やはり俺がGUTSにいるのはまちがっている。   作:断空我

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ハロウィンの夜に

 夜のダイブハンガー、GUTSの作戦司令室ではある磁場の計測がなされていた。

 

「こんな、磁場みたことがないわ」

 

「過去に計測されたものの中で最高値を出しています」

 

 俺達、GUTSはある地域で確認された磁場について調べていた。

 

 今までにない数値という事で警戒する必要があるだろう。

 

「現地に調査へ向かいますか?」

 

「そうね」

 

 隊長が頷いたことで出動体勢へ入る。

 

「あ、待って!」

 

 作戦室を出ようとしたところで隊長から待ったが入る。

 

 なんだ?

 

「その恰好で今街へ行くのはまずいわ」

 

「え?」

 

「マズイ?」

 

「…そうか、ハロウィン!」

 

 ダイゴ隊員がわかったというように手を叩く。

 

 ハロウィン、それは毎年、10月31日に行われる収穫祭である。起源は古代ケルト人が行っていた祭りとされている。

 

 秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いの行事だったのだが、アメリカでは民間行事として多くの若者が仮装をしてお菓子をもらったりする祭りとなっていた。

此処、日本も試験的導入により都会などで子供たちが仮装をしてお菓子をもらったり楽しむ祭りとして定着し始めている。

 

 隊長が危惧しているのはハロウィン中にGUTSが出張ることだろうか?

 

「折角のハロウィン、GUTSが街へ繰り出せば何事かと慌てて、祭りどころではなくなってしまうわ」

 

「成る程」

 

「では、私服に着替えますか」

 

 ムナカタリーダーの言葉にイルマ隊長が微笑む。

 

 何だろう、すこーし、面倒くさそうな予感がするぞ。

 

「いいえ、ふさわしい格好があるわ…あぁ、あと八幡隊員」

 

「うす?」

 

 名指しされるって嫌な予感しかないんですけど。

 

「貴方は別任務を与えます」

 

 うわーぉ、嫌な予感がするぞ。

 

 この時の俺の予想は的中していた。

 

 だって。

 

 隊長がすっごい、小悪魔的な笑顔を浮かべているんだもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で、こんなことに?」

 

「ヒッキー、気味悪いくらい、似合っている」

 

「気味悪い、いうな…お前、その恰好、なに?」

 

「天使だよ?マユミさんがこういう格好すればいいっていったんだ」

 

 そういって体を翻す由比ヶ浜。

 

 白いワンピース、頭に丸いわっかのようなものがついて、背中に白い翼、ふわふわしている翼の完成度はかなりのものだと思う。

 

 対して、俺の格好は…。

 

「リアルゾンビだよなぁ」

 

 顔は特殊メイク、頭から血が流れているゾンビみたいな恰好を俺はしている。

 

 ちなみに服は私服。灰色のズボンに黒いシャツと白いジャケットというスタイル。

 

 服の中にPDIやハイパーガンが念のためある。

 

 隊長から下された任務。

 

 それは街中でおかしなことが起こらないか見張れという事だ。

 

 リーダー達が磁場の地域を調べ、俺とダイゴ隊員達は街の子供たちに異常が起こらないか調べるというもの。

 

 これは地元警察から応援要請が警務局にきたものをイルマ隊長が聴いて引き受けたらしい。

 

 おかしくない?

 

 俺達に仕事の負担が回ってきているよ?

 

 そして、由比ヶ浜。

 

 こいつは往診が終わり、そのまま自由時間としてハロウィンを楽しむことを許可されているらしい。

 

 緩すぎる。

 

 コイツの職場と俺の職場、温度差が、いや、ブラック差が激しすぎる。異動希望したいなぁ。

 

 ナース服を着た八幡…うん、ダメだな。

 

「ほら、ヒッキー!行こうよ」

 

「お、おう」

 

 由比ヶ浜が俺の腕を引いて歩き出す。

 

 やめて!

 

 腕に柔らかい感触を感じるのですが!

