高校での行事に追われ、気づけば10月。
---ヤバイッ! 中間考査がッ!?
---ってか、まだ『彼女』できてねぇーーーッ!!
---パチッ! パチパチパチッ!
ケンジの身体には 激しい電流 が流れていた。その姿はまるで、電流を纏っているかのように見える。
少し前にアニメで見た電気使いの少女がやっていたように、ケンジは自分の身体に電気を奔らせている。ケンジの身体を包む電流の激しさは、徐々に増していっていた。
この技は、前に 対カミト戦 で使った『電身強化《でんしんきょうか》』の改良版。その発動時の効果と性質から、キンジの『ヒステリアモード』と似ているのが特徴だ。
---技の名前は『エレクトロモード』。
前は 身体の内側 に流していた 人工の生体電気 を 身体の外側 に流すように改良したのだ。自ら創り出した生体電気を、身体の内側に直接流すのは体の負担が大き過ぎた。そこで、創り出した生体電気を身体の外側に流すことで体に掛かる負担を減らしたのだ。前よりは 身体能力の上昇 は望めないが、前より大幅に体が楽になった。
しかし、キンジの『ヒステリアモード』に比べれば、『エレクトロモード』の負担は大きいため『ヒステリアモード』より長く維持することはできない。・・・・もって、10分程度だろう。
(・・・・・・まぁ、やるしかねぇーけどな)
『---ニンゲン。コロス!』
ケンジが刀を構えていると、前方の魔神級堕精霊が勢いよく突っ込んできた。
「・・・・・・遅せぇーよ」
だが、ケンジには 堕精霊動き が スローモーション になって見えていた。
それは、『エレクトロモード』で脳に流れる生体電気を増幅させているためだ。そのため、普段より脳の働きが活発になり 身体能力 が上昇する。
その他、論理的思考力、判断力、運動神経、反射神経までもが飛躍的に 人間離れ する。
今のケンジには、堕精霊の動きを見切り その先を読む事 だってできる。・・・・つまり、
「・・・・・・瞬間的、『条理予知《コグニス》』ッ!」
前に『シャーロック』が使っていた技を、今度はケンジが使用する。もちろん、見よう見まねだが。
堕精霊の動きは、右腕を引いている状態での突進。しかし、ケンジは見逃していなかった。
---堕精霊が、左腕を振り上げる瞬間を・・・・・・。
つまり、引いていた右腕は フェイク で本命は 振り上げた左腕 だ。ケンジが右腕に気を取られてる間に、左腕を振り降ろす狙いだったのだろう。
ケンジは、瞬間的『条理予知《コグニス》』で堕精霊の 左腕が振り降ろされる軌道 を『推理』し、一気に駆け出す。
刹那、堕精霊が振り降ろした左腕が虚しくも空を斬った。
「---三刀流、神楽! ・・・・渦潮ッ!!」
すでに堕精霊の目の前にいたケンジが、三本の刀を同時に振るう。三本の刀が、同時に振られたことにより発生した 渦 が堕精霊を包み込む。
「・・・・まだまだッ!」
ケンジはその隙に、堕精霊の身体に三本の刀で斬りかかる。『エレクトロモード』で強化された身体能力でケンジの動きは 目にも留まらぬ速さ になっている。しかし、魔神級だけあってやはり 防御 が強い。
「くっ!? やべっ!?」
堕精霊が態勢を整え始めた所で、ケンジは一旦堕精霊と距離を取る。
『・・・・ニガサナイ!』
しかし、堕精霊が追撃と言わんばかりに右腕を大きく振った。ケンジは跳躍し回避するも、風圧で体勢を崩してしまった。体勢を整えにくい、空中で。
「しま・・・・っ!?」
ケンジの目の前に、堕精霊が放った左拳が迫る。このままでは、完全に殴り飛ばされる。てか、死ぬ。
「うおぉぉぉぉぉおッ!!」
だが、ケンジは諦めなかった。空中で、身体を 無理やり捻り 堕精霊の攻撃を避けた。さらにその捻りを利用して身体に勢いを乗せる。その勢いを使い、一気に堕精霊の左腕を斬り裂いた。
『ガアァァァッ!?』
これにはさすがに、堕精霊も驚いたようだ。ケンジの動きをまったく読めていなかったのだから。むしろケンジが、『読ませなかった』のだが。
ケンジがもう一度、刀を構えた・・・・、刹那。
---ドンッ、という腹に響く振動が格納庫内に吹き荒れ---
大音量で、音楽が流れ始めた。電子音とボーカル。これは前にレキが聴いてた、イビザ・トランスだ。
戦場だった空間が突如、クラブみたいなムードになった。
「何だよ、急に・・・・ッ!?」
ケンジの意識が 大音量で流れる音楽 に向いた瞬間、堕精霊が動いた。その動きは、ケンジの隙を突くには充分過ぎる速度だった。
堕精霊が放った右ストレートを、ケンジは両手に持っていた アリアの小太刀 で何とか防ぐ。
・・・・・・だが、
---バキィィィィィイッ!!!
