「あぁ、疲れた」
キリエル人、いや、キリエロイドとの戦いから一週間くらいが経過している。
しかし、その間、俺は始末書とレポート提出に費やしていてまともに睡眠も休暇も取れていない。
おかしくない?ただレポート提出するために各参謀のところを回らないといけないんだよ?
温厚的な参謀がほとんどだけど、中には今のTPCに不満を持ち続けている人もいる。
誰かとはいわないけれど、延々と他国の侵略説を俺に語ってきたし。あの扇子爺め。平塚先生並の強引さだったぞ。
「こういう時に限ってマッカンがなくなっているんだよな」
作戦室においてあるマッカンがなくなっていたことを思い出して項垂れる。
幸いにもこの基地、ダイブハンガーにはマッカンを置いてある自販機がある。ただし、看護エリアの一角にしかない。
「ま、少し遠回りしてもいいか」
そんなことを考えながら俺は看護エリアに向かう。
看護エリアというのは俺が命名しているのだが、ダイブハンガー内に保護された人や任務中にケガを負った人間の治療のために用意されている施設だ。
俺は不幸にも一回もお世話になったことがない。あそこにいたら無理に出撃する必要がないんだよなぁ。
ぶつぶつと考えていると前からカートを押している看護師がやってくる。
やってくるが、重たいものに不慣れなのか右、左とふらついていた。
おいおい、こっちくるぞ。
俺は慌ててカートを受け止める。
「あ、ご、ごめんなさい!」
慌てて顔を上げた看護師の顔を見て俺は言葉を失う。
同時に相手も俺に気付いて目を丸くしていた。
「……由比ヶ浜」
「ヒッキー」
総武高校で俺と同じクラス、部活に所属していた仲間…がそこにいた。
「お前、何で」
「ヒッキー、その恰好、まさかGUTS!?」
『比企谷隊員、比企谷隊員、至急、作戦司令室へ、作戦司令室へ』
「悪い、行くわ」
「あ、ちょっと」
由比ヶ浜から逃げるように俺は作戦室へ向かう。
この時の連絡に救われたと思った俺は卑怯者なのだろうか?
作戦室へ到着すると宇宙開発局保有のエネルギー開発施設を襲撃する怪獣の姿が映されていた。
その怪獣は全体的にメカニカルな印象をもっていて、生物的な要素がなさすぎる。
「コイツ、怪獣か?」
「ウィング一号が現場に到着」
ヤズミの言葉を聞いて、俺は隣で怪獣のスキャンを始める。
「ほとんどが機械…コイツ、宇宙怪獣か」
「開発局がDCSを作動したようです」
「DCSって…」
俺の記憶が確かなら開発局の有する防衛システムだったよな。
開発中の新エネルギーをとられないように研究所側の人間が作動させたんだろう。
その様子をうかがっていると怪獣の目が怪しく輝く。
なんだ?と思っているとDCSが機能停止していた。
「なに?」
俺が目を見開いていると怪獣は両手を広げるとそのまま空へ上昇していく。
その姿はロケットを俺に想像させた。
ロケット、DCS、怪獣。
ビーンと頭に電流のようなものが走る。
まさか…ジュピター三号とどこかでかかわりがある?
