・・・・説明回になる『十一話』。
それでは、どうぞ!
・・・・どうして、『あんた』がここにいる?
「最後に、カゼハヤ・カミト君。君は東京武偵高二年、強襲科《アサルト》の『Eランク』として登録しておくね」
緑松校長は、ケンジの疑問など気にせず話を進めていく。
・・・・って、え?
「『Eランク』!?」
カミトが驚きの声を上げた。
ケンジも感じた疑問を、カミトも感じたようだ。
当然だろう。さっきまで『あれほどの試合』をしたカミトが『Eランク』なのだから・・・・。
しかし、緑松校長はスラスラと理由を述べる。
「ええ。なぜなら、君と戦った神楽ケンジ君は『Dランク』なんですよ。その神楽ケンジ君に負けたのですから、君は一つ下の『Eランク』となる訳です」
緑松校長は表情を変えず、ケンジとカミトを見ている。
(・・・・そういえば俺、『Dランク』だったな・・・・)
自分でもビックリだぜ。もう少し上でもいいだろうに。
・・・・でも、これには『理由』があるんだよな。
ケンジが『あの日』の事を思い出していると、カミトがケンジの方を見てきた。
「お前『Dランク』だったのか?」
「・・・・まぁね」
「ウソだろ・・・・」
いや、ホントです。
「じゃあ、僕はこれで失礼するよ」
そう言うと、緑松校長の気配が『分からなくなった』。
・・・・マジで怖ぇーよ。なんで校長先生なんてやってるんだろうな、あの人。『暗殺者』だろ、絶対。
「ところで、一ついいか?」
緑松校長の姿が完全に消えたところで、ケンジはカミトに目を向ける。
「・・・・なんだ?」
「どうして『手加減』したんだ?」
「・・・・っ!?」
カミトの表情に、一瞬で緊張が走った。
図星を突かれたので、驚いているのだろう。
「・・・・まさか『武偵法九条』の事でも考えたのか?」
「いや、別に手加減した訳じゃないんだ。それに、手加減して使えるような技じゃねーよ『絶剣技』ってのは・・・・」
「だったら、どういう事だ?」
「・・・・『普段の力』が出せないんだ。たぶん、この世界に『慣れてない』のかもな・・・・。でも、そのおかげで『身体に掛かる負担』も少なかったんだ。いつもなら二発程度が限界の『天絶閃衝《ラスト・ストライク》』を、四発も使えた訳だしな」
「・・・・なるほどな」
確かに『異世界』から来たばかりのカミトには、まだこの世界で全力を出すことができないのだろう。その分、身体に負担が掛からず、あれほどの『大技《ラスト・ストライク》』を連発できたって事か。
「俺も、お前に聞きたいんだが・・・・」
「・・・・?」
「確かに、俺は『普段の力』が出せなかった。・・・・でも、ケンジ。お前のその『あり得ない耐久力』は何なんだ? 仮にも、俺の『天絶閃衝《ラスト・ストライク》』を四発も喰らったんだぞ。普通、そんな余裕の顔して立ってる訳ねーよ」
カミトがケンジを見ながら声を上げる。
「・・・・あぁ、『その事』か」
「『種明かし』くらい、してくれてもいいだろ?」
「別にいいぞ」
「いいのかよっ!?」
「?」
(・・・・お前が知りたいって言ったんだろ・・・・)
ケンジは、自分の『左手』をカミトに見せた。
その『左手』は、白金色に輝いる。
---正確には、『ティアと結んだ契約刻印』が輝いているのだが・・・・。
「・・・・っ!?」
ケンジの左手を見たカミトが息を呑んだ。
しかし、ケンジは構わず続ける。
「---俺が使っているのは『電身強化《でんしんきょうか》』。雷精霊のティアの力を借りて『電気』を操ってるんだ。そして、その『電気』ってのが・・・・『生体電気』」
「・・・・『生体電気』?」
そう、ケンジがティアと契約した頃から、密かに練習していた技。
「普通、人間は自分の中にある力の半分も出し切れていない。けどな、俺はこの技を使って自分の『生体電気』を操作してる」
「・・・・?」
