TPCの参謀会議。
多くの参謀の視線が一人の男へ向けられている。
「報告書は読ませてもらった。比企谷八幡隊員」
全員の視線が集まる中でサワイ総監がゆっくりと口を開ける。
「不測の事態、状況がつかめないという点において、仕方のない状況だったということは認めよう」
「だが、組織としての規律を乱しことが問題だ」
扇子を叩きながらヨシオカ・テツジ警務局長官の言葉に誰もが反論をしない。
マキーナ事件から数日後。
基地からの無断出動、定期連絡に応答をしなかったという事が問題に上げられ、八幡は参謀会議に出頭していた。
「では、会議の結果を伝える」
サワイ総監の言葉に緊張が走る。
どのような結果が下されるか。
そして。
「良かったね~、一週間の基地立ち入り厳禁に済んで」
レナ隊員がぽんぽんと俺の肩を叩く。
「実質、有給消費なしの休暇ってことなんやからのんびりせい」
「そうします」
「だからって、命令違反を何度もするなよ」
釘をさすようにリーダーがいう。
う、考えていたことがばれちまったかな?
そんなことを思っていたら隊長が真剣な目でこちらをみている。
「緊急時も呼ぶことはないから、何も考えずに休んできなさい。いろいろとね」
隊長の言葉に疑問を残しながら俺は頷いた。
「というわけでよみうりランドへしゅっぱーつ!」
自宅へ戻った三日目。
学生の小町に腕を引かれてやってきたのはよみうりランド。
のんびりと部屋で休みを満喫していたという所で小町の“約束”を果たすべく、よみうり
ランドへ足を運んでいた。
基地へ近づく厳禁ということで、PDIは持っているがそれ以外の道具は一切なし。
ニュースを見ている限りGUTSが関わっていそうな事件もないから一応の平和なのだろう。
そういえば、俺が謹慎している件はシンジョウ隊員からマユミさんへ、由比ヶ浜に伝えられている筈、久しぶりの休みに気を利かせているのだろうか。一色からの連絡は一切ない。
後輩に対してのポイントが0.5あがった。
小町と共によみうりランドへ足を踏み入れる。
平日だというのに利用者が多い。
「お兄ちゃん、今日は祝日だよ」
「…成程」
仕事漬けの毎日で曜日関係が完全に消え去ってしまっている様子だ。
はぁ、社畜生活って、こんなことが当たり前になるんだな。怖い怖い。
「あ、そうだ。お化け屋敷行こうよ」
「わかった」
ま、今日はエンジェル小町の為に休みを費やすことにする。
そんなことを考えてお化け屋敷に入った。
入ったのだが。
何だろう、まるで怖さを感じない。
それどころか、一目見ただけで作りものだと判断できる。
GUTSでエイリアンとか怪獣の恐ろしい顔をみていることで耐性がついたか?
「比べて…」
後ろで悲鳴があがっている。
小町だったら迅速に駆けつけるが、これだけ野太い声だ。
男の物だろう。
そんなことを考えて隣を見ると小町はニコニコしている。
どうやら我が妹も耐性がついている様子。
「小町は平気みたいだな」
「まーねー、見慣れちゃっているのかな」
「慣れっていうのは凄いからな」
「お兄ちゃんも怖くないの?」
「あぁ」
ガタタタと音が響く。
なんだ?と振り返る。
「うわぁああああああああああああああああ」
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!」
恐怖に染まった男が抱き付いてきて俺は情けないくらいの悲鳴を上げる。
これは許されて仕方のない事だ。
「もう、GUTSの隊員がなぁに情けない声をだしているのよ」
「……」
「TPCの職員もそんなんでお仕事ができるのでしょうかぁ?」
「面目ない」
マユミさんと小町、
両方の妹からの攻撃に俺とシンジョウ隊員は情けない言葉しか返せない。
「マユミさん、マユミさん、小町はドリンクを買いに行こうと思います」
「そうだね。妹同士親睦でも深めようか」
「というわけで」
「私達はドリンクを買ってくるので、待っていてください!」
そういって二人は離れる。
出会って数十分足らずなのに仲良過ぎでしょ?