 

 由比ヶ浜と街へ繰り出して一時間、ハロウィンという事でお菓子をくれというだけで街の人たちは御菓子を用意してくれている。

 

 大人といえる年齢へ達した俺達が果たしてお菓子を受け取ってもらっていいのかという疑問がある。しかし、

 

「うわぁ!おいしそうなロリホップ!どこでもらったの!?」

 

 ダイゴ隊員らしきかぼちゃの被り物をしたお化けが子供たちと戯れている姿を視ると少し前の考えが間違いだったのではないかと考えてしまう。

 

 あれはないだろ?

 

 俺より年上のはずなのに。

 

「お兄ちゃん?」

 

 後ろから聞こえた声に振り返る。

 

 そこにいたのは我がマイスィートエンジェル、小町だった。

 

 小町は鬼の角みたいなものを頭につけている。

 

 鬼のコスプレか、どうせならラムちゃんみたいな…いや、ダメだ。

 

「……あ、やっぱり、お兄ちゃんだ!なんでこんなところにいるの?」

 

「あぁ、俺は」

 

「ヒッキー、ごめん、遅くなっちゃった。はい、これ」

 

「あ、由比ヶ浜さん!」

 

「あ、小町ちゃん、やっはろー!」

 

「やっはろーです!そういえば、小町さんもTPCで働いていたんでしたね…あれ、もしかして、デート!?」

 

「え、あ、その」

 

「ま、まぁ、そんなところだ」

 

 由比ヶ浜がボロをださないように俺が前に立つ。

 

 もし、小町がGUTSの事をしったらとんでもないことになる。

 

「そういえば、小町はどうしてここに?」

 

「地元の手伝いだよ~。子供が迷子にならないか見回りしているの。かわいい子を心配する小町、これ、小町的にポイント高くない?」

 

「そうか、あまり無理をするなよ。何かあればすぐにお兄ちゃんへ知らせなさい」

 

「ごみぃちゃん」

 

 あれ、妹の事を褒めてやったつもりなのにダメなの?

 

 隣の由比ヶ浜なんか、半眼でこっちを睨んできているし。

 

 八幡、何かやらかしちゃった?

 

『アッハッハッハッハッ!』

 

「…なんだ?」

 

「魔女?」

 

「うわっ、凄いこっているなぁ」

 

 ロリホップの台車を押しながら大きな声で笑いながら去っていく魔女。

 

 何がおかしいのだろうか?

 

 首を傾げながら俺は前を見る。

 

 もうすこし魔女を見ていたらそれを追いかけるかぼちゃ男の姿をみただろう。

 

「お兄ちゃん、この後の予定は?」

 

「あ、もう少しぶらぶら回る予定だ」

 

「そうなんだ、由比ヶ浜さんと楽しくね~。小町的に将来のお姉さんとなるかもしれない人がみられるかもしれないから期待、大だよう!」

 

「何を言っているんだ、お前?」

 

 キラキラしている小町に呆れた表情をしていると由比ヶ浜が戻ってくる。

 

 その手にはジュースがある。

 

「はい、ヒッキー、小町ちゃん」

 

「おう」

 

「ありがとうございます!」

 

 受け取った中身はチョコレートジュースだった。

 

 てか、キミ、そのロリホップはなに?かなりでかくない?

 

 少し冷えてきたから体が温まる。

 

「あ、戻らないと。小町、いきますね~」

 

 時間を見て、小町は去っていく。

 

 残されたのは俺と由比ヶ浜。

 

「……まだ、時間がある。あっちこっち、回るか」

 

「うん!」

 

 微笑む由比ヶ浜。

 

 その時、団体が俺達のところへやってきた。

 

「おっ、と」

 

「ぁ」

 

 巻き込まれそうになることに気付いた俺はつい、本当につい、由比ヶ浜の手を掴んでしまう。

 

 しばらくして、団体が離れると俺達の間に微妙な空気が漂い始める。

 

「す、すまん、すぐに」

 

「あの!」

 

 由比ヶ浜の声に動きを止める。

 

 少し頬を赤くしてもじもじしている。何?熱いの?

