次話投稿が遅れてしまい、本当に申し訳ありません。
さて今日は 七夕 ということで、ここで一つ『お願い』をして置きましょう。
『---どうか自分に、素敵な彼女ができますように』
・・・・ホント、切実ですいません・・・・(泣)
ケンジが一人考え込んでいると、エシルがケンジの携帯を渡してきた。
「ケンジ。キンジが話したいそうです」
「・・・・マジか」
さて、どうすればいいかな。電話に出たいが、身体が動かない。こんな時は・・・・
「エシル。携帯をベッドの上に置いてくれないか」
「・・・・どうしてですか?」
エシルがケンジの発言に首を傾げる。
まぁ、当然だろうな。普通電話に出るのに、携帯を手に持たないなんて不自然過ぎる。
(・・・・俺の場合、手に 持てない んだけどな・・・・)
「エシルたちも、会話に参加したいだろ。だから携帯は、ベッドの上に置いた方がいいかなって・・・・」
本当の理由は隠しつつ、理由を説明する。
「わかりました」
納得してくれたのか、エシルはケンジの携帯をベッドに置いた。
『ケンジ! お前が、まだ入院中なのは分かってる! けど、お前の力が必要なんだッ!』
スピーカー設定を済ましている携帯からは、キンジの声が病室によく響いた。
『ジーサードのヤツが、東京に帰って来たんだ! もう、バスカービルの一部は交戦してる。ケンジも早く来てくれッ!』
キンジが、動揺しているのがよく解る。恐らくキンジも、まだ現状を全て理解できていないのだ。
「・・・・」
『ケンジ! 力を貸してくれッ!!』
「・・・・・・・・場所は?」
『---ッ!? 場所は品川火力発電所の東南東。ジーサードは武偵高の対岸、火力発電所付近にいる!』
(・・・・言いたかないが、ここからはけっこう 距離 があるな・・・・)
負傷中の身体で向かうには、負担が大き過ぎる。それに、まだ 身体が動かない のだ。ケンジが戦闘に参加することは、現実的に考えて『難しい』だろう。
『俺はそろそろ到着する! ケンジ。・・・・・・信じてるぜ』
その一言を最後に、会話が途絶える。携帯からはツーツーと、通信が切られた音が鳴っていた。
「さて、どうすりゃいいんだ」
---『難しい』ってのは、『不可能』って意味じゃない。
---『不可能』じゃない。つまり、『可能』って事でもあるんだ。
だが、今のケンジには これといった手段 はない。この状況を一発逆転できる手段が・・・・。
「・・・・そういえば」
「どうした? エシル」
「いえ。そういえば、カミトが これ をケンジに渡してくれと・・・・」
エシルが取り出したのは、とても『綺麗な石』だった。
「これって、まさかッ!?」
(おいおい。まさか、一発逆転できちまうんじゃないか・・・・)
エシルが持っている石・・・・鉱石は、『精霊鉱石』。精霊や精霊の力の一部を、その中に封印できる特別な鉱石・・・・だったはずだ。生憎、そこまで知識がない。だって使わないんだよな、精霊鉱石なんて。
「エシル。それを、俺の手に置いてくれないか」
「?」
首を傾げながらも、エシルはケンジの手の上に『精霊鉱石』を置いた。
(確か、神威《カムイ》を集中させれば使えたはず・・・・)
ケンジが精霊鉱石に、神威を集中させる。
---刹那。眩い光が、病室を包み込んだ。その光は、すぐに消える。
「ケンジ!」
「ケンジさん!」
「ケン!」
三人の契約精霊たちが、一斉に主である ケンジ の名前を呼んだ。
「---大丈夫か? エシル、レスト、ティア」
今度はケンジが、自分の契約精霊たちの名前を呼んだ。
「「「・・・・ッ!?」」」
エシルとレスト、ティアはその表情に、驚きを見せていた。
さっきまで、ベッドで横になっていたはずのケンジが、その腰に 愛刀の神楽《しんら》 を差して三人の目の前に 立っていた のだから。
「さーて、神楽を始めるか!」
カミトがケンジに渡した精霊鉱石には、恐らく『治癒能力を持った精霊』の力が封印されていたのだろう。その証拠にケンジは、今こうして病院を出て全力疾走している。まだ本調子とは行かないが、十分動ける程度までは回復していた。
「ったく、カミトに 借り を作り過ぎだな・・・・」
日はすでに落ち始め、だんだんと夜の闇が広がりつつある。
ケンジはさっきまで着ていた入院服を脱いで、神楽家の戦闘装束をその身に纏っていた。RPGの主人公が着ていそうな、黒いコートに白や灰色で、線や模様が入っているものだ。
「ケンジ。無理はしないでください」
「解ってる」
