「巨人がほかにも……」
犬に導かれるように洞窟の中を進んだダイゴ、そこにあったのはウルトラマンティガと酷似している巨人像、そして怪獣像だ。
犬が像に近づこうとすると電流が流れる。
悲鳴を上げて犬は崩れ落ちた。
「ここまでこられたんだねぇ。キミは僕と同じ。いっただろ?キミだけが特別な存在じゃないって」
ダイゴが顔を向けるとスパークレンスを奪った男、マサキ・ケイゴがそこにいた。
「そうだ、僕は特別な人間なんかじゃない。けど、自分のできることをする!この星とこの星の仲間たちと守る」
「みんな?みんなはウルトラマンのことを神だと思っているんだよ?いいのかい?そんな情けない意志でいてさぁ」
「情けないだって!」
ダイゴは憤慨する。
自分の覚悟を馬鹿にされていることが許せなかった。何より、仲間を馬鹿にされたような気がしたのだ。
「そうさ。キミは光の力に頼っているだけだ、人類の力を強制的に導くのがウルトラマンの使命さ」
言葉を失うダイゴの前。
宙に浮かぶ映像が表示しているのは巨人像を破壊するゴルザとメルバ、そして攻撃を受けるガッツウィング一号。
「これは!」
「そうTPCの映像アーカイブさ。このとき、君は光になったんだよね?そして巨人像に転移し、一体化した。これは君自身を光に転移させるシステムさ」
「お前が何をしようとしているのかわかったぞ。お前がどれだけ頭がよくて、強くても、お前はウルトラマンティガになれない!」
「アハハハハ!やっぱり自分が特別だと思っているんだろう?これをみろ。キミと僕は同じ遺伝子を持っているんだ」
映像に現れる遺伝子構造図。
それは全く同じものだ。
「キミと僕は兄弟のようなものなんだよ」
マサキ・ケイゴはそういってダイゴのスパークレンスを機械へ接続する。
「やめるんだ!間違った心で光になったら!」
シー!とマサキ・ケイゴがいう。
「間違いか、どうか、これでわかるさ」
機械へ手をかざす。
バチバチというスパークと光りとシステムの稼働音がする。
「人類という矮小な存在から僕は進化するのだ!古代の力よ!僕を光に変えたまえぇえええ!」
「やめろ!」
ダイゴが止めに入ろうとするも電撃の壁に阻まれてしまう。
「ひ、か、り、よぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
やがて、マサキ・ケイゴの体が光になると同時にそばの巨人像へ吸い込まれていく。
石像だった巨人はマサキを取り込んだことでまばゆい光を放ち始める。
「そんな、馬鹿な事」
ダイゴが言葉を失っている中、光る巨人は空へと飛んでいく。
時間は少し巻き戻る。
『マサキ・ケイゴ、サイテックコーポレーションの最高責任者であり世界有数の物理学者、タンゴ博士がTPCの映像データをひそかにネットワークで流していた彼が相手でした』
ヤズミが熊本の作戦テント内にいるメンバーに情報を伝える。
アークを盗んだタンゴ博士、その人が外部持ち出し厳禁のデータをみせていた相手の情報を突き止めた。
俺はタンゴ博士を追いかけるため、みんなと合流するためにウィング一号で向かっていた。
機内でGUTSメンバーの会話が聞こえている。
『マサキ・ケイゴかぁ』
「ホリイ隊員はそいつの事、知っているんですか?」
『高校生の時から天才といわれていた。コンピューターソフトで頭角を現して、今は宇宙開発の小企業をやっている』
『何を狙っているのかしら?』
「少なくとも、タンゴ博士を巻き込んで巨人像の砂を盗んでいるとなると、危険なことなのは間違いないでしょう」
『サイテックコーポレーションの本社はどこにある?』
『熊本です』
『急ぎましょう。タンゴ博士の件と地底鮫の件といい、行動を隠していません』
リーダーの言うとおりだ。
今まで水面下で行動していた連中が大々的な動きを見せる。
それは何かをするということだ。
『何かがはじまるということね』
『八幡、お前はそのままサイテックコーポレーションへ向かえ、俺達もすぐに行く』
「了解、ヤズミ、サイテックコーポレーションの地図を転送してくれ」
『了解』
届いたマップの誘導に従って俺はサイテックコーポレーションの建物に向かう。
「これがサイテックコーポレーションの建物?」
「はい、さっきから周辺を警戒しているんですが、人の気配がないっす」
一足先に到着していた俺の前に隊長達がやってくる。
ホルダーのハイパーガンを取り出す。
「今年になってからこのビルをこの場所に建てたんです。何かがこの場所にあるんです」
ズシンと衝撃が起こる。
今のはただの地震じゃない。
「なに!?」
「レナ、上空でスタンバイ」
『了解』
リーダーの指示で上空に待機するガッツウィングEX-J。
俺達は建物の中に入る。
先ほどから継続的に振動が起こっていた。
「何をしでかす気や……待て、この振動」
「ホリイ隊員?」
「リーダー、リーダー!このフロアにアークがあります!タンゴ博士がここに運び込んだんです!」
ホリイ隊員がPDIを見ながら話す。
逃げたタンゴ博士がここにいるということ、マサキ・ケイゴはここで実験をしているのだろう。
