遂に第一章のスタートになりました。
それでは、どうぞ!
第一章のプロローグ
「---ジーサードの野郎!」
キンジは叫びながら机を蹴り、痛かったのか足を押さえて悶えている。
絶対安静と診断されたキンジとケンジは、男子寮のキンジの部屋に居座っていた。そこに届いた、差出人の名に『師団《ディーン》の友人 アンガス』とある国際郵便・・・・
キューバからの封筒に入っていたDVDを再生すると、テレビの中では、楽園みたいな浜辺でスポーツカイトに興じる---
『ハハハッ。どうだ兄貴。上手いもんだろ?』
大凧を揚げ楽しんでいる、ジーサードの姿があったのだ。
「クソッ、クソッ!」
キンジがテーブルを勢いよく叩く。そのテーブルには豪華とは言えないが、しっかりとした料理が並べられていた。この料理を作ったのは、
「あれが、Rランク武偵のジーサードってヤツか?」
ケンジの隣に座っている、カゼハヤ・カミトだ。そしてその隣には、二人の少女が座っている。
「カミトの敵ではありませんね」
先に口を開いたのは、美しい銀髪と神秘的な紫紺の瞳を持つ少女。何処となくエシルに似た少女だ。彼女の名前はエスト。カミトの契約精霊であり、伝説級の剣精霊だ。
「ふ~ん。カミトの方が、断然カッコいいわね」
続いて口を開いたのは、艶やかな黒髪と黄昏色の瞳を持つ少女。彼女の名前は、レスティア。カミトが最初に契約した闇精霊だ。
「あの野郎! あれほど死亡フラグ立てといて、カリブ海でバカンスかよッ!」
「まぁ、落ち着けよキンジ。弟なんだろアイツ」
カミトは怒りに震えるキンジを宥める。
「確かに、アイツと俺は兄弟だけどな・・・・」
「なら良かったじゃねぇーか」
ケンジも苦笑いしながら、会話に参加する。
「はぁ~。また面倒になって来たな、極東戦役《FEW》」
「けどなキンジ。こっちにも助っ人が入っただろ」
「そうだったな・・・・。これから宜しく頼むぜ、カミト」
「あぁ、任せてくれ」
キンジがカミトに向かって、手を差し出す。カミトもそれに応じ、キンジの手を握り返した。
お互いの紹介を終えているキンジとカミトは、すでに打ち解けている。
「---それとな、キンジ。実は もう一人 助っ人を呼んだんだ」
その時、キンジとカミトに向けてケンジが声を上げた。
「もう一人? ・・・・どんなヤツなんだ?」
キンジが尋ねると、
「一言で言えば---『超能力者』だ」
「超能力・・・・者? 何だそれ?」
カミトは『超能力者』を知らないのか、ケンジの発言に首を傾げる。
「気難しいヤツだが、実力は確かだ。絶対、戦力になるぜ」
ケンジはよく分かっていない二人に、笑顔を向ける。
まぁ確かに、説明不足だったな。
(・・・・でも アイツ は、かなりの 堅物 なんだよな・・・・)
ケンジは頭を掻きつつ、会話を続ける。
「すでに 極東戦役《FEW》 の話は通してっから。バスカービルの連中には、キンジから連絡頼む」
「わ、分かった」
「けど・・・・、その極東戦役《FEW》って具体的にどんなものなんだ?」
カミトが首を傾げながら、キンジ達に尋ねる。
「そうだな。カミトにも、今の現状を伝えとくか」
「それに、バスカービルの連中も紹介した方がいいな・・・・」
「あと出来れば この世界がどんな世界なのか も頼む」
---その後、カミトに数々の事柄説明が始まった。キンジとケンジも、再確認として真剣に話をする。
『おい見てるか兄貴?』
ジーサードの声は、誰にも聞こえていなかったが・・・・・・。
武偵高では4時間目までが一般科目、5時間目からが専門科目の授業だ。その合間には教科棟の移動や昼食等のために休憩時間がある。
その休憩時間、ケンジとカミトは探偵科《インケスタ》棟の前に立っていた。
「ここに来るのか・・・・もう一人の 助っ人 が?」