根拠のない疑問が浮き上がり、俺は食い入るように作戦区域から飛び去っていく怪獣を睨むことしかできなかった。
怪獣が空へ飛び経ってから数時間後。
GUTS作戦司令室で俺はピンチに立たされていた。
イルマ隊長は席を外している。
それ以外のメンバーが俺を囲むように見ていた。
特にシンジョウ隊員とホリイ隊員の目が怖い。
やめて、ボッチにこれは苦痛なのよ。
「…さて、八幡」
拳をパキパキ鳴らしながらシンジョウ隊員が近づいてくる。その、怖いんですけど。
「こんなかわいい子を泣かしているのか、説明してもらおうか」
ポンポンと肩を叩くホリイ隊員、その目は笑っていない。
作戦室のデスク。
そこに座っている由比ヶ浜。
涙を流して俺を睨んでいる。
これだけみたら俺が何かしたみたいに見えるが実際は違うぞ。
以下の通りの事があったのだ。
八幡、デスクワーク中。
突如、由比ヶ浜乱入。
驚いて距離を取ろうとしたところで彼女がバランスを崩す。
躱しきれず共に床倒れ。
由比ヶ浜、下、俺が上。
そこに任務から戻ってきたGUTSメンバー。
現在に至る。
ヤズミがなんとか説明してくれたおかげで今の状況だ。あれ、改善されていない。
「ちっくしょう、八幡の奴、こんなかわいい子の知り合いがいるなんて」
「予想外やったなぁ」
「結衣ちゃんだっけ?八幡君とはどういう?」
「えっと、同じ学校のクラスメイトで…今日、たまたま再会して」
「TPCの看護師だね?」
「はい、卒業してから看護学校行って…運よく、ここの職に就けました」
驚いた。
「アホの子が就職できたのか」
「ヒッキー、酷い!」
「流石に今のは…ね」
「八幡、容赦ないなぁ」
レナが呆れて、ヤズミが苦笑する。
いいだろう、俺だってストレスたまらないようにしないと。
あれから数分後、俺達は解放された。
しかし、レナ隊員から由比ヶ浜を送るようにいわれてしまったのでともに歩いている。
コイツ、仕事しないで大丈夫なのか?
「ヒッキー…小町ちゃんからTPCに入ったのはきいていたけれど。GUTSに入ったとはいわなかったんだね」
「余計な心配を、かけたくなかったからな」
「もしかして、あの事件が原因、なの?」
「…違うさ」
それが切っ掛けなのはわかっている。しかし、俺が肯定してしまえば由比ヶ浜に余計なことを背負わせることになってしまうだろう。
「GUTSの試験は上から受けてみろっていわれたから受けただけに過ぎない。別に由比ヶ浜が気にすることはねぇって、最終的に決めたのは俺だし」
そうだ。
あの人が俺にTPCに入るよう勧めた時、時間は設けられていた。
少し悩みながら“俺が”決めたこと。
こいつや雪ノ下が気にすることはない。
「ヒッキーが連絡取れなくなったから伝えていないけれど、ゆきのんも大学で考古学に興味持ったんだよ」
「へぇ」
アイツが考古学って…なんか、過去よりも未来に意義があるといいそうな気がするんだけど。俺の偏見かなぁ。
首を傾げていた時、PDIに連絡が入る。
「はい、八幡です」
『民間からの連絡です。八幡の妹みたいだよ』
「サンキュー」
「小町ちゃんから?」
隣にいた由比ヶ浜が訊ねる。
「こんな時間にどうしたんだ?」
首を傾げながらPDIに連絡をつないでもらう。
念のため電話のみだ。
「八幡です」
『お兄ちゃん!?助けて!』
小町からの連絡は開口一番、助けてだった。
「お久しぶりっす、お兄さん!」
「…何度も言うが兄といわれる覚えはない!」
翌日、俺と由比ヶ浜(なんで、こいつがいるのかわからん)は小町に呼ばれてある喫茶店へきていた。
そこにはどういうわけかあの川なんとかさんの弟、大志だったか?がいた。
「小町、これはどういうことだ?まさか!?こいつと付き合うとかそんな報告じゃないだろうな!?認めんぞ。俺はそんなことを」
「じ、自分と比企谷さんが付き合う!?い、いやいやいや!そ、そんなこと」
「ごみいちゃん、話があるから落ち着いてほしいんだけど」
「ひっきー、きもい」
二人から冷たい視線を受けているともう一人やってきた。
「ごめん、遅くなった」
鋭い目つき、青みがかかった髪をポニーテールにした少女…いや、女性になりつつある女の子。
川崎沙希。
俺の元クラスメイトだった。
「大志……こいつがどうして」
