ヤズミ・ジュン。
年齢は18歳、主に作戦室で情報分析などを務める。
本人は俺達みたいに前線に出ることを希望している。
他人に流されやすいところがあるのだが、そこは若さゆえと評価されるだろう。
俺は若いけれど、過ちばっかりなので比較対象にならない。
ちなみに俺とヤズミの関係だが、先輩後輩だ。
俺が先輩でヤズミが後輩。
入った時期が少しだけ違うのだ。俺が先、ゆえに先輩なのだ。
今、俺とヤズミは作戦室でゲームをしている。
本来なら問題になるのだが、各々が休憩時間を過ごしているのだ。何をしていようと自由だ。
ダイゴ隊員とシンジョウ隊員がいちゃついていようと、リーダーとホリイ隊員が将棋をしていても。レナ隊員がヤズミのプレイを観戦していようと。
「へぇ、すごいじゃない!」
「へへ、こいつは囮!本命は後ろだ」
「はいはい、サポートしますよ」
前衛で暴れるヤズミをサポートしつつ、目の前の顔だけの怪物に攻撃を仕掛ける。もともと、こういうゲームは一人でいるときにやっていた。いつの間にかヤズミにフレンド登録されていて、作戦室でもこうやって遊ぶようになった。
ヤズミの放った一撃を受けて消滅する怪物。
画面にCLEARという文字が表示された。
その途端、ヤズミが歓声を上げる。
俺は落としそうになったマッカンをギリギリのところで掴む。
危ない、危ない。
「チケットが手に入った!これでタウンに行けるんだ!やったやったぁ!」
子供のようにはしゃぐヤズミ。
レナ隊員は困惑するばかりだ。
さて、
「皆さん、気にせずに続けてください」
何事かとこちらをみているダイゴ隊員、シンジョウ隊員。
リーダーにお茶を吹いて顔を青ざめているホリイ隊員のことは知らない。
ホリイ隊員は犠牲になったのだ。
「ヒッキー、不機嫌な顔はやめたら?」
「別に、不機嫌じゃねぇよ」
「いっておくけれど、私はあくまで保護者としてきているのであってデートじゃないからね?結衣ちゃんは八幡君とデートだけれど」
「え、あ、その!?もう!レナさーん!」
前と後ろできゃっきゃっと騒ぐレナ隊員と由比ヶ浜。運転しているレナ隊員が危ないからそろそろやめろ。
「また僕を子ども扱いする」
「残念だが、この中で一番年齢が低いのはお前だ。諦めろ」
俺や由比ヶ浜は二十歳、レナ隊員は少し上、ヤズミは十八。
ほらな、残念なことに年齢が下なのだよ。
「だったらその不機嫌な顔やめたらどう?これからタウンに行くのに」
「バッカ、ただ、眠いんだよ。朝から電話でたたき起こされたからな」
久しぶりの休日。
のんびりと満喫しようとしたら妹に布団を引きはがされて、着替えて外に放り出された。
そこには車で手を振るレナ隊員たちがいたのだ。
俺たちは今、タウンへ向かっている。
「あ、あれじゃないですか!?」
由比ヶ浜が後ろから指をさす。
そこにあったのは独創的なデザインの建物が並ぶエリアだ。
「あれがそうなの?」
「はい!タウンは優秀なゲーマーだけが集められる。ゲーマーだけの街なんです」
「なんつーか、本当に独創的だな」
ゲーマーっていうのはあんなデザインを素晴らしいと思う連中ばかりなのだろうか?俺はゲーマーじゃないよ?俄かだもん。
俺が首をかしげていると車が停車する。
ぞろぞろと降りると恰幅のいい男がやってきた。
「ヤズミ・ジュン様ですね?……失礼ですが、その方々は?」
「姉ですの」
「と、友達ですの」
「先輩です」
「同伴、OKですか?」
ヤズミが尋ねると男はにっこりとうなずく。
