ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
「貴様ーーーーッ!!」
一夏は、楯無の首を掴みながら狂喜の笑いを浮かべている月影に怒りを向けながらスラスターを噴かせる。
一方、そんな一夏を見た月影は「フフッ」と軽い笑いを浮かべると、指をパチンと鳴らす。刹那、ファルが球体から鷲に良く似た生き物へと変形し、一夏を攻撃するべく、鋭い嘴で一夏の目を抉ろとした。
「どけぇぇッ!!」
が、一夏はファルの顔を力一杯殴る。ファルからは金属の軋む音が聴こえたが一夏はファルの翼を掴むと、力一杯放り投げる。
ファルは地面に叩き付けられるも大きな音が聴こえ、煙が発生する。それでも、一夏には関係なかった。
一夏は月影の近くまで迫るが緑の球体が、ハウが一夏に体当たりし、一夏は微かに激痛を感じたがハウは一夏をぶっ飛ばしながらも犬に良く似た禍々しい生き物へと変形し、一夏に右腕に噛み付く。
一夏は地面に叩き付けられるも、ハウは一夏の右腕に噛み付いたまま離れようとはしなかった。
「このクソ犬が!!」
一夏は左手を拳に変え、ハウの右眼を強く殴る。ハウは右眼に激痛を感じたのか一夏を放す形で口を開けてしまう。が、ハウの右眼には火花が飛び散っていた。
一夏はそれをチャンスと言わんばかりにハウの右後ろ足を掴むと、ハウを放り投げる。ハウは地面に転がるも、一夏は月影と向き合う。
月影は少し離れた場所にいるが、一夏は怒りを隠しきれないでいるのと、頭には未だ激痛が走っている事にも気付いていた。
何故なら、一夏は数分前まで眼を覚まし、束に泣きながら抱き着かれるも、束からアリーナで止と鈴が何者かと戦っているのと、楯無と勇人が止めに入った際にまた別の、つまり月影が乱入した事を教えられた。
これには一夏は驚きを隠せず、四人を助けると言い出す。勿論、これには束やクロエ、ビショップが制止するも、一夏は彼女達が危ないと聞かなかった。
その為束は泣く泣く彼を人参ロケットへと乗せ、彼を学園近くにあるアリーナにまで連れていったのである。
因みに連れていったのはクロエであり、クロエはそのまま引き返し、一夏は人参ロケットから飛び降りるもそこは上空であったが、直ぐにISを展開した為に問題なかった。
「貴様……!!」
一夏は病み上がりでありながらも、月影を睨む。刹那、月影は笑いながら、楯無を一夏目掛けて投げる。
「っ!?」
それを見た一夏は慌てて楯無を受け止めると、彼女を片手で抱えると、彼女を哀しそうに見詰める。
「更識……」
一夏は自分の片腕の中で気を失っている楯無の頬をもう片方の手で触り、軽く撫でる。
楯無は死んでいないが気を失っており目には微かに涙の痕があり、首には月影が絞めたであろう手の痕があった。
「更識……勇人……止……鈴」
一夏は三人を見る。近くには仰向けで地面に転がっている勇人、場所は少し離れているが壁に凭れ掛かりながら俯いている止、更に離れた壁近くで俯せに近いように横向けに倒れている鈴。
止は渡が、鈴はハウとファルがやったが、一夏は静かに俯くと、抱いていた楯無をゆっくりと地面の上に仰向けに寝かせる。
刹那、一夏は顔を上げるが憤怒の形相を浮かべながら下唇を噛み、ギロリと鋭い眼差しで月影を睨む。
月影は何故か余裕のある笑みを浮かべながら首を左右斜めに振っていた。一方、一夏は身体が振るわせながら空を見上げながら力一杯叫ぶ。
「ウァァァァーーーーーーッ!!!」
一夏は力一杯叫んだ。それはアリーナ全体に響くも、一夏が月影への怒りと、仲間達を傷付けた事への怒りをも意味していた。
一夏は叫んだ後、月影を見るや否や月影を指差す。
「貴様……貴様だけは許さねぇ!! 貴様は俺の仲間を傷付けた! 絶対に許さねぇぇぇ!!」
一夏は月影を指差しながらそう言った後、月影は片目でニカッと笑う。が、その行為は一夏の逆鱗に触れる。
「ウォォォッ!!」
一夏はウイングスラスターを噴かしながら、月影目掛けて突き進み、月影を殴ろうと右腕を振り上げ、月影の間近にまで来ると、月影目掛けて右腕を振り下ろす。
刹那、痛々しい音が二人の間に木霊し、同時に月影は吹っ飛ばされる。しかし、一夏は月影を逃がすつもりもなく、月影の片脚を掴むと、月影を振り回し、壁へと叩く意味で手を放す形で投げる。
月影は一夏に投げられるも、数分も経たない内に壁に叩き付けられる。同時に大きくもなく、小さくもない音が壁の方から聴こえた。
「ウァァァァ!!」