「ケンジさん。無茶だけはしないでください」
「ケン。よく考えて行動してね!」
「・・・・はい」
自分の契約精霊たちから、かなり念を押される。つい先ほどにも、同じようなやり取りをしたばかりだ。
「俺って、そんなに危なっかしいですかね?」
しかし俺は、エシルたちに感謝している。
本当は、俺を戦場には送りたくないはずだ。病室でも、さんざん止められたしな。
でも最後には、ちゃんと許してくれた。
「・・・・戦闘時は、 俺一人 で戦う。大丈夫。必ず生きて帰ってくるよ」
最後の約束確認。今回の戦闘では、三人には参加しないでもらう。恐らく、かなり危険な戦闘になるだろうから。もちろん、この約束にも同意して貰っていた。
・・・・エシル、レスト、ティア。今この瞬間も、ケンジの隣に居てくれる契約精霊たち。ケンジは、その三人の契約精霊たちのためにも、必ず生きて帰ってくると誓った。例えそこが海の底でも・・・・
・・・・『雲の上でも』。
---間に合わなかった。
目の前に広がるこの状況を見れば、誰にだって解ることだ。
仰向けに倒れた 一人の少女 が視界に映る。その『少女』は、身に着けている胸部プロテクターの中央下部が割れ、黒いアンダーウェアの奥に 深々とした傷 が見られた。
キンジとアリアに抱き上げられた『少女』・・・・『かなめ』は眠たそうに、目を細め---
最後の力を振り絞るように、声を絞り出す。
「サードは・・・・本物の、兵器・・・・お兄ちゃん・・・・お願い・・・・戦わないで・・・・逃げて・・・・」
もう呼吸すら断続的になってきた、かなめに---
「かなめ。悪いが、その願いは聞けない」
キンジが、ハッキリと言った。
かなめのその、血まみれの顔を覗き込み---
「『妹』を傷つけたヤツを、『兄』は許さない」
そう、キンジが告げた。
・・・・そして、
「例え本物の兵器が相手でも、絶対に俺が倒す。もし俺が敗れても、俺の意思は『親友』が次いでくれる。・・・・そうだろ、『ケンジ』」
「当たり前だ」
キンジの問いに、ケンジが即答する。
「・・・・神楽、ケンジ・・・・」
かなめはケンジの存在に気づき、大きく目を見開いた。
「・・・・どうして・・・・そこまで、するの?」
かなめが、ケンジを見ながら問いかける。
「『親友の頼み』。それ以上の理由がいるかい?」
しかし、ケンジが逆にかなめに問いかけた。
「・・・・・・」
かなめは無言で、ケンジから視線を逸らした。
だが、ケンジには見えていた。かなめの頬が少しだけだが、赤くなっていたのが・・・・。
そしてキンジが、かなめを見ながら言葉を紡ぐ。
「大丈夫だ。『俺たち』に任せろッ!」
キンジの言葉を聞いたかなめは・・・・
細めた目から、涙を零した。
ぽろ、ぽろ・・・・と。
次から次へと。それが血と混ざって、流れていく。
「お兄ちゃんが『泣くな』って言ったから・・・・もう、泣かないって決めたのに・・・・」
あは、と、小さく笑ったかなめは---
そのまま、安心したような表情を作って、糸が切れるように力尽きた。
「・・・・かなめーッ!」
アリアの叫びを聞きながら---キンジは、二人に背を向けて立ち上がる。
ケンジは無言で、キンジの隣に並んだ。
そして、まだこっちに背を向けていたジーサードを---睨み付ける。
「---来いよ」
ゆっくりと振り返ったジーサードは、その表情に 笑み を見せていた。
「キンジ。それと、ケンジ。俺を倒せるなんて、そんな事は『ふざけた幻想』だと教えてやるよ」
「だったらまずは、・・・・その『ふざけた幻想』をぶっ壊す!」
「いいのかジーサード。妹の仇だ。 今の俺 は、もう優しくないぞ!」
「クハハッ! それじゃあ、さっそく楽しもうぜ!」
そう言って歩き出したジーサードに、ケンジとキンジは黙って付いて行った。
幻影のような宙に在る穴を潜ってから気づいたが、どうやら『ここ』は・・・・。
(・・・・『水上機』のようだな・・・・)
全長は20m、全幅は50m以上。機影は---全翼機、だな。
「米軍のオモチャか、この乗り物も」
と、キンジが探りを入れると、
「次世代ステルス機の試作機さ。暗号名《コードネーム》は『ガリオン』---低探知性じゃ世界一だろうよ。つっても製造コストのせいで量産はできねぇらしいぜ。ああ、安心しろ。操縦士も、誰も、邪魔者は乗っちゃいねえよ。事前に決めた航路を飛ばす、自動操縦《オートパイロット》だ」
まるで友達に話すように、ジーサードは平然と返してくる。