格納庫内に、金属が折れたような激しい金属音が響いた。しかし、その金属音も大音量の音楽にすぐに掻き消される。
「・・・・ぐっ!」
殴られた衝撃を完全に消せなかったケンジは、残った衝撃で後方へと吹っ飛ばされた。
そのままケンジは、音楽が流れていた巨大スピーカーに激突する。ケンジが激突したためスピーカーが壊れたのか、大音量の音楽は消え、辺りに静寂が戻った。
---ドンッ・・・・!
その時、くぐもった音と振動が格納庫まで届いた。まるで、翼の内部で 爆発 が起きたかのように。
意識を失いかけていたケンジは、その音で目を覚ました・・・・・・。
-----『絶対絶命』って、こういう状況のことを言うのだろう。
先ほどの爆発で、格納庫まで火の手が迫っていた。身体は熱を感じているし、熱風も吹き始めた。
ここが燃え上がるのも、時間の問題だろう。
「・・・・さて、どうしたもんかな」
さっきの 堕精霊の攻撃 で、アリアの小太刀が 折れてしまった のだ。それに一度、集中力が途切れてしまったため、『エレクトロモード』が 解除 されていた。もう一度使用するのは、身体に負担が掛かり過ぎるので不可能だ。
つまり、『エレクトロモード』が解けた状態で、神楽《しんら》一本だけの武器を使い、魔神級堕精霊と戦わなくてはならないのだ。
いくらなんでも、きつ過ぎる。てか、あまりに『絶対絶命』過ぎるぜ。この状況。
『コロス。コロス。コロス』
堕精霊は一歩、また一歩とケンジに近づいていく。
それを見てケンジは立ち上がり、そして・・・・・・
---パチン!