「つまり、自分の身体に流れてる生体電気の量を『増加させる』。・・・・だから、筋力を上昇させる事もできるし、反射神経を強化する事だってできる。運動神経や動体視力、『耐久力』もな。それから、身体の『痛覚』を麻痺させて『痛み』を感じなくさせる事も可能なんだぜ」
「化け物かよ・・・・」
カミトが心から素直な感想を述べる。
「・・・・でも、この技にも大きな欠点がある」
そこでケンジは、自分の身体を見回した。
「---この技は、身体に掛かる『負担』が大き過ぎるんだ。普通なら身体が持たない力を、無理やり出してる訳だしな。そんなことできるのは『ゾンビ』くらいだろうよ・・・・。だからこれ《電身強化》は『諸刃の剣』。使っても、結果が出なければそこで自滅ってことだ」
ケンジは当然のように続ける。
「『三刀流』を使えたのも、電身強化を使ってたからだ。・・・・普段なら『あんな剣技』使える訳ねーよ」
・・・・だって、顎痛くなるだろ普通・・・・。
それに俺は、刀くわえて戦う『少年マンがに出てくるような剣豪』じゃねーっての!
「だったらお前・・・・その技の効果切れたら、どうなるんだよ?」
「ん? まぁ、普通に考えて『ヤバイ』だろうな」
「落ち着き過ぎだろ!?」
カミトが叫ぶが、ケンジの意識はすでに『途切れかかっていた』。
どうやら、電身強化の効き目が切れてきたようだ。
まぁ、これで『白組』の勝ちだ。白組所属のケンジが勝ったのだから。
(・・・・アリアたちは、勝てたかな? ・・・・・・そういえば、人の心配してる場合じゃないよな)
ケンジは最後に神楽《しんら》を鞘に仕舞うと・・・・
背中から、地面に倒れた。
---ケンジの意識が途切れたのは、それからすぐのことだった。
---目を覚ますとそこは、何度もお世話になっている病院の個室だった。
すでに何度も来ているので、もうこの部屋がケンジ専用になっているようだ。
・・・・嬉しくないね。
「・・・・目が覚めましたか?」
ケンジのすぐ隣から、美しい鈴の音のような声が聞こえた。
声の聞こえた方に目を向けると、エシルが立っていた。
「体育祭は、終わったんだな・・・・」
「はい。すでに体育祭があった翌日です」
「マジで!?」
丸々一日寝てたって事か・・・・。なんか損した気分だな。まぁ、何度も経験してるんだが。
「カゼハヤ・カミトという人が、ケンジをここまで運んでくれました」
「カミトが・・・・」
これは、いきなり『借り』ができたな。
そういえば・・・・
「レストとティアは?」
「軽食を買いに行っています。そろそろ、ケンジが目覚めると思ったので・・・・」
ケンジの質問にエシルが答える。
「そうか。だったら、思った通りだった訳だな」
「---ごめんなさい!」
突然、エシルが頭を下げた。
「・・・・え?」
「ケンジが大変な事に巻き込まれていたのに、何もできなかった・・・・。本当にごめんなさい」
エシルが頭を下げたまま続ける。
(・・・・なんだ、そんな事か・・・・)
「エシル。お前のご主人様《マスター》は、誰かに護って貰うほど弱くないよ。それに、エシルたちには何時も感謝してる」
「・・・・?」
エシルが顔を上げてケンジを見てくる。
ケンジはエシルの頭に手を置き、優しく撫でた。
「ん・・・・」
エシルが気持ち良さそうに目を細める。
「こうして俺の近くにいてくれるだけで、本当に幸せなんだ。俺はエシルたちの笑顔が一番好きだからな」
「もう一度・・・・」
「ん?」
「もう一度言ってください」
エシルは真剣な表情で、ケンジを見つめていた。
だからケンジは・・・・
「自慢じゃないが、俺はエシルたちが『世界で一番大好き』なんだぜ」
そう言って、ケンジが微笑む。
するとエシルが、
・・・・ちゅっ
ケンジの唇に、自分の唇を合わせた。つまり、キスしてきたのだ。
しかし、ケンジは驚かなかった。むしろ、エシルの身体を抱き寄せようとしたが・・・・
(・・・・・・あれ?)
