ワンサマーとプレデター 作:噛ませ犬
あれから数分後、一夏と楯無は今、食堂に来ていた。食堂には疎らだが女子生徒がいて、時間が経つに連れ、徐々に人が多くなっていく。
そんな中、一夏と楯無は自分達が摂るべきであろう朝食が乗ったトレーを持ちながら隣同士に歩いていた。その光景は恋人同士に見えるがそれは嘘の恋人同士ーー故に周りに誤解を与えているが楯無は最早、一夏を意中の異性として惹かれ、好意を寄せている。
一方の一夏は楯無の淡い気持ち等知りもしていないが楯無を微かに感謝している。一夏と楯無、どちらも互いの相手を気にしているがそれは両人にとって吉なのか、凶のどちらなのかは判らない。
が、楯無から見れば裕福な時間なのかもしれない。元に楯無の表情は嬉しそうであり、一夏は無言だった。
「一夏君は、サンドイッチなの?」
楯無は、一夏が持ってるトレーの上にある食事物を見て訊ねると、一夏は呆れながら「別に」と答えた。
「別にじゃないでしょ? 一夏君はそれで足りるの?」
「俺は少食だーーそれに俺はダイエットしてる訳ではないし、余り食いたくない方なんだよ?」
「ふ~~ん、でも沢山食べた方が脳が働くわよ?」
「あのなぁ……ったく、お前はどうなんだよ? 鯖味噌定食って」
一夏は呆れながら、楯無が手に持ってるトレーの上にある食事物、鯖味噌定食を指摘すると、楯無は頬を膨らます。
「別に良いじゃない、一夏君はサンドイッチなのに指摘するの?」
「別に俺は指摘する訳じゃねぇ、俺は只ーー」
「彼処に座りましょう!」
一夏は反論する前に楯無は、ある方角を見ながら言うと、その場所へと歩く。
ーーおい! ーー。一夏は楯無の言葉や行動に文句を言いたかった。が、楯無は自分が見付けたテーブルの方へと歩く。
「一夏君も早く早く!」
楯無はテーブルの前に着くと、楯無は一夏を呼ぶ。恥ずかしいと言うよりも、早く来てくれと促す。勿論、それを見た一夏は不意に辺りを見渡す。
女子生徒達は何故か自分と楯無を交互に見ているが微笑ましそうであり、中には少しだけ驚いている者達と、中には何故か歯を食い縛っている者達もいた。
一夏と楯無が恋人同士に腹を立てているのだろう。ーー止めろよ! ーー。一夏は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、楯無がいるテーブルの方へと歩いていった。
「ったく止めろよな? そんな行動をしたら此方が恥ずかしいじゃねぇかよ?」
一夏は恥ずかしそうに訊くと、楯無は首を傾げる。
「別に良いじゃないーー人を呼ぶのは悪い事じゃないわよ?」
「悪い事じゃないって……此方は恥ずかしいじゃねぇか? ……ったく」
一夏はトレーをテーブルの上に置くと、テーブルの近くに儲けられている椅子に座る。刹那、楯無はトレーをテーブルの上に置くと、椅子に座る。
「何故俺の隣に座るんだよ?」
一夏は楯無に疑問を抱く。何故なら、楯無は一夏の隣に座っていた。一夏から見れば疑問その物だろう。
しかし、楯無は答えた。
「別に良いじゃない、私が何処に座ろうと私の勝手でしょ? それに」
「あっ、お姉ちゃん」
楯無が何かを言う前に近くから声が聞こえ、一夏と楯無は声がした方を見ると、トレーを持っている簪がいた。因みに簪が持ってるトレーの上には、熱いうどんと熱いスープが入っている大きな器が置かれていた。
「簪ちゃんじゃない。おはよう」
「おはようお姉ちゃんに一夏君」
簪は二人が座っているテーブルに近付くと、簪は二人を交互に見る。
「朝から熱いね……」
簪は恥ずかしそうに訊くと、一夏は「はっ?」と惚け、楯無は何故か喜んでいる。一夏は元より、楯無は妹が自分達を恋人同士だと認識している事に喜びを隠せないでいた。
「それよりもお姉ちゃんに一夏君、此処に座って良いかな?」
「別に良いわよ! 簪ちゃんなら大歓迎よ!」
楯無の言葉に簪ちゃんは軽く頷くと、楯無の向かい側に座る。
「二人共、頂きましょう」
楯無は二人にそう言う。それを聞いた簪は頷き、一夏は呆れながら頷くと、更識姉妹は手を合わせながら「いただきます」と良い、一夏は無言でサンドイッチを一つ手に取り、一口含む。
「あら一夏君、貴方はいただきますも言わないの?」
楯無は一夏に呆れるも、一夏はまだ呆れながら「別に良いだろ」と答え、サンドイッチを食べる。
「朝ちゃんと食べなきゃいけないけど、ちゃんと言葉も言わなきゃいけないわよ?」