川なんとかさん、いや、川崎姉は驚いた顔をして俺を見ている。
「姉ちゃん、お兄さんはTPCに勤務しているんす!」
「TPCがくるってきいたけど、まさか…」
「それに、お兄さんなら丁度いいっすよ!頼りになりますし…きっと」
「待て、いい加減、説明してほしい。俺は何のために此処へ呼ばれたんだ?」
いい加減、置いて行かれているというか、面倒になってきたから間へ割り込む。
「アンタ、京華のこと、覚えている?」
「え、あ、あぁ」
やけに懐かれていたからな。
「京華とよく遊ぶ、田坂ユウタって、子がいるんだけど…その人の前に行方不明になったお父さんがよく現れているらしいんだ」
「へ?それって、良い事じゃないの?」
「……なぁ、川崎」
俺の顔はひきつっているだろう。
今の話。普通に聞いていたら誰も気にしない。いなくなった父親が息子に会いに来たと喜ぶはずだ。
だが、田坂…この苗字は俺の中にある存在を思い出させた。
「その子の父親…アストロノーツか」
「…そうだよ」
「え、へ?」
一人、話についていけない由比ヶ浜。
「田坂飛行士…二カ月前に行方不明になった宇宙探査船、ジュピター3号のパイロットの一人だ」
ジュピター3号。
それは二カ月に木星探査のためへ飛びだった探査船。
搭乗者は田坂飛行士、江崎博士、そして石垣船長、この三人がジュピターに搭乗していた。
そのジュピター3号は連絡を途絶えた。
この事態にTPCと宇宙開発局は探査船の捜索を行っているが未だ、船の手がかりはない。
怪獣、リガトロンが現れた時、宇宙開発局のDCSが一時的に機能停止を起こした。
あのシステムは外部からのアクセスを受け付けない、強固な防衛システムだった。
アクセス不可になったDCS、それに唯一、外部からアクセスする方法は開発者のみ。
つまり、ジュピター3号に乗っていた江崎博士のみ。
あの怪獣がアクセスできたという事は…。
「それで、俺に相談っていうのは?」
「ユウタ君達の周りを変な連中が嗅ぎまわっているんだ。そいつらが何で動き回っているのか調べてほしい」
「……」
答えは出ている。
おそらく、宇宙開発局のある部署の連中だろう。
田坂飛行士が現れたとなると、他の江崎博士や石垣船長も家族の所に現れているのかもしれない。
「ヒッキー……」
「わかった、調べてみる…でも、あまりいい結果は出せないと思う」
俺の言葉に川崎達は疑問を残しながらも頷いた。
厄介なことを引き受けちまったな。
俺はその足で田坂飛行士の自宅へ向かう。
やはりというべきか、家の周りに怪しい車が停車している。
田坂飛行士が現れるかみているのだろう。
しばらくして、ボールを手に走っていく子供の姿が見えた。
この時こそ、ステルスヒッキーの出番だぜ。
気づかれないようにして後をつける。
しばらくして、河原に到着した。
「……嘘、だろ?」
そこでは楽しそうにサッカーをしている田坂操縦士と子供のユウタの姿があった。
俺の目がおかしくなったかと思ったが、すぐに本当だと思い知らされる。ただ、田坂操縦士はアストロノーツの制服のまま。
二人は楽しそうにサッカーをしている。
ジュピター3号が地球に帰還しているとは思えない。
まさか…。
嫌な考えが核心となって俺の頭の中で構築されていく。
しばらくしてサッカーをしていた田坂操縦士の姿が消える。
ユウタ君は満足したように帰り始める。
「無理だろ…」
子供の背中を見て俺は呟く。
この仮説が正しければ、あの子や他の遺族に待っているのは残酷な結末だ。伝えるのが遅いか早いかの違いだ。
「こんなことって、あるかよ」
基地へ戻ると俺はイルマ隊長に呼び出された。
「宇宙開発局から連絡があったの…田坂飛行士の家の近くを嗅ぎまわっていたと」
「嗅ぎまわってはいません…知り合いに頼まれたことを調べていました」
「頼まれた?」
イルマ隊長へ俺は川崎姉弟から頼まれた話を伝える。
「ナハラ参謀から極秘扱いになっているけれど。他のジュピター3号の親族のところにも現れたそうよ」
「やはり、ですか」
「八幡隊員、貴方はこの事態をどう考えているのかしら」
「全くの仮説ですけれど」
「構わないわ」
「ジュピター3号は木星へ向かう途中に何かが起こり、怪獣となった…怪獣はエネルギーを求めて地球にやってきた。その際…理由はわかんないですけれど、パイロット達は家族の前に現れた……多分、怪獣の力を借りて現れたのかもしれません」