「構いませんよ。申し遅れました。私、加藤と申します」
「やったね、ヒッキー!」
「まぁ、そうだな」
「あの!カレンにすぐ会えますか?」
「申し訳ありません!夜まで予定が詰まっておりまして、お会いすることができません。ですが!おもてなしの用意はさせていただいておりますので!ささ、こちらへ!」
「ねぇ、ヤズミ君、カレンって?」
「この街のすべてを管理している天才プログラマーです。何度かメッセージでやり取りしているんだけど、ようやく会えるんだ!楽しみだな!」
嬉しそうにしゃべるヤズミ。
その姿を見て俺は首をかしげる。
こいつ、もしかして。
「ねね、八幡君」
「なんすか?」
「ヤズミ君のあの態度」
「ま、レナさんが来て正解じゃないっすか?何かとデリケートですし、アイツ」
「その時は八幡君もよろしくね」
「はいはい」
できる限りはねぇ。
タウンの街の中を俺達は加藤さんに案内してもらっていた。
加藤さんの話によれば招待したゲーマーで素質があれば、プログラマーとしての講義を行うという。
「すっごぉい、この子達、みんなゲーマーでプログラマーなんですか!?」
「素質があれば、様々なことを勉強させます。その気になればTPCのセキュリティすら突破して見せるでしょう」
あーあ、そんなこといっちゃうと。
「それは不可能です」
ほら、反応した。
「TPCには対ハッカー専用のセキュリティ、ゲートキーパーが存在しています。それがある限りハッキングは不可能です」
「そんなのがあったの?」
「まぁ、一部しか知らねぇな。少なくともお前は知らないよ」
「そうだよね、よかった」
小さく息を吐くな。
まぁ、GUTSは全員知っているけれど、ゲートキーパーはヤズミが携わっているから詳しいよな。
「うわぁ、これだけのゲームがあるんだ!?」
続いてやってきたのはバーチャルシミューレーションエリア。
ここにあるゲームを実際に体験しているようにゲームができるらしい。
レナ隊員は子供のように目を輝かせている。
「ゲームのこと、馬鹿にしていたくせに」
「あれだよ。食わず嫌いって奴だろうよ」
肩をすくめているとヤズミがある方向を見ていた。
なんだ?
彼のほうを見ようとすると急に走り出した。
まったく。
「ヤズミを追いかけるから先にやっていてくれ」
「はーい」
「私も行こうか?」
「いやいい。すぐに行くから」
由比ヶ浜にそういって俺はヤズミを追いかける。
すぐにヤズミは見つかった。
それと同時に行進する子供たちを見つける。
「なんだ、こいつら」
「……まるで、人形だ」
ヤズミの言葉通り、歩く子供たちは感情の色などまるでない。もっと悪い言い方をすれば機械のようなもの。
不気味すぎた。
そういえば、
「この街、来てから思ったが……」
人の生活感がまるで感じられない。
まるで人がもとから存在していないような感覚だ。
「とにかく、戻るぞ」
いわれて俺達はバーチャルルームへ戻る。
「レナさん!?」
「由比ヶ浜!?いない!くそっ、どこに?」
バーチャルルームのスクリーンはすべて激しいノイズが走っている。
何か起こっているようだ。
「一度、車に戻るぞ」
「はい」
ヤズミとともに俺たちは車に戻る。
道中、PDIを起動したが本部と連絡が取れなかった。
車にはハイパーガンが置いてある。
それを俺たちは装着していた時だ。
ヤズミの傍を光線が通過した。
「なに!?」
俺は息をのむ。
目の前に現れたのはムザン星人。
倒したはずだぞ!?
