緋弾のアリアと精霊使い~剣舞が紡ぐ物語~   作:茅倉 遊

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あらすじやプロローグに書いてあった、堕精霊に触れていきます。



そして、堕精霊は動き出す!

「・・・・・・ん」

 

 ケンジが目を覚ますと、そこは武偵病院の病室だった。何度かお世話になっているので、すぐにわかった。

「あら、目が覚めたようね」

 ケンジが寝ているベッドの隣から、声が聞こえた。ケンジが隣を見ると、看護師が丸椅子に座ったまま、こっちを見ていた。

「すぐに、主治医を呼んでくるわ」

 しかし、看護師は全く動かない。優しく、こっちを見ているだけだ。・・・・仕方ないので、ケンジが尋ねる。

「なんでここにいるんですか? ・・・・ カナさん 」

 そう、この人は看護師じゃない。ナース姿が異様に似合っているが、ここにいるはずのない人物。

「あなたに 伝えたい事 があってね」

「伝えたい事?」

「 堕精霊《フォール・スピリット》 が動き出したそうよ」

「!?」

 

 -----堕精霊《フォール・スピリット》。精霊界からこの世界にやって来た、世界に災厄をもたらす災害そのもの。堕精霊と戦うのも武偵の仕事だが、その力は強大で今までにも、何人もの武偵が犠牲になってきた。

 

「どうして今?」

「それは、わからないわ。でも、用心しなさい」

 カナはそう言うと、丸椅子から立ち上がる。

「そうね。あなたに これ を渡しておくわ」

 カナがケンジに、一丁の拳銃を渡してきた。

 それはカナの愛銃、コルト・シングル・アクション・アーミー。通称、ピースメーカー。

「?」

「いずれ、必要な時が来るわ」

 それだけ言うと、カナは病室の入り口まで歩いていく。そして、何か思い出したように振り返ると、

「ケンジ。あなたはもう、退院していいわ。それほど重傷でもなかったしむしろ、ここに来る必要もなかったくらいよ。それと、あなたが意識を失ってからまだ24時間も経ってないから安心しなさい」

 そこまで一気に言うと、カナはケンジの病室から出て行った。

(まぁ、医師免許持ってるカナさんが言うんだし、もう大丈夫なんだろうな)

 病室に再び、静寂が訪れる。ケンジが、一眠りしようとすると、

「心配するだけ損だったようですね」

 ベッドの隣から、美しい鈴の音のような声が聞こえた。

「え?」

 ケンジが隣を見ると、エシルとレストが並んで立っていた。

「一睡もしないで、一晩待っていたんですよ」

 その透き通ったような声で、レストが告げる。

「ご、ごめんなさい・・・・」

「いえ、マスターが謝る必要はありません」

「そうです。マスターに非はありません」

「・・・・あ、あのー。エシルさん。レストさん。もしかして、怒ってません?」

 呼び方が、『マスター』なんて他人行儀だし。

「「怒ってませんよ。マスター」」

「勘弁してください! ホント、マジすいませんでしたッ!!」

 ケンジが、堪らず叫ぶ。自分の大好きな2人の契約精霊に、『マスター』なんて他人行儀な呼び方を連呼されるのは、想像以上にキツイ。

 

「「では、責任を取ってもらいます」」

 

「!?」

 エシルとレストがいきなりケンジのベッドに上がり、ケンジが入っていた毛布の中に入り込んできた。

 ドクン! とケンジの心臓が高鳴る。

「ケンジのせいで、昨日は寝てないんですよ」

「ケンジさんが、昨日は寝かせてくれませんでした」

 エシルとレストがそう言いながら、ケンジに抱きついてくる。ドクンッ! とさらに、ケンジの心臓が高鳴った。

「そ、そういえば。・・・・ 続き は、させて貰えるんでしょうか?」

「「 続き は、ナシです」」

 ほとんど理性が飛んだ状況でケンジが尋ねたが、あっさり断られた。

「全然、 無事 じゃないですよね。ケンジ」

「それに、帰ってきてすらないですしね。ケンジさん」

「・・・・・・はい」

 落ち込んだケンジが、ふと目を閉じた。すると、

 

 ちゅっ・・・・

 

 「ーーー!?」

 ケンジの唇に、左右から何か温かくて柔らかいものが触れた。ケンジの視界には、白銀色の髪と緋色の髪の二つが映っている。

 -----どうやら、 キス をされているようだ。エシルとレストから・・・・。

 けっこう長い時間、キスしていた気がする。エシルとレストが離れても、まだ感覚が残っていたのだから。

「 続き は、ナシになったんじゃあ・・・・?」

「「もう、我慢できませんでした」」

 ケンジが尋ねると、エシルとレストが声を揃えて言う。それなら、

 

「俺も、もう我慢できないです」

 

 ケンジは、エシルとレストを両手で包むように強く抱きしめ・・・・もう一度。今度はケンジから、

 

 -----エシルとレストに、キスをした。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、アリア達もここに入院してるんだよな?」

「はい」

「303号室に入院しています」

 ケンジが尋ねると、エシルとレストが順に答える。

「じゃあ、お見舞いに行くか」

「「?」」

 ケンジがベッドから降り、壁に立てかけられていた 神楽《しんら》 を腰に差すのを、エシルとレストが首を傾げながら見ている。

「ケンジ。もう、大丈夫なんですか?」

「あぁ、もう退院していいって言われたしな」

 エシルの質問に、ケンジが右肩を回しながら答える。カナが大丈夫と言っていたのだから、心配ないだろう。

「よし、行くか!」

「「はい」」

 そして、ケンジ達はアリア達のいるA病棟303号室に向かった。

 

 

 

「・・・・・・は?」

 A病棟303号室の前に来て、ケンジの動きが止まる。目的地に着いたためではなく、303号室のドアが 歪んでいた からだ。

「なんか、あったのか?」

 ケンジがノックしてからドアを開けようとするが、なかなか開かない。少し力を入れると、ゆっくりと開いた。

(・・・・これ、怒られるんじゃないか?)

