人類は、いや、人間の科学技術は発展していく。
最初は火を起こすだけだったのが、移動するための馬車、海を行き来するための船、空を飛ぶための飛行機、果てには宇宙にいくための宇宙船までも開発していた。
今も、クリーンなエネルギーを作るというコンセプトから超電導リングと呼ばれるシステムが作られようとしていた。
TPCは太陽の光で電気を起こしそれをマイクロ波で地上に送るシステムを開発中だった。
太陽光でクリーンなエネルギーをという考えだった。
果たして、それが正しいのか、誰にもわからない。
ダイゴ隊員とシンジョウ隊員の乗っていたウィング一号が久々良島近辺を飛行中に落下したという。
TPC1で本部へ戻ってきたシンジョウ隊員とダイゴ隊員を迎えに行くために俺は歩いていた。
入口で待っているとものすごい勢いでやってくるマユミさんの姿があった。
どうやらメディカルセンターにも連絡がいっていた様子。
彼女は慌てた様子でシンジョウ隊員をみると笑みを浮かべた。
「お、おう」
妹へ心配をかけてしまったことで少し気恥しいのだろう。
「足がついているぅ!」
笑顔でシンジョウ隊員の足をパンパンと叩く。
あの、そろそろやめないと。
「痛いっての!!」
お兄さん、痛がりますよ?
結構、痛そうでしたから。
ダイゴ隊員は腕で済んだようだ。
飛行機事故って怖いね。八幡、これからも飛行機乗るの、嫌だなぁ。
シンジョウ隊員とマユミは話をしていた。
「もう、ウィングが落下したと聴いて心配したよ!」
「大丈夫だって」
杖を肩にのせながらシンジョウは言う。
「怪獣に踏み潰されたって、お前のウェディングドレス姿をみるまでは絶対に死ねないって」
「あ、じゃあ、もうすぐ死ねるかも」
「え?」
さらりと恐ろしい事をいう妹に戦慄しながらシンジョウは尋ねる。
「タクマから連絡があったの」
マユミの手にあるのは封筒。
海外から送られてきた手紙だ。
「日本のグランプリ出場へ向けて、帰国するんだけどお兄ちゃんあって話がしたいんだって、会って、くれるよねぇ?」
見上げるようにして訊ねてくるマユミにシンジョウはなんともいえない表情を浮かべる。
「タクマは良い奴だ、多分」
「やったぁ!愛しているお兄様ぁ」
笑顔を浮かべてマユミはタクマを迎えに行くため、立ち上がる。
「今夜、予定あけておいてね?」
「今夜!?」
「ゴリラン航空206便でくるんだよ!迎えにいってくるね!」
「あ、マユミちゃん、これ、頼んだよね?」
「頼んだよ」
ダイゴと八幡が持ってきたドリンクをマユミはそういうと去っていく。
「頼んだよって…」
「嬉しい事でもあったみたいすね」
ダイゴはトレーをシンジョウへ渡そうとするが反応しない。
ぶつぶつと昔を思い返している。
「こっちも、どうしたの?」
「わかりました」
「え!?」
「マユミさんが結婚するんですね?」
「そうなるかもしれないんだよぉ!」
ガバッと立ち上がったシンジョウは八幡の肩を掴む。
「俺の事をおにいちゃん、おにいちゃんといっていたアイツが別の奴を頼ることになる。切なくて、切なくて」
「わ、わかります、わかりますよぉ、俺だって小町がお兄ちゃんお兄ちゃんといって可愛がっていたのに、それが別の奴と一緒と考えると悔しくて、どうして、兄というのは!」
「そうだ、そうだ!」
「あの、シンジョウ隊員…足」
二人の剣幕に一歩引いた状態のダイゴがおそるおそる足を指す。
しばらくして、激痛でシンジョウ隊員の悲鳴があがった。
そんな三人にゴリラン航空206便が強い電磁波によって連絡不能という報告が届く数秒前のことだった。
ゴリラン航空206便の機内、そこでアオキ・タクマは尋ねる。
「日本には?」
「予定の時間で到着します」
「ありがとう」
