ダイナソアバレーという研究施設がある。
そこは発掘された恐竜の化石は当時の生態系、生物などを研究することを目的として創設された。
特にダイナソアバレーが最近挙げた学説などとして話題になるのは恐竜が滅んだ理由。
従来、恐竜が滅んだ理由としては巨大隕石の衝突によって引き起こされた氷河期到来が原因といわれてきた。しかし、現在は隕石ではなく、ドロドロに溶けたマグマの噴火による地球環境の変化によって滅んだという説が有力になりつつある。
さて、俺がダイナソアバレーなんていう、GUTSに入ってから全く、いや高校生から恐竜があまり好きじゃないから無縁も当然のものを語りだしたのか、それは目の前にいる後輩が原因だった。
「……まさか、お前が第一発見者とはなぁ」
「そうなんですよ!驚きです」
ダイナソアバレーの施設内にある滝、その滝の近く、氷の中で死んだように眠る、いや実際に死んでいるのだけれど、巨大な恐竜がいる。
但し、全身にサイボーグ手術を施されているという前置きがつく。
この恐竜を見つけたのは偶然にも一色だ。
ダイナソアバレーで発掘の手伝いをしていた時、見つけたという。
本来なら任務として他のGUTSメンバーが行くはずだった。
だが、通報してきたダイナソアバレーへ一色がいたという理由からホリイ隊員、ダイゴ隊員が急行しており、俺は作戦室で一色から事情を聴いていた。
本来ならダイナソアバレーで聴くはずだったのだが、一色に予定があり、ここで話をするという事になったのだ。
「それにしても、流石は天下のGUTSですね!見たことも聞いたこともない機械が……全くないですね」
「メインコンピューター一つあればいいくらい、優秀だからな。周りの人間が」
「先輩が入っていないんですけど」
「いや、俺は基本的、レポート作成だから」
「よく言うぜ、コイツのガッツウィングの操縦は中々のもんだぞ。看護の資格とかもっているしな」
話を聞いていたシンジョウ隊員が割り込んでくる。
ダイナソアバレーへ向かっているダイゴ隊員、ホリイ隊員以外のメンバーが作戦室にいた。
「それにしてもGUTSやTPCって、男性ばかりのむさくるしい所なのかなと思っていたんですけれど、ちゃんと女性の方もいるのですね」
「お前、由比ヶ浜をなんだと思っているんだ」
一応TPCに由比ヶ浜も働いているんだぞ?
周りが苦笑しているから問題ないんだろうけれど。
その時、基地内に警報が鳴り出す。
同時に室内の電気が激しく点滅を始めた。
「なに?」
「怪電波が基地を覆っています!」
キーボードをたたいて原因を調べていたヤズミの言葉で作戦室内に緊張が走る。
「外の二人へ連絡、八幡隊員、なんとかできる?」
「やってみます。一色は座っていろ」
「は、はい」
ヤズミの隣に座ってシステムへアクセスする。
しかし、反応が悪い。
「ダメだ……システムダウンします!」
激しく明滅を繰り返していた基地のシステムがダウンした。
直後、正面スクリーンに映像が流れだす。
『人類に警告する、地球は我々、ナーガが支配する。ナーガは宇宙の神だ。無駄な抵抗をするな。我々、ナーガに逆らえば、どうなるか思い知ることになる』
「これは……」
スクリーンが切り替わる。
どこかの街、悠然と歩く機械と恐竜を組み合わせたような姿。
「あれ!私がみつけたロボット恐竜です!」
「あんなものを……」
『我らはナーガ、嘗て、この星の恐竜たちを支配した。ウェポナイザーはその証拠だ』
「あれは……奴らが改造したサイボーグの恐竜」
「……まさか」
「よし、システム回復します!」
ヤズミの言葉と共にスクリーンの映像が消えて、室内が明るくなった。
同時にサワイ総監が現れる。
「サワイ総監!」
『TPCの姿勢は決まっている。どのような脅迫にも屈しない。頼んだぞ。GUTSの諸君』
「はい……ガッツウィングで迎撃!」
「出動します。行くぞ!」
『了解!』
リーダーの言葉と共に俺達は作戦室を出る。
少し遅れてヤズミがやってきた。
どうやら隊長に言われて出撃するようにいわれたらしい。
ヤズミとレナ隊員が一号機へ、俺とリーダー、シンジョウ隊員が二号へ乗り込む。
「八幡、良かったのか?いろはちゃんのこと」
「外がパニックになる以上……変なプレッシャー与えちゃいますけれど、作戦室にいたほうが安全です。隊長と二人っきりの点がありますけど」