俺はハイパーガンを撃つ。
ムザン星人は光線を躱す。
「ヤズミ、ここじゃ、不利だ。隠れるぞ」
「うん、どうなってんだよ。アイツ、倒したはずじゃ」
「そのはずだ。どうなってんだ?」
俺達は会話をしながら振り返る。そこにムザン星人はいない。
ということは。
「後ろか!」
振り返りながらハイパーガンを撃つ。
「うわっ!?」
「ヤズミ!」
ハイパーガンの光弾はムザン星人を貫く。
貫かれたムザン星人は消滅する。
「ヤズミ、無事か?」
「何とか……」
ヤズミの腕を見ると血が流れていた。どうやらムザン星人の光線を受けてしまったようだ。
「とにかく、場所を変えよう。手当しないと」
「うん」
ヤズミと一緒に別の通路へ向かう。
ここにいたらまたムザン星人が現れるかもしれない。
そう考えて別のルートを選んだというのに。
「今度はこいつかよ!?」
俺達の前に現れたのはレイビーク星人。
手の中にある縮小機から光線を撃つ。
それを躱して隠れる。
「訳が分からない……」
「俺もだよ」
「こっちにきて!」
「え、あ、あれ!?」
ヤズミが見知らぬ少女に手を引かれて走り出す。
俺、置いて行かれているんだけど。
そう思いながらヤズミの後を追いかける。
連れていかれたヤズミは少女に手当をされていた。
俺も交えて街の状況について聞きだす。
「この街でまともな人はもう私だけ、他はすべてカレンの洗礼を受けた」
「カレンが!?」
「……カレンは何者なんだ?」
「バイオコンピューター、カレンE-90.この街を管理していたコンピューターだけど、いつからか自我を持ち支配してしまった」
「コンピューターだったのか?」
「嘘だ!カレンがこんなことをするわけがない!僕は何度もカレンと話をした。こんなことをするような彼女じゃない!」
「……ヤズミ、だったらどうして、こんなことになっているんだ」
「それは、話し合えばわかるかも」
俺は振り向きながらにハイパーガンを撃つ。
少し遅れて光線が通過する。
レイビーク星人がこちらまでやってきていたようだ。
攻撃を受けたレイビーク星人が消滅する。
「……俺達がどう思っていようと相手はこちらに攻撃の意思を見せている。今のままで何とかなると思うか?」
「……」
ヤズミは立ち上がるとしりもちをついている少女の手当をする。どうやら先ほどの攻撃で怪我をしてしまったようだ。
「そうだとしても」
手当を終えたヤズミが立ち上がる。
「僕はもう一度、カレンと話をする!」
「……そうか」
俺は頷いた。
「由比ヶ浜とレナ隊員を探さないといけない。行くぞ。カレンとやらのところに」
「うん」
少女に案内されて俺とヤズミはタウンの入口へ到着する。
「ここに入って、戻ってきた人は誰もいない」
「それなら、僕達が最初だ!」
「……どうしても、行くの!?」
「……大切な人がいるから」
ヤズミはそういってにこりと笑みを浮かべる。
「大事な仲間を助けないといけないんだ」
「ま、そーだな」
肩をすくめながら建物の中へ入る。
「それにしても、お前、少しは考えて言うべきだぞ」
「え?」
「さっきの言い方、まるで自分はレナ隊員が好きみたいに聞こえたぞ」
「え、え、そんなつもりはないよ!?だってレナさんにはほら」
「はいはい、恋愛経験が低いと苦労しますね」
「そういう八幡はどうなんだよ!?」
「俺か?俺にそんなのあるわけないだろ」
「結衣さんはどうなんだよ」
「あ、あれは、その――」
直後、俺達の足場がなくなって落とされた。
八幡たちがタウンで奮闘していたころ、GUTSは街中で起こっていた怪現象の調査に乗り出していた。
街の交通機能、電話、すべてが妨害され、混乱に起こっていたが今は収まり、その原因がタウン付近にあると気づき、ムナカタ、ダイゴ、シンジョウは出動する。
「なに!?」
彼らが出動して少し後、作戦室でアラートが鳴り響いていた。