「…では、あの怪獣は」
「おそらく、ジュピター3号です」
俺の仮説はしばらくして確定とされた。
怪獣の残骸がジュピター3号の外壁と一致。
ヤズミがエザキ博士のコンピュータを調べた結果、驚くべき事実が発覚した。
ジュピター3号は木星探査の軌道に乗った時、輝く発光体が現れた。
狙いはジュピター3号の動力エネルギー。
発光体は船とパイロットの体を取り込むと怪獣へ姿を変えた。
怪獣となった理由は彼らの恐怖の象徴として。
彼らの情報を基にエネルギーを求め、地球へやってきた。
怪獣の中で彼らの意識は残っている。しかし、その存在もだんだんと薄れてきているそうだ。
『我々が故郷である地球を滅ぼすなど、耐えられない…頼む』
ブツンと映像が途切れる。
隊長が俺を見る。
その視線から逃れるように顔をそらす。
「でも、親族の前に彼らが現れた理由は」
「多分、彼らの親族を想う気持ちを怪獣が理解できなかったんだ。それが彼らに力を与えた」
ダイゴ隊員の仮説は、おそらく正しい。
人の感情というものは時に想像外の力を発揮する。
彼らの、人間として強い気持ちが怪獣の力を一時的に操れることとなったのだろう。
その時、二つの電話が鳴る。
一つはムナカタリーダーが。
もう一つはナハラ参謀がとる。
しばらくしてリーダーの方は怪獣が現れた事。
そして、参謀の方は。
「先ほど、宇宙怪獣を撃退せよという正式な命令が下った」
「俺達に!彼らを殺せというのですか!?」
参謀の言葉にシンジョウ隊員が叫ぶ。
アストロノーツだった彼にとってこの発言は許されないものだった。
俺も同様だ。
同じ人間を殺せという命令だ。
「我々が戦うのは地球の平和を脅かす凶悪な宇宙怪獣だ」
つまり、人間と戦うわけではない。
ナハラ参謀の言葉で少なからず気持ちは軽くなるだろう。
一時的なものだ。
仮に対峙した時、俺達は戦えるかどうか?答えは簡単。
仕事だと割り切ればできる。
「…わかりました」
俺はヘルメットを手に取る。
「八幡…」
「お前」
「俺達の任務は怪獣を倒す事です……行きます」
「GUTS出動!」
リーダーの言葉で俺達は出動する。
格納庫へ向かう途中、由比ヶ浜がやってきた。
出撃のサイレンを聞いてやってきたのだろう。
その顔は心配していた。
「ヒッキー…その、だい、じょうぶ?」
由比ヶ浜に田坂飛行士の事を伝えたからだろう。アホの子ながら勘はいい。
「大丈夫だ」
「その、気を付けてね!あたしはこういうことしかいえないけれど、その、ひ、ヒッキーの帰りを待っているから!」
「なっ、馬鹿!?でかい声でなんつぅことを」
「バカじゃないし!ヒッキーがちゃんと帰ってくるまで待っているし!」
周りの職員が何事かとこっちを見ている。
あぁ、恥ずかしい。
「わかった、ちゃんと帰ってくるから」
「本当?約束だし!」
「あぁ」
由比ヶ浜はそういうと仕事へ戻る。
俺も格納庫へ向かおうとするとGUTSメンバーと目が合う。
彼らの目がとても温かったことに納得いかなかった。
ガッツウィングで宇宙怪獣リガトロンを攻撃する。
怪獣の狙い先は発電所。
この発電所は都市の20パーセントを賄っており、エネルギーが全て奪われたら壊滅的な打撃を受けることとなる。
電線を切り裂いて、発電所へ向かおうとするリガトロンをウィング一号と二号が攻撃を仕掛ける。
怪獣の皮膚は強固なものでレーザー攻撃は効果なかった。
一号がミサイルを放つ。
リガトロンは止まることを知らない。
しばらく膠着状態が続いていた時、リガトロンにウィング一号が撃墜される。
「ダイゴ!」
「無事に不時着できたみたいです」
「…救助に向かいましょう」
ウィング二号が着地した時、ウルトラマンティガが現れる。
ウルトラマンティガとリガトロンの対決。
繰り出される鎌を躱しながらティガは戦う。
不時着した一号の近くにシンジョウ隊員が倒れていた。
アバラにダメージを受けたのか抑えている。
「あの怪獣、要塞並みの強さを持っているからウルトラマンティガも勝てない!」
「……外がダメなら、中からだ。本部!」
シンジョウ隊員がPDIで本部へ連絡を取る。
何をするつもりだ?