「てか、お前、なんでここにいるの?」
「それはこっちのセリフっすよ」
「俺は休暇だよ」
「妹に誘われました」
「お前、妹、いたんだな」
「えぇ」
「マユミから聞いたけれど、妹に黙っているんだって?GUTSにいること」
「余計な、心配かけたくないっすから」
「そっか…なら、黙っていてやるよ」
「え?」
俺は驚いた顔をしてシンジョウ隊員をみる。
この人の性格なら伝えると思っていたのに。
「兄が妹に隠し事するっていうのは相当な理由があるってことぐらいわかるって、ま、いつかは話してやることだな」
「……ありがとうございます」
兄貴的なポジションってこういう所でも発揮されるんだなぁと思っていると向こう側から虐められている子供の姿があった。
あ、兄貴スキルの発動ですね?
ハルキという少年はジェットコースターなどの絶叫系が苦手だという。
加えて、おもらしをしてしまったことがあるらしく、そのことを友達にからかわれ続けている。
遅れてやってきたマユミさんや小町達は妹のアッコちゃんと話をしていた。
「アッコちゃんと観覧車乗ってきてくれないか?」
「え?」
「兄同士でお話しってやつだよ。な、八幡」
「そうですね。小町、そっちは妹同士で話をしてきてくれるか?」
「…オッケー、お兄ちゃんのいう事をきく小町って、ポイント高くない」
はい、高い、高いよ。
にこやかに小町はマユミさんと共に観覧車へ行く。
俺はマッカンを一口飲みながらシンジョウ隊員とハルキ少年の話を聞いていた。
誰にでも苦手なものは存在している。
俺だって苦手なものはある。
「でもな、男っていうのは…兄貴はいつか妹の為に戦わないといけない日がくる。その時がきたら迷わずに戦うんだ」
そう語るシンジョウ隊員の目はとても優しいものだ。
妹を持つ兄だから通じるものがある。
実際、ハルキ君も大きく頷いていた。
後は時間が解決してくれるだろう。
そんなことを考えていた。
そう、時間が解決してくれる。
しかし、神様というものは残酷だ。
解決するための時間が今日、やってくるなど夢にも思わなかった。
「なんだ、こりゃ?」
変な光が吹きだした方へシンジョウ隊員達と向かうと地面から変な岩みたいなものが伸びていた。
「いきなり地面から生えてきた」
「生えてきた!?」
「……」
試しに叩いてみる。
硬いな。
「とにかく、離れるべきだろうな。ほら、離れろ」
周囲の人間へ離れることを促しているとシンジョウ隊員の姿がなかった。
あれ?
どこにいった。
二人を探しに行くとすぐに見つかったが、何やってんの?
何もないところでパントマイムをしていた。
「…どしたんですか?」
「見えない壁がある」
シンジョウ隊員にいわれて空間へ手を伸ばす。
しばらくして、ペタンと硬い壁にぶつかった。
「壁、ですね」
異変が起きている。
シンジョウ隊員がPDIで本部へ報告した。
俺達はその場で待機…いや、出られなくなっている。
地面が大きく揺れ始める。
「怪獣…」
「マズイ、逃げろ!」
地面から現れた土色の怪獣。
俺が注視するのは額の角、どうやら地面から伸びてきた岩の正体は奴の角だ。
怪獣は触手で次々と子供たちを捉えていく。
上空ではガッツウィングが攻撃を試みているようだが見えない壁によって阻まれている。
「突入に時間が掛るか」
「そうみたいですね…シンジョウ隊員、子供たちを避難させましょう」
「どこに!?」
「触手の入ってこられない建物などの中に」
『八幡の提案は有効や、あの怪獣は子供たちを捕まえて産卵させようとしている。下手に逃げ回るより建物へ隠れる方がまだ、良い』
その時、怪獣が動き始める。
行き先は観覧車。
「マズイ!」
「くそっ」
あの怪獣は小町達のいる観覧車へ向かおうとしていた。
俺達は観覧車の方へ走る。
ほとんどの客が逃げているけれど、目を凝らしてみると中にまだ人の姿があった。
