ワンサマーとプレデター   作:噛ませ犬

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 第六章の始まりです。


第六章「再会、招待ーーそして和解」
第87話


 あれから一時間後、一夏達は保健室にいた。保健室には一夏、楯無、簪、本音、勇人、止、鈴の七人がいた。が、楯無と鈴は保健室に設けられているベッドで横になっており、虚は生徒会の仕事ーーつまり、学園長と、とある人物と共に箒や千冬の事で話をしていた。

 

「更識、鈴……もう大丈夫か?」

 

 一夏は、ベッドで横になっている楯無と鈴に訊ねると、楯無は哀しい笑みを浮かべながら、鈴は少し笑いながら首を左右に振る。

 因みに鈴は二十分前に目を覚ましたが何かあると危険と言う事で保健室のベッドで横になっていた。

 

「大丈夫……もう殆ど大丈夫だから」

「私も……未だ少し痛むけどね?」

「そうか――それよりも二人も大丈夫か?」

 

 一夏は勇人と止の二人にも訊ねると、勇人は無言で首を左右に振り、止は俯いたまま頷く。

 

「そうか……それよりも奴らは何者だったんだ?」

 

 一夏は何かを考え始める。それは一時間半前に襲撃してきた者達――それは、渡と月影と言う人物と、犬に良く似た禍々しい生き物へと変形する緑の球体と、鷲に良く似た生き物へと変形する白い球体の事である。

 渡は兎も角、月影は何者なのだろう――嫌、今はそんな事を考えている暇はなかった。一夏は月影は元より、渡の事を考えていた。

 

「止の双子の弟、渡――先ずは彼奴をどうにかするのが先だな」

 

 一夏の言葉に止は瞠目しながら顔を上げ、一夏を見る。

 

「い、一夏、い、今なんて?」

「アッ……嫌、彼奴を此方へと引き入れられないかな〜〜って」

 

 一夏の言葉に止は眼を見開きながら訊ねた。

 

「一夏、そ、それって」

 

 止が訊ねると、一夏は哀しそうに笑いながらゆっくりと頷いた。

 

「ああ……俺は奴を、渡を此方に引き込もうと思っているんだ」

 

 一夏は止に渡を味方に引き入れる理由を話した。一夏は、止がさっきから落ち込んでいるのを見ていられなかったからである。何故なら、一夏は渡の事はあまり知らないが止から訊いた事はある。

 それに渡とは未だちゃんと向き合ってはいないが渡は気を失っていたが少しだけ逢った。

 それなら未だ良いだろう――が、一夏は渡を此方の味方に出来ないかを考えていた。

 渡が味方なら力強いのと、一夏はある事を危険と感じていた。

 

「渡と月影は男性操縦者だ――世間から見れば第四、第五の男性操縦者……つまり」

「世間は彼等を篠ノ之博士同様、血眼になって捜し出し、モルモットにする危険もあり、女尊男卑主義者なら殺しに掛かる――と、言いたいんだろ?」

 

 一夏が何かを言い終える前に、勇人が腕を組みながらそれを代わりに言うように言葉を述べた。

 それを聞いた一夏、楯無、簪、本音、鈴は驚き、止は眼を見開きながら身体を震わせる。

 

「は、勇人――そ、それって、ど、どういう事だよ?」

 

 止は震えながら、勇人に訊ねると、勇人は溜め息を吐きながらそれを言った。

 

「止、お前は馬鹿か? 世間から見れば奴らは恰好の実験材料――もしも奴らが何処の企業にも属していないのら、企業側は無理矢理でも引き入れるか、女尊男卑の奴らなら暗殺もしかねない――強いて言うなら、奴らは指名手配犯級の者達だからだ」

「そ、そんなのって……渡はどうなるんだよ!?」

 

 止は勇人に詰め寄ると、勇人は再び溜め息を吐き、再び言葉を続けた。

 

「止……奴らは貴重な人材だーー奴らは世界中から欲しがられる存在だ――そうなれば、奴らは生き抜く保証は無い――奴らは今頃どうしているのかも、俺には判らない――止、お前もそうだろ?」

 

 勇人の指摘に止はバツの悪そうな顔をする。確かにそうだった。そんな止を見た勇人は無言で俯く。

 

「止、俺が言うのもなんだが、お前と渡は双子の兄弟だって事は知ってる。だが同時にお前らの絆は何処かで亀裂が入った」

「違う!!」

 

 勇人の言葉を止は否定するように叫んだ。それを聞いた簪、本音、鈴は肩を竦め、一夏は何も言わなったが勇人は眉間に皺寄せる。一方、止はそれを話すように口を開いた。

 

「それは違う……彼奴は、渡は俺を憎んでいる筈だ――そうだろうな……あの時、俺は奴を見殺しにしたんだからな……」

 

 止は肩を震わせながらある事を言い始めた。三年前、止は渡と共に、とある火災に巻き込まれた。

 あの火事の中、止は火の影響により崩れ落ち手来た瓦礫により、足を挟まれた。そんな中、止は渡の名を叫んだ。何度も、何度も叫んだ。

勿論、渡は兄、止を捜していた。

 そして、渡は遠くで止を見つけた際、止を助けるべく、止の元へと駆け寄ろうとした。が……。

 

「そん時、天井が音を建てて崩れ落ち、そこで……つ」

 

 止は下唇を噛むも言葉を続ける。

 

「渡が……渡が俺の目の前で……瓦礫に埋もれた……」

 