あざとい一色とそういうものと全く無縁なイルマ隊長。
どんな化学反応を起こすのかわからなくて怖いけれど。
「隊長に任せておけば安心だ」
リーダーの一言で俺達は沈黙する。
あざとさがなくなった一色を俺は一瞬、想像してしまった。
ダメだ、全く、合わない。
そんなことを思いながらウィングが発進した。
俺達の前に姿を見せたサイボーグ恐竜、名前をウェポナイザーというらしい。
ウェポナイザーは肉眼でウィングを捉えた途端、胸部がスライドした。
「ん?」
スライドした胸部から大量のミサイルが放たれた。
「うわっ!?」
シンジョウ隊員がウィングに回避運動を取らせる。
ギリギリのところで攻撃を躱す。
敵を近寄らせないミサイル攻撃になすすべもない。
「何千万年の昔、既にあんな科学力を……」
リーダーが戦慄する横でシンジョウ隊員が苛立ちながら叫ぶ。
「くそぉ!八幡、デキサスビームを」
「展開するまでの時間差でハチの巣にされちまいますよ」
「くそぉ!」
ウィング一号が攻撃を仕掛ける。
その時、ウェポナイザーが停止する。
同時にナーガから再びメッセージが送られてきた。
『一度だけ、チャンスを上げよう。
一時間以内に降伏せよ。
もし、降伏しなければ、全てを滅ぼすまでウェポナイザーの活動は止まらないだろう』
動きを止めたウェポナイザーに対してイルマ隊長から連絡が入る。
『活動が停止しているうちに自動地雷を設置して』
「今のうちにデキサスビームで片をつけましょう」
『待って!念のため、恐竜の内部を透視調査して』
『隊長、生物研究所で超人的能力を持った人物を保護しました』
「超人的……?八幡隊員」
「はい」
『ダイゴ隊員達のいる生物研究所へ応援として向かって』
「了解です」
隊長の命令を受けて俺はリーダー達と別れ、デ・ラ・ムで生物研究所へ向かう。
今頃、ウィング一号にスーパーウェーブ装置をのせて始めている頃だ。
俺が到着するとホリイ隊員がイルマ隊長へ話をしている時だった。
「おそらく、UFOか何かで絶滅するはずやった恐竜が連れ去られて進化させられたのだと思います」
通信を終えたホリイ隊員が顔を上げる。
「お、八幡」
「一応、監視と護衛の任務でこっちきました」
「あっちは?」
「スーパーウェーブ装置の準備に入っています……そろそろ、始まるはずです」
言葉通りウィング一号による透視調査がはじめられたのだが。
「これは、間違いない。中性子爆弾や」
「え?」
「まさか……」
ウェポナイザーの胸部、そこで点滅を繰り返している球体。
中性子爆弾という核よりも危険なものが内蔵されていた。
「これだけでかいと地球上の半分が死滅してしまうで?」
「そんなものが……」
「神様なら何でもやっていいってわけじゃないだろ……滅茶苦茶だ、地球を滅ぼすつもりか?」
「きゃああ!」
俺達が振り返ると眠っていた少女?がマユミさんへ鋭い爪を向けていた。
「嘘だ!ナーガは仰られた。ウェポナイザーは地球をクリーンにするためのものだと、決して壊すだけの兵器ではない!綺麗になった地球へ我々恐竜人類は住むのだ!」
「ちょお、待って!」
ちらりとホリイ隊員がこちらをみる。
俺は頷いて、みられないようにホルダーからハイパーガンを取り出す。
「キミらが恐竜人類、で、あの、サイボーグ恐竜が……うぇ、うぇ」
「ウェポナイザー」
「ウェポナイザーっていうんか?じゃあ、ナーガっていうのは」
少女は空を指す。
俺がハイパーガンを向けようとした途端、マユミさんを突き飛ばす。
ホリイさんが咄嗟にマユミさんを抱き留めた。
「逃がすか」
俺は外へ飛び出す。
少し遅れてダイゴ隊員が続く。
「八幡君!ハイパーガンは」
「念のために麻酔弾セットしています」
「待ってくれ、キミはナーガっていう奴に騙されているんじゃないのか?」
しばらくして、俺とダイゴ隊員は少女へ追いついた。
「ナーガは地球を滅ぼすつもりで」
「嘘だ!ナーガは宇宙の神!私に知恵を授けてくれた」
説得するダイゴ隊員の横でナーガについて考えていた。
おそらく“ナーガ”はダイゴ隊員の言うように地球を破壊する目的でウェポナイザーを作っている。
目の前の少女を作ったのは実験、もしくは侵略のための兵器として作り上げたのではないか?