「よし、二手に別れる」
「私は地下に行くわ」
「八幡、行くぞ」
「はい」
ホリイ隊員と共に俺はアークの行方を追う。
PDIで反応を追いかけるホリイ隊員と俺はラボらしき場所を見つける。
「プラントか、ここで何を作ってるんや?」
「罠の可能性もあります。ゆっくりいきましょう」
互いに頷いて扉を開ける。
慎重に中へ入るホリイ隊員。
先に行こうとしたホリイ隊員を止める。
指で足元の赤い光を見せた。
コクンとうなずいてホリイ隊員はそれをまたぐ。
続いて、俺も跨いだところで。
「待っていたよ」
「……タンゴ博士!」
「こんなところで何をやっているんですか!」
「見てくれ、ここが僕の城になるんだ」
「何を言っているんだ?」
何かに酔うように話し始めるタンゴ博士。
「マサキさんだけが僕の才能を認めてくれたんだ」
「ここで何をしているんですか!」
「あのアークの砂を再合成して量産するんだよ」
タンゴ博士はアークが収められているケースを指す。
「なんのために!?」
「決まっているじゃないか、巨人像のレプリカを作るためだよ。素晴らしいだろ?ウルトラマンをいくらでもコピーできるんだ」
もし、それが本当ならぞっとする話だ。
人類がウルトラマンになれる可能性がさらに広がるということだ。
「そんなアホなこと本気で出来ると思っているんですか!?」
「アホ……アホだとぉ?見ろ!」
タンゴ博士が表示した画面、そこにあるのは光り輝いているティガのような巨人だ。
「え?」
「なんや、この光っているティガ」
演説しているような巨人だが、やがて異変が起きる。
巨人が街を破壊し始めたのだ。
「ホリイ!八幡!」
リーダーが近づいてくるが俺が手で制する。
「古代の人間はウルトラマンがいたのに滅亡してしまった、ウルトラマンは何もしてくれなかった、だから」
「だから!同じことを繰り返さないようにしないとあかんのでしょう!?わけのわからん力に頼っていいんか?タンゴ博士、アンタの信じている科学はそんなちっぽけなもんなのか?」
「う、うるさい!」
「みてみぃや!この巨人!!自分の力に負けてもうているやないか!」
熊本の街を破壊している巨人。光弾を放ったり拳や蹴りで建物を壊していく。
「……マサキ、さん」
「プラントは止めなあかん、アンタが科学者なら、アンタが本当に人類のことを思っているのなら!」
同じ科学者として叫ぶホリイ隊員の言葉にタンゴ博士は崩れ落ちる。
「リーダー、ここは任せていいですか?」
「八幡?」
「偽のティガのところに行きます」
「……無茶はするなよ」
「了解です」
リーダーとホリイ隊員にこの場を任せてウィング一号で街の方へ向かう。
おそらくあのウルトラマンはマサキ・ケイゴだ。
サイテックコーポレーションの力を使ってウルトラマンになり人類を支配しようとしている。
もし、その力が暴走しているのなら。
「対処しないと世界を滅ぼす魔王になるな」
何より人類を守ってくれているウルトラマンティガを汚すような行為だ。
そんなこと許せるはずがなかった。
ウィング一号で現場に向かっているとウルトラマンとそれを止めようとする怪獣がいた。
怪獣は泣きながら偽のウルトラマンに噛みついている。
その光景がどこか痛々しく思えるのはなぜなのか?
疑問に思いながら俺はウルトラマンを攻撃しているレナ隊員たちの援護に回る。
偽ウルトラマンの光線がベータ機に直撃した。
『レナ!くそぉ!偽物やろうがぁああああ!』
アルファ機のシンジョウ隊員が背中に向けて攻撃をする。
敵のウルトラマンは攻撃を躱しながら回し蹴りを放つ。
蹴りがアルファ機へ直撃する。
火花を散らして落下していくアルファ機を見ながら俺も攻撃を続けていた。
『来たぜ!本物がぁ!』
通信機越しに聞こえるシンジョウ隊員の声。
振り返るとウルトラマンティガが飛んできていた。
ティガが偽のウルトラマンと戦いを繰り広げる。
両者共に激しい戦いの中、やがて、光線同士のぶつかりあい。
激しい戦いの末、勝利したのはウルトラマンティガだった。
ガッツウィング一号で降りるとデ・ラ・ムが停車するのと同じだった。車から降りたのはホリイ隊員とタンゴ博士。
どうやら説得に成功したようだ。
「八幡」
「リーダー、お疲れっす」
「いや、俺は何もしていないさ、ホリイの説得だ」
「そんなこというなら自分だって」
「……そう謙遜するな」
ポンと肩をたたいて歩き出す。リーダー、俺も後に続く。
その時だ。
「うぉっと」
俺の足元を一匹の子犬が走り去っていく。
野良犬だろうか?
その犬は立ち止まるとちらりとこちらをみた。
俺と違ってつぶらな瞳と目が合う。
「?」
奇妙な感覚の後、その犬は走り去っていく。
「アイツ、畜生!自分だけ、落ちなかったな!!」
テントの前に向かうとシンジョウ隊員が新たに着陸してくるガッツウィング一号をみていた。
行方不明になっていたダイゴ隊員のようだ。
こうして、偽ウルトラマンの騒動は終わりを告げる。
だが、知らなかった。
この出来事が原因でのちに新たな騒動を引き起こすことになろうなど、この時の俺達は夢にも思っていなかった。