感謝の言葉を述べていた時だった。206便は黒い雲の中へ入ってしまう。
機内で悲鳴や戸惑いの声が上がる中、タクマは目を閉じる。
彼の体が淡い光に包まれていく。
直後、ゴリラン航空206便はガゾートに破壊されてしまう。
「隊長、またですか?」
俺達が作戦室へ戻ると緊張した様子のホリイ隊員がいた。
「目標を衛星が捉えました」
「…ガゾートや」
ホリイ隊員の言葉に俺は息を飲む。
正面スクリーンに表示された映像、あれはまぎれもなくガゾートだ。
「ホリイ、八幡、出動を」
「俺が行きます!」
「無茶をいうな!」
いきなり言い出したシンジョウ隊員はそのまま作戦室を出ていく。
「僕も行きます」
「あ、こら、ダイゴ!」
ダイゴ隊員がシンジョウ隊員を追いかけていった。
「……」
二人を追いかける。
「あ、八幡!?」
「すぐに戻ります!」
作戦室を出て後を追いかける。
しばらくしてヘルメットを手にしている二人の姿を見つけた。
「シンジョウ隊員!」
「八幡……止めるなよ。俺は」
「止めるつもりはありませんよ。ガゾートは前よりも強大になっているかもしれない。可能な限り奴への接近はしないでください………」
「お前」
「妹が大切なのは同じですから」
「すまん、恩に着る!」
「ありがとう、八幡隊員」
「いえ、心配でしたから………兄の気持ちもわかりますし」
傍に来たダイゴ隊員へ短く返して俺は作戦室へ戻る。
“クリッター”
ガゾートは元々、クリッターと呼ばれる存在で地球に生息している生物の一つだった。だが人類の科学発展の電磁波による影響で変異して人間達の前に姿を見せた。
一度は交渉できると考えていた。
しかし、ファースト、セカンド・コンタクトは連続して失敗。
人類の敵として倒された。
「あれから電磁波の対策を人類はなんもしてへん……ガゾートが生まれるのは仕方がないといっても過言ではない。せやけど」
「ガゾートの帯電体質は前よりも強力になっていると推測されます。半径十キロの計器は狂ってしまいます」
「前よりもごっつぅ、強力や」
「でも、何で、ですか?」
俺の言葉に全員の視線が集まる。
「何で今になってガゾートがより強大な存在になって現れたのか……」
「せやなぁ」
「ヤズミ隊員、ガゾートの侵攻先調べてちょうだい」
「……侵攻先に超電導受信施設があります」
「そうか…超電導リングのマイクロ波がクリッターの巣を直撃したんや…それで、より強力なガゾートが生まれた…」
「マイクロ波に呼び寄せられてガゾートが施設を破壊したら」
その先は誰もが想像できる。
施設をガゾートが破壊すれば町は途方もない被害をこうむる。
「でも、漏電対策は万全の筈」
「あんな巨体が襲撃してくることは想定されてない」
「どちらにしてもガゾートを近づけてはいけないわけです」
「リーダー、作戦はある?」
「電波でコントロールされている近代兵器は使えません…マイクロ波でガゾートを誘導、地上戦で決着をつけるべきかと」
「そうね…ヤズミ隊員!超電導受信施設へ連絡、超電導リングをすぐに停止させるように」
「了解」
「俺達はガゾートを迎え撃つ、八幡、ウィングのシンジョウ達へ連絡を取るんだ」
「了解」
黒い雲から姿を出したガゾートⅡ。
ガゾートⅡを肉眼で確認したシンジョウ達はウィング一号で攻撃をする。
しかし、ウィング一号の装備ではガゾートⅡに歯が立たなかった。
移動するガゾートⅡに攻撃を続けていた時だ。
「レーザーポイント通信だ」
『無事、でしたか?………ザザ……リーダーからの……命令、で……撤退…です、誘導、しますので……こちらへきて……ください』
「了解」
「シンジョウ、了解……聞こえているかな?」
電波通信が使えない為、返事はしたが八幡に届いたかどうかわからない。