体の良い駒として利用するために嘘をついている。
「キミは爆弾を埋め込まれてあんなふうに改造されたウェポナイザーがかわいそうだと思わないのか?」
「騙されるな、イブ!」
俺達は振り返る。
そこにいたのは白衣を着た男。
「人間は薄汚い。平気でうそをつく」
「貴方は……」
「私の名前はアダム。ナーガに作られた最初の恐竜人だ」
アダムという男の手、それは人間のものではなく、恐竜のものだった。
「真実を知られたからには生かして」
「あ、ヒッキー!」
鋭い爪を構えたアダムが動こうとした時、あろうことか由比ヶ浜がやってくる。
「よせ、くるな!」
「人間は邪魔だ!」
「やめろ!」
「やめて!」
ハイパーガンを構えようとした時、横から少女が止めに入る。
照準が狂って弾丸がそれた。
発砲音に気付いて警務局の隊員がやってくる。
一人が拳銃を構えた。
「撃つなぁ!」
ダイゴ隊員の叫びむなしく、弾丸が放たれた。
弾丸はアダムの頬を掠める。
皮膚は剥がれて、緑色の体皮が現れた。
「おのれぇ」
アダムは傍にいた由比ヶ浜を捕まえるとそのまま走り出す。
「おい、由比ヶ浜を離せ!」
「来るな!」
近づこうとした俺を鋭い目でアダムがみる。
「くるんだ、イブ、イーブ!」
アダムはそういいながら走り去っていく。
残されたイブはつかつかと俺の所へやってくる。
「ごめんなさい」
「……いきなり、なんだ。お前が謝ればアイツは由比ヶ浜を返すのか?違うだろ……」
「八幡君」
「アイツの行き先はわかるのか?」
「屋上……ウェポナイザー一号を操作すると思う」
「あれは、アダムとかいう奴でも操作できるのか?」
「無理、私の操作以外、受け付けない」
「とにかく、アダムともう一度、話をしよう」
「……話し合いで、止まると思いますか?」
俺の質問は意地悪なものだ。
相手は俺達を敵とみなしている。
その中で話し合いが通用するのかどうか。
「人だって話し合わないと理解できない。同じ地球で生まれたんだ。不可能じゃない」
「……わかりました」
俺はハイパーガンをホルダーにしまう。
「ダイゴ隊員の交渉がダメだった時……は」
「そんなことはさせない。絶対に」
俺はダイゴ隊員に期待している。
彼ならば、無理だと思う事でも可能としてしまうのではないか?そんな期待感を彼へ押し付けていた。
「貴方、人間じゃ、ないの?」
「私はナーガによって生み出された恐竜人だ」
「恐竜って人になるの!?」
「…………」
アダムは沈黙する。
「やはり、私ではウェポナイザー一号を操ることはできません」
「え?なに?」
「わかりました。ウェポナイザー二号を復活させます」
「ちょっと、誰と話をしているの!?エスパ!?」
「黙っていることはできないのか!?」
「何で怒られたし!」
アダムは苛立ちながらウェポナイザー二号を起動させる。
「…………貴方達は、地球を壊すの?」
「違う!我々の住むための星とするのだ」
「どうして、どうして、侵略するの!?一緒に住もうとか考えないの!?」
「弱肉強食が地球の基本だ」
「そんなことない!」
由比ヶ浜は涙をこらえながらアダムを見る。
「私達は話をすることが出来る。相手の言葉が理解できる耳だってある!相手の顔もみられるんだよ!?話し合おうよ!こんな暴力なんて……悲しいだけだよ」
アダムは鋭い爪を向ける。
由比ヶ浜は怖がらず、見続ける。
「私が怖くないのか?」