 止はこれ以上何も言わなかった。その代わり、両手を拳に変えながら震えていた。止は辛かった――何故なら、止は渡が瓦礫に埋もれる瞬間を唯一目撃した人物でもあった。

 彼は目撃者でありながらも、弟の死を目撃した兄でもある。

 止はその後、弟を呼び掛け続けていたが煙を大量に吸い、そのまま意識を失いそうになるも、一夏やチョッパーに助けられ一命を取り留め、事なきを得た。

 止はその後、プレデター達に怯えながらも、一夏が彼等の元で修行をしていると訊き、自分も強くなりたいと申し出た。

 それは、自分は渡を助けられなかった事、自分の無力さを知った事と、渡への償いをする為に強く生きて行こうとしたのである。

 それに、何時も気丈に振る舞っていたのも、周りに心配掛けさせない為でもあった。

 が、渡が生きていたのなら、自分は何の為に生きていたのだろうかと、悩み始める。本当ならチョッパーに相談したかったが彼は今、此処には居ない。

 

「トッマ……」

 

 そんな止に本音は止に歩み寄り、慰める。

 

「大丈夫だよトッマ、トッマは何も悪くないよ〜〜」

 

 本音は止に慰めの言葉をかける。周りも止に慰めの言葉をかけるも、止は哀しい笑みを浮かべる。

 

「みんなありがとう……でも」

 

 止は保健室から出て行こうとして扉の方へと歩き出す。一夏が呼び止めると、止は立ち止まり、一夏達を見る。

 

「ごめん……でも、少し一人になりたい……じゃ」

 

 止はそう言うと、保健室の扉を開け、外に出ると、後ろ手で扉を閉める。

 

「トッマ〜〜」

 

 本音が追いかける為に保健室を出て行った。保健室には一夏、楯無、簪、鈴、勇人の五人しかいなかった。

 

「止君、大丈夫なの?」

「止は大丈夫だ――彼奴は強い奴だ――あのくらい、立ち直れる筈だ」

 

 楯無が心配するように言うと、勇人は心配ないと答えた。

 

「でも、渡って子は止君の弟なんでしょ? 兄弟が兄弟の心配をするのは当たり前じゃないの!?」

「そうだよ。霧崎君は弟の事を心配している――仲が良い証拠だよ?」

 

 鈴と簪も指摘するが勇人は溜め息を吐きながらそれを言った。

 

「それは無理だ。奴の、奴の兄弟の問題だ――部外者である俺達が関わる事ではない――何より、俺達が何を言っても、止と渡の霧崎兄弟の溝は、彼等が埋めるしか無い――俺は用があるから、寮に戻る」

 

 勇人はそう言うと、保健室を出て行った。途中、勇人は「家族か……」と寂しそうに呟いたが一夏達には聞こえなかった。そして、勇人は保健室を出て行くと、保健室には一夏、楯無、簪、鈴の四人しかいなかった。

 嫌、それは良いとして、保健室には不穏な空気が流れていた。

 

「それよりもさ、一夏、貴方は大丈夫なの?」

「何がだ鈴?」

 

 鈴は一夏に訊ねると、一夏は訊き返す。

 

「いえーー貴方は月影って言う奴に何度も地面に叩き付けられたんでしょ? 普通だったら頭をやられている筈だったんでしょ?」

「大丈夫だ鈴、あの時、絶対防御が発生していたから何とかなったーーまぁ、発動していなかったら俺は死んでいたのかもしれない」

 

 一夏の言葉に鈴は「そう……」と言いながら一夏から目を逸らす。

 が、鈴は一夏に罪悪感を抱いていた。勿論、一夏がこうなったのも全て自分のせいだと思っていた。鈴が悪い訳ではないが、鈴自身、罪悪感を抱いている為、周りが何を言っても、鈴には自分を責めるに違いない。

 

「それより」

「一夏君」

 

 一夏は鈴に何かを言おうとしたが楯無が遮る。

 

「何だ更識?」

 

 一夏は楯無を見ると、楯無は何故か頬を紅くしていた。一方、一夏は眉間に皺を寄せながら首を傾げていた。

 

「どうした更識? 熱でもあんのか?」

 

 一夏は楯無の額に手を当てる。――つ!? ――。一夏の行動に楯無は顔を真っ赤にする。

 一方、一夏は何故か首を傾げていたが、それを見た簪は不意に呟いた。

 

「鈍感……」

「何か言ったか?」

 

 簪の言葉に一夏は訊ねると、簪は「何でもない」と言って首をプイッと振る。

 

「何だよ一体? まあいい。それよりも更識、どうした、熱でもあるのか?」

 

 一夏は楯無に訊ねると、楯無は頬を紅くしながら首を左右に振る。

 

「熱がある訳じゃないの……」

「だったら何だ? 用がないのなら別に良いだろ?」

「違うわーー用があるわ」

「だったら何だ? 用件を早く言え?」

 

 一夏は楯無の額に当てていた手を当てるのを止める形で離れさせると、腕を組みながら呆れる。

 そして、楯無は恥ずかしそうにそれを言った。

 

「一夏君……ゴールデンウィーク――つまり、連休の間、私や簪ちゃんの家に来てくれない……かな?」

 

 楯無は恥ずかしそうに言う。そして、それを聞いた一夏は「はっ?」と恍けた。

 

 




 次回、楯無が一夏に家に来て欲しい訳を話します。因みに第六章は一夏と楯無の恋が進展する為の章でもあります。
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