その疑問を残しながらウィング一号は離脱する。
ガゾートⅡはゆっくりと超電導リングがある施設まで向かっていた。
その頃、シンジョウ・マユミは車で彼氏のタクマを迎えに行こうとしていた。
「結衣ちゃん、良かったの?折角の休みだったのに」
「大丈夫です!それに、一度、あってみたかったんです!マユミさんの話してくれた彼氏!」
「もう~」
マユミは笑いながらナビに流れていく写真を見せる。
そこでは彼氏であるタクマと仲良く写るマユミの姿があった。
しばらくすると警察が通行規制を行っている。
「ここから先は通行できません」
「え、空港へ急ぎたいんです!」
「怪獣がこちらへ向かってきているんです…引き返してください」
「……はい」
マユミは頷くとものすごい勢いで規制を突破した。
「え、マユミさん!?」
「ごめんね、どうしてもタクマに会いたい…から」
流れていくアルバムをみながらマユミは空港へ急ぐ。
由比ヶ浜は驚きながらもタクマと会いたいという真っすぐな気持ちを羨ましく、また、美しいと思っていた。
アルバムからナビへ戻して、空港へ急ぐ。
しかし、途中で車が止まった。
「え、ちょっと?」
「マユミさん、あれ!」
由比ヶ浜が空を指す。
そこにはガゾートⅡがいた。
「嘘……結衣ちゃん車から降りる!」
「は、はい」
二人は慌てて車から降りて走り出す。
怪獣、ガゾートⅡは二人へ気づいたのか、たまたま、車が目に入ったのか、プラズマ光弾を発射する。
光弾は車へ直撃、爆風が広がっていく。
衝撃と熱が二人を襲う。
悲鳴を上げる間もなく、二人は地面へ倒れた。
俺達がデ・ラ・ムとシャーロックで待機しているとウィング一号が着陸、シンジョウ隊員とダイゴ隊員がやってくる。
「大丈夫ですか?」
「おう」
「作戦を話す、電動リングは機能を停止している。ガゾートをこのマイクロ波発生装置を使って誘導、地上戦で奴を倒す」
「自分がやります!」
「無茶をするな、お前のケガは」
「せや、ここは俺らに」
「いえ!自分にやらせて下さい」
「馬鹿もやすみやすみいえ!その体で」
「自分もいきます!」
シンジョウ隊員と共にダイゴ隊員も行くと話す。
ガゾートがゴリラン航空を襲ったかもしれないという事で…怒りや色々な気持ちがあるのだろうか?
兄としてそこは理解できる。だが、これ以上、無茶をさせたら。
「シンジョウ隊員、無茶をし過ぎです。これ以上は」
「八幡のいう通りや」
「やらないといけないんだ!」
「わかった…シンジョウとダイゴ、マイクロ波発生装置を持ってガゾートを誘導、八幡は狙撃ポイントで待機、援護射撃を行え」
「うす」
「作戦を開始する!」
『了解!』
俺はDUNKショットを手に、指定されたポイントへ向かう。
シンジョウ隊員達はシャーロックに乗って走り出す。
ガゾートはゆっくりと地上へ降り立つ。
前よりもおぞましい姿のガゾートは人間の被害が形となった物だ。
おぞましい姿は人間への怒りを表しているのか、破壊したい衝動が形になったのだろうか?
そんな疑問を抱きながらDUNKショットを構える。
施設へ向かっていたガゾートはシャーロックへ狙いを定めた。
どうやらマイクロ波に惹かれている様子。
「このまま、安全なところまで行け」
そう願いを口に出していると急にシャーロックが動きを止めた。
なんだ?
置かれている双眼鏡を手に取る。
ここからなら何が起こっているかわかる。
覗いているとダイゴ隊員が何かを指していた。
その方向をみた俺は頭が真っ白になる。
ガゾートから少し離れた距離、そこにシンジョウ・マユミさんと由比ヶ浜の姿があった。
由比ヶ浜がマユミの上へ覆いかぶさるようにして気絶している。
あの二人があそこに!?