愛刀、神楽《しんら》を『鞘に納めた』。
・・・・決して諦めた訳じゃない。この動作にも、ちゃんとした 意味 がある。
刀を一度、鞘に納めなければ出来ない技。ケンジが使う技は・・・・・・そう、
--- 居合い だ。
「神楽の居合いは、不可視の居合い・・・・」
ケンジは、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「一撃必殺の剣技。・・・・その剣技は、剣舞の始まりを告げるモノ」
そして、ケンジは静かに 神楽《しんら》 の柄を握った。
『・・・・・・?』
ケンジの行動を見て危険を感じたのか、堕精霊の動きが止まった。
当然だ。今から使うのは、その 強過ぎる威力 のため 対人使用が禁止 されている剣技。神楽流剣舞の中で 二つ しか存在しない 数字を持たない剣舞 の一つ。
『---ガアァァァァァアアアッ!!』
一気に勝負を付けようとしたのか、堕精霊がケンジに向かって突進してきた。
「---神楽流剣舞、初ノ型 ・・・・神楽居合いッ!!」
ケンジが放った 居合い は、堕精霊を 一刀両断 した・・・・・・ように見えた。
その剣筋があまりにも速過ぎたため、刀身が まったく見えなかった のだ。まさに、不可視。
だが、結果は同じだった。
魔神級堕精霊は 真っ二つに裂けた かと思うと、光の粒子になって消えた。
爆炎を背に、ケンジは刀を鞘に納めた。今度は、ただそれだけのために・・・・。
ガリオンの機体の上では、遠山キンジが大の字になって倒れ込んでいた。
「ジーサード・・・・あの大バカ野郎が・・・・・・ッ!」
キンジが小さく呟いた瞬間、すぐ後ろで大きな音と共に機体に 穴 が空いた。
「ッ!?」
キンジが急いで振り返ると、そこには『親友』であり『戦友』の 神楽ケンジ が立っていた。
「どうした、キンジ? 暗い顔はいつもの事だが、今日は一層に暗いぞ」
冗談を言いながら、ケンジはキンジに笑い掛けた。『自分は無事だ』と伝えるために。
その意図がキンジに伝わったのか、キンジの顔が少し晴れた。しかし、まだ暗い。
「そういえば、ジーサードのヤツは・・・・?」
ケンジが何気なく尋ねると、
ビクッ! とキンジの身体が震えた。
「ジーサードは・・・・」
「いや。言わなくていいぜ、キンジ。今はどう、ここから脱出するか考えよう」
キンジの表情を見れば、すぐに解った。ジーサードが、どうなったかくらいは・・・・。
「悪い、ケンジ。気を使わせて・・・・」
「何、よくある事だ。気にすんな」
・・・・さて、機体もだんだん炎に包まれてきた。操縦不可能、機体の胴体も大ダメージだ。このガリオンは、もうすぐ墜落する。
「キンジ。ちょっと 賭け をしてみないか?」
「・・・・?」
ケンジのセリフに、キンジが首を傾げた。
このままでは、どうせ二人とも死んじまう。なら、ちょっと やってみる価値 がありそうだ。
前に、アニメで見た 黒いマントを纏った炎髪灼眼の少女 が使っていた技。
(・・・・レスト。力を貸してくれ・・・・ッ!)
ケンジの右手にある、レストとの契約刻印が緋色に輝いた。
すると、ケンジの背中に 炎の翼 が出現する。
「・・・・ッ!?」
その光景を見て、キンジは大きく目を見開いた。
「何とか上手くいったか・・・・」
ケンジ本人は、願っていた結果となり安堵するのだった。
「これなら、二人とも生きて帰れそうだな」
ケンジが呟くと、キンジはケンジの翼を見ながら口を開いた。
「ホント、凄いな。 ・・・・ 精霊の力 ってヤツは・・・・」
「俺の 契約精霊たち が、凄いんだよ」
エシル、レスト、ティア。この三人が、ケンジの 大切な契約精霊たち だ。
「『精霊使い』として、契約精霊を残して死ぬ訳にはいかないんだよ」
そんな事になったら、三人を悲しませてしまう。それだけは嫌だった。
「あぁ、俺もアリアと約束したからな・・・・」
キンジが強い意志を持った目で、ケンジを見る。ケンジはその視線に答えるように、キンジに手を伸ばす。
「お互い、生きて帰ろうぜ。・・・・相棒」
「当たり前だ。こんな所で死ねるかよ。・・・・なぁ、相棒」
そして二人は、固く手を握り合う。
ケンジは 炎の翼 を広げ、夜空に身を投げた。
そのまま二人の少年は、お互いの帰るべき場所へと向かって行った。
---その姿が、すぐに闇夜に消えたのは言うまでもない・・・・・・。
Go for the next!!!
どうでしたか?
感想等、書いてくれたら嬉しいです。
次回から、遂に『第一章』のスタートです。
ここまでは、ちょっと長めのプロローグですかね・・・・。
では、次回は早めにお届けできるように頑張ります!