しかしケンジは、そのジーサードの言葉に 違和感 を覚えた。
「『誰も乗ってない』だと? 嘘吐いてんじゃねぇーよ。奥の部屋に 一人 居るじゃねぇか・・・・」
「「っ!?」」
ケンジの発言に、キンジとジーサードが共に驚愕した。
「何言ってやがる、ケンジ。この『ガリオン』には、俺たちしか乗っちゃいねえぞ」
「ジーサードの言う通りだぞ、ケンジ。ここに居るヤツ以外の気配は感じない」
ジーサードとキンジが、ほとんど同時に否定し始める。
だが、ケンジには解っていた。この気配の正体が・・・・・・解ってしまった。
「おい、ジーサード。奥には何がある?」
「あ、どうした? 急に血相変えやがって」
「いいから、答えろ!」
「・・・・・・格納庫だ」
ジーサードが少しの間を空け、ケンジの質問に答えた。
「どうしたんだ、ケンジ? ・・・・・・・・まさか!?」
「あぁ、その まさか かもしれないぜ」
この『ガリオン』には、どうやら 先客 がいるようだ。
---精霊使いのケンジが人一倍、気配を察知できるモノ。
---恐らく、そいつは・・・・・・
ジーサードと共に入った、本来ならクラスター爆弾やB61小型核爆弾、統合直接攻撃弾《JDAM》などを搭載するのであろう広い格納庫には・・・・
写実的な宗教画、片や印象派やキュビズムの油彩画、前衛的な現代美術絵画といった、様々な様式の絵が飾られている。ピエロやアイドルみたいに派手な衣服も散在してるし、大きな彫刻、それと巨大なスピーカーもあちこちにある。
まるで美術館のような---いや、それとオーディオルームを組み合わせたような空間だ。
「何だここは。武器じゃなくてガラクタを置いてるのか」
「見る目がねぇなキンジ。こいつはパブロ・ピカソだぜ」
「いや、お前ら。他に ツッコむ所 があるだろッ!?」
そう、この空間の最奥。そこに、『ヤツ』は居たのだ。
---『魔神級堕精霊《まじんきゅうだせいれい》』が・・・・・・
大きさは小型。足が短く、手が長い。両手の先には、鋭く尖った刃物のような 爪 を持っていた。
実在する動物で例えるなら、テナガザルって所か。・・・・全然似てないけど。
あまり強そうに見えないが、油断は出来ない。小型でも、相手は『魔神級堕精霊』だからな。
・・・・・・だが、
「-----行けよ」
ケンジは、小さく呟いた。
「「?」」
キンジとジーサードがこっち視線を向けたのを確認し、ケンジがもう一度口を開く。
「『コイツ《魔神級堕精霊》』の相手は 俺一人 で充分だ。・・・・お前らは、二人で 決着 つけて来いよ。元々この争いは、お前ら 『Gの血族』の問題 だ。俺なんかが、手を出していいような問題じゃねぇーよ」
「ケンジ、いくらなんでも無茶だッ! 魔神級精霊に一人で挑むなんて正気じゃないッ!」
キンジが必死に、ケンジを止めようとする。
「キンジ。・・・・・・ 妹の仇 だろ」
「・・・・っ・・・・」
ケンジの表情を見たキンジは、言葉を失った。
---普通の人間なら、恐怖と絶望しか感じないはずの状況。そんな中ケンジは、必死に笑顔を作ろうとしていたのだ。
「・・・・死ぬんじゃねぇーぞ」
「何、他人の死亡フラグ立ててんだ。・・・・・・お互い、また会おうぜ」
「当たり前だ」
ケンジの言葉に、キンジが即答した。
その後キンジはジーサードと共に、格納庫の奥にあった螺旋階段を上がっていった。
どうやら 決着 は、機体の上でつけるようだ。
「じゃあそろそろ、俺たちも始めるか」
『・・・・ニンゲン。・・・・コロス』
さすが、魔神級精霊。そこら辺の下位精霊と違って、人間の言葉を話せるようだ。
(・・・・言ってることは、末恐ろしいがな・・・・)
ケンジは、腰に差していた神楽《しんら》を鞘から抜き・・・・・・『口に咥えた』。
そして空いている両手を背中に回し、背中に装備していた 二本の小太刀 を取り出す。
体育祭の後、返すタイミングが訪れず返せなかった アリアの小太刀 だ。無断で申し訳ないが、もう一度借りることにする。
今のケンジの姿は、口に神楽を咥え、両手にそれぞれ一本ずつ小太刀を持っている姿。
体育祭の時にも見せた、『三刀流』の姿をしていた。
ケンジは一呼吸入れてから、ゆっくりと声を出した。
「---さーて、神楽《かぐら》を始めるか」
Go for the next!!!
どうでしたか?
次回は、ケンジが 超メイン です。
キンジとジーサードの戦いを見たい方は、原作十一巻をどうぞ!
それでは、次回もお楽しみにっ!