今回はジーサードとジーフォースが、登場します。
そして、物語は動き出す!
「アリア。白雪。理子。レキ。バスカービルの4人が、全滅しただと・・・・ッ!」
『とりあえず、品川区港東1-7-32、ジオ品川7区、コリエンテ・ビル7階の屋外劇場・テアトロ・アクアに向かってくれ! 俺も今、ワトソンと向かってる』
「おい、2人だけか?」
『これ以上増やしても負傷者が増えるだけなんだ!』
「わかった。俺も、すぐ行く! 無理すんなよ!」
『あぁ、わかってる』
そこで、電話が切れた。どうやら、本当に緊急事態のようだな。
「よし、俺も行くか!」
キンジが言った場所は、ここから少し距離がある。ケンジは、急いで自室に戻って着替えを始める。相手の強さが未知数のため、準備に越したことはないだろう。
「久しぶりに着たな・・・・これ」
ケンジが着ているのは、黒色を基調とした神楽家に代々伝わる戦闘装束。RPGの主人公が着ていそうな、黒いコートに白や灰色で、線や模様が入っているものだ。
「ケンジ。はい」
「ありがとな、エシル」
ケンジがリビングに戻ると、エシルが 神楽《しんら》 を渡してきた。ケンジは、それを受け取ると腰に差す。さて、準備終了。
「エシルとレストは、ここで待っててくれ。すぐ帰ってくるから」
「本当ですか?」
レストが、心配そうにケンジを見つめる。
「ケンジ。絶対に無理はしないでください」
エシルも、同じようにケンジを見つめていた。
「大丈夫だ。心配しなくていい」
ケンジはそう言うと、エシルとレストの頭を優しく撫でた。2人が気持ち良さそうに目を細めるので、つい長くなってしまったが、ケンジは2人の頭から手を離した。
「じゃあ、行ってくる!」
ケンジがリビングを出ようとすると、
「ケンジ」
「ケンジさん」
エシルとレストに呼び止められた。ケンジが振り返ると、2人はもう心配そうな表情をしていなかった。
「「 続き は、無事に帰ってきたらしてくださいね」」
「おう!」
(・・・・やばい。超、やる気出てきたぞ!)
さっさと終わらせて、すぐに帰ろう。
ケンジは住んでいる男子寮を出ると、日が沈んで暗くなった道を全力で駆け抜けた。
「さーて、神楽を始めるか!」
「フォース、コイツでならーーーなれそうなんだな?」
「うん、うん! じゃあ、いい?」
「やってみろ」
ジーサードとジーフォースがそんな会話をした直後、舞台上に渡された照明用レールの上からジーフォースが、鷲のように舞い降りてきた。
---キンジ、めがけて!
「トオヤマっ!」
ワトソンの声と同時に、キンジは転がるようにしてジーフォースの両足を避けた。
ジーフォースが着地した床が一部、破片を散らして破壊される。
ベレッタを発砲しようとしたキンジの右膝にーーー
「会いたかったよ、お兄ちゃん!」
稲妻のような、ジーフォースのローキックが炸裂・・・・・・しなかった。
「---!」
ジーフォースが、驚いたように息を呑む。自分のローキックが決まらなかったことに驚いたのだろう。
「よう、キンジ。取り込み中だったか?」
ジーフォースの攻撃を神楽《しんら》で受け止めたまま、ケンジが尋ねる。
「け、ケンジ!?」
「なに驚いてんだ? お前が呼んだんだろうが」
「・・・・・・・・やけに、遅かったじゃねぇーか」
「うるせー。こっちは、走って来たんだよ。これが限界だ」
「--------神楽 健次《かぐら けんじ》か・・・・」
ケンジとキンジが話していると、ジーサードが割り込んできた。
「東京武偵高、2年。探偵科《インケスタ》のDランク。バスカービルの1人で、二つ名は『不殺の剣士』。今持ってるその武器は、逆刃刀 神楽。・・・・・・ザコが何の用だ?」
ジーサードが、ケンジの情報をスラスラと述べていく。
「おい、キンジ。アイツ何者だ?」
「俺もよくわからねぇーんだ」
キンジが知らないとなると、ワトソンに聞くか?