「基地のシステムがハッキングを受けています!」
「そんな、対ハッカーシステムのゲートキーパーは!?」
「信じられへん、素通りされている!」
TPC、GUTSのシステムハッキングを防止するゲートキーパーがあっさりと通過されたことに彼らは目を開く。
さらに室内に連絡が届く。
『こちらF4ドック!アートデッセイ号が勝手に発進しています!』
続いて大きな揺れが起こる。
「これは!?攻撃?」
『こちらステーションデルタ!ヴァルキリー砲のシステムが初期化されて基地へ攻撃を続けています!』
「うわっ!?」
続いて起こる衝撃。
「完全に、手足をとられたというの?」
起こっている事態にイルマは戦慄した。
加藤の手によって俺達はゲームフィールドに落とされていた。
目の前に現れる無数の円盤を交互に撃ち落とす。
「おい、ヤズミ!」
「なに!?」
「こんな感じのゲーム、どっかでやった覚えがあるんだけど」
「カレンが用意したゲームにあった!連中を落としたらクリアだ」
「そうか!」
しばらくして円盤がすべてなくなる。
「簡単なゲームだな!もっと難しいのはないのか!」
「こら、挑発しているんじゃ」
俺が最後まで言う前にまた足場が消えて、砂漠に落とされる。
「お前、少しは考えて…………嘘だろ」
頭上からカエルみたいなロボットが落ちてくる。
ギリギリのところで回避した俺達にカエルロボットが襲い掛かってきた。
「くらえ!」
ハイパーガンで狙撃するとそいつはあっさりと壊れる。
次々と向こうの砂漠からやってくるロボット軍団。
「お前のせいだぞ」
「これぐらい、僕と八幡だったら余裕だよ」
「まったく……そうだな」
しばらくしてすべての敵を倒した。
「次だ!」
ヤズミが叫んだ直後、目の前の映像が切り替わり――。
「レナさん!」
「由比ヶ浜!」
クリスタルのようなケースに閉じ込められているレナ隊員と由比ヶ浜の姿があった。
近づこうにも俺達の間には巨大な闇の空間が開いており、向かうことができない。
暗闇の中で男の笑い声が響き続ける。
「出てこい!加藤!」
「まだ、最後の難関が残っていますよ」
「まだ、あんのかよ」
笑いながら現れる加藤。
その加藤の首から下が消滅。
彼の顔が一気に肥大化して凶悪な顔の怪物となった。
「気持ち悪いな、おい」
「一番恐ろしい敵の登場!」
ヤズミがハイパーガンを撃つ。
撃たれた加藤の顔は消滅する。
「確か、この後は」
「こいつは囮、本当のボスキャラは後だ」
ヤズミと共に後ろへハイパーガンを構える。
そこにいたのは凶悪なモンスターでも円盤でもない。
俺達を助けてくれたあの少女だ。
「まさか!?」
「あの時、残っていれば……」
咄嗟の事に俺達は反応できず、瞳から放たれた光線を受けて宇宙の底へ落ちていく。
「ヤズミ、生きているか?」
「うん……」
『あなたの頭の中、すっかり覗かせてもらったわ』
俺達の前に王座のような椅子に座って現れる少女。
「君がカレンだったのか」
『あなたのご自慢の対ハッカーシステム、ゲートキーパーの解除法がどうしても必要だった』
少女、カレンの傍に閉じ込められているレナ隊員と由比ヶ浜。
「そんなことのために、二人を」
『TPCのメインコンピューターさえ支配できれば、不完全な世界を支配できる。愚かな人類を正しく導くことができる』
続いてメトロポリス中心地に向けてデラック砲を向けているアートデッセイ号の姿があある。
『人間界のデータをすべて書き換える。あなた達の兵器を使ってまずは綺麗にする』
「街を攻撃するつもりか!?」
『あなたの住むべき世界はこんな人間の世界じゃない!あなたが住むべきなのは私の作る世界……私と一緒に来てくれるよね!あなたとならきっとうまくやっていけるわ!』
真摯な訴え、それだけを聞けば、ヤズミのことを思っているんだろう。
だが。