---身体が動かなかった。
ガチャッ!
その時、ドアの開く音が部屋に響いた。
「エシル。あなたはとてもずるいです」
「あぁ! 抜け駆け禁止ー!」
レストとティアが、入って来たのは言うまでもないだろう。
手にレジ袋を下げた二人は、一瞬でケンジのベッドまで来るとエシルを引きはがす。
そして、ケンジの身体に馬乗りしてきた。
「「私/ティアにもしてください!」」
そう言って二人が、ケンジを見つめてきたので・・・・
---もちろん二人にも、『キス』しました。
・・・・・・当然だろ。『世界で一番大好き』なんだから。
「むぅ・・・・」
エシルは拗ねたように頬を少し膨らませて、ケンジを見ている。
(・・・・怒ってるんだろうが・・・・マジで、可愛い過ぎるだろ! その表情!)
ケンジは思わずエシルを抱きしめに行こうとしたが、やはり・・・・
「---身体が動かねーな」
恐らく、さっき・・・・いや、昨日か・・・・のカミトとの試合で使った『電身強化《でんしんきょうか》』のせいだろう。
『電身強化』で蓄積された負担が、どうやら一気に襲ってきたようだ。
『痛み』を通り越して、すでに『何も感じない』のだが・・・・。
けど、ダメージは相当なものだ。こうして身体が動かせない訳だし。当分はこのままだろう。
(・・・・さっき、エシルの頭を撫でたのが限界か・・・・)
「ったく。少しは改良する必要があるな、これ」
まだ実戦で使うのは、早すぎたようだ。
「ケンジ。大丈夫? ティアにできる事ある?」
「大丈夫だ。心配しなくてもいいぞ」
普段ならここでティアの頭を撫でるのだが、『身体が動かない』のでそれができない。
仕方なく、ティアの方を向き笑顔を見せる。
「ケンジさん。本当に大丈夫なんですか?」
レストが、ケンジの顔を覗き込んでくる。レストの紅玉色の瞳に、ケンジの顔が映っていた。
・・・・え~っと、ヤバイよな。この状況。
もし『身体が動かない』なんてバレたら、どうなるか・・・・。
『--------ッ!』
ケンジが必死に考え込んでいると、ケンジの携帯が鳴った。
こんな時、ケンジに電話を掛けてくるのは『一人』しか知らない。
「悪い、エシル。携帯取ってくれ。・・・・あ、いや、出てくれないか?」
「・・・・? わかりました」
身体が動かないので、電話に出ることなんてできないだろう。だからエシルに出て貰った。
それに、『相手』はわかっている。相手は・・・・『キンジ』。
「ケンジ。『キンジ』から電話です」
「あぁ」
・・・・ほらな。
「で、キンジは何て?」
そういえば、体育祭はどっちが勝ったんだ?
俺が勝ったから『実弾サバゲー(拳銃はほとんど使ってないが)』は白組の勝ちってことだし。最初から白組が勝ってたから、『水中騎馬戦』で白組が負けても、俺たち白組の勝ちなんだよな。
・・・・まさか、白組が勝ったからその『打ち上げ』か?
だったら、仕方ないがパスするか。こんな状態だし・・・・。
「『ジーサード』という『敵』が攻めて来たそうです」
しかし、エシルの口から出た言葉は予想外の物だった。
「・・・・え?」
おいおい、マジかよ。
---絶対参加の、最悪の『打ち上げ』じゃねぇーかッ!
Go for the next!!!
どうでしたか?
感想など、書いてくれると嬉しいです。