 

「どうせ、だから、このまま手をつないで歩こうよ。ほら、任務とか怪しまれないし。よくない?」

 

「……え、でも」

 

「あたしは、気にしないから」

 

「……わかっ、た」

 

 奇妙なドキドキをしてしまう。

 

 くそっ、考えるなよ。

 

 これは任務の一環なんだ。

 

 何か意図があるわけじゃない。

 

 そうだ。

 

 俺は任務のためといいきって、歩き始める。

 

 隣の由比ヶ浜もうつむいていた。

 

 その顔はうかがい知れなかった。

 

『八幡隊員、そっちの様子はどうかしら?』

 

「子供たちは無邪気に走り回っています。今の所、異常事態や迷子の報告はないです」

 

『そう、磁場の調査は一通り終わったから、基地へ帰投して』

 

「了解です」

 

「どうしたの?」

 

「…任務終了、帰還しろだって」

 

「そう、なんだ」

 

「俺は戻るけれど、どうする?」

 

「うーん、お母さんの所に顔出したいからこのままいくよ」

 

「そっか、気を付けてな」

 

「うん…」

 

 俺が去ろうとしたら後ろから由比ヶ浜が呼び止める。

 

「ヒッキー!」

 

「…なんだ?」

 

「あたしさ、もう、待つことはやめたから、追いかけて、振り向かせて見せるし、絶対、捕まえるから」

 

「…………は?」

 

「またね!」

 

 グィッと顔を近づけて由比ヶ浜はそういって去っていった。

 

 いきなりの事に俺は呆然としていることしかできなかった。

 

 しばらくして、二度目の通信、レナ隊員の確認が来るまで俺は動くことができなかったことは嫌な記憶として保存されるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時、俺は気づいていなかった。

 

 磁場の異変は既に起こっていた。

 

 しかも、俺の前であったというのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 基地に戻った俺はヤズミに後を任せて自室に向かう。

 

 今日は酷く疲れた。

 

 磁場について反応はするけれど、何もないという報告。

 

 監視は続けているから大丈夫だろう。

 

 何もないという所がひどく気になるけれど、休もう。

 

 今日は色々とありすぎた。

 

 俺は眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、いきなり鳴りだしたPDIによって俺の意識は半覚醒する。

 

「何だよ…」

 

 時計をみると深夜だ。

 

 PDIを開く。

 

「ヤズミ?」

 

「すぐに作戦司令室へ」

 

「……わかった」

 

 あぁ、眠たい。

 

 顔を洗って制服に袖を通す。

 

 命令に従ってこんな時間にいく。絶対ブラックだ。そして、社畜街道まっしぐらだ。

 

 着替えて作戦室へ向かうとほとんどのメンバーが来ている。

 

「何かあったんすか?」

 

「あぁ、実は」

 

 傍にいたシンジョウ隊員の話によるとレナ隊員がかなりラフな格好で基地内を歩いていたらしい。

 

 幸いにも童貞なシンジョウ隊員のおかげで抱きかかえられるだけで終わった。その後、事情聴取を行っているという事だ。

 

 何でも笑顔でふらふらと歩いていたという点で気になった。

 

「なぁ、八幡」

 

「はい?」

 

「今、俺の事、童貞とか、考えなかった」

 

「まさか、そんなことあるわけないじゃないですか」

 

 ヤバイ、ここにも俺の考えていることわかる人いたよ。

 

 気をつけよ。

 

「魔女のおばあさん?」

 

「はい、その人が配っているロリホップを」

 

「食べたんか?」

 

「…うん」

 

 あちゃーという顔をしてホリイ隊員が項垂れる。

 

 GUTSとしては怪しいものに手を出すなといいたいのだろう。

 

「でも、ハロウィンです。みんなが仮装をしている。誰も、配られているお菓子にそんなものが混じっているなんて考えていない…魔女はそこをついたんだと考えられます」

 

「…八幡隊員の言うとおりね」

 

「そういえば、ダイゴが魔女を怪しいって追いかけて行って」

 

 あれ?