一夏は怒りの叫び声を上げながらとある武器を展開する。それは一夏の遠距離攻撃型主力武器の一つ、ガトリングガンだった。それも小型でありながらも一発一発が威力の大きい物である。
一夏はガトリングガンを両手に取ると、月影目掛けて引き金を引く。刹那、ガトリングガンがら数発の銃弾が放たれ、その全てが月影目掛けて突き進み、それらは全て月影に命中する。
それだけではない、月影がいる壁からは煙が発生する。一方、一夏はガトリングガンの引き金を引き続けているがガトリングガンからは煙が出ており、真下の地面からは空の薬莢が何発も音を転げ落ちる。
が、一夏は憤怒の形相を浮かべ続けていた。それは月影への怒りでもあるが一夏の怒りは収まる気配はない。
アリーナの観客席から虚や本音、簪の止めろと言う一夏への心配の声が聞こえるが一夏の耳には届いてはいない。
一夏は本気で月影を殺そうとしているのと、仲間の無念と楯無の無念を晴らす意味で仇を取ろうとしていた。
一方、月影は何もしない訳ではなかった。月影はガトリングガンの銃弾の雨を身体中に浴びながらも、一夏の方へと突き進む。
月影は何故か笑っていた。強者に逢えた事とそれを完膚無きに叩ける事に喜びを隠せず、それを楽しみにしているようにも思えた。
「貴様何を笑ってやがる!?」
一夏は月影に怒りを感じ、ガトリングガンをぶっ飛ばし続けるも、月影は完全に間近にまで迫ってきた。
刹那、月影は一夏に体当たりし、一夏は吹っ飛ばされながらもガトリングガンを手放す。
直後、月影は一夏の片脚を掴むと、一夏を地面に叩き付ける。一夏は地面に叩き付けられるも、月影は一夏を今度は背負い投げする形で再び地面に叩き付ける。
月影はそれに飽きたらず、一夏を何度も地面に叩き付ける。月影はいつの間にか、狂喜の笑いを浮かべていた。
彼が何故そこまで笑っているのかは誰にも解らないが、月影は今、一夏を死の淵まで追い詰める事に喜びを隠せないでいる。
「こなくぞがぁぁ!!」
一夏は悲痛の声を上げるが月影は突然、一夏を叩き付けるのを止めると、一夏を近くへと放り捨てる。
一夏は投げられた直後に地面に転がりるも俯せに倒れた。
「うぐあっ……あがっ」
一夏は身体に走る激痛を堪えながら顔を上げ、月影を睨む。月影は何故かニッコリと笑っていたが、一夏の方へと近付く。
「うぐっ……あがっ」
一夏は立ち上がろうとして身体を起き上がろうとしたが身体が言う事を聞かなかった。
そして、一夏は月影に頭を鷲掴みされると月影に持ち上げられる。
「うぐっ……くそがあぁッ……!」
一夏は月影に対し、そう吐き捨てる。一方、月影は狂喜の笑いを浮かべながらもう片方の手を拳に変え、一夏の腹を殴る。
一夏は腹を殴られ声を上げるがとても小さかった。それでも、月影は再び一夏の腹を殴ろうとした。
「……チッ」
突然、月影は表情を険しくすると悔しそうに舌打ちし、一夏を放す。一夏は地面の上に崩れ落ちるも、力を振り絞って月影を睨む。
月影は悔しそうに一夏を見下すと、一夏に背を向け、急いで渡の方へと向かう。渡は楯無に倒されたのか俯せに倒れており、気を失っていた。
月影は渡の方へと向かう、渡の近くまで来ると、渡を肩口に乗せ抱えると、指をパチンと鳴らす。
刹那、一夏に倒されたハウとファルが突然、緑の球体と白の球体へと変形し、月影の方へと突き進み、二人の近くで止まり、宙に浮く。
同時に、月影の太刀を模したウイングスラスターも月影の方へと突き進み、二人の近くで止まると、月影の後ろで宙に浮く。
月影は一通り確認した後、渡を肩で抱えながら鶻のように上空目掛けて突き進む。二つの球体も追い掛けるが二人と二つの球体はアリーナから離れると、何処かへと飛び去って行った。
「ま……待て!」
その間に一夏は倒れながらも月影に手を伸ばすも、月影が渡を連れ、二つの球体も従いていく形で上空を飛んでいくのをただ見ているしか出来ないでいた。
が、一夏は彼等が上空へと飛び去って行ったの見た後、力一杯叫んだ。
「あ、あぁぁぁぁぁぁッ!!」
一夏は叫んだ。彼は、自分は月影に負けたと思っていた。あれだけのガトリングガンの銃弾をぶっ飛ばしながらも彼はピンピンとしており、彼は痛みをも感じていなかったのか笑い続けていた。
一夏から見れば屈辱以外何でもなく、自分は彼に負けたと感じていたのだ。
「あぁぁぁッ!! あぁぁーーーーっ!!」
一夏は叫び続けた。それはアリーナ全体に木霊するも、それは教員部隊が来るまで続いていた。
勿論、そんな一夏を見ていた簪、虚、本音は何も言えず、彼を憐れみの目で見続けていた。
次回、第五章クライマックスーー簪、箒に怒る。