「おい、ワト・・・・」
「よくも、あたしとお兄ちゃんの邪魔したな!」
ケンジの声は、ジーフォースの声に掻き消された。
ジーフォースは素早く体勢を整えると、自分の身長ほどある長い刀をケンジに向かって振り下ろした。
「ちょっ!? マジかよ!」
ケンジは、その長い刀を神楽《しんら》で受け止める。大きな金属音が、劇場全体に響いた。
「!?」
すると、ジーフォースが驚いたように目を大きく見開いた。ザコ《ケンジ》が自分の攻撃を防いだのに、驚いているのだろうか。
(・・・・さっきも、防いだんだけどな)
「なに驚いてんだ?」
ケンジが尋ねると、
「どうして斬れないの?」
「?」
(・・・・斬れない? 何の話だ?)
「単分子振動刀《ソニック》に、斬れないものなんてないのに!?」
ジーフォースが信じられないという表情のまま、ケンジを見つめる。
「俺が知るか! 神楽流剣舞 一ノ型 神楽斬撃・・・・ッ!!」
ケンジが、大きく神楽を振るう。この技は、格ゲーでいう『強攻撃』のようなもの。タメが長いが、強めの攻撃ができる。そのまま、ジーフォースを吹っ飛ばす。
「・・・・ッ!」
ジーフォースが体勢を整える前に、
「いくぜ! 神楽流剣舞 二ノ型 神楽瞬身・・・・ッ!!」
「「「「?」」」」
この場にいる全員の視線が、ケンジに集まる。なぜなら、ケンジが叫んだのに 何も起こっていない から。そしてケンジが、神楽を 鞘に納めようとしている から。
「ジーサード。とかいったな、お前」
神楽《しんら》が鞘に納まるまで、残り20センチ。
「あぁ、なんか用か?」
「てめぇーが、アリア達をやったのか?」
「ーーーハッ。違ぇよ。フォース1人だ」
神楽が鞘に納まるまで、残り10センチ。
「けど、お前はそのフォースよりも強いんだろ?」
「・・・・・・何が言いたい?」
「だから・・・・先手を打たせてもらうぜ!」
神楽が鞘に納まるまで残り、0・・・・刹那、
「瞬身狩り《イグニション・ハント》・・・・ッ!!」
バキィィィィィィ! と、ジーサードが装着している漆黒の甲冑《プロテクター》に大きな亀裂が入る。
「「「「「っ!?」」」」」
この場にいる全員が驚愕する。しかし、一番驚いたのは ケンジ だった。今の攻撃は、完全に決まったはずだ。なのに・・・・
「なんで、亀裂しか入らないんだ!?」
「---ハッ! 現代科学舐めてんじゃねぇーぞ!!」
「いや! お前の最先端じゃねぇーか!!」
ケンジがツッコんだ時にはもう、ジーサードがケンジの目の前にいた。
「な!?」
「今度は・・・・こっちの番だ!」
ジーサードは、そう言って左肘をケンジに向けーーー
体を横向きにして、腰と頭を落とし、右足を後ろに引き、右拳を大きく振りかぶった。そして・・・・
「流星《メテオ》・・・・ッ!!」
超音速打撃が、ケンジに炸裂した。
「---うぉッ!!」
衝撃で吹っ飛ばされたケンジは、舞台の壁に激突し、そのまま壁を突き破った。
「ケンジ!?」
キンジが叫ぶが、ケンジから返事はない。
「---くそ!」
反射的に、キンジがベレッタの銃口をジーサードに向けたーーーその時。
「お兄ちゃん。あたしとやろ」
ジーフォースがキンジに向かって、突っ込んできた。・・・・だが、
「もういい、フォース」
ジーサードが、それを止めた。
「えっ、もうおしまいなの?」
きょとん。
