、楯無が水で守られているにも関わらず、楯無の背中を攻撃した。
楯無は背中に激痛を感じながらも振り返るが今度は横から白い球体が水を突き抜ける形で現れ、白い球体は楯無の肩口を攻撃する。
楯無は肩口に激痛を感じ歯を食い縛る。刹那、後ろから何かが水の中を突き破り、楯無は振り返るも首を掴まれる。
「ああっ!!」
楯無は首を掴まれ悲鳴を上げる。楯無の首を掴んだのは月影だった。
「ふっ……はははは!」
月影は狂喜の笑いをしながら、楯無の首を掴んでいる腕に力を入れる。
「アァァッ…………!」
楯無は首を更に締め付けられている事に力ない声を上げるが手に持ってたランスを落とす。一方、それを聞いた観客席にいる女子達は恐怖で顔を歪ませる。
『……せ、生徒達は避難して下さい!!』
放送が鳴る。それはとても遅かったが女子達は悲鳴を上げながら逃げ始める。女子達は楯無が月影に敗れたのではないかと思い、逃げていたのだ。
「お、お姉ちゃん!!」
「お、お嬢様!!」
観客席にいた簪と虚は楯無が殺されると思い心配の声を上げる。
「あ、ああっ……!!」
一方、楯無は首を更に締め付けられながらも意識が無くなっている事に気付く。
視界がボヤけていく、力が無くなっている。ああ、自分はこのまま死ぬのか? ……。楯無はそう感じていた。
刹那、楯無はある人物達を思い出す。簪……虚……本音……薫子……両親に従者達……そして……。
「……一、夏、君……」
楯無は目尻には涙を浮かべながら微かに呟く。それは今、一番逢いたい者の名であった。
「!!!?」
刹那、月影は上空から誰かの気配を感じ眉間に皺を寄せながら上空を見上げる。
上空からーー嫌、更に上空から一機のISがアリーナへと落下するように迫ってくる。
そして、そのISはアリーナへと乱入する形で現れた。そして、そのISを纏っているのは一夏だったーー、一夏が纏っているのは一夏の専用IS、ケルティックである。
だが、一夏の表情は険しい。だが、一夏が見ているのは、月影に首を掴まれている楯無である。
「更識!? 貴様ーーーーッ!!」
一夏は険しい表情を浮かべながら、月影に怒りの籠った叫び声を上げる。
だが、月影は一夏を見て狂喜の笑いを浮かべ続けていた。
次回、一夏の怒りーーそして、一夏VS月影。