「うるせえな、俺が何をしょうが俺の勝手だろ? それに俺は規則正しい生活はあまり好きじゃねんだよ?」
「そうなの? でも規則正しい生活は人を良くする物なのよ? それに一夏君」
「うるせえ、さっさと食え」
楯無は何かを言う前に一夏は静かに怒る。
「む~~」
一夏の言葉に楯無は頬を膨らます。それはとても可愛らしい物だったが楯無は笑みを浮かべる。
楯無はさっきまで、少し泣いていた一夏を慰める形で抱き返していた。楯無から見れば一夏の抱擁は嬉しい物かつ、彼の悩みを少し解ったような気がした。
しかし、彼に人殺しをさせた事や、ロシアでの件は未だ解決していない。人殺しは兎も角、ロシアは今、沢山の大量殺人事件で世間が騒がしくなっている。
勿論、ロシアの経済や大規模な政治家の交代ーーその理由としては、次の新大統領である壮年の男性がロシア国民に謝罪し、今後このような事が起きないよう手を打っている。
その大統領は国民からの支持も高く、国民からの人気もあり、女尊男卑主義者でもないからである。それに自分はロシア代表としてどうなるかは、ロシアが更識家に連絡し、更識家が楯無に連絡する形で伝えられる。
言わば自分はロシア代表のままでいられるのはロシアに委ねられている。
「お姉ちゃん?」
楯無が考え事をしていると簪が心配そうに訊ねる。
「う、ううん何でもないーー」
楯無はニッコリと笑い、簪は「そうなの?」と訊き返し、楯無は「ええ」と答えた。
「……フン」
そんな姉妹を見た一夏は軽く瞑目する。が、一夏は内心笑っていた。
「よう、一夏」
刹那、近くから声が聞こえ、一夏、楯無、簪は声がした方へと振り返ると、そこにはトレーを持ってる止と勇人の二人が立っていた。
止は少し笑っていたが、勇人は無言で一夏達を見ていると同時に、二人は、この学園の物である白い制服を着ていた。
「止、勇人」
「おはよう一夏、それに更識さんも……更識さんで良いかな?」
止は楯無は元より、簪に訊くと、簪は軽く首を左右に振る。
「別に大丈夫……簪で良い」
「あっ……う、うん」
止は軽く頷くと、二人は椅子に座る。因みに、一夏が真ん中で隣には楯無、楯無の向かい側には簪、簪の隣には止、止の隣には勇人が座っていた。
「何だ二人共、朝食はそれか?」
一夏は止と勇人の二人が選んだであろう朝食を見て訊ねる。止は焼き立てのパン一枚にベーコンエッグやサラダやコーンスープ、勇人はカレーライスにサラダである。
「別に良いだろ、お前はサンドイッチだろ?」
勇人は一夏に反論すると、一夏は「まあな」と微笑む。止と勇人は三人同様朝食を摂り始めるも、止はある事に気付く。
「そう言えば一夏、お前に訊きたい事があるんだけど……」
止が唐突に一夏にある事を訊ねてきた。ーー何だ止ーー。一夏は止を見ると、止は少し怪訝そうな表情を浮かべていた。
「どうした止?」
一夏は止の表情を見て何か悟ったが。止は少し無言で俯く。
「止……はぁ」
一夏は止が何を考えているのかは判らなかった。と言うより、一夏は止が自分に何を言うのかを悟った。
恐らく渡の事だろう。止は渡の事を誰よりも心配し、誰よりも無事である事を喜ぶと同時に敵になった事を誰よりもショックだったに違いない。
一夏は止のリーダーであり、仲間であり、親友である。止が渡の事を心配していると同様に、一夏もまた、渡を心配している。彼が何処にいるのかも判らないと同時に、渡が女尊男卑主義者達の者達に殺されていないのかを心配していた。
後で束に連絡して、渡を捜して貰うよう頼もうと、一夏は思った。
「止君? どうしたの?」
一夏は止を心配する中、楯無も止を心配していた。楯無だけではない、簪も心配そうに止を見ており、勇人は鋭い眼差しを止に向けていた。
一方、止は俯いたまま何も言わなかった。と言うよりも、止自身も気付いていた。しかし、止は軽く頷くと、顔を上げ一夏を見据えると、ある事を言った。
「実は……オルコットの事なんだけど……」
止の言葉に、一夏は目を見開く。勇人は眉間に皺を寄せ、楯無と簪は互いの相手を見据え首を傾げ、直ぐに止を見やる。
止は少し俯くも、止はオルコットを、セシリアを心配していた。それには理由があったが、止はそれを話した。
周りには女子生徒の談話している中、騒がしい中、一夏達がいるテーブルでは、止は悲しそうにセシリアの事を話していた。
次回、一夏達が嫌々ながらもセシリアの為に動く。