ジーフォースが大きな目を見開いて、キンジとジーサードを見回す。
「いや、もう1人。今度は目の前で 自分の女 が滅ぼされるのを見せてやる」
ジーサードはそう言うと、ワトソンの方を向いた。
「!?」
ワトソンが、とっさに身構えた。しかし、すでにジーサードはワトソンの目の前にいた。
「安心しな。別に、殺さねぇーからよ」
ジーサードが大きく振りかぶっていた右拳を、ワトソンに向かって放つ。しかし、ワトソンには当たらなかった。なぜなら・・・・
「おい、てめぇー。なに衛生武偵《メディックDA》に手ぇ出してんだ?」
なぜなら、間に ケンジ が立っていたから。
「!?」
ジーサードは少し驚いてから、すぐに離れる。
「け、ケンジ!? お前、大丈夫なのかッ!」
「か、カグラッ! 平気なのかいッ!!」
キンジとワトソンが、ケンジに駆け寄る。さっき、ジーサードの流星《メテオ》で吹っ飛ばされて、今まさに、ジーサードの右拳を胸部中央に受けたのだ。客観的に見れば、かなりの大ダメージのはずだ。しかし、ケンジは立ったまま、ジーサードを睨む。
「俺の打撃を2発喰らって立ってたか。誇っていいぜ、神楽 健次《かぐら けんじ》。俺は敵に2発以上の打撃を喰らわせた事がねェ。全員、1発で斃してきたからよォ」
「むず痒い程度だ、こんなのは。次は俺が叩き込んでやる」
ケンジが一歩前に踏み出すと、
「いや、今日はここまでだ」
ジーサードーーーその姿が、ジジッ・・・・と音を立てながら・・・・
消えて、いく。
透明になっていく。
「光屈折迷彩《メタマテリアル・ギリー》・・・・じ、実用化されていたのか・・・・っ!」
それを見たワトソンが、冷や汗をかきながら呻いた。
ほとんど透明になったジーサードが、バスンッ! と、劇場の重いドアを蹴破りーーー
「フォース。キンジがレガルメンテに覚醒してねぇなら、HSSに慣れさせる必要がある。お前は落ちこぼれ同士、そいつとHSSを使いこなせるようにしてこい。今から、作戦《ガンビット》をプロセスγに移す。次はーーー『双極兄妹《アルカナム・デュオ》』になったお前らと再合流する」
HSS・・・・ヒステリアモードという意味の言葉を含む不可解なセリフを、ジーフォースに語っている。
「それと、ケンジ! お前とは、ちゃんと決着つけてやるからなッ!」
そして、語り終えた頃にはーーー
もう、その姿は影も形も無くなっていた。
消えた、のだ。いま確かに、そこにいたハズなのに・・・・!
ジーサードが消えた後ーーージーフォースは、とこ、とこ。
「あーあ。お兄ちゃんとあんまり遊べなかったな~。まぁ、いっか。これから、いっぱい遊んでもらえばいいだけだもんね」
全く敵愾心のない足つきで、キンジとワトソンの横を通り過ぎ・・・・
倒れたままのアリアたちのそばに立ち、愛嬌たっぷりの無邪気な笑顔を向けてきた。
「---車呼んだから。お兄ちゃんについた悪い虫たち、病院に閉じ込めちゃお」
ニコニコして言うジーフォースには・・・・
もう、戦うつもりはないようだ。
ケンジは警戒心を解き、大きく息をはいた。すると、急に体の力が抜けた。
「あれ・・・・?」
そのまま、倒れてしまう。周りでケンジの名前を呼ぶ声が聞こえたが、体に力が入らない。
・・・・・・そこで、ケンジの意識は途切れた。
Go for the next!!!
どうでしたか?
感想など、書いてくれるとうれしいです。