心配そうにしている小町とマユミさんの姿も。
「くそっ!!」
悪態をつくシンジョウ隊員の隣で俺はどうすればいいか考える。
この場でとれるのは怪獣の注意をひく事。
「八幡、どうすればいい。俺は!」
シンジョウ隊員が俺の肩を揺らす。
ここで取れる手段は。
その時、ゴーカートに乗って走り回るハルキの姿が目に付く。
「とても危険なこと、頼んでいいすか?」
「……なに?」
「俺がなんとか、この観覧車を下すまでの間、ハルキとゴーカートで怪獣の注意を引き付けて下さい」
「…俺だけじゃ、ダメなのか?」
「奴は子供を狙っている。ハルキがいないと反応しない」
「ハルキを餌にするっていうのか!?」
「兄は妹を助ける」
シンジョウ隊員が目を見開く。
「今がその時です…こんな無茶苦茶なことを頼みたくないですけれど、GUTSのみんなが来るまでなんとしても時間を稼がないといけないんです」
今頃、ホリイ隊員があの壁を壊す方法を見つけている頃だ。
それまで、時間を稼げればなんとかなる。
「わかった、兄貴同盟として、頑張るぜ」
「頼みます」
シンジョウや八幡が動き出していた時、怪獣、ガギの生み出すバリアーに水素が多く含まれていることを見抜いたホリイ隊員の提案により液体窒素を装備したガッツウィングが遊園地へ到着する。
「液体窒素弾、発射!」
リーダーの合図と共にウィングから放たれた光弾がガギのバリアーを破壊する。
バリアーが壊されたことに気付いたガギは触手を振るって暴れ始めた。
ガギは観覧車から意識がそれる。
八幡の作戦は成功した。
問題があるとすれば未だ、ガギが脅威であるという事と二人を追いかけていることだ。
「……俺は」
ここから離れることが出来ない。
離れたら誰が彼女達を地上へ下すのか。
速く。
速く地面へ降りろ。
そう願いながら観覧車を操作する。
シンジョウとハルキを救おうとウルトラマンティガがガギと戦いを始める。
ガギの操る鞭に苦戦しながらもティガはタイプチェンジを行い、力技でガギを圧倒。
デラシュウム光流でガギを倒す。
「お兄ちゃん!」
「小町、大丈夫か?」
降りてきた観覧車から涙目で小町が俺へ飛びついてくる。
優しく兄としてそれを抱きしめた。
「怖かったよぉ」
「無事で、良かった…」
小町をベンチへ座らせる。
「お兄ちゃんに、こんな度胸があるなんて思わなかったよ。さすがTPCだね」
「……なぁ、小町」
「なに?」
「俺さ、TPCの、GUTSに勤務しているんだ」
「ふーん、知っていたよ」
「そうか……って、え?」
小町の発言に俺は目を見開いた。
知っている?
「GUTSの隊長さんだっけ?その人がGUTS発足の時に話をしに来たの」
イルマ隊長、
親が放任主義だって知らなかったんだろうなぁ。
知っていたらあそこで気遣いとかかけなかっただろうし。なんだろうなぁ、うちの家って。
「あ、でもでも、小町が知ったのは先日だよ。お兄ちゃんが家へ戻って部屋に閉じこもっていた時に隊長さんから電話がかかってきたんだぁ」
「……成程」
そこで、俺がGUTS勤務だと知ったと。
「俺の気苦労は一体…」
「それでも、小町は納得しておりません!なんで危険なところにいることを黙っていたのかな!」
「それは」
「お兄ちゃんが心配するように小町も心配するんだからね!次からはこういうことをしないように!」
「……わかった」
「それと、定期的に連絡するよう!小町は心配なんだから」
「わかった」
どうやら俺は小町に隠し事なんかできなくなるだろう。
兄が妹を心配しているように、妹も兄を心配してくれていることを知ってしまったのだから。
小町が知るの、あっさりしすぎていたかな?
自分のイメージ的に小町ならこれぐらい当たり前だと思っています。八幡の事なら詳しいよ!と目を輝かせているかもしれません。