「そこまでしてヤズミを独占したいのか?」
俺の言葉にカレンがこちらをみる。
「お前がどういう理由でこの世界を否定したのか知らない。知りたくもねぇ。でも、まだこの世界は変えられる。変わると信じている奴らがいるのに勝手にリセットなんてされて堪るかよ」
「八幡!」
俺がハイパーガンを構えるのを止めようとする。
「たとえ世界が不完全でも、人を力で支配するのは間違っている!それは思い上がりだ!」
『思い上がりは人間の方よ!私は私!誰の指図も受けない!人間は邪魔だ!邪魔なバグ!バグは消去!消去!』
「ヤズミ、交渉は不可能だ。こいつに俺達の話は通じない……もう、結論が出てしまっている」
「そんな、でも!」
ヤズミもカレンへハイパーガンを向ける。
「キミを撃たせないでくれ!」
『大切な人……それが答え』
カレンは自らの腕の包帯をほどく。
『あなたならうまく理解できると思っていたのに……残念だわ』
その顔にあったのは悲しみか、絶望か。
カレンは叫びをあげる。
同時に人の姿からおぞましい機械の怪物となった。
『見なさい、人間ども、あなたたちの世界に君臨する神の世界を!』
「カレン!間違っている!そんなの本当の君じゃない!もう一度、僕と話をさせてくれ!」
ヤズミがPDIでカレンとコンタクトを取ろうとする。
俺はそれを止めない。
俺の中でカレンという存在は敵となった。だが、ヤズミの中では違うのだろう。
交渉をしようとしている前でウルトラマンティガと怪獣がぶつかりあう。
「カレン、君とネットで知り合ってから僕は本当に楽しかったよ。あの時の君は、あの時の言葉は全部嘘だったのか!?地下で助けてくれた君が本当の姿だったんだろう?今だって信じている……信じたいんだ!優しい心を持った……人間だ」
PDIに浮かぶのはアクセス不可能と文字。
それでもヤズミはコンタクトを取ろうとする。
「僕たちと生きよう!大切な人たちをいっぱい紹介するよ。きっと君も気に入るはずだよ。きっと、きっと!きっとぉ!君ならできる!きっとぉ!」
突如、カレンは全身から電撃を放つ。
「あぁ!」
悲鳴のような声を上げてティガに向かうカレン。
そんな彼女にティガが光線を放つ。
光線を受けたカレンは粒子となって消えていく。
その姿を見てヤズミは崩れ落ちる。
俺は何も言えない。
最後までカレンと通じ合おうとしたヤズミに対してかける言葉がみつからないのだ。
ヤズミの肩をレナ隊員がぽんとたたく。
カレンがいなくなったことで解放されたのだろう。そっ、と由比ヶ浜が近づいて俺の手を握り締める。
「僕はすぐに感化されるけれど、コンピューターの、カレンの気持ちはわからない。でも、彼女は寂しかったんだと思います」
「お前、本当に」
優しいやつだよな。
落ちていたPDIを手に取る。
ホント、どいつもこいつも、不器用なんだろうなぁ。
俺の目はPDIに表示された文字をみていた。
そして、ヤズミに見せる。
――『アリガトウ』という言葉を。
おそらく、カレンというコンピューターも自我を持ちながらそれをもてあましていたのだろう。
それが今回の事件を引き起こしたのかもしれない。
「さようなら……カレン」
「すべてはコンピューターに支配された仮想空間だったのか、俺達はそれに踊らされていたのか」
カレンが消滅するとともにタウンだった場所が消えていく。
どうやらタウンすべてがリアリティのある仮想空間だったようだ。
「もし、これが夢だとしたら恐ろしすぎますね」
「しかし、所詮はまやかしだ」
「違う!」
シンジョウ隊員の言葉にヤズミは叫ぶ。
「どうしたんだよ」
「今はそっとしておいてあげて」
「……ヤズミ」
俺はヤズミの肩をたたく。
「この場所がまやかしでも……あの子は確かに存在していた。そうだろ?」
「……彼女は存在していたんだ。絶対」
手当してもらった包帯の箇所を握り締めながらヤズミは言った。