「あぁ、ここで待ち合わせのはずなんだが・・・・」
ケンジがポケットの中から スマホ を取り出し、時刻を確認する。すでに合流時間を、5分ほど過ぎていた。
「アイツ、遅刻だけはするなってあれほど言ったのに!」
「そんなに 抜けたヤツ なのか?」
「いや、どちらかと言うと マイペース ってヤツだな」
カミトの問いに、ケンジが答える。それに続くように、ケンジの隣にいたエシルとレストが口を開く。
「あの人は、唯我独尊って感じです」
「誰の指図も受けないって人ですが、ケンジさんは別です」
「どうしてだ?」
レストの発言に気になる部分があったので、カミトが尋ねる。
「ケンジさんに『大きな借り』があるんです。『大切な人を救って貰った』という借りが」
レストはまるで 昔のこと を思い出すように語った。
「俺とアイツは前に一度 修学旅行Ⅰ《キャラバン・ワン》 で会ってな・・・・」
「修学旅行Ⅰ《キャラバン・ワン》って何だよ?」
カミトが知らない単語だったので、会話途中で尋ねる。
「まぁ、簡単に言えば どこでも好きな場所に行ってもいい日 ってヤツだ。・・・・で、その時俺とアイツは出会ってな。偶然にも、ちょっと『共闘』することになったんだ」
ケンジも思い出すように、淡々と語る。
「そこで『とある組織』と共闘した時、アイツの 連れ を助けてな。そん時の借りで、今回 助っ人 として極東戦役《FEW》に参加して貰うんだ」
「で、ソイツの名前は?」
「カミト。『世界超能力者ランク《WSP》』って知ってるか?」
カミトの質問に、ケンジも質問で返す。
「何だそれ?」
「世界中の超能力者・・・・。あ、超能力者ってのは『魔法みたいな力を使う、人間離れしたヤツ等』のことな。で、その超能力者たちの『どれだけ人間離れしたかランキング』が『世界超能力者ランク《WSP》』だ」
ケンジはさらに言葉を続ける。
「『1位から10位』まで在ってな。・・・・数字が若くなるほど強いってことは、解るよな?」
「・・・・それくらい分かる」
「そのランキングに登録されてる10人の内、6人は 日本人 なんだ」
「へぇー。日本ってこの国のことだろ。強いんだな」
「まぁな。・・・・・・話を戻すが、俺の 旧友 である アイツ もこのランクに登録されてた」
「されてた? 過去形だな、今は違うのか?」
「・・・・いろいろ遭ってな。それで、アイツは『世界超能力者ランク《WSP》』の『元1位』だ」
「1位ッ!?」
「『元』だけどな。で、アイツの名前だが・・・・・・『一方通行』」
「『一方通行』?」
「まぁ、世間じゃこう呼ばれているな。---『アクセラレータ』」
ケンジがその名前を言った瞬間、
---カツ、カツ、カツ。
まるで杖を突くような音が、不自然なほど響いて聞こえた。
ケンジとカミトが音のした方を見ると、そこには東京武偵高の制服を着た 一人の少年 が立っていた。
その少年はまるで『負傷者』のように片手に杖を持って歩いている。色素を失ったような白い髪と、血を思わせるような赤い瞳を持った少年は、ケンジの姿を見るなり口を開く。
「---ったく。ふざけた造りしやがってよォ・・・・。何だ、この学校。迷路でもやってんのかァ?」
少年は怒ったように、辺りを見回していた。そして、どうでもよくなったのか、ケンジたちの方に視線を戻した。
「久しぶりだな。『アック』」
「おい、カグラ。その呼び方は止めろって言ったよなァ・・・・」
「俺は止める気は無いって言ったぞ。お前の名前、けっこう長いんだよ」
「・・・・・・」
この少年こそ、ケンジが呼んだ助っ人。名前は『一方通行《アクセラレータ》』。ケンジはその名前が長いので、省略して『アック』と呼んでいる。
「『あの子』は元気にしてるか? 確か・・・・『打ち止め《ラストオーダー》』ちゃん?」
「あのガキは元気過ぎて迷惑なくらいだ」