『こちら本部』
「ジュピター3号のパイロットたちの、家族の写真を奴へ送ってくれ!」
『了解』
そうか!
「彼らの意識を目覚めさせるつもりですね」
「そうだ」
シンジョウ隊員は外からダメなら中を。
ジュピター3号の、彼らの力を借りるつもりなのだ。
シンジョウ隊員は賭けに勝った。
優勢だったリガトロンの動きが極端に悪くなった。
何かに阻まれるように動きが鈍い。
「シンジョウ、賭けに勝ったな!」
「もう一度!人間として生きるんだ!」
同じアストロノーツとして、人間としてシンジョウ隊員は今の彼らの状態が許せないのだろう。
理不尽な支配。
そんなものはどこにでもある。しかし、それにどう立ち向かうのかは当事者次第だ。
――エネルギーを奪うんだ。
――奴らの蓄えているエネルギーをキミ達が奪って、怪獣を倒すんだ。
シンジョウ隊員の叫びと共にリガトロンの動きが止まった。
そこをティガが光線で倒す。
倒す直前、怪獣から三つの光のようなものが出ていった。
リガトロンは大爆発を起こしてティガは空へ去っていく。
俺達は夜空を見上げていた。
空には見たことのない三つの星が輝いている。
「あれは、なに?」
「ジュピター3号のパイロット達だ」
「彼らは光になったんだ」
ダイゴ隊員の言葉に俺達は何も言わない。
「人間の尊厳を取り戻して、人類を救った彼らはどこにいくんだろうか」
「広大な宇宙へ旅立つのさ」
俺の呟きにシンジョウ隊員が答える。
輝いている三つの星を俺達はいつまでも見続けた。
リガトロンの戦闘から翌日。
俺は川崎姉弟と小町を呼び出した。
「以上が田坂飛行士についての話だ」
GUTS隊員からことの顛末を尋ねたという建前で俺は三人へ話した。
流石に怪獣になったとは言えなかったので、ジュピター3号のパイロット達は怪獣と戦い、命を落としたということにした。
「この話はいずれ、宇宙開発局から家族の下へ行くだろう」
「……そう、っすか」
「わかった、悪かったね。こんなこと頼んで」
「気にするな」
隣にいる由比ヶ浜は黙っている。
やがて、彼らと別れて俺達は基地へ向かっていた。
「ねぇ、ヒッキー」
「なんだよ」
「やっぱり、宇宙飛行士もGUTSも危険な仕事なんだね」
「まぁな…でも、意味はある」
「命を失うかもしれないのに?」
「俺達は死ぬつもりで任務に挑んでいるわけじゃない。GUTSは誰かを守る為に、宇宙飛行士は…まだみぬものをみるために頑張っているんだ」
「……そっか、ヒッキーも誰かを守る為に頑張っているんだ」
「まさか、俺は小町や知った人間を守る為と自分が知らない所で命の危機に会いたくないだけだ」
「もう、素直じゃないし、てか、小町ちゃんの名前を最初にだすって、きもい!」
「うるさいな、小町は一番だ。これは譲らん」
「じゃあ、二番目は?」
「な、内緒だ!」
浮かんだ顔を打ち消すように首を振って走る。
「あ、ちょっと待って!」
後ろから由比ヶ浜が追いかけてくる。
何か、さっきまでの薄暗かった気分が嘘みたいだ。
アホの子、おそろしい。