動きを止めたシャーロックへガゾートのプラズマ光弾が放たれる。
咄嗟にバリア光波で攻撃を防いだようだがかなりの負荷がかかった様子。
「くそっ」
ガゾートが二人へ気づくと不味い。
俺はDUNKショットを放つ。
光線は真っすぐにガゾートへ直撃。
攻撃を受けたガゾートがこっちをみる。
ガゾートは人間を食べる。
俺、比企谷八幡という個人を見つけたことで食事をしようと考えたのだろう。真っすぐに向かっていた。
俺は由比ヶ浜達とは逆の方、安全なルートの所へ走りだす。
『八幡!無茶をするな』
「怪我人が無茶をやっているのに……俺だけ安全圏にいるなんて…嫌っすよ」
何より…アイツを少しでも危険から遠ざける必要がある。
リーダーの引き返せという言葉に何も言わずDUNKショットを撃ち続けた。
その時、俺の耳にバイクのエンジン音が届く。
「……なんだ?」
顔を上げた時、漆黒のバイクが過る。
そのバイクは何もない所から現れた。
いきなり現れるとそのままシャーロックの方へ向かっていく。
「……今の、一体?」
バイクに驚いていると近くにガゾートのプラズマ光弾が落ちてくる。
「ちっ」
爆風で体をあおられながらも攻撃を続ける。
しばらくすると急にガゾートが動きを止めて別の方へ歩き出す。
「…なに?」
俺はガゾートの向かう先を見る。
そこには一台のバイクが疾走していた。
バイクの後部にマイクロ波発生装置が置かれている。どうやらあのバイクの持ち主はシンジョウ隊員達からマイクロ波発生装置を受け取ったようだ。
今なら…。
ガゾートの注意があっちへ向いているならば二人を助けに行ける。
俺は向きを変えて走る。
シャーロックから出たシンジョウ隊員もこっちへやってくる。
「八幡!」
「大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫だ。それよりもマユミを」
「手伝います」
俺とシンジョウ隊員はマユミさんと由比ヶ浜をそれぞれ担いで歩きだす。
「…ぁ、ヒッキー?」
「大丈夫か?」
「うん、でも、あれ、何で?」
「それだけ喋れるなら問題ないな。行くぞ」
半ば、由比ヶ浜を担ぐようにしてリーダーたちのいる場所まで向かう。
少し離れた所でガゾートとウルトラマンティガが戦っていた。
前よりも強化されているガゾートに苦戦しながらもティガは勝利する。
その時、マユミさんの前に黒いバイクの運転者、タクマさんが立っていた。
「タクマ…?」
「マユミ、会いたかったよ」
「私も、会いたかったよ!」
マユミは嬉しそうに微笑む。
「でも、ごめん、俺は行かなきゃ」
「え?」
困惑するマユミさん、タクマさんは微笑みながら言う。
「愛している…俺はずっと、マユミの事を愛している。ずっと、見守っているから」
「いか、ないで」
遠ざかっていくタクマ、それを追いかけようとマユミさんは走ろうとする。
けれど、届かない。
「人の魂はプラズマっていう説がある」
「クリッターの巣に突入した事でタクマさんの魂がプラズマとなって目の前に現れたかもしれない、ってことすか?」
「せや…」
「愛する人の為にもう一度、なんて素敵で」
「悲しいんだろう」
レナ隊員の言葉に俺達は何もいえない。
ただ、泣いているマユミさんを慰めているシンジョウ隊員の姿をみていることしかできなかった。
由比ヶ浜が無言で俺の手を握ってきた。
俺はその手をゆっくりと握り返す。
人と人は触れ合える。
けれど、失った人と触れ合うことは二度とできない。
悲しい結末だった。
感想がもっとほしい…そう思ってしまう。
次回はEXステージ
タイトルだけ報告を
「超古代の記録」