 

「ダイゴ隊員は?」

 

「見てきます」

 

シンジョウ隊員が部屋へ向かう。

 

 数分して戻ってきたシンジョウ隊員はかぼちゃのマスクを手に持っていた。

 

「ダイゴは部屋にいません、これだけがありました」

 

「そんな!」

 

「魔女の仕業…ってことか」

 

「なんだ、これぇ!」

 

「どうしたの?」

 

 ヤズミの叫びに隊長が訊ねる。

 

「今までにない磁場の反応です…まるで、まるで、ブラックホールだ」

 

 言葉通り、表示されている磁場の数値がありえないものだった。

 

 何かがあそこで起ころうとしている。

 

「出動する!」

 

 リーダーの言葉で俺達はウィング二号と一号で出動することになった。

 

「(なんなんだ?)」

 

 出撃している最中、俺の頭は何か、いうなれば警鐘を鳴らしていた。

 

 何かが足りない。

 

 何かが不足している。

 

 俺は、何かを見落としているんじゃないか?

 

「待てよ…レナ隊員!」

 

「なに?」

 

 ウィング一号の操縦席にいるレナ隊員へ問いかける。

 

「レナ隊員が食べたっていうロリホップ、どんなものだったか教えてくれます?」

 

「えっと…カラフルで、確か、このぐらいの大きさ…あ、棒がかなり長かったかな」

 

 マズイ!

 

「ヤズミ!至急、今から俺が言う番号へ連絡を取ってほしい」

 

『わかりました』

 

『八幡、隊員、どうしたの?』

 

「すいません、私情を挟みます。もしかしたら俺の知り合いが…食べたかもしれません」

 

「もしかして、結衣ちゃんが?」

 

「……はい」

 

『確認取れました…家に、いないということです』

 

 ヤズミの言葉に俺は自然と拳を握り締める。

 

 あの時、ダイゴ隊員と共に追いかけていたら違った展開になっていたかもしれない。

 

もっと、もっと、意識を向けていたら。

 

『八幡、過ぎたことはどうしようもない。今はこれからを防ぐことに意識を向けるんだ』

 

「了解…すいません、リーダー」

 

『なんだ、あれ!?』

 

 通信機越しから聞こえるシンジョウ隊員の声に下をみる。

 

 立ち入り禁止と書かれている柵と草地だけの筈の場所。

 

 そこに巨大なかぼちゃの物体が現れていた。

 

『着陸する!』

 

 リーダーの言葉で俺達は地上に降りる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前、

 

 魔女を追いかけていたダイゴ隊員は罠にかかりカプセルの中へ閉じ込められていた。

 

 服はなくなり、シャツとパンツのみ。

 

 少し離れた所にハイパーガンとスパークレンスが置いてある。

 

 周りを見ると馬のおもちゃに乗っている子供がいた。

 

 楽しそうに笑っている子供。

 

 みていると扉から魔女が現れる。

 

「おい!ここはどこだ!」

 

 ドンドンとカプセルを叩きながらダイゴ隊員が叫ぶ。

 

 しかし、魔女は反応せず、置かれていたグラスの酒を一口、飲む。

 

 それから子供の方へ近づいていく。

 

「おい!子供に何をする気だ!離れろ!」

 

 異変を覚えてダイゴ隊員が叫ぶ。

 

 魔女は子供の耳元へ顔を近づけると仮面を少し外す。

 

 耳元から虹色の「何か」が魔女の口へ吸い込まれていく。

 

 すると、壁に設置されているテレビから映像が少しずつ消えていった。

 

 同時に子供の顔から色が消えて、白に染まる。

 

 何かを吸い取った魔女はローブで子供を包む。

 

 ローブが消えた時、子供の姿はなかった。

 