「そりゃ良かった。この極東戦役《FEW》の参加も、あの子を護るためだもんな。戦役が激化すれば、周りの人々にも被害が及ぶ」
「何が言いた・・・・」
「だって、アック。あの子を大切に思ってて、めっちゃ可愛がってるもんな」
「・・・・ッ!?」
アクセラレータは苦虫を噛んだような顔をしながら、ケンジから視線を逸らす。否定する気はないようだな、正直なヤツだよ。
「・・・・・・それで、カグラ。お前の隣に居るのは何だ? また増えたのか」
あ、話逸らしやがった。余程、恥ずかしかったんだな。
アクセラレータはケンジの隣に立っている、ティアを見ながら問い掛けた。
「まぁな。俺の新しい契約精霊、ティアって言うんだ。可愛いだろ。俺の大切な相棒だ」
「は、は、初めまして。え、エクレール・ティアニスです」
ケンジに続き、ティアが口を開いた。しかし緊張のせいか、その言葉はかなり震えている。
・・・・いや、緊張じゃないか。恐らく、アクセラレータの放つ 底知れぬ恐怖 が原因だ。コイツの威圧感は半端じゃないし。
「で、ソイツは?」
アクセラレータは、今度は カミト の方を向いて尋ねる。
「あぁ、お前と同じ 助っ人 だよ。・・・・実力は充分あるぜ」
「カゼハヤ・カミトだ。宜しくな」
そう言ってカミトが右手を差し出すが、
「馴れ合うつもりはねェーよ」
アクセラレータはそう言い、踵を返した。
「お、おい! どこ行くんだ、アック!」
「俺が必要な時だけ呼べ。そン時以外はァ、俺は一人で行動するからよォ」
アクセラレータはそれだけ言って、姿を消した。
「ホントに、変わったヤツだな・・・・」
「まぁ、ゆっくり慣れていってくれ」
残されたケンジとカミトは、ただ茫然とその場に立っていた。
---そんなある日。これから何気ない平和な日常が続きそうだったフラグが、完全にへし折られる出来事が起きた。
学校帰りのケンジに、キンジから電話が掛かって来たのだ。もし暇だったら、俺の部屋に来てほしいと。
ケンジはすぐに、キンジの部屋がある第3男子寮に向かった。
キンジの部屋の前に立ち、インターホンを鳴らす。
「おーい、キンジ! 暇だったから来てやったぞ」
「あぁ! 鍵なら開いてる! ちょっと手が離せないんだ。勝手に上がってくれ!」
何やら必死そうに叫ぶキンジの声が聞こえたので、ケンジは遠慮無く部屋に上がった。
「・・・・・・・・は?」
思わずそんな言葉が、ケンジの口から漏れた。
いつもなら散らかっているキンジの部屋が、綺麗に掃除されていたから。白雪でも来たのかと疑ったが、今も尚、掃除を続けているのがキンジだけだ。白雪は来てないだろう。キンジの気まぐれか。
「・・・・?」
しかし、気になる事がある。キンジの部屋にある物が、少なくなっている。それに、
「キンジ。その 段ボール は、いったい何だ?」
ご丁寧に、『引っ越しセンター・ヤート』と書かれた段ボールが、キンジの部屋の隅に置かれていた。数はそんなに多くないが・・・・。
「いや、悪いなケンジ。部屋の掃除と 引っ越しの準備 を手伝って欲しくて」
「あ、あぁ」
---いやいやいやいや。違うだろ、そこ。
「ちょっと待てキンジ。これはどう云う事か、ちゃんと説明しろ。引っ越しって、どういう事だ?」
「あ! そうだったな」
キンジは自分の手荷物を整理しながら答える。
「---俺。東京武偵高を、『退学』になったんだ」
「・・・・・・・・・・は?」
盛大に意味が分からん。いや、『退学』って。・・・・え?
「---マジ?」
---何かが起こる予感は、この時からしていた。
---第一章『一般人と武偵の違い』・・・・・・開幕ッ!!
どうでしたか?
感想等、書いてくれると嬉しいです。
次回は キンジの実家 で、お会いしましょう。
『---さーて、神楽を始めるか!』