 そう思いつつ、中に入ると・・・・・・・・よし、帰るか。

 ケンジが引き返そうとするが、後ろからエシルとレストが入って来たため出られない。

 それに、

「お! ケーくんっ!」

 中にいた理子に見つかったため、もう引き返せない。

「「!?」」

 後から入ってきて中の様子を見たエシルとレストが、驚愕しているのを感じながらケンジはもう一度303号室の中を見る。

 まず、天使のコスプレをしているのに病室の白い床に倒れたまま前髪の間にのぞく目をカッと開いている白雪。なんか、「コロス コロス コロス」言ってるんですけど大丈夫なんですか。

 そして、白いベッドに座る、オオカミ少女。実際は、ヘッドホンの上にオオカミ耳をぴょこんとつけた制服姿のレキなんだが。問題は、レキが持っている狙撃銃。それはーーーバレットM82。イラク戦争などで使われていた、長距離狙撃銃《ロングレンジ・スナイパーライフル》だ。確か、対人使用は国際法で禁じられているはずだ。その銃の銃口を・・・・・・なんで、窓の外に出してるんですか? まるで何かを狙っているようだが、撃っちゃ駄目だからなレキさん。

 最後に、

 ・・・・ガルルルルルル・・・・

 毎度おなじみの仔ライオンみたいな威嚇音を上げている妖精。そう、大変お怒りのアリアさんです。

「何があったんだよ・・・・?」

 ケンジが、この中では一番正気そうな理子に尋ねる。

「それがね、ケーくん。・・・・・・」

 理子は、遠くを見ているような目で語り始めた。

 

 

 

「・・・・なるほどな」

 理子から、この303号室で何があったのかを聞き終えるとケンジは大きく息をついた。・・・・とりあえず、

「何、やってんだキンジのヤツ」

 アリア達をこんな状態のまま放置しやがって、事後処理くらいしろよ!

「絶対、風穴開けてやるんだからぁぁぁっ!!」

「ふふふ・・・・キンちゃんに憑いた悪い虫は排除しないと」

「・・・・」

(誰か、助けてくださいッ!!)

 

 ・・・・コン、コン。 ケンジが心の中で叫んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。

「?」

 ケンジがドアを開けると、宅配業者の人が大きな段ボールを持って立っていた。

「宅配でーす」

「あ、はい」

 ケンジが段ボールを受け取ると、宅配業者の人は一礼してから帰っていく。

「「「「「「「?」」」」」」」

 303号室の中にいる全員の視線が、ケンジの持つ段ボールに集まる。

「ケンジ。あんたが開けなさい」

 アリアがケンジを見ながら言う。え? それって・・・・

「もし危険物だったら、俺危なくね?」

「「「「「「・・・・」」」」」」

 全員が、無言でケンジを見つめ続ける。

「・・・・わかったよ」

 そして、ケンジが恐る恐る段ボールを開けると、

「・・・・なんだこれ?」

 中には、ビリビリに破かれたクッションや切り刻まれた黒い布。それと、割れている大量のゲームソフト。

「「「!?」」」

 これらの持ち主であろう、アリア・白雪・理子が驚いている。

「・・・・ん?」

 段ボールの中に、一枚の紙が入っている。手に取って見てみると、手紙のようだった。ケンジが声に出して読み始める。

「おい。チビ、カマトト、ブリッコ。お前らの私物は、お兄ちゃんの部屋に必要ない。家族でもないくせに、勝手にお兄ちゃんの部屋に住むなんて許せない。だからーーー二度と来るな! 兄妹の繋がりは、絶対の繋がり。他の女とは違うんだッ! もし次勝手にお兄ちゃんの部屋に来たら、今度はお前らを そんな風 にしてやる。     遠山キンジの妹より・・・・だってよ」

 ケンジは手紙を読み終えると、病室内を見回した。そして、気づいてしまった。この場を満たしている殺気にッ!

 

 ・・・・・・・・マズイッ!!

 

「エシル! レスト! 帰るぞッ!!」

 ケンジは大声で叫ぶと、慌てて病室を飛び出す。その後を、エシルとレストも慌ててつづく。

(・・・・キンジ。お前が、正しかったぜッ!)

 

  あんな状態での事後処理なんて、いくらなんでも無理だ。

 ・・・・すでに303号室からは、

 

 大量の銃声が、鳴り響いていた。

 

 

 

 

 

 

 そしてケンジ達は武偵病院を出て、自分達が住んでいる男子寮に帰るため、バス停に向かっていた。

「・・・・・・ッ!?」

 その道の途中で、出会ってしまった。カナに用心するよう、言われていたのに。世界に災厄をもたらす、災害そのもの。

 

    そう。・・・・・・・・堕精霊《フォール・スピリット》に。

 

 

 

 

    Go for the next!!!

 

 

 

 

 




どうでしたか?
感想など、書いてくれるとうれしいです。
次話も早めに投稿します。
いよいよ、堕精霊との戦いです! エシルとレストも戦うので、お楽しみに!
 
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