「おい、何をした!子供をどこへやった」

 

「夢の墓場へ捨てた」

 

 ダイゴ隊員の叫びにようやく魔女が返す。

 

「夢の墓場?さっきの公園の事か!」

 

 捕まる直前、ダイゴは公園にいた。そこにいた子供たちは生気がなく、真っ白な顔をしていた。

 

「子供に夢は要らない。大人になれば捨ててしまう。おもちゃのようにポイ、だ!ハハハッハハハハハ!」

 

「ふざけるな!夢は子供のものだ!あの子へ返せ!おい!」

 

 魔女は笑いながら去っていく。

 

 その後ろ姿へ叫んでいるとカプセル内をガスが包み込んでいった。

 

 激しくせき込んでいくダイゴ隊員。

 

 彼の目はスパークレンスに向けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、止まれ!」

 

 ウィング一号から降りた俺は夢遊病のように列をなしている子供たちを押しとどめながら由比ヶ浜を探す。

 

 もしかしたら、小町もあのロリホップを食べているかもしれないという不安もあったが気を利かした由比ヶ浜母の調べによって小町がいることはわかった。

 

 問題はアイツだ。

 

「いない!」

 

「ダメだ!これ以上は行くな」

 

 リーダーやシンジョウ隊員達が子供たちを止めようとすると暴れだす。

 

 くそっ、レナ隊員の時と違って、暴れようとするのか!?

 

 尚も先へ行こうとする子供を止める。

 

 そのため、先へ先へ進んでいる子達を止められない。

 

「ほら!大人は敵だ!子供の敵だ!大人は子供から何もかも取り上げる。ハーッハッハッハッ!」

 

 扇動する魔女。

 

 本当なら一つ二つ、叫びたい気持ちもあったが焦りが先走っていて、そんな余裕がない。

 

「このぉ!」

 

 シンジョウ隊員がハイパーガンを撃つ。

 

 攻撃を受けた魔女はローブを翻して姿を消す。

 

 それと同時に子供の洗脳が解けたようだ。

 

 困惑している子供たちを探しているとかぼちゃの物体の目が怪しく輝いた。

 

「みんな!逃げろ!」

 

 リーダーの叫びで我さきと逃げ出す子供たち。

 

「っ!」

 

 由比ヶ浜を見つけた。

 

 彼女はあろうことかかぼちゃの中へ入っている。

 

 しかも、事態がわからず呆然としていた。

 

「待て、八幡!」

 

「危険だ、戻れ!」

 

 リーダーやシンジョウ隊員の言葉に振り返らず走る。

 

 アイツを掴んで引きずり出せば何とかなる。

 

 かぼちゃの口元へ入り、由比ヶ浜の腕を掴んで引き寄せようとした。

 

 この時、俺は冷静さを大きく欠いていたのだろう。

 

 声をかけずに後ろから掴んだことで激しく抵抗された。

 

「お、おい!?」

 

 抵抗された事でバランスを崩して由比ヶ浜の上へ倒れ込んだ。

 

 よくみたらピンクのパジャマボタンが上から三つほど、外れている。

 

 あれ、これ、傍からしたら不味くない?

 

「きゃあああああああああ!変態!ちかん!触らないで!」

 

「ちょ、やめ、お、俺だ、俺!」

 

「へっ?この声、ヒッキー?え、なんで夢にいるの!?」

 

「現実だ。アホの子」

 

「アホってなに!?ってやっぱり、ヒッキー!?」

 

「話は後だ。時間がない。すぐに」

 

 あれ?

 

 この時、下へ沈んでいる感覚がいつの間にかなくなっていた。

 

 しかも、上昇している気がする。

 

 困惑しているとドシンと大きく揺れた。

 

「ヒッキー?え、これ、どうなっているの?」

 

「落ち着け、俺がお前を守るから」

 

「ふぇっ!?」

 

「とりあえず傍から離れるな」

 

「う、うん」

 

 あ、あれ?