「全然、だって、同じ星に住む人達じゃん、話だってできるんだし」
「……」
真っすぐにアダムは由比ヶ浜をみる。
その時、ゆっくりと彼は振り返った。
俺達が先に話をしようとするとイブが制す。
「アダム、もう一度、人間達と話をしましょう」
「まだいうのか?恐竜人の生活をかけた戦いは既に始まっているのだ!」
叫びと共にアダムがダイゴ隊員へ迫る。
「アダム、キミ達はナーガに騙されているんだ!」
「黙れ!」
叫びと共に繰り出される攻撃をダイゴ隊員は躱す。
「話し合えば共存することはできる。考えて」
屋上のフェンスへもたれこむダイゴ隊員の首元から手を離してアダムが爪を振り下ろそうとした。
「やめて!」
アダムは動きを止める。
彼らの前にイブと由比ヶ浜が割り込んだ。
「イブ!」
「アダム、もう一度、もう一度、人間達と話し合いましょう?破壊による解決以外の方法を考えましょう!」
「何で争うの!?争ったって全てが解決することはないんだよ?誰かが傷ついて、悲しむ人だっている……間違っているよ」
「おい、アンタは、何のためにその爪を振るう?」
「なんのため?」
「ナーガとやらのためか?それとも、地球を手にするためか?」
「私は」
アダムが最後まで答えることはなかった。
何故なら、動きを止めていたウェポナイザー二号が向きを変えて急にこちらへ砲撃する。
俺達は突然の事に対応できず、爆風にあおられる。
「きゃっ!」
「由比ヶ浜!くそっ」
俺は落下しそうになる由比ヶ浜とイブの手を掴む。
しかし、二人の重さに負けて三人事、地面へ落ちていく。
「あぁ、イー!」
アダムの声が途中でかき消えるほどのまばゆい光が俺達を包み込む。
気がつけば、俺達はティガの腕の中にいた。
ティガは俺達を近くの安全な場所へ下す。
呆然と俺はティガを見ていることしかできなかった。
その間にイブという少女が姿を消していたことに気付かないまま。
ナーガは滅びた。
ウェポナイザー一号、二号から飛び出した中性子爆弾とティガのゼぺリオン光線で倒されたのだ。
爆風によって落下してくるティガ。
激しい衝撃と共にティガからダイゴへ姿を戻る。
荒い息を吐いているダイゴの傍へアダムとイブがやってくる。
「もう一度、人間と、話の場を設けて」
アダムが鋭い爪を向ける。
そして、彼へ手を差し伸べた。
「ありがとう、ダイゴ隊員……しかし、我々は地球に破壊をもたらそうとした」
「私達は別の惑星を探します……そして、新たな故郷を作る」
「目つきの悪い彼と口うるさい彼女へ……伝えてくれ。ありがとう、また、いつか会おう、と」
「「さようなら、ダイゴ隊員。ありがとう、ウルトラマンティガ」」
二人はやってきた円盤へ乗るとそのまま去っていく。
ダイゴは去っていく二人へ手を振り続ける。
また、いつか会うことを願って。
「あいつら、いっちゃったんですね」
ダイゴが振り返ると八幡がやってくる。
「結衣ちゃんは?」
「ぴんぴんしていますよ。無茶するなってマユミさんに怒られてますけれど」
「あははは」
「俺、一瞬、思っちゃったんですよ」
「え?」
「ダイゴ隊員はとっても強いなって……まるで」
そこから先の言葉を八幡は飲み込む。
「八幡君?」
「いや、気のせいっすね……いつか、彼らと会えますかね?」
「会えるさ!僕達が誰とも手を取り合えることを忘れなければ……いつか」
「(まるでウルトラマンティガだったみたいなんて、大げさだな)」