 

 由比ヶ浜をいつものペースに戻そうとしたんですけれど、顔を赤らめてうつむいていますよ?

 

 首を傾げつつもハイパーガンを片手に出口へ向かう。

 

「……外?」

 

「八幡!大丈夫か!」

 

 外の景色はさっきと変化がない。

 

 いや、少し場所が動いている?

 

「一体」

 

 どういうことかと問いかけようとしたところで巨大な怪獣と戦うウルトラマンティガの姿があった。

 

 そうか、ティガが助けてくれたのか。

 

 俺は事態を察する。

 

 どうやって沈んでいくかぼちゃを移したのか謎だが、助けてくれた事は感謝だ。

 

「ヒッキー?え、ウルトラマン!?どうなって、いるの」

 

「落ち着け、深呼吸だ」

 

「ひっひっふー、ひっひっふー」

 

「それは違う方法だ、アホ」

 

「アホってなに!?」

 

 騒ぐ由比ヶ浜を他所にウルトラマンティガは怪獣を倒す。

 

 外にいたシンジョウ隊員が教えてくれたことだがあの魔女の正体がティガと戦う怪獣だという。

 

 侵略者の正体みたりという奴か。

 

 そんなことを考えている間にティガが怪獣を倒す。

 

 怪獣が消えるとかぼちゃの物体もなくなり、中にいたと思われる子供たちの姿がある。

 

「ん?」

 

 遠目でわからなかったが顔の白い子供もいたような気がした。

 

「しっかし、子供の夢を盗もうとするとは最低な奴や」

 

「未来を生きていく子供たちにとって夢は大事なものだ」

 

「それを守るのも大人の仕事というわけか」

 

「……ますます、働きたくなくなりますよ」

 

「腐らない腐らない」

 

 レナ隊員が俺の肩を叩く。

 

「ほな、自分らもいい夢を見るために帰りましょうか」

 

『そうはいかないわよ』

 

 ホリイ隊員の言葉に反応するように隊長が待ったをかける。

 

 どうやら帰ったらたくさんの任務が待っているらしい。

 

「あぁぁぁああああ、俺らは夢見ることもできひんのかぁ」

 

「現実と戦う事も仕事だ、ほら、帰るぞ」

 

 どうせなら八幡は家でのんびりしていたい。

 

 現実と戦うことも必要だが、休息も必要だと思うのは間違いない。

 

 休まないと人間、もたないもの。

 

「そうだ、八幡、お前に特別任務だ」

 

「はい!?」

 

 二号へ向かおうとしていた俺にリーダーがいう。

 

 特別任務?

 

 帰ってからじゃないの!?

 

 困惑している顔が出ていたのだろう。

 

 リーダーは俺に任務を言い渡す。

 

「そこでおろおろしているお嬢様を家へ送り届けてやることだ」

 

「はい?」

 

「頑張れよ。騎士様」

 

 妙にキザったらしいことをいってリーダーは俺の肩を叩く。

 

「隊長からの許可はとってある」

 

 ヤダ、外堀が埋められているよ。

 

「ほなな」

 

「どうせなら、あれだ、お姫様抱っこしてやれよ」

 

「男の子なんだから頑張ってね」

 

「えっと…ファイト」

 

 それぞれが言いたいことを伝えて二号に乗り込んでいく。

 

 あれ、俺乗っていないよ!?

 

 動く暇すら許さずに二号は青空の下を飛んでいく。

 

 残されたのは俺と由比ヶ浜。

 

 周りの子供たちは隊長が手配したであろう警務局の隊員達が誘導をしている。

 

「えっと、ヒッキー…」

 

「……家、まで送るわ」

 

「え、でも、悪いよ」

 

「気にするな。任務だ。お前をこのまま放って帰ったらみんなに何を言われるかわかったもんじゃない」

 

「……ありがとう」

 

 その後、由比ヶ浜を家に送り届けると由比ヶ浜ママさんによって朝食をいただきました。

 

 

 小町はぐーすか、家で寝ていたそうです。

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